MVPの作り方とは?最小限のコストで最大の効果を生み出すMVP開発の秘訣
MVPとは、必要最低限の機能を実装したプロダクトのことです。低コスト・短期間で開発し、フィードバックを基に改善を繰り返すことで、新規事業のアイディアを効率良く検証できます。
本記事では、MVPの作り方を6つのステップに分けて解説します。MVPをスムーズに作るポイントや注意点も併せて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
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グッドパッチがこれまで実施した新規デジタルサービス開発支援をまとめた事例集です。さまざまな企業の新規事業創出におけるプロダクト開発・サービス開発を中心に、アイデア企画からリサーチ、仮説検証、概念実証(PoC)から商用開発、リリース後のグロース支援など、新規事業やそれに伴うデジタルプロダクトの開発事例を一度にご覧いただけます。
このような方におすすめです
- ・ 新規事業立ち上げおよび事業化を推進している
- ・ グッドパッチにおけるサービス開発やデジタルプロダクト開発の支援実績が知りたい
- ・ 理想的な事業アイデアはあるものの、プロダクトの構想が具体に落とせていない
目次
そもそもMVPとは
MVP(Minimum Viable Product)とは、顧客に価値を提供できる最小限のプロダクトのことです。
新規事業でのプロダクト開発などにおいて、仮説に基づいた最小限の機能を低コスト・短期間で実装し、ユーザーからフィードバックを得ることで、低リスクかつ早い段階での修正・改良を可能にします。
MVPは最初から完璧なものは目指さず、目的を達成できる必要最低限の状態でユーザーに提供します。
最小限のプロダクトといっても、実用できないものは価値提供もできないため、MVPには当てはまりません。例えばプロダクトが乗り物の場合、最低限必要な価値は「移動できること」であり、乗り心地や見た目は付加価値です。
上記のlike thisにあるように、実際に使用できる最小単位のプロダクトとして、顧客の目的達成や課題解決に必要な価値を提供できるものがMVPです。
リーンスタートアップとの関係性
MVPという手法は、もともと「リーンスタートアップ」の要素の1つとして生まれました。
リーンスタートアップとは、仮説検証と改善のサイクルを高速で回し、無駄を最小限に抑えながら、より確実性の高い新規事業開発を行うためのマネジメント手法です。シリコンバレーの起業家エリック・リースが著書『リーン・スタートアップ』で提唱し、世界中のスタートアップに大きな影響を与えました。
多くの企業が集まるシリコンバレーで事業を成功させるには、ビジネスモデルの不確実性や変化に迅速に対応する必要があります。そこで、リーンスタートアップではMVPによる検証を活用しているのです。
MVPはリーンスタートアップにおいて、アイデアの検証を効率的に行うために用いられます。短期間でMVPを開発し、顧客の反応を素早く確認することで、ビジネスモデルの改善や方向転換(ピボット)を迅速に実施可能です。MVPはリーンスタートアップのサイクルを回すうえで、重要な役割を果たすのです。
MVPの重要性
MVP開発のメリットは、最小限のリソースで「市場価値の検証」と「顧客理解の深化」を実現できる点です。低コスト・短期間で開発できるだけでなく、顧客の反応を基に改善を繰り返すことで、プロダクトの本質的な価値を磨き上げるヒントが得られます。
また、MVPはPMF(Product Market Fit)を実現するための重要なステップでもあります。PMFとは、顧客のニーズを満たし、適切な市場で受け入れられる状態を指します。単なる市場適合ではなく、持続的な成長が見込めるビジネスモデルの構築が求められるのです。
どれだけ完成度が高くても、市場に受け入れられなければ意味がありません。むしろ、事業の成長を妨げる可能性すらあります。
リスクを回避するには、MVPによる仮説検証が不可欠といえます。MVPは「最小限の機能」ではなく「最も価値のある仮説を検証できる最小単位のプロダクト」であるべきです。目的は完成度を下げることではなく、市場からの学びを「最速で」得る点にあります。
仮説検証の質を高め、フィードバックを基に意思決定を重ねれば、無駄なコストや時間を抑えながら、効率的にPMFの達成を目指せます。
MVPの作り方7ステップ
ここからは、MVPの作り方を7つのステップに分けて紹介します。
- 検証したい仮説を明らかにする
- MVP検証のゴールを設定する
- 想定顧客を探す
- MVPの種類を決める
- MVPを設計する
- MVPを使ってもらう
- 評価を分析する
