顧客に適した有益なサービスやプロダクトを開発、提供するためには、顧客のニーズや課題を理解する、つまり「顧客理解」が欠かせません。

本記事では、顧客理解の重要性や顧客理解を深めるための具体的なステップ、フレームワークについて解説します。

顧客理解を深めるにはデザイン思考を取り入れることもおすすめです。本記事ではデザイン思考を基にした顧客理解の深め方についても解説していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

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顧客理解はビジネス活動に必須のプロセス

顧客理解とは、ターゲットとなる顧客のニーズや課題を理解することです。ビジネス活動全般において必須のプロセスで、営業活動やマーケティング、新規事業の立ち上げやプロダクト開発などさまざまなシーンで役立ちます。

企業が中長期的に利益を得るには、顧客のニーズに合った商品やサービスの提供が重要です。

そのためには、顧客が「自覚的に求めているもの」(顕在ニーズ)はもちろん「無自覚な欲求や深層心理」(潜在ニーズや顧客インサイト)を正確に捉える必要があります。

顧客理解を深めれば、顧客の本質的なニーズを捉え、最適な商品やサービスの提供が可能です。

また、たくさんのものや情報があふれ、顧客ニーズが多様化している現代では「個客理解」も重要視されています。個客理解では、顧客一人ひとりのニーズや行動を分析します。セグメントごとにアプローチ方法や提供する商品、サービスなどを変更し、よりパーソナライズされた対応をしましょう。

顧客理解がビジネスにおいて重要な理由

顧客理解は、特にマーケティングにおいて、戦略の根幹を成す「4P」に影響を及ぼすことが大きいです。

4Pとは、以下の4つの要素を指します。

  • Product(製品):顧客に提供する商品やサービスそのもの
  • Price(価格):商品やサービスの価格設定
  • Promotion(販促):顧客に商品やサービスを知ってもらい、購入を促進するための活動
  • Place(流通):商品やサービスを顧客に届けるための販売チャネル

マーケティングでは、自社プロダクトは4Pのどこが強みで、どこに課題があるかを分析して戦略を整えていくことが重要です。この4Pに対し、顧客理解が及ぼす影響は以下の通りです。

Product どのような顧客が利用するのか、顧客の欲求を満たせる製品なのかなどを理解しなければ、顧客にとって魅力的な製品を開発できない
Price 顧客の経済的な状況や、顧客が感じる価値を理解しなければ、適正な価格を設定できない
Promotion 顧客の行動や好み、市場での立ち位置を理解しなければ、認知や購入につなげるための効果的な施策を決定できない
Place 顧客がどのように製品を利用するのか、どのような顧客層をターゲットとするのか理解しなければ、最適な流通や販路を設定できない

一方で、事業開発やプロダクト開発において顧客理解が重要な理由は、顧客のニーズや期待を正確に把握し、それに応えるプロダクトやサービスを設計・提供することで、ビジネスの成功確率を高めるためです。消費者ニーズが多様化した市場では、市場の変化を捉えつつ、ユーザーの声に耳を傾けてサービスを提供する姿勢が重要です。

顧客理解を伴う事業開発やプロダクト開発を実施することで、以下のようなメリットにつなげることができます。

  • 市場のニーズに合ったプロダクト・サービスの提供
    顧客が抱える課題や求める価値を正確に理解することで、ニーズに合致したプロダクト・サービスを開発でき、顧客の本質的なペインを解消できる
  • 顧客満足度の向上
    顧客が直面している課題を解決するプロダクトを提供することで、満足度と信頼が高まり、リピート利用や他の顧客への推奨(口コミ効果)が期待できる
  • 早期の市場適応
    顧客のインサイトを開発初期段階で取り入れることで、プロダクト市場適応(Product-Market Fit)を早期に達成できる

顧客のニーズを満たすサービスやプロダクトを開発し、魅力をアピールして購買や継続的な利用につなげるためにも、顧客理解は重要といえます。

顧客理解を深めるための2つのポイント

顧客理解を深めるために、以下の2つのポイントをおさえましょう。

  1. 企業視点ではなく顧客視点で考える
  2. 顧客の心理を洞察する(顧客インサイト)

