本記事では「UI/UX改善とは何か」について、UI/UX改善のメリット、改善のフローから、状況別に役立つフレームワーク・改善ポイント・注意点・成功事例まで網羅的に解説しています。UI/UX改善チェックリストも用意していますのでご活用ください。

「UXに1ドル投資するごとに、企業は100ドルのリターンを得ることができる」と論じられるほど、UI/UX改善は事業成長における重要な要素です。

自社サイトやサービスのUI/UXを改善しようとしたものの「どこから手をつけるべきか」「効果的な進め方が分からない」といった悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

UI/UX改善とは?

UI/UX改善とは「ユーザーがプロダクトやサービスに触れる接点であるユーザーインターフェイス(UI)と、それらを通じて得られる体験であるユーザーエクスペリエンス(UX)の質を高めるための施策」を指します。

市場にある多くのプロダクトやサービスは、技術発展によって品質のコモディティ化(均一化)が進んでいます。現在は「モノ」が溢れ、機能だけでは差別化が困難な時代です。

ユーザーは高機能な「モノ」よりも、モノを使用した際に体験できる「コト」に新たな価値を求めています。そのため、より良いユーザー体験の提供による事業成長を目指すためにも、以下の4つの観点からUI/UX改善について詳しく解説していきます。

UI/UX改善とはUIとUXの向上を目指す施策
UI改善とは「あなたとモノの接点を改善」する施策
UX改善とは「あなたがモノに触れて感じる経験を改善」する施策
UIデザインとUXデザインの関係性(優れたUXは優れたUIデザインの上に成立する)

UI/UX改善とは「UIとUXの向上」を目指す施策

用語 説明
UIデザイン プロダクトやサービスにおける「優れたUI」を設計する取り組み(例:ボタンの色・形・大きさ・位置など)
UXデザイン ユーザーがプロダクトやサービスを利用する過程で得る「総合的な体験」の仕方を設計すること

UI/UX改善とは「ユーザーインターフェイス(UI)」と「ユーザーエクスペリエンス(UX)」を向上させる取り組みです。つまり、上記の定義で分けられる「UIデザイン」と「UXデザイン」の両方を改善していく活動がUI/UX改善といえるでしょう。

グッドパッチでは、UIデザインを「ソフトウェアの見た目や使い勝手の設計」と捉える一方、UXデザインは「個人的で主観的な心のプロセス」だと考えています。ユーザー一人ひとりの状況に合わせて「使ってよかった」と思える価値ある体験を届け、変化や安心をつくることが、UXの本質です。

企業がUI/UX改善に取り組むのは、優れた体験を通じて顧客満足度を高め、事業指標の改善や顧客満足度の向上などのビジネス目標を達成するという大切な目的があるからです。

【関連記事】UI/UXとは?UIとUXの違いや関係性、デザイン設計の手順を解説

UI改善とは「あなたとモノの接点を改善」する施策

UI改善とは「あなたとモノの接点を改善」する施策

UI(ユーザーインターフェイス)改善とは「ユーザーとプロダクト・サービスの接点(UI)を見やすく、分かりやすく、操作しやすいように改良する施策」です。

接点、すなわちUIとは、「ユーザーがプロダクトやサービスに触れるすべての部分」を指します。例えば、ウェブサイトの「ボタン配置やテキストのフォント、スマートフォンの画面デザイン」などが具体的なUIにあたります。

UI・UIデザインについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せて確認してみてください。

【関連記事】知識ゼロでもわかるUIデザイン-基礎知識をプロが徹底解説-

UX改善とは「あなたがモノに触れて感じる経験を改善」する施策

UX改善とは「あなたがモノに触れて感じる経験を改善」する施策

UX(ユーザーエクスペリエンス)改善とは「ユーザーがプロダクトやサービスを通じて得る総合的な体験(UX)をより価値のあるものにする施策」です。具体的には、ユーザーに「使いやすい」「心地良い」「また使いたい」と感じてもらえるような、満足度の高い経験の創出がゴールとなります。

UI改善が見た目や操作性などの「モノ」の側面を扱うのに対し、UX改善はユーザーの感情や思考などの「ヒト」の主観的な心理プロセスや「コト(活動の仕方)」に焦点を当てます。

UXデザインについては以下の記事で詳しく解説していますので、併せて確認してみてください。

【関連記事】【動画あり】UXデザインとは?事例やUIデザインとの違いも紹介

UIデザインとUXデザインの関係性(優れたUXは優れたUIデザインの上に成立する)

優れたUXは多くの場合、優れたUIデザインの上に成り立っています。UIはUXを構成する重要な要素であり、両者は切り離せない関係です。

例えば、どれだけ見た目が洗練されたアプリ(優れたUI)でも、ボタンの配置が分かりづらく目的の機能にたどり着きにくい場合、快適なユーザー体験(優れたUX)とはいえません。

グッドパッチでは「ユーザーの体験満足度が高く維持されるUIデザイン」こそが、優れたUXを実現する要素だと考えています。つまり、接点である「インターフェイスの設計」とユーザーの「体験の設計」を同時に進めることが重要なのです。

UI/UX改善のメリット(4つ)

ユーザー体験の満足度向上を契機にLTVが高まる(=心地よさを感じさせる)
コスト削減に貢献する(=直感的な操作性が実現できる)
売上向上が期待できる(=購入導線の円滑さを高められる)
競合優位性を確立できる(=類似商品との同質化を避けられる)

UI/UX改善に取り組む企業側の目的やメリットを上記4つの観点から解説します。

1.ユーザー体験の満足度向上を契機にLTVが高まる(=心地よさを感じさせる)

UI/UXを改善するメリットの1つ目は「ユーザー体験の向上を契機に顧客生涯価値(LTV)が高まる」ことです。

UI/UXの改善はユーザー体験の向上に直結します。プロダクトやサービスが「使いやすい」「心地よい」と感じられれば、ユーザーはポジティブな感情を抱きやすくなります。

改善が施されたプロダクトやサービスに触れたユーザーは、今まで以上に使いやすさや心地よさを感じやすくなり、結果的にサービスの利用率/継続率が伸びて、結果として「LTV向上」が実現します。

ユーザーの期待を超える体験を提供することができれば、そこからプロダクトへの信頼や愛着が生まれ、「また使いたい」と感じるようになり、リピート利用が生まれることで、LTVの向上につながります。

反対に、ユーザーが「使いにくい」と感じるUI/UXは、ネガティブな口コミやクレームの原因となるため注意が必要です。

2.コスト削減に貢献する(=直感的な操作性が実現できる)