1.検証したい仮説を明らかにする
まずはMVPを作る前に、検証したい仮説を明確にします。仮説を立てる際は、上記のリーンキャンバスを活用しましょう。ユーザーインタビューを行い、下記9つの要素を記載します。
- 顧客セグメント
- ユーザーが抱える課題
- バリュープロポジション
- 解決策
- 顧客流入元
- 集積の流れ
- コスト構造
- 主要指標
- 競合優位性
9つの要素を可視化することで、顧客から見た事業の価値構造が明らかになります。
記載した要素を基に、顧客が抱える本質的な課題やニーズを見極め、MVPで検証すべき仮説を決めていきます。ここで決めた仮説がMVPに実装する最低限の機能とも直結するため、十分に検討しましょう。
【関連記事】リーンキャンバス(Lean Canvas)とは?作り方を事例ベースでわかりやすく解説
2.MVP検証のゴールを設定する
仮説の設計と似ていますが、今回のMVP検証で「何がどういう状態になれば成功なのか」「仮説が立証された状態とはどのようなものか」を定性、定量の両面から設定します。
また、MVP検証が終わったあとのプロセスも想定しておきましょう。大規模な投資をしてプロダクトを本格的に開発するのか、さらに顧客セグメントを拡大して検証を続けるのかなど、具体的に想定しておくことが重要です。
MVPについて考え始めると、MVP検証を行うこと自体が目的となりがちですが、下記のような明確なゴールを設定しておくと、必要十分なMVP検証の意思決定をしやすくなります。
【定性的なゴールの例】
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【定量的なゴールの例】
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3.想定顧客を探す
想定顧客を探す際は、ユーザーインタビューに協力してくれた人たちや、新しいサービスを好むアーリーアダプターに試してもらうことがおすすめです。
特に、トレンドに敏感なアーリーアダプターから良い反応を得られれば、市場展開した際にも消費者に広く受け入れてもらえる可能性があると考えられます。新しいサービスについてSNSやレビューサイトなどで積極的に発信しているアーリーアダプターを見つけたら、ぜひアプローチしてみましょう。
4.MVPの種類を決める
MVPにはさまざまな種類があります。検証したい仮説状況に応じて使い分けましょう。
ここでは、主なMVPを4つ紹介します。
コンシェルジュ型MVP | サイトやアプリなどは作らず、サービスと同じ価値を人力で再現する 例:顧客の好みをヒアリングし、毎日の献立を自分で考えて提供する |
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オズの魔法使い型MVP | 見た目だけのサイトやアプリを作成し、中身の処理は人力で行う 例:顧客がアプリで注文した商品を自分で買って届ける |
プレオーダー型MVP | クラウドファンディングなどを利用し、リリース前に事前購入を募る |
事前登録型MVP | ランディングページなどを作成してサービスを紹介し、事前登録を募る |
(参考文献|『製造業の新製品開発プロセスにおけるMVP(Minimum Viable Product)の有効性の検証』)
コンシェルジュ型やオズの魔法使い型では、実際のサービスで提供する価値を手作業で再現します。実際のプロダクトやサービスを作り込まずとも、顧客が「価値を感じてくれるか」「お金を払ってくれるか」という価値仮説を検証可能です。
プレオーダー型や事前登録型では、事前購入や登録を募ることで「どのくらいのニーズがあるのか」という市場仮説を検証できます。また、顧客のプロフィール情報を得られるため、より詳細なユーザー像を基に検証を進められる点も特徴です。
5.MVPを設計する
ここからMVPの設計に取り掛かります。検証したい仮説を基に、顧客の課題解決に必要な最低限の機能を実装しましょう。
MVPの設計では、必ずしもプログラミングの知識やエンジニアが必要となるわけではありません。顧客に提供する体験を、最小限の工数で実現する方法を検討します。例えば、以下のような方法が考えられます。
- 手動での対応:顧客からの問い合わせにメールやチャットで個別に対応する
- 既存ツールの活用:フォーム作成ツールやSNSなどを利用して、顧客との接点を作る
- ノーコードツールの活用:簡単なランディングページ、ECサイト、またはアプリケーションなどを、プログラミング不要なツールで作成する
- 生成AIツールでの簡易プロトタイピング:ChatGPTやGeminiのCanvas機能、v0などのUIデザインとコード生成を効率化する生成AIツールを活用し短期間でモックアップを作成する
