顧客体験(CX)向上を実現する方法とは?フレームワークや成功事例を紹介
顧客体験(CX)とは、プロダクト・商品・サービス単体の価格や便利さだけでなく、接客やアフターサポートまで含めたさまざまな体験から、顧客が感じる価値やメリットなど一連の体験のことを指します。
そのため、顧客体験価値と言い換えられることもあり、これを高めるには、プロダクトや商品の価値だけでなく顧客体験を総合的に向上させることが必須です。本記事では、顧客体験を向上させる方法や、その重要性を紹介します。
顧客体験を向上させるには、デザイン思考を取り入れることもおすすめです。デザイン思考を基にした顧客体験向上の方法についても解説していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
〈グッドパッチにおける顧客体験(CX)向上の取り組み事例〉
会社名 | 概要 |
NTT東日本 | サービスサイト改修、コアバリューの見直し、申し込みフローの整理などのユーザー体験向上施策で、年間1,000万円のコスト削減 |
トヨタファイナンス | 身近な業務課題に取り組む実践型デザイン思考プログラムなど4日間の研修を支援。生成AI業務活用の社内プロジェクト化につながった |
目次
顧客体験(CX)とは?
顧客体験(CX=カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客やユーザーが企業のプロダクトやサービスに興味を持ち、購買から利用後のサポートまでを含む一連の体験のことです。
顧客体験は、顧客接点の集合体といえます。顧客が企業と持つあらゆる接点(タッチポイント)での体験が、顧客体験を形成するのです。
顧客は、マーケティングファネルで示される認知、興味・関心、購入・利用といった段階ごとにさまざまな体験をします。これには、購入前のウェブサイトや広告、実店舗での接客・購入体験、実際の商品の使い勝手や利用開始後のカスタマーサポートなど、あらゆるチャネルの顧客接点で得るすべての体験が含まれます。
そのため、顧客体験を向上させるには、顧客が企業と関わる全プロセスにおける行動や心理状態への理解が重要です。
顧客の行動や心理を深く理解し、それぞれの顧客接点で顧客が期待する以上の体験を提供することを目指しましょう。
ここでいうCXは、マーケティング用語として使われる「顧客体験」を指します。マーケティングファネルで示される認知、興味・関心、購入・利用などの段階ごとに、顧客が企業と接するあらゆる接点(タッチポイント)での体験を包括的に捉えた概念です。 |
顧客理解については下記の記事で解説しています。併せて確認してみてください。
【関連記事】顧客理解を深める3ステップをフレームワーク付きで解説!具体的なコツとは?
顧客体験設計とは
顧客体験設計とは、顧客が企業と関わるすべての接点において、一貫性があり付加価値の高い体験を提供するための戦略的なアプローチです。
プロダクトはもちろんのこと、マーケティングや販売、カスタマーサポートなど、顧客が企業と接するあらゆる場面を設計し、顧客との長期的な関係構築を目指します。
顧客体験設計を行う際は、カスタマージャーニーマップを作成し、顧客の行動や感情を可視化することが有効です。カスタマージャーニーマップは、顧客の視点に立ち、顧客が企業と接する一連の行動を旅(ジャーニー)になぞらえて可視化したものです。
顧客体験を設計する際に使えるフレームワークは、以下のようなものがあります。
カスタマージャーニーマップ
顧客の視点に立ち、企業やプロダクトと出会い利用するまでの一連の行動を可視化します。顧客の行動や心理を詳細に把握することで、体験を最適化するポイントを明確にします。
ペルソナの作成
ターゲットとなる顧客像を具体化し、それに基づいたタッチポイントの設計や、顧客に寄り添ったメッセージの作成に役立ちます。
これらを活用することで、顧客接点全体で一貫性のある体験を設計し、顧客満足度やブランドロイヤルティの向上につなげることができるでしょう。
顧客体験設計については下記の記事でも解説していますので、併せて確認してみてください。
【関連記事】一貫性のある顧客体験で共感を生み出す!効果的なサービスブランディングの進め方
顧客体験が重要視されている理由
顧客体験が重要視されている理由は、企業が顧客に選んでもらい続け、事業を成長させるためです。そして、サービスブランディングを成功させるためでもあります。