UI/UXを改善するメリットの2つ目は「コスト削減に貢献する」ことです。

ユーザーが直感的に操作でき、迷わず自己解決できるUI/UXの設計が、結果的に無駄なコストの発生を防ぎます。

コスト削減は、主に以下の2つの側面で期待できます。

コストの種類 削減の例
運用コスト プロダクトの操作方法に関する問い合わせが減れば、カスタマーサポート部門の人員や対応工数を削減できる
開発コスト 開発段階でユーザーテストを繰り返し行えば、リリース後の大規模な手戻り(修正作業)を防ぎ、開発費を抑えられる

上記のように「運用と開発の両面からコストに貢献」できる点もUI/UX改善のメリットです。

3.売上向上が期待できる(=購入導線の円滑さを高められる)

UI/UXを改善するメリットの3つ目は「売上向上が期待できる」ことです。

ユーザーが目的を達成するまでの導線をスムーズに整備できれば、購入や契約などのゴールへの到達率(CVR)が高まり、売上につながります。例えば、ビジネスモデルごとに以下のような効果が期待できます。

ビジネスモデル 期待できる効果
ECサイト 商品検索から購入手続きまでの導線が快適であれば、ユーザーの途中離脱を防ぎ、購入率(CVR)の向上につながる
サブスクリプションサービス 快適で価値のある体験を提供し続ければ、解約率が低下し、LTVの向上によって安定した収益基盤を築ける

UI/UX改善による売上への影響は、客観的なデータによっても裏付けられています。特に有名なのが「UXに1ドル投資するごとに、企業は100ドルのリターンを得ることができる」というForrester Research社のレポートです。

1ドルの投資に対し、100ドルのリターンというのは、投資対効果(ROI)に換算すると9,900%に相当します。UI/UX改善が単なる「使いやすさ」の追求ではなく、事業成長に直結する有効な投資であることが分かるでしょう。

4.競合優位性を確立できる(=類似商品との同質化を避けられる)

UI/UX改善をするメリットの4つ目は「競合優位性を確立できる」ことです。

機能はすぐに真似されてしまいますが、UI/UXを通じて創出された独自の「体験価値」は他社に模倣されにくく、競合優位性の確立につながります。

多くのプロダクトで機能が似通ってしまう現代において、ユーザーは機能の優劣よりも「心地よい」「快適だった」などの優れた体験を重視してサービスを選ぶ傾向が強まっています。

価格や機能面での競争から抜け出し、ユーザーに選ばれ続けるための独自の強みを築ける点もUI/UX改善のメリットです。

UI/UXを改善する手順を5ステップで解説

ステップ プロセス 概要
1 UI/UX改善の目的(事業的な意義)の明確化 ・LTV向上・コスト削減・売上向上・競合優位性などから何を重視するか決定する
・最初に目的を定めることで、後のアクションが明確になる
2 対象ユーザーの実態を把握する(探索) ・ユーザーインタビューやアンケートなどの定性・定量調査を活用し、ユーザーの課題やニーズの把握とデータ収集をする
3 As is(現状)を可視化(課題・要求事項の明確化) ・課題や要求事項、ユーザーのペインポイントをチームで共有する
・現状の問題点を客観的に整理する
4 To be(理想状態)の定義・改善案・仮説設計 ・ブレスト等で理想の状態を発想、UI変更や導線設計、カスタマーサポート改善など複数アイデアと、それらの課題解決仮説を立案する
5 検証と改善のサイクル ・プロトタイプやA/Bテストなどで仮説を検証し、効果データに基づいて施策を継続的に改善する
・事業目標への貢献度を客観的に評価する指標になる

ここからはUI/UXの改善方法を上記5つのステップに沿って解説します。

ステップ1:UI/UX改善の目的(=事業的な意義)を明確にする

達成したい目的の例
・LTV向上
・コスト削減
・売上向上
・競合優位性の確立

UI/UX改善のステップ1では「UI/UX改善の目的や事業的な意義」を明確にします。上記4つのUI/UX改善の目的やメリットのうち、どれを達成したいのか決めましょう。

最初にUI/UX改善の目的を明確にできれば、次のステップ以降で「どのユーザーの、どのような課題を理解すべきか」というアクションにつながります。

例えば、目的を「CVRの改善による売上向上」と定めた場合、改善すべき対象範囲が特定され、具体的なタッチポイントが見え始めます。

ステップ2:対象ユーザーの実態を把握する(探索)

課題探索の手法例
・ユーザーインタビュー
・アンケート
・アクセス解析などの定量・定性調査

ステップ2では「改善対象となるユーザーを深く理解する実態把握」を進めていきます。

ステップ2の実態把握は、ユーザーがプロダクトやサービスを利用する上で「何に困り」「何を求めているのか」、そのニーズや課題を明らかにするために重要です。

実態把握のプロセスで得られた客観的なデータやユーザーの声が、以降のUI/UX改善活動の精度を左右する重要な参考材料となります。

ステップ3:As isを可視化する(要求事項の可視化)

ステップ3では「ユーザーの現状(As is)を可視化し『いつ、どこで、なぜ』困難に直面しているのか(ペインポイント)」を明らかにします。

「As is(アズ イズ)」とは、ビジネスで用いられる「ありのままの姿」や「現状」を指す言葉です。ステップ2の「実態把握のための調査結果」をもとに、ステップ3で「発見した課題や背景にあるユーザーの要求をチーム全体で共有できる形に整理・可視化」すれば、改善すべき点が明確になります。

ステップ4:To beの定義・改善案考案および仮説設計

仮説設計のアイデア例
・UIの特定のパーツ変更
・カスタマーサポートの対応マニュアルの改訂
・サービス内でのユーザー導線の抜本的な変更

ステップ4では「現状の課題(As is)が解決された「理想の状態(To be)」を描き、具体的な改善案を立案」します。

ステップ4で重要なのは、単にアイデアを出すだけでなく「この改善を行えば、ユーザーの〇〇という課題が解決され、△△という価値を提供できるはずだ」という仮説を必ず立てることです。

「To be」とはビジネスで用いられる言葉で、「As is(現状)」とのギャップを埋めた先にある理想の状態を指します。

チームでブレインストーミングを行い改善案を検討しますが、その際、すべてのアイデアが「立てた仮説に基づいているかを常に意識する」ことが重要となります。

ステップ5:検証と改善を繰り返す

検証と改善の手法例
・A/Bテストによる効果比較
・プロトタイプを用いたユーザーテスト
・施策リリース後のデータ分析

ステップ5では「検証と改善」を繰り返していきます。ステップ5の目的は、検証と改善のプロセスで得た客観的なデータに基づき、「施策が本当にユーザー体験を向上させ、事業目標の達成に貢献しているのかを評価」します。