1. 企業視点ではなく顧客視点で考える

顧客理解を深めるには、顧客視点に立って考えることが重要です。

顧客がどのような問題を抱えているのか、何に喜びや不満を感じているのか。顧客の立場で考えることで、真の顧客ニーズが見えてきます。

企業視点で顧客を見ると、「この顧客はどのような特徴を持った人か」「他の顧客層とどう異なるか」という相対的・客観的な見方に偏ってしまいやすいです。偏った視点では顧客の本当の気持ちやニーズを把握できません。

例えば、ある商品が売れ行き不振に陥ったとします。企業視点では「価格が高すぎる」「広告が効果的でない」といった分析になりがちです。

しかし顧客視点では、企業側が思いもよらないタイミングで顧客がつまづいていたり、「使い方が分かりにくい」「デザインが好みではない」などの企業視点とはまったく異なる理由が浮かび上がることもあります。

顧客視点を持つことで、顧客の行動や心理をより深く理解し、真に求められるプロダクトの提供へとつなげられます。

2. 顧客の心理を洞察する(潜在ニーズや顧客インサイトの追求)

顧客理解を深めるには、潜在ニーズや顧客インサイトを捉えることもポイントとなります。

潜在ニーズは、顧客が無自覚に抱いているニーズです。顧客インサイトは、潜在ニーズのさらに奥にある顧客自身も気付いていない欲求や本音、深層心理を指します。

いずれも表面化されていない領域のものであるため、把握するのが困難なケースが多くあります。特に、顧客インサイトを捉えるには、顧客の行動の背景にある感情や、無意識下に眠る根拠などを深掘りしなければなりません。

潜在ニーズと顧客インサイトは、顧客の購買行動に多大な影響を与えるものです。調査やデータ分析を実施し、ニーズの顕在化や深層心理の理解に努めましょう。

例えば、以下のように理由や印象を追求していくことで、きっかけが掴めることもあります。

  • なぜその商品を選んだのか?あるいは選ばなかったのか?
  • 他の商品と比べて、どのような点が良いと感じたか?あるいは悪いと感じたか?
  • その商品を使うと、どのような気持ちになるか?
  • どのような時にその商品を使いたいと思うか?

顧客の心理を洞察し真のニーズを捉えられれば、より効果的なマーケティング戦略を立案可能です。

補足:顧客理解に役立つマズローの5段階欲求

顧客インサイトを深める上では、マズローの欲求段階説を基に考えると分かりやすいでしょう。

  1. 自己実現の欲求
  2. 承認の欲求
  3. 所属と愛の欲求
  4. 安全の欲求
  5. 生理的欲求

人間の行動は、根源的な欲求を満たすために行われると考えられています。

顧客インサイトは、上記のような根源的欲求が基になっている可能性が高いため、これらを参考に顧客理解を深めることで、より効果的なマーケティング戦略を立案できます。

顧客理解にはUXリサーチ手法が応用できる

顧客理解にはUXリサーチ手法が応用できる

UX(User Experience)とは、顧客が商品やサービスを通じて得る体験を指します。つまりUXリサーチとは、ユーザー体験に関する調査です。ユーザーの行動や心理を理解するための調査手法であり、顧客理解を深めるための基盤として有用です。後述の「顧客理解を深める3ステップと手法」を効果的に進めるための前提条件となります。

グッドパッチでは、UXリサーチを重視しています。リサーチ結果を顧客体験設計につなげることで、顧客視点に立った一貫性のある体験設計とブランド価値の向上を目指します。

UXリサーチについては下記の記事で詳しく解説しています。顧客理解を深めるための重要なポイントですので、ぜひ併せて確認してみてください。

【関連記事】【保存版】UXリサーチ完全ガイド|成功のポイントと手順を徹底解説

顧客体験設計とは?

顧客体験設計とは、顧客が企業と関わるすべての接点において、一貫性があり付加価値の高い体験を提供するためのアプローチです。優れたプロダクトを提供するだけでなく、マーケティングや販売、カスタマーサポートなど、顧客が企業と接するあらゆる場面を設計し、顧客との長期的な関係構築を目指します。

ウェブサイトやメールマガジン、展示会など、顧客が企業と接する場面(タッチポイント)は多岐にわたります。あらゆるタッチポイントにおける体験を一つひとつ丁寧に設計し、全体で一貫性のある体験を提供することが重要です。

