プロトタイピングとは、実際にプロダクト開発を始める前にプロトタイプ(試作モデル)を作り、機能・操作性・デザイン・アイデアの価値などを検証する開発手法です。不確実性の高いプロジェクトにおいてユーザーのニーズを的確に探り出すためには、プロトタイピングによる検証が大きな価値を発揮します。

開発時の手戻りコストを減らすのにも有効な手法ですが、

「プロトタイプの開発方法が分からない」「そもそも自社のプロジェクトに必要?」「プロトタイピングにはどんな種類があるの?」

という悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、2011年の創業以来デザインファームのパイオニアとして多くの企業にデザイン支援をしてきたグッドパッチが、プロトタイピングの重要性や課題、導入メリット、成功させるポイントなどを詳しく解説します。おすすめのプロトタイピングツールや事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

※本記事は2024年10月31日に更新しました

事業を加速するプロトタイピング

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3つのプロトタイプ活用事例を公開中!

アイデアの価値を高め、事業開発の意思決定を前進させるためにプロトタイプで検証するメリットは多くあります。

新規事業開発や既存サービスの機能開発において、常に不確実性がつきまとう中で、本資料では、プロトタイプの種類やそれぞれのメリット・デメリットと目的ごとの活用方法を事例を用いてご紹介します。

このような方におすすめです

  • ・ 新規事業、既存サービスの中で新しいアイデアはあるが、どう検証すればいいか分からない
  • ・ 新規事業・既存サービスの担当者として、本開発の予算を取るためにアイデアや施策の有効性を示す材料がほしい
  • ・プロトタイプを実施しているが、検証結果を有効活用できていない

プロトタイピングとは?

プロトタイピングとは、実際にプロダクト開発を始める前にプロトタイプ(試作モデル)を作り、機能や操作性、デザインに加えてアイデアの価値を検証する開発手法です。ユーザーに試作品を使ってもらうことで、ユーザーの無自覚な習慣やニーズを反映させることができます。

通常、プロダクトの開発前にユーザーに対して完成イメージを伝えるのは困難ですが、プロトタイプを作成すれば、体験を通じてユーザーにプロダクトのコンセプトや利用イメージを伝えることが可能です。

プロトタイプを用いてユーザーから得たフィードバックを基に機能や改善点を検討し、プロダクトに反映できるため、よりユーザーにとって価値のある形へとブラッシュアップできます。

プロトタイピングの重要性

新規事業の立ち上げや不確実性の高いプロジェクトにおいて、ユーザーのニーズを的確に探り当てるには、プロトタイプによる検証が大きな価値を発揮します。

ユーザーからのフィードバックを参考にプロダクトのMVP(最小限の機能)を決めたり、追加・変更すべき機能やアイデアをプロダクトに反映できたりするため、より価値のあるプロダクトを開発できるのが魅力です。

特に新規事業では、概念実証や価値検証のフェーズでプロトタイピングが重要視されています。プロジェクトの早い段階で不確実性を解消できるので、プロダクトの成功につなげやすいでしょう。

プロトタイピングで解決できる課題

ゼロからプロダクトを生み出す新規開発において課題となるのが「プロダクトがユーザーにとって価値のあるものかどうかをユーザーに届けるまでは証明しきれない」という点です。

どんなに議論を重ねたとしても、プロダクトコンセプトのアイデアや仮説がユーザーの抱える課題に合致していない可能性もあります。

プロダクト開発は、要件定義、仕様策定、実装、テストと複数のステップを経て進めていくことが一般的です。こうした工程が進めば進むほど、その手戻りのコストは肥大化していきます。仕様策定フェーズであれば、それまでの検討内容を見直したり、実装フェーズであれば修正対応が可能な範囲も限定されるかもしれません。

手戻りコストを減らすためには、プロジェクトの早い段階で根底にある不確実性を解消することが重要なのです。

プロトタイピングを取り入れれば、ユーザーに早い段階でアイデアを体験してもらい、フィードバックを得ることができます。検証から得られた結果を積み重ねていくことで手戻りを減らし、プロダクト開発の推進に生かせるでしょう。

プロトタイピングの種類

プロトタイプには複数の種類がありますが、ここでは代表的な3種類について紹介します。検証したい内容に合わせてプロトタイプの種類を正しく選択すれば、得られる価値を最大化できます。

  • ペーパープロトタイプ(スケッチ):画面を紙とペンで描き出したプロトタイプ
  • モックアップ:Figmaなどのプロトタイピングツールを用いて、機能や画面を表す静止画をつなぎ合わせて作成したプロトタイプ
  • テクニカルプロトタイプ:コーディングによって実装・作成し、実際に操作することができるプロトタイプ