UI/UX改善の最後のステップとして、ステップ4で設計した改善案と仮説が正しかったのかを、上記のようなさまざまな手法を用いて検証し、改善を繰り返します。

UI/UX改善に役に立つフレームワークを6つのケースで紹介

6つのケース 活用すべき11のフレームワーク 概要 具体例や主な要素
1. 改善すべき事業指標とは何か? KGI/NSM/KPIツリー 目標をKGI(最終指標)→NSM(核となる中間指標)→KPI(個別指標)に分解し全体ゴールを明確化する ・KGI: 売上
・NSM: 月間アクティブユーザー数
・KPI: 新規訪問者数/購入率/顧客単価
2. 誰のどんな課題をどのような価値で解決するか? ペルソナシート 典型ユーザー像や顧客課題&価値を可視化し、どのニーズにどんな価値を提供するか定義する ペルソナ例: 氏名・職業・興味・悩み
バリュープロポジションキャンバス バリュープロポジション: 顧客の課題×提供価値
3. 今どこにどんな課題が起きているか?(As is) As isカスタマージャーニー ターゲットユーザーの現状体験を可視化し検討のベースとする 行動・思考・感情・タッチポイント
As isサービスブループリント 個人の体験と価値提供に必要なプロセスや仕組みを可視化し課題抽出や改善点発見の出発点となる 従業員の裏側業務も可視化
4. どのような価値で課題を解決するか?(To be) To beカスタマージャーニー 理想状態(To be)を描き課題解決策を具体化する パーソナライズ推薦や自動化による業務短縮
To beサービスブループリント 理想状態の価値提供プロセスを可視化し、どこで課題が発生する可能性があるか、どこのオペレーションを磨き込むべきかを可視化し、打ち手に繋げる 新サービスの価値フィット再確認
5. どのようなUIで改善するか?(解決策設計) ストーリーボード UIや画面遷移・使い方を可視化・疑似体験できる形に落とし込むことでUIデザイン方針や要件のブレ防止する 漫画形式シナリオ/実際の行動フロー/簡易試作品で操作感検証
ユーザーシナリオ
プロトタイプ
6. インターフェイスが使いやすいか? 10ヒューリスティックス UI/UXがユーザビリティ原則を満たしているか10項目で評価し、根本的な改善ポイントを漏れなく発見する システム状態の可視化、現実との一致、コントロールの自由、美的/シンプル、エラー防止など計10項目

ここからは、UI/UX改善に役立つフレームワークを上記6つのケース別に、全部で11種類紹介していきます。

「改善すべき事業指標」の検討で活用できるUI/UX改善フレームワーク

KGI/NSM/KPIツリー

KGI/NSM/KPIツリー(「改善すべき事業指標」の検討で活用できるUI/UX改善フレームワーク)

各指標 分解例
KGI 売上
NSM 月間アクティブユーザー数
KPI 新規訪問者数/購入率/顧客単価

KGI/NSM/KPIツリーは「プロダクトメトリクスを設計し、事業目標を具体的な指標に分解・整理するためのフレームワーク」です。

改善の成果を客観的に評価するためには、目標達成度を測るための指標「プロダクトメトリクス」の設計が欠かせません。

事業全体の最終目標であるKGI(重要目標達成指標)を頂点に起き、目標を達成するための中間指標であるNSM(ノーススターメトリック)やKPI(重要業績評価指標)をツリー上に分解していきます。

KGI/NSM/KPIツリーを用いるメリットは、UI/UX改善が最終的にどの事業指標に貢献するのかのつながりが可視化される点です。

例えば「売上(KGI)を上げる」という目標に対し「どのKPIを改善すべきか」という具体的なアクションプランが明確になるため、チーム内での認識を揃えたり、施策の優先順位を判断したりする際に役立ちます。

なお「KGI/NSM/KPIツリー」の設定方法を詳しく紹介している以下の記事も併せてご覧ください。

【関連記事】PdMなら知っておきたい、プロダクトの評価指標 KGI、NSM、KPIをつなぐ「メトリクスツリー」作成の4ステップ

「誰のどんな課題をどのような価値で解決するのか(As is)」の検討で活用できるUI/UX改善フレームワーク

・ペルソナシート
・バリュープロポジションキャンバス

次に紹介するのは、改善の対象となるユーザーが抱える課題(As is)をどのような価値で解決するか検討するケースで活用できる上記2つのフレームワークです。

ペルソナシート

ペルソナシート

ペルソナシートとは「プロダクトやサービスを利用するユーザー像を、架空の人物として具体的に描くフレームワーク」です。

ペルソナシートを作成する際は、氏名、年齢、職業といった基本情報だけでなく、価値観やITリテラシー、ライフスタイル、抱えている悩みなどを詳細に落とし込んでいきます。

このペルソナシートをチームで共有すれば「この人ならどう感じるか?」という一貫したユーザー視点が生まれ、意思決定のブレを防ぎます。

なお、ペルソナシートの作成方法については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】ペルソナとは?よりリアルなユーザー像を作り上げる具体的な作成方法

バリュープロポジションキャンバス

バリュープロポジションキャンバス

提供価値側(応えるもの) ・課題を和らげるもの
・利得をもたらすもの
・プロダクト・サービス
顧客側(顧客が持つもの) ・解決したい課題
・得たいこと
・顧客のジョブ

バリュープロポジションキャンバスとは「提供価値(Value Proposition)と顧客(Customer Profile)の2つの側面から、両者のフィットを検証するフレームワーク」です。

バリュープロポジションキャンバスを作成するには、上記のように提供価値側と顧客側双方の立場で課題を洗い出します。両者を突き合わせることで、自社の提供価値が本当に顧客のニーズに応えられているかを客観的に評価し、改善の方向性を定めやすくなります。

なおバリュープロポジションキャンバスの重要性や作り方を以下の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。

【関連記事】バリュープロポジションキャンバスとは?作り方と事業の提供価値を導き出す重要性

「今それに対してどこにどんな課題が起きているか?(As is)」の検討で活用できるUI/UX改善フレームワーク

・As isカスタマージャーニー
・As isサービスブループリント

次に、As isカスタマージャーニーとAs isサービスブループリントという「ユーザーの現状の課題(As is)を可視化し、課題の抽出をするケースで活用できるフレームワーク」を2つ紹介します。

As isカスタマージャーニー

As isカスタマージャーニー

各ステップで書き出すユーザー体験
・行動
・思考
・感情
・タッチポイント(プロダクトやサービスとの接点)

As isカスタマージャーニーとは「購入するまでの一連の体験を時系列で可視化するためのフレームワーク」です。As isカスタマージャーニーは例えば、ペルソナがプロダクトやサービスを認知してから興味を持って購入を検討する一連の体験を可視化するのに便利です。

「ポジティブやネガティブな感情の起伏グラフ」を記述することで、体験が大きく損なわれている課題点(ペインポイント)が直感的に発見でき、サービス改善の優先順位付けに役立ちます。

