サービスリニューアルする際、チームでユーザー体験を向上させるためのサービスブループリント
クライアントワークにおいて「このサービスのUXをよくしてほしい」というお題のプロジェクトに携わる人がいるかと思います。UXという言葉の捉えるところが大きく、一体何からやったやいいのか戸惑うこともあるかと思います。また、クライアントワークにおいて営業利益に関わる数値の共有をいただくことが難しい場合があります。その際、数値的な情報を持たずに「サービスのUXをよくする」ことにコミットするかの改善点の洗い出しや施策検討の方法を共有できればと思います。
サービスブループリントとは
サービスに携わるユーザーやステークホルダー(サービス運営に携わる関係者等)がサービスのタッチポイントにおいて相互に関係するかを明確にした図を指します。サービスブループリントを用いた例ですとアメリカの病院のサービスプロセス改善プロジェクトがよくネットで見受けるかと思います。
参照: サービスブループリントを使って病院のサービスプロセスを分析した事例
上記病院のサービスプロセス改善例では「患者、受付、医療事務、医師」のステークホルダーの行動を可視化し、患者の待ち時間が発生している時には裏では何が行われているのかを明確にし、改善を行ったようです。
メリット
サービスブループリントは一見ジャーニーマップと似ていますが、サービスに関わるステークホルダー全ての行動を可視化することにより、1ユーザーは体験上課題と感じている時に裏では何が行われており、ボトルネックとなっているかを明確にすることができます。こうして明確になった課題に対して施策を打つことでよりサービスに沿った施策検討ができるかと思います。
向いているサービス
上記で説明したようにサービスブループリントはサービスに関わるステークホルダー全ての行動を可視化するツールです。よってユーザーが一人で自己完結するシンプルなサービス(例えば個人用のToDoリストなど)では効果を発揮しません。上で説明した病院をはじめとする施設や、権限が複数存在するサービスなどにおいては有効に活用するかと思います。
どうやったか
私が実際に案件でサービスブループリントを活用し、「サービスのUXをよくする」ための施策権を行ったかご紹介させてください。
はじめに
今回は私が携わらせていただいた案件はすでにリリースされ動いているアプリケーションのリニューアル案件でした。先方からは「今後の拡大に向けて、サービスの全体的な体験の質を向上したい」というお題をいただいたので、まずは現在のサービスの一連の流れ、構造、サービスステークホルダーがどう関係しているかを把握することから始めました。
この際注意したのはユーザーがアプリケーションに触れている前後、サービスを認知する時点から把握をしました。アプリケーションを触るのはもちろん、先方より管理画面の権限をいただき調査、そしてアプリケーション紹介資料の確認、レビューも行い、前述したサービスブループリントにユーザーの行動ベースに起こし込みを行いました。
ツールについて
Goodpatchでは主に、オンラインホワイトボードStrapを使っています。サービスブループリントのような付箋を使うワークは、オンライン上で行うことに大きなメリットがあります。
サービスブループリントの作成に適したツールの特徴
- ボードが無限に広がる
Strapのボードは無限に広がるので、範囲を気にせず付箋をペタペタと貼り付け、考えながらサービス全体を構築していくことができます。 - 同時に作業している様子がわかる
Strapでは、複数人が同時にボードを見ている際、誰がどこにカーソルを当てているかリアルタイムでわかるため、離れた場所にいても同じ場所で顔をあわせて話すようにコラボレーションが可能です。
コラボレーションに適した自由度の高いオンラインツールは、チームでサービスブループリントを作成する際の必須道具といってもいいでしょう。
課題洗い出し
作成したサービスブループリントを元にどのフェーズにおいて課題が存在するかをCEOや先方の営業、エンジニアからヒアリングしました。それらに加えて我々からの分析をもとにした課題点も同時にサービスブループリント上にプロットし、可視化をしました。エンジニアのかたにはフロー上複雑な箇所を指摘いただいたり、営業職の方にはエンドユーザーやサービスステークホルダーからの問い合わせを上げていただくなど意見を集めることができました。様々な職種の方にご協力いただくことで幅広い課題を集めることができるかと思います。次に可視化した課題の中からとりわけサービス上深刻なものに印をつけ、課題の優先順位を作りました。この作業により「サービスのUXをよくする」ための課題点洗い出しができました。
課題の解決策検討
上記作業で洗い出された優先度付きの課題それぞれに対して、どういった解決策を当てることで解決できるかの仮説を検討する作業に移ります。ここでは1つの課題に対して1つのminispecというドキュメントを作成しました。minispecはプロジェクトに携わるエンジニアやデザイナーなどがそのドキュメントをみることで施策の意図や何を成し遂げたいかが理解できる要件定義フォーマットという認識です。フォーマットはプロジェクトに応じて変化するものかと思いますが、今回のプロジェクトでは下記項目をすべての課題について記載しました。
- 解決すべき課題
- 解決策
- ユーザーストーリー(解決策によってどういったストーリーが展開され課題を解決できるかを記載)
- リスク(この解決策の施策を実行した際に想定しうるリスクを事前に明確にする)
- 解決策イメージ(手書きやワイヤーベースでイメージを伝える)
こちらのminispecを元にクライアントと一緒にどうやって課題を解決するか議論を行い、要件定義を行いました。
サービスブループリントにminispecをプロット
上記で出てきたminispecを再度サービスブループリントにプロットし、かつ現在のAsIs感情曲線と今回のプロジェクトで行う施策実行後に変化すると想定するToBeの感情曲線を記載。これにより、今回のリニューアルプロジェクトによって一連のサービスの中で課題を明確にし、その箇所に対してどういった解決策を打ち、結果ユーザーの体験がどう変化するかを可視化することがきました。
この後はひたすら優先度の高い課題からデザインの着手をした、という運びになります。
終わりに
今回我々が携わらせていただいたプロジェクトの目的が「サービスのUXをよくする」という抽象的かつ、認識の齟齬が生まれかねないものだったのでサービスブループリントの手法を用いることで「UX」と呼ばれるものをある一定可視化でき、具体的な施策を打つまでにいたることができたのではないかと思いました。このサービスブループリントをプロジェクト開始時に作成することでクライアントとの目線合わせも早い段階で行うことができ、よいプロジェクトとなりました。
もしこの手法がうまく活きそうなプロジェクトがございましたらぜひ試してみてください。