ペーパープロトタイプやモックアップといった静的なプロトタイプは、素早くアイデアを形にしてフィードバックへつなげられることに価値があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

ペーパープロトタイプ(スケッチ)

ペーパープロトタイプは、紙とペンなどを使って簡易的・スピーディに作成するプロトタイプです。システムの画面を描いたレイアウトや必要な要素をスケッチすることで、早い段階で対象の課題を洗い出せます。

アプリやソフトウェア開発で使用されることが多く、素早くフローを整理・確認したいときやフィードバックを検証したいときなどに有効です。

ビジュアルプロトタイプ(モックアップ)

ビジュアルプロトタイプは、デザインツールを用いて作成する画面のプロトタイプです。デザイナーの制作したイメージをつないで簡単に作成でき、アイデアを素早く形にしてフィードバックを得られます。

ペーパープロトタイプに比べてビジュアルの忠実度が高いため、印象テストをしやすいのもメリットです。作成コストも比較的小さく「デザインの妥当性」や「ユーザーが目的を達成できるか」といった体験検証を効果的に行えます。

ただし、ビジュアルプロトタイプは画面遷移など簡単な動きは再現可能ですが、あくまで静止画をつないでいるだけなので、実際の機能を検証することはできません。日常や生活のシーンで使われるかについては懸念が残るので、アイデアを現実課題に根差したものへブラッシュアップするには、プロトタイプを日常の利用シーンに投入することが大切です。

テクニカルプロトタイプ

テクニカルプロトタイプは、アイデアをコーディングして実装することで、実際に機能するのが特徴です。静的なプロトタイプに比べて作成に時間はかかりますが、アイデアを最も忠実度高く再現できます。実際の操作や使用感をテストできるので、他のプロトタイプでは得られない新たな示唆を得られるでしょう。

テクニカルプロトタイプは、ペーパープロトタイプやビジュアルプロトタイプでの検証に限界がある場合に有効です。実装されているので「リアルなコミュニケーションを扱う」「週末に利用してもらいたい」など、アイデアの価値が動的仕様・日常利用にある場合に重宝します。

日常的にテクニカルプロトタイプを用いて検証すれば、ユーザーの日常に踏み込んだ気付きを得ることが可能です。リアルなコンテンツやコミュニケーションを再現できるので、より現実的な行動や感情をユーザーから引き出せるのもメリットといえます。

プロトタイピングの4つのメリット

プロトタイピングを導入すれば、以下のようなメリットを享受できます。

  1. 早い段階で要件の認識をそろえられる
  2. 開発時の手戻りを減らせる
  3. コストダウンにつながることがある
  4. メンバー間の認識を統一できる

プロジェクトの早い段階で不確実性を解消できるため、効率的に利用価値の高いプロダクト開発を進められるのがメリットです。それぞれのメリットについて詳しく解説するので、プロトタイピングの導入に迷っている場合はぜひ参考にしてください。

 1. 早い段階で要件の認識をそろえられる

プロトタイピングでは試作を用いて検証を進めるので、要件の認識を早い段階で固められるのがメリットです。ある程度完成イメージが固まった状態で進めれば、開発もスムーズに行えるでしょう。

また、アイデアの価値を早期に検証することができます。想定ユーザーからの反応を定量・定性的に得られるので、ユーザーの潜在的なニーズを発見するのにも有効です。

プロトタイピングによって想定される効果・コストを抽出しておけば、本予算開発を取るための説得材料にも活用できます。

2. 開発時の手戻りを減らせる

プロトタイピングの作成によって完成物のイメージをつかめるので、リリース後に「思っていたユーザーの反応と違う」といったズレを未然に防ぐことができます。ユーザーテストで仮説を検証できるため、開発の手戻りを軽減できるのがメリットです。

開発工程が進めば進むほど手戻りのコストも肥大化するので、早い段階で不具合や改善点などを発見できると費用的・時間的なコストを抑えられるでしょう。

3. コストダウンにつながることがある

プロトタイプを活用すれば、リリース後にユーザー課題の解決に直結しないと判明するといった致命的なミスを防げるため、部分的なコストダウンが期待できます。ただしプロトタイプはあくまでも試作なので、そのままプロダクト開発に流用できるわけではありません。

テクニカルなプロトタイプ検証を通じた開発プロジェクトは、実装を要する分コストがかさむ傾向にあります。「開発をスピーディーに進められる」という点では時間的コストの削減になりますが、費用面でのコストダウンは少ないと考えておきましょう。