ユーザーの現状を把握する必要性やカスタマージャーニーマップ作成方法について詳しく紹介した以下の記事も併せてご覧ください。

【関連記事】カスタマージャーニーマップが必要な理由とは?目的と作り方

As isサービスブループリント

As isサービスブループリント

As isサービスブループリントは「ユーザーの行動だけでなく、価値提供を支える裏側の業務プロセスまでを可視化するフレームワーク」です。

ユーザーの行動(表舞台)だけでなく、従業員の行動(裏舞台)やサポートシステムなどを時系列で記述するのがAs is サービスブループリントの特徴です。

特に複数の部署が関わるBtoBサービスなど、複雑な提供プロセスの問題点を発見する際に有効です。

サービスブループリントについては、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

【関連記事】サービスリニューアルする際、チームでユーザー体験を向上させるためのサービスブループリント

「その課題をどのような価値で解決するか?(To be)」の検討で活用できるUI/UX改善フレームワーク

・To beカスタマージャーニー
・To beサービスブループリント
・バリュープロポジションキャンバス(課題と価値のフィット確認)

4つ目のケースとして、「発見した課題を解決するために提供する価値や、解決方法を検討する場合に活用できるフレームワーク」を3つ紹介します。

To beカスタマージャーニー

To beカスタマージャーニーは「As isカスタマージャーニーで特定した課題(ペインポイント)を解決する改善策を盛り込み、理想的な顧客体験(To be)を再設計したフレームワーク」です。

例えば「商品の探しにくさ」が現状の課題(As is)であれば、Tobeジャーニーでは「パーソナライズされたレコメンド機能によって、欲しい商品がすぐに見つかる」といった理想の状態(To be)を描きます。

To beカスタマージャーニーを再設計できれば、UI/UX改善後のゴールイメージをチームで共有し、施策の設計図として活用できるでしょう。

To beサービスブループリント

To beサービスブループリント

To beサービスブループリントは「As is サービスブループリントで明らかにした課題に対し、業務プロセスの改善も含めたサービス提供のプロセスを再設計するためのフレームワーク」です。

ユーザー体験の向上はもちろん、業務効率化や部門間連携の円滑化といった視点も加えて改善策を検討します。

例えば「申請手続きに時間がかかる」という課題(As is)に対し、「オンライン申請システムの導入と承認フローの自動化によって手続きが即日完了する」といった理想のプロセス(To be)を描きます。

To beサービスブループリントまで行えば表面的なUI/UX改善だけでなく、顧客の課題にフィットする価値提供を目指せるでしょう。

バリュープロポジションキャンバス(課題と価値のフィット確認)

バリュープロポジションキャンバスとは、「企業が提供する価値(Value Proposition)と「顧客が求めるもの(Customer Profile)の2つの側面を可視化し、両者が合致しているかを検証するためのフレームワーク」です。

考案した解決策や機能が、本当に顧客の課題(Pains)を解消し、顧客が得たいこと(Gains)を実現できるのかを確認します。

バリュープロポジションキャンバスに再度当てはめて検証すると、開発者の思い込みによる機能実装を防ぎ、ユーザーにとって真の価値のある改善であるかを確かめられます。

「それをどのようなUIで改善するか?(解決策設計)」の検討で活用できるUI/UX改善フレームワーク

・ストーリーボード
・ユーザーシナリオ
・プロトタイプ

次に紹介するのは、「ユーザーにとって理想の体験をどのようなインターフェイスでUIを改善していくか検討するケースで活用できる3つのフレームワーク」です。

ストーリーボード

ストーリーボード-「それをどのようなUIで改善するか?(解決策設計)」の検討で活用できるUI/UX改善フレームワーク

ストーリーボードは「ユーザーが特定の状況でプロダクトをどのように利用し、どのような体験を得るのかを、イラストなどを用いて「漫画のコマ割り」のように表現するフレームワーク」です。

テキストだけでは伝わりにくい利用シーンの背景やユーザーの感情を視覚的に共有できます。
さらにチーム内での認識齟齬を防ぎ、UIデザインの方向性を固めるのに役立ちます。

ユーザーシナリオ

ユーザーシナリオとは「『誰が(ペルソナ)』、『どのような状況で』、『何を達成するために』、『どのように行動するか』を具体的なストーリーとして文章で記述するフレームワーク」です。

ユーザーシナリオを満たすために必要な画面や機能を洗い出すことで、機能要件の定義や、後のユーザビリティテストでユーザーに依頼するタスクを設計する際などに活用できます。

プロトタイプ

プロトタイプ

プロトタイプは「プロダクトのUIデザインや画面遷移、操作感を実際に確認できる簡易的な試作品」です。なお、試作品を作ってリリース前にプロダクトを検証することを「プロトタイピング」といいます。

プロトタイプには手書きで作る紙芝居のような「ペーパープロトタイプ」から、FigmaやAdobe XDといったデザインツールで作成して操作が可能な「インタラクティブプロトタイプ」までさまざまな形があります。

本格的なプロダクトの開発に着手する前にユーザーに触れてもらえば、ユーザビリティ上の問題点を早期に発見し、コストのかかる手戻りを防げるでしょう。

なお、プロトタイプを作成する重要性やプロトタイピングのメリットや実施するポイントについて詳しく解説している以下の記事も併せてご覧ください。

【関連記事】プロトタイピングとは?実践事例や効果的に取り組むポイントを紹介

「価値提供しようとした時、インターフェイスが使いやすいものになっているか?」の検討で活用できるUI/UX改善フレームワーク

最後に紹介するのは、設計したUIがユーザビリティの原則を満たしているかを評価するケースに活用できる「10ヒューリスティックス」というフレームワークです。

10ヒューリスティックス

10ヒューリスティックスは「ユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセン博士が提唱した、優れたUIを設計するための以下10の経験則からなるフレームワーク」です。

No. 経験則(日本語/英語) 概要 具体例
1 システム状態を可視化する/Visibility of System Status 現在の状況や進捗をユーザーに分かりやすく表示する ファイルアップロード時の進捗バー
2 システムと現実を一致させる/Match between System and the Real World 慣れ親しんだ言葉・概念・表現で設計する ゴミ箱アイコンで削除操作を表現
3 ユーザーにコントロールの自由を提供する/User Control and Freedom 誤操作時も簡単に取り消しや戻るができるようにする 買い物かごの商品を「元に戻す」ボタンで復元可能
4 一貫性と標準性を担保する/Consistency and Standards サービス内の動作や表現を一貫させ直感的な操作を可能にする どの画面でも同じ場所に「ヘルプ」ボタンを配置
5 エラーを防止する/Error Prevention 操作ミスを未然に防ぐ設計を行う 二重登録防止のためにボタンを二度押しできないよう制御
6 記憶に頼らない設計にする/Recognition Rather Than Recall 必要な情報は常に画面に示し、記憶に頼らず直感的に操作できるようにする 最近検索したワードが自動入力候補に表示される
7 操作の柔軟性と効率性を実現する/Flexibility and Efficiency of Use 新旧ユーザーともに使いやすいショートカットやカスタマイズで効率的な操作を促す キーボードだけで完結できるナビゲーション
8 美的かつシンプルなデザインにする/Aesthetic and Minimalist Design 情報や表現を過度にせず必要最小限のシンプルなデザインにする 余計なバナーやポップアップを排除したダッシュボード画面
9 エラーを認識・診断・回復できる/Help Users Recognize, Diagnose, and Recover from Errors エラー内容を分かりやすく伝え、ユーザーが自力で解決できるようにする 入力ミスに対し「メールアドレスの形式が違います」と表示
10 ヘルプとマニュアルを用意する/Help and Documentation 迷った際に参考になるヘルプやマニュアルを分かりやすく用意する 操作手順の動画チュートリアルへのリンク