顧客体験設計については、下記の記事で詳しく解説していますので、併せて確認してみてください。

【関連記事】一貫性のある顧客体験で共感を生み出す! 効果的なサービスブランディングの進め方

顧客理解を深める3ステップと手法

以下の3つのステップに沿って、段階的に顧客理解を深めていきましょう。

  1. 顧客の課題を特定するUXリサーチをする
  2. 顧客が求める価値を明確にするフレームワークを活用する
  3. 顧客理解を深めるフレームワークを活用する

1. 顧客の課題を特定するUXリサーチをする

顧客が抱えている課題の特定が、顧客理解の第一歩です。課題を把握できれば、顧客が本当に求めているものや、企業が提供できる価値が見えてきます。

顧客の課題を特定するには、顧客の行動や心理、置かれている状況などを深く理解する必要があります。

課題特定の際は、以下のようなUXリサーチを実施しましょう。

  • ユーザーインタビュー
  • アンケート調査
  • エスノグラフィ

ユーザーインタビュー

ユーザーインタビューは、インタビュー手法でユーザーから潜在的なニーズを引き出すUXリサーチです。

デザイン思考を組み込み、ユーザーに寄り添うインタビューを行うことで、プロダクトに対する潜在的な意識(課題やニーズ)を理解できます。

ユーザーインタビューについては、下記の記事で詳しく解説していますので、併せて確認してみてください。

【関連記事】UXデザインにおけるユーザーインタビューとは?方法・種類・実例ノウハウ集

アンケート調査

アンケート調査は、複数人の対象ユーザーからデータを収集する手法です。事前に用意した質問項目に対してユーザーに回答してもらうことで、彼らの意見や行動、属性などを把握できます。

アンケート調査は、顧客の意見を定量的に分析したい場合に特に有効です。顧客の意見を数字で裏付け、満足・不満足の傾向を客観的に把握できます。商品やサービスの改善点を特定したり、新たなマーケティング戦略を立案したりするプロセスで役立つでしょう。

エスノグラフィ

エスノグラフィは、実際に顧客の生活の場に入り込み観察する調査手法です。顧客がどのような場所で、どのように商品やサービスを利用し、どのような行動をとっているのか。フィールドワークによって詳細に観察し、記録します。

顧客は自身の行動や心理について、すべてを言葉で表現できるとは限りません。

特に、無意識の行動や言葉にするのが難しい感覚的な部分は、インタビューやアンケートだけでは捉えきれない場合があります。エスノグラフィでは、潜在意識から生じる無意識的な言動を観察します。顧客のありのままの挙動を知ることができるため、潜在的なニーズや課題を発見するのに有効な手法です。

エスノグラフィについては下記の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】ユーザーの生活に深く潜り込む、エスノグラフィで大切にしたいマインドセット

2. 顧客が求める価値や課題を明確にするフレームワークを実施する

顧客はプロダクトがもたらす価値や、課題を解決するためにお金を支払うのであり、プロダクトそのものにお金を支払うのではありません。顧客が求める価値や課題とその解決方法を明確に捉え、顧客理解を深めましょう。

顧客が求める価値や課題を理解するには、UXリサーチによるニーズや期待値の把握が重要です。

顧客がプロダクトに求める価値や課題を理解した上で期待を超えるものを提供できれば、顧客満足度を高められるでしょう。顧客が求める価値や課題を明確にするためのフレームワークとして、代表的なものを2つ紹介します。

  • バリュープロポジションキャンバス
  • ジョブ理論

バリュープロポジションキャンバス

バリュープロポジションキャンバスとは、顧客が求める価値と、企業が提供できる価値を可視化し、両者を一致させるためのフレームワークです。

バリュープロポジションキャンバスを作成すれば、以下のような分析ができます。

  • 顧客に提供するべき価値をペルソナ単位で細分化できる
  • 自社のプロダクトが顧客のニーズや市場の需要を満たすように設計されていることを確認できる
  • 顧客への理解をより深め、詳細を突き詰められる

バリュープロポジションキャンバスを利用すれば、顧客のニーズや抱える課題を整理でき、自社の価値を活かしたプロダクトの開発に取り組めるでしょう。

バリュープロポジションキャンバスについては下記の記事で詳しく解説していますので、併せて確認してみてください。

【関連記事】バリュープロポジションキャンバスとは?作り方と事業の提供価値を導き出す重要性

ジョブ理論に基づいた分析

ジョブ理論とは、顧客がプロダクトを「なぜ利用するのか」という課題解決の視点から、顧客の行動を分析する理論です。

従来のマーケティングでは、プロダクトの機能や性能、顧客の属性などに注目することが一般的でした。しかしジョブ理論では、顧客がプロダクトを利用する目的や状況(=ジョブ)の理解が重要だと考えます。