近年、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、商品購入やサービス利用における顧客接点ははるかに多くなりました。
誰もがいつでも気軽に検索エンジンを活用し、欲しい商品や興味のあるサービスと出会うことが可能です。SNSの普及も著しく、多くの企業がSNSアカウントを通じて顧客とつながり、情報を発信しています。
上記のような顧客接点の増加は、消費者と企業双方に多くのメリットをもたらします。一方で、企業がマーケティング戦略で考慮すべきポイントも増加しました。顧客接点が増えることで、企業と顧客の関係性はより複雑化したからです。
そのため、より効果的なマーケティングを行うためにも、顧客体験の捉え方を改めて考え直す必要が出てきています。
顧客体験推進の課題
多くの企業が、顧客体験推進において共通の課題を抱えています。それは、経営層の理解不足です。
ユーザーへの共感に基づいた顧客体験の向上や改善は、顧客体験推進に欠かせない要素です。しかし、経営層から理解を得られず、頓挫してしまうケースも少なくありません。一方で、グッドパッチの代表取締役兼CEOの土屋尚史は次のように指摘しています。
「経営層の多くは、むしろ現場よりもCXの重要性に気付いている。だが、いざ実施するとなると、投資対効果などの具体的なイメージがつかず、尻込みしてしまうケースが多いようだ。」 |
(出典:「経営層へのアプローチも、『CX重視』で行くべきだ」:すかいらーく、グッドパッチ、サマリーのCX戦略)
CX推進を成功させるためには、経営層がCXの重要性を理解することが不可欠です。しかし、経営層がCXの重要性を理解していても、対策に踏み切れるとは限りません。具体的な施策内容や投資対効果の仮説を明確に示すことが、CX推進成功の重要なポイントとなるでしょう。
顧客体験で生み出される5つの価値
顧客体験は、顧客満足度とは異なり数値化が難しい側面があります。
サービス・マーケティングに詳しいアメリカのバーンド・H・シュミット教授は、心理的価値を以下の5つに分類しています。
Sense(感覚的価値) | ・五感を刺激する体験を通して得られる価値 ・視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚に訴えかけることで、顧客に喜びや満足感を与える |
---|---|
Feel(情緒的価値) | ・感情や気分に影響を与える体験を通して得られる価値 ・顧客の内面にある感情に訴求し、感覚から喜びや誇りといった強い感情を生み出す |
Think(知的価値) | ・知的好奇心や探求心を刺激する体験を通して得られる価値 ・顧客の知性や驚き、好奇心などの感覚を利用して顧客に思考させるようアプローチする |
Act(行動に関わる価値) | ・行動やライフスタイルの変化を促す体験を通して得られる価値 ・顧客の身体的な行動、ライフスタイル、経験に影響を与える |
Relate(社会的経験価値) | ・他者とのつながりや社会への貢献を感じられる体験を通して得られる価値 ・顧客をより大きな社会的文脈に結びつけ、文化や他者との関係性を感じさせる |
CX向上を図るには、これらの5つの心理的価値をもとにした分析が重要です。顧客が企業と接する体験を通じて、どのような感情を抱き、どのような価値を感じるのかを見極めましょう。
顧客体験(CX)とユーザー体験(UX)の5つの違い
顧客体験(CX)と似た言葉に、ユーザー体験(UX)があります。どちらも顧客を起点とした考え方であるため混同しやすいですが、異なる意味合いを持っています。
UXとは「User Experience」の略称で、プロダクトを使用したときに得られる顧客の体験です。CXは顧客と企業間のあらゆる接点を対象とするのに対し、UXはプロダクトの利用体験に焦点を当てています。
CXとUXの主な違いは、以下の5つです。
- 対象の違い
- 対象者数の違い
- 管理方法の違い
- 取り扱い分野の違い
- 施策実施機関の違い
1. 対象の違い
UXは、プロダクトを利用した顧客に発生する体験のことです。ウェブサイトやアプリケーションの使いやすさ、商品のデザイン性、操作性、機能性など、顧客の直接的な体験を含みます。
一方、CXはプロダクト以外にも、物流、販売、購入、アフターフォローなど、すべての工程で起きる体験です。顧客が企業と接触するあらゆる接点(タッチポイント)での体験がCXに含まれるため、UXよりも広範囲な概念といえます。
2. 対象者数の違い