これらの原則に沿ってUIを評価する「ヒューリスティック評価」やセルフチェックを行えば、ユーザビリティ上の問題を効率的に発見・改善できるでしょう。

UI/UX改善のポイント(チェックリスト36)

UX全体設計におけるUI/UX改善ポイント7つ(人間中心設計ベース)
UX体験品質におけるUI/UX改善ポイント7つ(ジャーニー&行動設計)
UI設計チェックにおけるUI/UX改善ポイント7つ(構造・ラベル・配置)
UIインタラクション・操作性チェックにおけるUI/UX改善ポイント7つ
ユーザー支援・ヘルプにおけるUI/UX改善ポイント4つ
検証・運用視点チェックにおけるUI/UX改善ポイント4つ

ここでは36のUI/UX改善のポイントをチェックリスト形式でご紹介します。UI/UX改善の参考資料としてください。質の高いUI/UX改善を実現するためには「多角的な視点から現状を評価し、改善点を見つけ出すこと」が重要です。

ではここから、実践で役立つ36のチェックポイントについて6つのカテゴリーごとにそれぞれご紹介します。

UX全体設計におけるUI/UX改善ポイント7つ(人間中心設計ベース)

UX全体設計におけるUI/UX改善ポイント7つ(人間中心設計ベース)
ユーザーの目的・文脈が明確か?
ビジネス要求とユーザー要求のバランスが取れているか?
UXゴールが定義されているか?
ユーザージャーニーが可視化されているか?
ユーザーの感情や不安を拾えているか?
プロトタイピングで早期に検証しているか?
定性(ユーザビリティテスト)と定量(ログ分析)で検証できているか?

人間中心設計(HCD)の思想に基づき、UX戦略の根幹がしっかりしているかを確認します。

【関連記事】UXデザイナーが理解しておきたい6つのキーワード

ユーザーの目的・文脈が明確か?

誰が、どのような状況や環境でサービスを利用するかを明確に定義できているかを確認します。

具体的なユーザー像である「ペルソナ」を設定し、その人の目的や利用文脈をチーム全体で共有しておくことで、一貫した体験設計の基盤となります。

ビジネス要求とユーザー要求のバランスが取れているか?

事業的な目標(KPI)の達成と、ユーザーの快適な体験を両立させるバランスが必要です。

例えば広告収入を増やしたいからといって、ユーザーの操作を妨げるような広告を多用しては本末転倒です。双方にとって価値のある接点を探しましょう。

UXゴールが定義されているか?

プロダクトを通じてユーザーに「どのような状態になってほしいか」というUXゴールを定義できているでしょうか。

例えば「買い物を時短でき、自由な時間が増える」といったゴールを設定し、ゴールの達成度を測る指標として継続率や利用頻度などを定めましょう。

ユーザージャーニーが可視化されているか?

ユーザーがサービスに出会う前から利用後までの一連の体験を「ユーザージャーニー」として可視化できているか確認しましょう。

改善によって利用前(Before)と利用後(After)でユーザーの行動や感情がどう変化するかの設計が重要です。

ユーザーの感情や不安を拾えているか?

ユーザーが体験中に抱くであろう「このボタンを押して大丈夫か?」「入力内容が複雑すぎる」などの疑問や心理的なハードルを事前に予測し、取り除く工夫ができているでしょうか。

ユーザーの不安に寄り添うことで、信頼感の醸成を目指しましょう。

プロトタイピングで早期に検証しているか?

いきなり完璧なデザインを作ろうとせず、ワイヤーフレームやプロトタイプを作成し、早期に体験を検証することが重要です。

手戻りを最小限に抑え、効率的に改善サイクルを回せます。

定性(ユーザビリティテスト)と定量(ログ分析)で検証できているか?

立てた仮説が正しかったかを検証する仕組みはありますか。

ログ分析の「定量データ」で利用状況の事実を把握したり、ユーザビリティテストの「定性データ」でその背景にある理由を探ったりする分析体制が不可欠です。

定量と定性の両輪で検証と改善を繰り返しましょう。

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UX体験品質におけるUI/UX改善ポイント7つ(ジャーニー&行動設計)

UX体験品質におけるUI/UX改善ポイント7つ(ジャーニー&行動設計)
ユーザーの目的達成まで最短であるか?
離脱しそうなポイントにガイドや補助があるか?
認知負荷を減らしているか?
感情設計(安心感・達成感)を意識しているか?
初回利用とリピーターで体験を最適化しているか?
ユーザーの文脈(時間・場所・環境)に合っているか?
継続利用を促す要素があるか?

ユーザーが目的を達成するまでの道のりが、快適で質の高いものであるかを確認します。

ユーザーの目的達成まで最短であるか?

ユーザーが目的を達成するまでの操作ステップは最小限になっていますか。

不要な画面遷移や入力項目を削ぎ落とし、ユーザーを最短距離でゴールに導けば、ストレスのない快適な体験を提供でき、離脱率の低下にもつながります。

離脱しそうなポイントにガイドや補助があるか?

ユーザーが迷ったり、操作をためらったりしそうな箇所を予測し、適切なガイドを配置できていますか。

次に取るべき行動をそれとなく示す「アフォーダンス」を意識したデザインや、補足説明を配置しておき、スムーズな操作を促しましょう。

認知負荷を減らしているか?

一度に多くの情報や選択肢を提示すると、ユーザーは「どれを選べばいいか分からない」と混乱し、思考を止めてしまいます。

情報を整理し、タスクに関係のない要素は隠すようにして、ユーザーの認知的な負担を減らす工夫を施しましょう。

感情設計(安心感・達成感)を意識しているか?

サービスを「使いやすい」だけでなく「使っていて心地よい」と感じてもらうための感情面の設計も大切です。

操作完了時に表示されるポジティブなメッセージや、目標達成までの進捗表示など、ユーザーのモチベーションを高める演出が効果的です。

初回利用とリピーターで体験を最適化しているか?