4. メンバー間の認識を統一できる

プロダクト開発を進める上で、会話や紙面上だけでやり取りをしていると、メンバー間の認識に相違が生じる恐れがあります。

デザイナーだけでなく、エンジニア・PdM・営業担当者など多様な職種の人物が関わるので、要件定義をしていても完成イメージに齟齬が出る可能性もあるでしょう。

プロトタイピングを作成すれば、仕様や要件を可視化できるため、メンバー間でのイメージを共有しやすくなります。課題を共有したり認識をすり合わせたりしながら開発を進められるので、メンバー間でのコミュニケーションを促進できるのもメリットです。

プロトタイピングを成功させる3つのポイント

プロトタイピングによって価値を最大化させるためには、以下で紹介する3つのポイントを押さえておくことが大切です。

目的を明確にする

プロトタイピングは、あくまでも検証のために作る試作品です。「プロジェクトを次のステップに進めるためには何を知る必要があるのか」「そのためにプロトタイプを用いて何が知りたいのか」といった部分が曖昧なままでは、プロトタイピングを実施する意味が薄れてしまいます。前提となる検証目的を明確にし、チーム内でもその意識を共有することが大切です。

小さく失敗する

検証対象のアイデアや機能にボリュームがある場合、それらを一度にすべて検証しきるのはおすすめできません。スピード感のある検証ができず、プロトタイピングの「試作」という本来の側面が失われてしまいます。

このような場合は「価値の確かさに確信が持てない部分」や「体験のコアにあたる部分」だけを切り出して小さくプロトタイプを作成し、検証するのがおすすめです。検証から新たに得た洞察や発見した課題を再度プロトタイプに反映し、検証サイクルを素早く回すことで、プロトタイピングが大きな価値を発揮します。

時間をかけすぎない

検証サイクルを素早く回すためには、時間をかけすぎないことが重要です。小さく切り出したスコープを迅速に作り上げ、必要以上に検証に時間をかけすぎないようにしましょう。

また、検証から得た知見を次のアクションにつなげるスピード感も大切です。そもそも、プロトタイプは実際の開発前に実施するため「いかに素早く検証目的を果たせるか」に意味があります。

具体的には、要件定義や仕様検討と並行して実装を進める柔軟な開発アプローチが理想的です。これにより、検証から得た知見を素早く次のアクションにつなげられます。

プロトタイピングを成功させるにはこうしたポイントを押さえつつ、デザインとエンジニアリングの両方を深く理解し、柔軟に動ける人材の存在が重要です。

一方でこうしたスキルの高い人材の確保が難しかったり、自社での検証がうまく行かない場合は、支援企業を活用するのもおすすめです。

グッドパッチのように効果的なプロトタイピングが可能な専門チームと協働することで、限られた期間内で素早く事業検証のサイクルを回すことができ、効率的にサービスの価値を探索できる可能性が広がります。

おすすめプロトタイピングツール

プロトタイピング用のツールの中で特におすすめのビジュアルプロトタイピングツールの一つであるFigmaを紹介します。

専用ツールを使えば、利用価値の高いプロトタイピングを作成できるのでぜひチェックしてみてください。

Figma

出典:Figma | Figmaでのプロトタイピング

Figmaは、世界中で広く使用されているデザインツールのひとつです。さまざまなデバイスでプロトタイピングをテストできる機能が備わっており、アプリをダウンロードすれば制限はかかるもののオフラインでも作業できます。

Figmaのプロトタイプはコードが不要で、キャンバス(画面)上でプロトタイプを再生・プレビューできるのが特徴です。インタラクション追加やトランジション作成などの機能も搭載されており、スピーディーなプロトタイプ作成に貢献します。

しかし、Figmaではユーザーにプロトタイプを使って使用感を確かめてもらうようなテストはできません。あくまでも静的プロトタイプなので、動的仕様や日常利用を想定している場合には向かないでしょう。

グッドパッチのプロトタイピング支援事例

グッドパッチでは、企業のプロトタイピングの開発支援を実施しています。いくつかの支援事例を紹介するので、プロトタイピング導入のイメージをつかむ参考としてください。

なお今回はテクニカルプロトタイプの事例を中心に紹介しますが、ビジュアルプロトタイピングにおいては、Figmaなどのツールを使って実際の画面をデザインし、挙動や遷移を確認することも多々あります。