UXは特定のプロダクトに焦点を絞り、そのプロダクトを利用した顧客が対象となります。
例えば、あるECサイトのUXを向上させたい場合、そのECサイトを利用した顧客体験がUX向上の対象です。
一方で、CXは顧客とのすべての接点を含むため、より広範囲な顧客が対象となります。同じECサイトを例に挙げると、UXでは「サイトを利用する顧客」が対象です。一方CXでは「商品の検討段階にいる顧客」や「商品の配送やカスタマーサポートと接触する顧客」などが対象です。このように、CXではより多様な接触点を持つ顧客が対象に含まれます。
このように、CXはUXよりも広範囲な顧客接点を考慮する必要がある点が特徴です。
3. 管理方法の違い
UXは特定のプロダクトが対象となるため、関係する部門は限られる場合が多いです。主に商品開発部門やデザイン部門、マーケティング部門などがUX向上のための施策を検討・実行します。
一方、CXは顧客視点から見たすべての工程が対象となるため、各工程に関わる多数の部門の理解と協力が必要です。商品開発部門やデザイン部門はもちろん、営業部門やカスタマーサポート部門、物流部門などが例に挙げられます。顧客と接する可能性のあるすべての部門が、CX向上に携わる必要があります。
CX向上のためには各部門が連携し、顧客視点で一貫した体験を提供することが重要です。そのため、部門間の情報共有や協力体制の構築、全体を統括するリーダーシップが求められます。
4. 取り扱い分野の違い
UXは単一のプロダクトが対象となるため、商品やシステム開発に関わる専門知識やスキルが求められます。エンジニアやデザイナーなどの専門家が、専門性を生かしてUX向上に取り組む体制が基本です。また、ユーザーの潜在ニーズや感情を読み解くための心理学の知識も重要になります。
一方、CXは顧客視点から見たすべての工程が対象となるため、幅広い分野の知識やスキルが必要です。特定の専門知識やスキルだけでなく、ビジネス全体を見通す力が重視されます。
技術的な知識に加え、高い分析力やマネジメント力、そしてコミュニケーション能力なども求められる傾向にあるといえるでしょう。
5. 施策実施期間の違い
UXは、比較的短期間で施策を実施できる場合があります。ウェブサイトのUI変更や、アプリケーションの機能改善などがイメージしやすいでしょう。UX向上のための施策は迅速に実行し、ユーザーからのフィードバックを反映することが重要です。したがって、UX向上のための施策は、短期的なサイクルでPDCAを回していく場合が多いといえます。
一方、CXは対象物や関係する組織が複数に渡るため、UXよりも施策の実施期間が長くなる傾向があります。CX向上のためには、長期的な視点で戦略を立て、段階的に施策を実行していかなければなりません。
CX向上のための施策は、数年単位で計画される場合もあります。顧客との長期的な関係構築を目指し、継続的な改善を繰り返すことが重要です。
上記では一般的な顧客体験(CX)とユーザー体験(UX)の違いについて解説しましたが、グッドパッチでは広義の顧客体験も含めてUXデザインとして捉えています。
これは、顧客接点のデジタル化が進んでいるなかで、デジタルサービスにおけるUXデザインが顧客体験全体に大きな影響を与えるからです。 顧客が企業と接するあらゆる場面において、一貫性のある優れた体験を提供するためには、UXデザインの視点が不可欠であると考えています。 |
顧客体験を高める3つのメリット
顧客体験を高めることで、主に以下のような3つのメリットがあります。
- 顧客ロイヤルティの向上
- 競合との差別化
- 既存顧客による宣伝効果
1. 顧客ロイヤルティの向上
顧客ロイヤルティとは、顧客が特定の企業に対して抱く愛着や信頼の度合いです。
CXを意識すると、顧客のプロダクトや企業に対する満足度が高まります。満足度が高い状態が続くと、さらに顧客のロイヤルティが向上します。
満足度の高い顧客は、同じプロダクトを継続したり、あるいは再度利用したいと感じます。ゆえに、リピート率は増加し、解約率は低下します。企業と顧客の間で信頼関係を築きやすくなるため、顧客ロイヤルティが向上するのです。
顧客の企業やブランド、プロダクトへの信頼や愛着から、リピート率の増加・解約率の低下はさらに強固なものへ育つでしょう。
また、顧客ロイヤルティの高さは、LTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります。LTVとは、一人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額です。顧客ロイヤルティが高いほど、LTVは向上する傾向があります。