サービスの習熟度に応じて、最適な体験を提供できているでしょうか。

初めてのユーザーには丁寧なオンボーディングを用意し、慣れたリピーターには、よく使う機能へのショートカットや入力履歴の活用など、効率的な工夫が求められます。

ユーザーの文脈(時間・場所・環境)に合っているか?

ユーザーが利用する状況はさまざまです。

例えば、移動中のスマートフォンでの利用や、暗い寝室での利用なども想定し、どのような文脈でもストレスなく使えるデザインになっているかを確認しましょう。

文字サイズや画面の配色なども配慮すべきポイントです。

継続利用を促す要素があるか?

一度利用して終わりではなく、再びサービスを使ってもらうための仕組みはありますか。

新着情報の通知や、利用状況に合わせたパーソナライズされたコンテンツの表示など、ユーザーとの関係性を維持し、再訪を促すきっかけ作りが重要です。

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UI設計チェックにおけるUI/UX改善ポイント7つ(構造・ラベル・配置)

UI設計チェックにおけるUI/UX改善ポイント7つ(構造・ラベル・配置)
情報の優先順位が視覚的に整理されているか?
動線が自然な視線・操作で誘導されるか?
ラベル・文言がユーザーの語彙と一致しているか?
情報の構造(IA)が論理的・直感的に整理されているか?
ナビゲーションが一貫性を持って設計されているか?
レイアウト・色・フォントが統一されているか?
重要な操作は強調され、誤操作しづらくなっているか?

画面上の情報が論理的に整理され、直感的に理解できるかを確認します。

情報の優先順位が視覚的に整理されているか?

ユーザーに最も見てほしい、あるいは使ってほしい要素が、しっかり目立っているでしょうか。

情報の重要度に応じてサイズ、色、配置などを工夫し、視覚的な階層を作ることで、ユーザーは瞬時にどこに注目すべきかを理解できるようになります。

動線が自然な視線・操作で誘導されるか?

ユーザーの視線や指の動きを考慮し、無理なく自然に操作できるフローになっていますか。

人の視線が動きやすいとされる「Z型」や「F型」のレイアウトを意識するなど、直感的な操作感を実現すると、学習コストを下げられます。

ラベル・文言がユーザーの語彙と一致しているか?

メニュー名やボタンのラベルに、開発者側の都合で生まれた専門用語や社内用語を使っていませんか。

ターゲットユーザーが普段使っている、なじみのある言葉で表現し、機能の意味を誤解なく伝えましょう。

情報の構造(IA)が論理的・直感的に整理されているか?

サイトやアプリ全体の情報の構造(IA:インフォメーションアーキテクチャ)は、ユーザーにとって分かりやすいでしょうか。

関連性の高い情報が適切にグループ化され、メニューやカテゴリが論理的に整理されていると、目的の情報への辿り着きやすさが向上します。

ナビゲーションが一貫性を持って設計されているか?

グローバルナビゲーション(主要メニュー)の項目やデザインが、どのページを開いても同じ位置に同じように表示されていますか。

一貫したナビゲーションは、ユーザーが「今どこにいるのか」を把握する手助けとなり、安心感を与えます。

レイアウト・色・フォントが統一されているか?

サイト全体でデザインのルールは統一されていますか。

「決定」ボタンは常に緑色「キャンセル」は常にグレーなど、同じ意味を持つ要素に同じ表現を用いましょう。

表示されている情報の意味を素早く理解でき、直感的に操作できます。

重要な操作は強調され、誤操作しづらくなっているか?

購入や登録といった主要な操作(プライマリーアクション)のボタンは目立たせましょう。

一方で、キャンセルやリセットといった副次的な操作(セカンダリーアクション)は控えめにデザインし、区別します。

明確に区別されているとユーザーの誤操作が減り、ゴールへ導きやすくなります。

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UIインタラクション・操作性チェックにおけるUI/UX改善ポイント7つ

UIインタラクション・操作性チェックにおけるUI/UX改善ポイント7つ
ボタン・リンクのサイズは十分でタップしやすいか?
状態変化(押した・完了・エラー)が明確か?
現在のシステム状態がユーザーに見えているか?
間違ってもリカバリーできる設計になっているか?
入力エラーが起きる前に防止されているか?
エラー時の表示は明確で、解決策も提示しているか?
ユーザー補助(アクセシビリティ)に配慮しているか?

ユーザーのアクションに対して、システムが適切に反応し、スムーズな対話を促せているかを確認します。

ボタン・リンクのサイズは十分でタップしやすいか?

特にスマートフォンでの利用において、ボタンやリンクが小さすぎて押し間違えてしまうことはありませんか。

指で正確にタップできる十分なサイズと、要素間の余白を確保し、操作時のストレスを軽減しましょう。

状態変化(押した・完了・エラー)が明確か?

ボタンを押したとき、情報の読み込み中、操作が完了したときなど、システムの状況が変化したことがユーザーに明確に伝わっていますか。

色の変化やアニメーション、メッセージ表示など、視覚的なフィードバックで状態変化を伝えましょう。

現在のシステム状態がユーザーに見えているか?

ユーザーを不安な待ち時間から解放するために、システムが今何をしているのかの可視化が重要です。

データの読み込み中にはローディングアニメーションの表示がおすすめです。現状を伝えるとユーザーは安心して待つことができます。

間違ってもリカバリーできる設計になっているか?

ユーザーは誰でも間違いを犯す可能性があります。

「一つ前に戻る」機能や「操作を取り消す」機能を用意し、間違えても簡単に元の状態に復帰できる設計にしておけば、安心して機能を試してもらえます。

入力エラーが起きる前に防止されているか?

エラーは起きてから知らせるのではなく、そもそも起きないように予防する工夫が大切です。

例えば、電話番号入力欄では数字しか受け付けないようにしたり、入力形式の例を示したりしておけば、ユーザーの入力ミスを未然に防げます。

エラー時の表示は明確で、解決策も提示しているか?

万が一エラーが発生した場合、単に「エラーが発生しました」と表示するだけでは不親切です。

「パスワードは8文字以上で入力してください」のように、何が問題で、どうすれば解決できるのかを具体的に示しておくと、ユーザーが次にとるべき行動を理解できます。

ユーザー補助(アクセシビリティ)に配慮しているか?

高齢者や障がいを持つ方など、多様なユーザーが問題なく利用できる設計になっていますか。

十分な文字と背景のコントラストを確保したり、スクリーンリーダー(音声読み上げソフト)に対応したりと、アクセシビリティへの配慮は不可欠です。

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ユーザー支援・ヘルプにおけるUI/UX改善ポイント4つ

ユーザー支援・ヘルプにおけるUI/UX改善ポイント4つ
操作中の文脈に沿ったヒントがあるか?
ユーザー自身が自己解決しやすい設計になっているか?
操作後のフィードバックが十分か?
サポートへの導線を迷わずに辿れるか?