売上向上のアイデア探索での事例

主力製品の売上向上をミッションとするプロジェクトにおけるプロトタイピングの事例です。「ユーザーの習慣付け」を軸にアイデアを展開したことで、日常生活での利用を想定したデータが必要でしたが、当時ユーザーインタビューで得られるデータには限界を感じていました。

また、習慣を可視化する履歴機能はあったものの、習慣が途切れた場合の履歴を追えないことに懸念していました。そこでグッドパッチでは、一連の機能をテクニカルプロトタイプとして実装し、チームメンバーが日常生活で利用する試みを実践。継続して利用する中で、懸念していた側面よりも「記録が貯まる」ことの価値が高いことに気付き、このアイデアを軸に製品化を進めました。

結果として継続率80%以上を記録したアプリ・サービスを実現でき、アイデア探索におけるプロトタイピングの有用性を示した事例といえるでしょう。

価値検証段階での事例

続いては、プロジェクトの提供価値の検証フェーズでプロトタイピングを活用した事例を見ていきましょう。クライアント様のUXリサーチを踏まえたアイデアを実生活で利用し、提供価値を検証する試みです。

本プロダクトが位置情報やリアルタイムなユーザーの状況を扱う特性上、テクニカルプロトタイプを採用し、約1カ月半でアプリとバックエンドを実施。ユーザーに配布後、オンラインインタビューや日記調査などを通じて検証し、ユーザーの行動やその裏にある感情・意識を調査しました。

検証の結果、複数の機能のうち優先度の低かった機能がユーザーに最も価値をもたらしていたことが判明。さらに「当初想定していたほどの作り込みが必要ない」ことも明らかになり、本来は次フェーズで予定していたMVPを策定できました。

この事例は、プロトタイピングがステップの明確化に役立ち、プロジェクトの軌道修正に貢献することを示しています。

組織課題解決のアイデア探索での事例

最後に、クライアント社内における組織課題解決を目的としたプロジェクトを紹介します。当時クライアントでは「リモート時代のコミュニケーション」に課題があり、課題解決に向けてビジュアルプロトタイプとテクニカルプロトタイプを並行してアイデア探索を実施しました。

リモートながら非同期的要素のあるアイデアに一度は行き着きましたが「実際に受け入れてもらえるか」を検証するために、テクニカルプロトタイプを実施し、メンバーや社員に配布。利用後のアンケートやインタビューを通じ、提供価値の方向性を軌道修正していきました。

この事例ではプロトタイピングの結果、初期のアイデアはユーザーに大きな戸惑いを招く可能性があることが判明。検証過程で仕様変更や大幅なピボットを実施することで、最終的に、コミュニケーション醸成に大きく寄与したアイデアを生み出すことができました。

プロトタイピングを取り入れて効率良く開発に取り組もう

本記事では、プロトタイピングの概要や重要性、導入するためのステップ、おすすめのツールなどを詳しく解説しました。

プロトタイピングとは、実際の開発前に試作モデルを作り、機能やアイデアの価値を検証する開発技法です。プロトタイピングを導入すれば、プロジェクトの早い段階で顧客の真のニーズに気づき、要件の認識を揃えられるので、誤った方向に進んでしまうリスクを防げます。

特にテクニカルプロトタイピングを使えば、実際の使用感や機能をユーザーに試してもらえるため、仮説とリリース後のギャップを埋められるのがメリットです。

とはいえ、知見の浅いプロジェクトメンバーのコミュニケーションが円滑に進まない状態でプロトタイピングを行おうとすると、さまざまな落とし穴にハマってしまうかもしれません。

デザインファームのグッドパッチにはプロトタイピング検証を熟知した人材がそろっています。グッドパッチと協業すれば、つまずきを未然に防ぎ、コストを抑えて検証できます。

以下にグッドパッチの支援事例をまとめたガイドブックを用意しているので、ぜひプロトタイピングの参考にしてみてください。

アイデアを素早くカタチにする

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アイデアの価値を高め、事業開発の意思決定を前進させるためにプロトタイプで検証するメリットは多くあります。

新規事業開発や既存サービスの機能開発において、常に不確実性がつきまとう中で、本資料では、プロトタイプの種類やそれぞれのメリット・デメリットと目的ごとの活用方法を事例を用いてご紹介します。

このような方におすすめです

  • ・ 新規事業、既存サービスの中で新しいアイデアはあるが、どう検証すればいいか分からない
  • ・ 新規事業・既存サービスの担当者として、本開発の予算を取るためにアイデアや施策の有効性を示す材料がほしい
  • ・プロトタイプを実施しているが、検証結果を有効活用できていない

 

 

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