どの方法を選択するかは、検証したい仮説や提供したい顧客体験、利用可能なリソースによって異なります。プロダクトやサービスの最終的なイメージも考慮しつつ、最適な方法を選びましょう。
6.MVPを使ってもらう
MVPが完成したら、想定顧客にMVPを使ってもらいましょう。相手には試作品である旨を伝えた上で、評価やフィードバックをヒアリングします。
ヒアリングにはいくつかの方法がありますが、可能であれば、実際にユーザーに会って話を聞くことがおすすめです。MVPを使用している場面を観察し、どのような順序で画面を操作したか、なぜそうしたのかを聞き取りましょう。
会うのが難しい場合は、アンケートフォームなどを活用して意見を収集します。定性的・定量的な質問を用意し、詳細な回答を集めましょう。
7.評価を分析する
ユーザーから収集したフィードバックや評価を分析し、「顧客の課題をどのくらい解決できたか」「お金を払う価値を感じたか」など、ステップ1で決めた仮説を検証します。検証時は開発側に都合の良いデータのみを採用しないよう、客観的な視点で分析することが大切です。
もし好意的なフィードバックが少ない場合、MVPが顧客の課題を十分に解決できていないか、そもそもお金を払ってまで解決したい課題ではなかった可能性もあります。フィードバックを基に課題や方向性を見直し、改善や機能の追加をして、より良いプロダクトを目指していきましょう。
MVPをスムーズに作る3つのポイント
MVPは、素早く作って素早くリリースすることが重要です。MVPをスムーズに作成するための3つのポイントを解説します。
- 仮説に基づいたコンセプト・コア価値をしっかり設計する
- 優先度をつけて必須機能を絞り込む
- 注力すべき部分を絞って品質を上げる
1.仮説に基づいたコンセプト・コア価値をしっかり設計する
1つ目のポイントは、仮説を基にプロダクトのコンセプトやコア価値をしっかりと設計することです。
顧客にとって価値のあるサービスを開発するには、コア価値を軸としたコンセプト設計が重要となります。まずはユーザー調査を基に顧客の課題やニーズの重要度を見極め、解決する課題と実現したい価値を明確にしましょう。
具体的には、以下の流れで情報を整理します。
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このとき、以下のポイントを意識して進めます。
- すべての課題を解決しようとせず、重要な課題に絞り込む
- 注力する部分を広げすぎないで考える
- 明確化したコア価値をチームで共有する
軸となるコンセプトやコア価値が定まると、開発チーム全体が共通認識を持って開発に臨めます。
2.優先度をつけて必須機能を絞り込む
2つ目のポイントは、優先度を決めて必須機能を絞り込むことです。以下の流れで各機能に優先度をつけ、本当に必要な機能を見極めましょう。
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始めに整理したコンセプトを基に簡易的なモックアップを作成し、ユーザーインタビューを行います。インタビューの分析結果を基に、ユースケースを用いて各機能を「必須」「不要」「Tobe(今は不要だが将来的に必要かもしれない)」の3つに分別します。
分別する際は、その機能が提供したい価値にどれくらい寄与するかという基準で判断しましょう。価値に直結するものは「必須」、ニーズが低いものは「不要」、プロダクトを拡張する際に欲しい機能は「Tobe」として整理します。
整理する際は、以下の点に注意が必要です。
- コア価値の実現に集中し、機能過多を防ぐ
- 機能が絞りこめない場合は、コンセプトが不明確なサイン
サービスをより良くしたいと思うあまり、さまざまな機能を盛り込みたくなるかもしれません。しかし、機能を絞り込むことで開発効率が高まり、顧客にとって真に価値のあるサービス提供につながります。
3.注力すべき部分を絞って品質を上げる
3つ目のポイントは、注力すべきポイントを絞り、品質を上げることです。以下のポイントを基に品質向上を目指しましょう。
- なるべく開発コストの低い表現方法でユーザー体験を向上させる
- 最初から作り込まず、検証後のブラッシュアップを前提とする
- 良いアイデアは記録し、今後の改善に役立てる
MVP開発では機能や品質を絞り込むのも大切ですが、あまりに簡素なプロダクトだとユーザーが魅力を感じづらくなります。効率を重視しつつ、ユーザーを惹きつけるMVPを開発するには、ポイントを絞って作り込むことが重要です。
ユーザーがよく目にする画面はデザインにこだわったり、アニメーションを入れたりするなど、プロダクトに愛着を持ってもらえるような仕掛けを入れると良いでしょう。
MVPを作る際の3つの落とし穴