ユーザーが困ったときに、自力で解決できるような手助けが用意されているかを確認します。

操作中の文脈に沿ったヒントがあるか?

ユーザーがまさに操作しているその場で、必要なヒントを提示できていますか。

入力フォームのプレースホルダー(入力例)や、複雑な項目の横にある「?」アイコンなど、文脈に応じた適切なヘルプは、ユーザーの疑問をその場で解消します。

ユーザー自身が自己解決しやすい設計になっているか?

問い合わせをする前に、ユーザー自身が問題を解決できる仕組みは用意されていますか。

「よくある質問(FAQ)」やチュートリアル、詳細なマニュアルなどを整備しておけば、ユーザーが自分のペースで疑問を解消でき、サポート部門の負担軽減にもつながります。

操作後のフィードバックが十分か?

フォームの送信後や商品の購入後など、ユーザーのアクションが完了した際に、それが正常に受け付けられたことを明確に伝えていますか。

「登録が完了しました」といった完了メッセージやアニメーションは、ユーザーに安心感を与えるため、可能な限り用意しましょう。

サポートへの導線を迷わずに辿れるか?

FAQなどを見ても問題が解決しない場合に、問い合わせ先に迷わず辿り着けるようになっていますか。

ヘッダーやフッターなど、どのページからでもアクセスしやすい場所に「お問い合わせ」や「ヘルプ」へのリンクを設置しておきましょう。

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検証・運用視点チェックにおけるUI/UX改善ポイント4つ

検証・運用視点チェックにおけるUI/UX改善ポイント4つ
A/Bテストやヒートマップなどで効果測定しているか?
定性テスト(ユーザビリティテストなど)を実施しているか?
ログデータでユーザーの離脱ポイントを把握しているか?
カスタマーサポートの声をデザインに還元しているか?

一度改善して終わりではなく、継続的に改善サイクルを回すための仕組みがあるかを確認します。

A/Bテストやヒートマップなどで効果測定しているか?

デザインの変更が本当に良い結果をもたらしたのかを、データに基づいて判断する仕組みはありますか。

A/Bテストで複数の案を比較したり、ヒートマップでユーザーの行動を可視化したりと、客観的なデータに基づいた改善サイクルを回しましょう。

定性テスト(ユーザビリティテストなど)を実施しているか?

良いサービスには、数値データだけでは分からない「なぜユーザーはここで離脱するのか?」といった行動の背景を探ることが不可欠です。

実際のユーザーにサービスを操作してもらう「ユーザビリティテスト」を定期的に実施し、生の声を得る機会を作りましょう。

ログデータでユーザーの離脱ポイントを把握しているか?

Google Analyticsなどの分析ツールを導入し、ユーザーがどのページでサイトを去ってしまうのか、どの機能を使っていないのかといったデータを取得・分析できていますか。

データから課題のある箇所を特定し、改善の優先順位付けに生かします。

カスタマーサポートの声をデザインに還元しているか?

カスタマーサポートに日々寄せられるユーザーの声(VOC:Voice of Customer)は、改善のヒントの宝庫です。

定性的な情報を収集・分析し、プロダクト開発やデザインチームにフィードバックする仕組みを構築しましょう。

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UI/UXを改善する際の6つの注意点

・改善すべき事業指標を定義できているか?
・現状の課題仮説を可視化できているか?
・専門知識が不足していないか?
・リサーチ結果を活用しきれているか?
・費用対効果を考慮しきれているか?
・継続的な改善を行える環境であるか?

UI/UX改善は効果的な取り組みですが、進め方を誤ると期待した成果が得られない可能性があります。UI/UX改善のプロセスで注意すべき上記6つのポイントを解説します。

1.改善すべき事業指標を定義できているか?

UI/UX改善で注意すべきことの1つ目は「改善すべき事業指標を定義できているか?」を確認することです。

例えば「売上10%向上」や「解約率5%削減」など、改善の目的となる事業指標(KGI/KPI)を明確にしましょう。

指標が曖昧なままでは、施策の優先順位付けや効果検証が正しく行えず「何となく使いやすくなった」という主観的な成果で終わってしまう可能性があります。

最初に事業指標や目的であるゴールを定めておけば、チームの方向性が統一され投資対効果を客観的に測定可能です。

2.現状の課題仮説を可視化できているか?

UI/UX改善で注意すべきことの2つ目は「現状の課題仮説を可視化できているか?」を確認することです。

「きっとここが使いにくいはずだ」という担当者の思い込みや感覚だけで改善を進めるのは危険です。

Googleアナリティクスなどの定量データ分析や、ユーザーインタビュー、ヒートマップ分析といった定性・定量調査に基づいて「客観的な事実」から課題や仮説を検討しましょう。

またカスタマージャーニーマップなどで現状の課題を可視化し、チーム全体で「なぜここが課題なのか」という共通認識を持つプロセスが施策の精度を左右するでしょう。

3.専門知識が不足していないか?

専門知識が必要となる要素
・ビジネスデザイン(戦略立案、ビジネスモデル・キャンバス、バリュープロポジションなど)
・フィールドリサーチ(エグゼクティブ・ユーザーインタビュー、エスノグラフィー調査など)
・分析(市場調査、競合分析、アナリティクス分析、ヒューリスティック分析など)
・ユーザーテストの計画・実施
・ペルソナ、ユーザーニーズの定義
・ストーリーボード、カスタマージャーニーマップの作成
・ワークショップ・デザインスプリントの計画、実施
・プロトタイピング

UI/UX改善で注意すべきことの3つ目は「専門知識が不足していないか?」を確認することです。

UI/UXデザインは、センスや感覚だけでは成り立ちません。UI/UXデザインの改善には、上記のような多岐にわたる専門知識とスキルが必要です。

チーム内に上記のような知見やスキルが不足している場合、表面的なデザイン変更となってしまい、本質的な課題解決ができない可能性があります。

UI/UXの改善で成果を出すためには、外部の専門家や専門企業の協力を得る判断も必要です。

ただし外部に支援を依頼する場合でも、自社の事業課題やターゲットユーザーについて深く理解し、丸投げをしない姿勢が重要です。

以下の記事で、特にUXデザインのコンサルティング支援を行う会社を紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】UXデザインに強いコンサル・支援会社5選!依頼するメリットや選定時のポイントも紹介

4.リサーチ結果を活用しきれているか?