例えば、ジョブ理論を活用すると以下のような効果が期待できます。

顧客が抱える本質的な課題の抽出 プロダクト自体の改善にとらわれず本質的に「顧客が解決したいこと」を把握できる
イノベーションの創出 顧客のジョブを解決する、新たなプロダクトを開発できる
マーケティング戦略の改善 顧客のジョブに焦点を当てた、より効果的なマーケティング戦略を立案できる

ジョブ理論は顧客視点で考える際に有効なフレームワークです。顧客が求める価値を正確に把握したい場合に活用してみましょう。

3. 顧客理解を深めるフレームワークを実施する

顧客がブランドに対してどのように感じ、どのような印象を持つのか。こうした動向は、商品やサービスを購入する前後や購入する際のあらゆる接点での経験によって形成されます。

あらゆる接点での顧客の行動や思考、感情などを可視化し、顧客理解を深めるために、下記のようなフレームワークを実施しましょう。

  • ペルソナ設定
  • カスタマージャーニーマップ

ペルソナ設定

ペルソナとは、商品やサービスのターゲットとなる架空の顧客像のことです。

具体的な顧客像を想定しておくと、顧客の行動や心理をより深く理解し、共感することができます。また、チーム全体で認識を統一すると、プロダクトの方向性がブレることなく、より適切な戦略を立てられます。

ペルソナを作成する際には、下記のようにリアリティのある詳細な情報をサービスやプロジェクトの目的に応じて取捨選択し、設定しましょう。

  • 年齢
  • 性別
  • 職業
  • 年収
  • 趣味
  • 価値観
  • 家族構成
  • 休日の過ごし方 など

ペルソナをより具体的に設定しておくことで、顧客理解がさらに深まるでしょう。ペルソナについては下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

【関連記事】ペルソナとは?よりリアルなユーザー像を作り上げる具体的な作成方法

カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップとは、顧客がプロダクトに関わるあらゆる接点を時系列で可視化したものです。

顧客がどのようにプロダクトを認知し、興味を持ち、購入を検討し、最終的に購入に至るのか。さらに、購入後にはどのような行動をとるのか、といった顧客体験全体をマッピングします。

カスタマージャーニーマップでは、各段階における顧客の行動だけでなく、感情や思考、課題なども合わせて可視化します。感情や思考まで可視化することで、顧客をより深く理解できるのです。

ペルソナの行動や心理を想定しながらカスタマージャーニーマップを作成すれば、チーム全体で共通の顧客理解を深められます。

カスタマージャーニーマップについては下記の記事で詳しく解説しています。併せて確認してみてください。

【関連記事】カスタマージャーニーマップが必要な理由とは?目的と作り方

顧客理解を深めて長期的な顧客関係を築こう

本記事では、顧客理解の重要性と顧客理解を深めるための具体的なステップや手法、フレームワークについて解説しました。

顧客理解を深めることは、顧客満足度向上や売上増加、企業の持続的な成長に不可欠です。

顧客のニーズを的確に捉え、顧客にとって真に価値のある商品やサービスを提供できれば、長期的な顧客関係を築くことができます。

顧客理解をさらに深めるためには、デザイン思考を取り入れることが有効です。デザイン思考とは、顧客中心のアプローチで課題解決を行うための思考法です。

グッドパッチでは、適切な顧客理解を行う上で有効な手法として、デザイン思考の考え方を基にしたデザイン思考ワークショップを提供しています。顧客理解を深め、ビジネスを成功に導きたい方は、ぜひデザイン思考ワークショップにご参加ください。

デザイン思考のワークショップならグッドパッチへ

グッドパッチでは、デザイン思考やUI/UXの考え方に基づいたワークショップを実施しています。開発現場で培われたデザインプロセスワークショップでは、1回4〜6時間程度で、ユーザー中心の課題抽出、アイデア創出、検証などを実践的に学ぶことができます。現場ですぐに活かせるスキルを習得し、革新的なアイデアを形にしましょう。

このような方におすすめです

  • ・ ニーズの見込めるアイデアを生み出したい
  • ・ チーム全体のデザイン理解・スキルをアップさせたい
  • ・ 詳しい料金体系や過去の実施事例を知りたい
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