MVPを作る際の注意点を3つ解説します。
- 使う場面や現場のリサーチが不足している
- 完璧主義に陥っている
- 検証よりも開発をメインにしている
1.使う場面や現場のリサーチが不足している
課題解決はできるものの、実際に使う場面をきちんと想定していないケースもあります。その場合、最初はMVPに良い反応を示しても、実態とマッチせず次第に使われなくなる可能性が高いです。
想定される利用シーンを事前に調べておくことで簡単に解決できる課題もあります。可能であれば現場に足を運び、利用するユーザーの視点に立ってリサーチすることがおすすめです。
2.完璧主義に陥っている
「より良いものを提供したい」と無駄な機能を追加し、開発に時間をかけすぎてしまうことがあります。MVP開発に時間をかけすぎた結果、市場投入のタイミングを逃してしまっては本末転倒です。
MVPの目的はあくまでも仮説検証です。完璧を求めすぎると、低コストでスピーディーに検証を進められるMVPのメリットを生かせません。ユーザーには試作段階であることを伝えた上でフィードバックをもらい、徐々に改善を繰り返していきましょう。
3.検証よりも開発をメインにしている
特にエンジニアやデザイナーがチームにいる場合、スピーディーに開発を進められるがゆえに、ユーザーの意見を置き去りにしがちです。その結果、課題解決につながらない無駄な機能やデザインでプロダクトが肥大化してしまうことがあります。
MVP開発は、PMF達成に向けたプロセスの1つにすぎません。本来の目的を忘れず、こまめなヒアリングと改善を行い、顧客にとって本当に価値のあるプロダクトを目指しましょう。
グッドパッチがMVP検証を支援した事例
最後にグッドパッチにおける、MVP検証の事例を2つ紹介します。
- リモート時代のコミュニケーションツールのアイデア探索
- 位置情報を用いたコミュニティサービスのニーズ検証
なお、下記の事例の詳細は「サービス検証プログラム」の資料の中で詳しく解説しています。気になる方はぜひダウンロードしてみてください。
1.リモート時代のコミュニケーションツールのアイデア探索
クライアント社内の組織課題解決を目的とするプロジェクトです。コロナ禍という背景もあり、社員の行動変容を促す「リモート時代のコミュニケーションツール」にテーマを絞り、アイデア探索と価値検証を実施しました。
「組織課題」という漠然としたテーマから始まった本プロジェクトでは、クライアントへのヒアリングに加え、HRテックの業界調査を実施しながら対象テーマを策定。
MVPとして「ビジュアルプロトタイプ」と「テクニカルプロトタイプ」の2種類を開発し、検証を行いました。仕様変更やピボットを繰り返しながら、最終的に4度の短期検証を実施。その結果、想定を超えるコミュニケーション醸成へとつながるアイデアに行き着くことができました。
2.位置情報を用いたコミュニティサービスのニーズ検証
位置情報を活用した家族向け地域コミュニティサービスの価値検証プロジェクトです。クライアント側で要件定義が完了している状態でしたが「事業企画を次に進めるためにニーズ聴取の方法が分からない」という顧客課題の解決に取り組みました。
リアルタイムなユーザー行動が提供価値の軸にあるため、静的なビジュアルプロトタイプだけではなく、サービスのコア機能をアプリに実装。アプリは10家庭に配布し、2週間の生活で使用してもらう検証を行いました。
結果として、クライアント側で優先度が低いとされていた機能にこそユーザー価値が紐づくことが明らかとなりました。加えて、検証を通じて事業拡大へのネクストステップが明確になり、取るべき軌道修正のヒントを得られました。
MVPを素早く作ってPMFの達成を目指そう
本記事ではMVPの作り方や、スムーズに作るためのポイントを紹介しました。MVPを作成すれば、無駄な時間やコストをかけずに効果的な価値検証が可能です。新規事業を検討中の方は、ぜひ活用してみてください。
グッドパッチでは、MVP開発をスピーディーに実施できるメンバーがおり、アイデア創出から開発まで一貫した支援が可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
新規デジタルサービス構築支援の事例をまとめてお届け

グッドパッチがこれまで実施した新規デジタルサービス開発支援をまとめた事例集です。さまざまな企業の新規事業創出におけるプロダクト開発・サービス開発を中心に、アイデア企画からリサーチ、仮説検証、概念実証(PoC)から商用開発、リリース後のグロース支援など、新規事業やそれに伴うデジタルプロダクトの開発事例を一度にご覧いただけます。
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