UI/UX改善で注意すべきことの4つ目は「リサーチ結果を活用しきれているか?」を確認することです。

時間と労力をかけてユーザーリサーチを行っても、その結果が活用されていなければ意味がありません。

リサーチで得られた発見やインサイトを、具体的なデザイン要件や改善施策に落とし込み、次のアクションにつなげるプロセスが重要です。

リサーチ結果を分析し、レポートにまとめるだけでなくチーム全体で共有し、次のアクションにつながる仕組みを構築しながら進めましょう。

5.費用対効果を考慮しきれているか?

UI/UX改善で注意すべきことの5つ目は「費用対効果を考慮しきれているか?」を確認することです。

UI/UX改善への投資はビジネス上のリターンを考慮して行うべきです。UI/UXの改善施策を検討する際には、その実装にかかる開発コストや時間と、改善によって得られる売上向上やコスト削減などの費用対効果を評価しておきましょう。

また、発見された複数の課題を一度に取り組むのではなく、費用対効果が高い施策から実行する戦略的な判断も必要です。

6.継続的な改善を行える環境であるか?

UI/UX改善で注意すべきことの6つ目は「継続的な改善を行える環境であるか?」を確認することです。

UI/UX改善は一度実施すれば完了するプロジェクトではありません。市場環境や競合の動向、ユーザーのニーズは常に変化するため、プロダクトやサービスも市場環境の変化に合わせて進化し続ける必要があります。

そのため改善後のリリースをゴールと捉えず、ユーザーからのフィードバックを継続的に収集し、改善のサイクルを回し続ける環境づくりが大切です。

組織的な文化と体制の構築こそが、長期的な成功と競争優位性の確保につながります。

UI/UX改善の事例(グッドパッチの支援事例のご紹介)

ここからはデザインファームにおけるパイオニアであるグッドパッチが支援したUI/UX改善の事例を3つ紹介します。

会社名 概要
サントリー食品インターナショナル 健康習慣サポートアプリ開発で、プロトタイプを用いたUXデザインで顧客体験を向上
弥生 Webサイトのサービスページリニューアルで、PV数とCVRの大幅改善を実現
ジンズホールディングス ユーザー調査に基づくUXデザインで、顧客満足度向上、店舗とアプリの連携を実現

サントリー食品インターナショナル

サントリー食品インターナショナル(UI/UX改善の事例(グッドパッチの支援事例のご紹介))
出典:SUNTORY+(グロース)|導入社数1,200社突破を支えた、包括的なサービスグロース支援

はじめに紹介するのは、サントリー食品インターナショナル株式会社が提供するヘルスケアアプリ「SUNTORY+」において、リリース後のグロース課題に対する支援を実施したUI/UX改善事例です。

「SUNTORY+」の主な課題は「ユーザーの継続利用と導入企業の拡大」でした。

グッドパッチはユーザー向けアプリの体験価値向上はもちろん、導入企業の管理者が利用する管理画面のUI/UX改善にも着手しました。

さらに組織内にデザイン思考を根付かせるための「UXマスタ」の作成や、事業の成長を見据えたロードマップの策定も支援するなど、プロダクトと組織の両面でアプローチを実施しています。

支援後はアプリを導入する企業数が1,200社を突破し、サントリー社内のソフトウェアプロダクトの立ち上げが活性化するなどサービスのグロースだけではなく、社内文化の醸成にも貢献した事例です。

サントリー食品インターナショナルのプロジェクトについて詳しくは、下記の資料をダウンロードしてご覧ください。

【関連記事】「まず作ってみる」が前進の鍵。サントリーとGoodpatchが共創するSUNTORY+開発ストーリー【前編】

弥生

弥(UI/UX改善の事例(グッドパッチの支援事例のご紹介))
出典:弥生|PV数とCVRが大幅改善したWebサイトリニューアル

次に紹介するのは、会計ソフトで知られる弥生株式会社のウェブサイトリニューアルを支援したUI/UX改善事例です。

弥生株式会社が提供する「弥生会計 オンライン」では、UI/UXの観点で、ユーザーの声を活用したウェブサイトデザインとサービスデザインの見直しを図りたいという課題がありました。これまでも数値分析を中心とした改善活動が行われていましたが、サイトが抱える本質的な課題の特定には至っていませんでした。

そこで、グッドパッチによるUI/UXフィードバックやユーザーインタビューを実施し、ユーザーの深層心理や行動の背景にある課題を抽出。その結果に基づきユーザーの状況や目的に応じたサイト回遊の設計見直しとコンテンツを強化しました。

このUI/UX改善によってサイトのPV数とCVRの大幅な向上に成功。さらにプロジェクトで得られた知見やプロセスは組織の資産として標準化され、他部署にも活用されるなど、組織全体のデザイン文化の醸成にもつながりました。

弥生のプロジェクトについて詳しくは、下記の資料をダウンロードしてご覧ください。

【関連記事】クラウド時代の「弥生」へ進化、グッドパッチとタッグを組んだWebサイトリニューアル

ジンズホールディングス

弥(UI/UX改善の事例(グッドパッチの支援事例のご紹介))
出典:JINS|店舗とアプリケーションが連動するOMOの体験デザイン

株式会社ジンズホールディングスが提供する「JINS」公式アプリのリニューアルをUI/UX改善の観点から支援し、店舗とアプリをシームレスに連携させたOMO(Online Merges with Offline)体験の設計を行いました。

グッドパッチではまず顧客インタビューを徹底的に行い、ユーザーの潜在的なニーズや不満点を洗い出すことから始めました。

インサイトを基にUIを全面的に刷新し、ユーザーが能動的に情報を探さなくても、欲しい情報が自然と得られるような受動的な体験設計を構築。その結果、アプリリニューアル後には、AppStore評価は2.1から4.6へと劇的に向上したのです。

この事例ではUIの改善に留まらず継続的なリニューアルを進めるための指針となるUI設計思想や、デザインガイドライの策定も行い、長期的に一貫性のあるシームレスな顧客体験を提供するための土台を築き上げました。

ジンズホールディングスのプロジェクトについて詳しくは、下記の資料をダウンロードしてご覧ください。

UI/UX改善で「ユーザーとビジネスの成功体験」をデザインしよう!

本記事では、UI/UX改善の基本的な考え方から具体的なフローや改善に役立つフレームワーク、そして成功事例まで網羅的に解説しました。ユーザーに優れた体験を提供できればユーザー満足度や顧客ロイヤリティの向上、そして売上向上やコスト削減といった事業成長に貢献します。

本記事で紹介した5つの改善ステップや、状況に応じたフレームワーク、36のチェックリストなどを参考に、ぜひ自社のサービスにおけるUI/UX改善に着手してみましょう。

UI/UX改善のためのノウハウやリソース不足でお悩みの場合は、ぜひお気軽にグッドパッチにお問い合わせください。

▼成功事例が満載の人気資料集 UI/UX改善3点セット(グッドパッチ)成功事例が満載の人気資料集「UI/UX改善3点セット」