2. 競合との差別化
インターネットの普及により、顧客はさまざまな情報源からプロダクトを比較検討できるようになりました。価格や機能だけでなく、口コミや評判なども参考にしながら、自分に最適なプロダクトを選べます。
情報が多様化した状況下では、顧客に選ばれるための差別化が不可欠です。CX向上への取り組みが他ではできない体験にできた場合、自社プロダクトのブランディングにもつながり、他社との差別化に寄与します。
3. 既存顧客による宣伝効果
顧客がプロダクトに関わる体験に満足し、企業に対して好印象を抱いてもらえると、その体験を友人や家族、同僚などに話す可能性が高まります。SNSで口コミを発信することもでき、宣伝効果につながると考えられます。
口コミは企業が発信する広告よりも信頼性が高く、顧客の購買意欲に大きく影響します。さらに、口コミは広告と異なり、不特定多数の人々に広がっていく可能性を秘めているのです。
例えば、あるユーザーがSNSでプロダクトのレビューを投稿した場合、そのユーザーのフォロワーだけでなく、リポストやシェアなどによってフォロワーのフォロワーへと情報が拡散されていきます。
口コミによってこれまで顧客でなかった層に自社と自社のプロダクトを認知してもらえる可能性があります。広告費をかけずに新規顧客を獲得できるため、効率的なマーケティング手法といえるでしょう。
顧客体験を高めるために必要な考え方
顧客体験を高めるための要素のひとつに、顧客接点全体を考え一貫した体験を提供することもあげられます。一貫した顧客体験を提供するためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 顧客理解を深め一連の体験を把握する
- 顧客接点での最適なコミュニケーション設計を行う
顧客理解を深め、一連の体験を把握する
顧客体験向上には、まず顧客理解を深めることが重要です。
顧客が何を求めているのか、どのような行動を取るのか、どのようなことに喜びや不満を感じているのか。行動や思考、感情を理解すれば、顧客に最適な体験を提供できます。
顧客理解を深めるには、デザインリサーチが有効です。デザインリサーチとは、顧客の行動やニーズ、感情を深く理解するための調査手法です。UXリサーチも調査手法の一つですが、顧客体験においてはUXリサーチではカバーできない範囲まで調査対象を広げる必要があります。
例えば、顧客がプロダクトを利用する前後の行動、顧客のライフスタイル、顧客を取り巻く社会環境なども調査対象となります。
デザインリサーチの手法としては、UXリサーチで用いられるユーザーインタビューやアンケート、エスノグラフィなどに加え、以下のようなものがあります。
リサーチ手法 | 概要 |
---|---|
デプスインタビュー | 対象者1人に対して長時間インタビューすることで、深いインサイトを得る |
インターセプトインタビュー | 通行人に短時間でインタビューを行うことで、方向性の決定やデプスインタビューで集めた情報を検証する |
ワークショップ | ユーザーやクライアントを交えて複数人で何らかのワークを実施することで、顧客と一緒に方向性を定める |
デザインリサーチによって得られた情報は、顧客体験を向上させるための貴重な資料となります。
【関連記事】【保存版】UXリサーチ完全ガイド|成功のポイントと手順を徹底解説
顧客接点での最適なコミュニケーション設計を行う
一貫した顧客体験を提供するには、すべての顧客接点で統一されたメッセージや対応が求められます。例えば、ウェブサイトでは迅速な対応を約束しているのに、カスタマーサポートで遅延が生じれば、顧客の信頼を損なう可能性があります。
デザイン思考は顧客理解や共感を基盤に、一貫性を確保した体験設計を支える手法です。ペルソナの作成やカスタマージャーニーマップを活用すれば、顧客が直面する課題を明確にし、各接点で統一感のあるコミュニケーションを設計できます。
さらに、プロトタイピングとテストを繰り返すことで、メッセージや対応が顧客の期待に合致しているか確認可能です。このようにデザイン思考を活用することで、顧客満足度とブランドへの信頼を向上させることができます。
【関連記事】デザイン思考とは?5つのプロセスや役立つフレームワークも紹介
【グッドパッチ流】顧客体験を向上させるサービスブランディングの仕組み
現代のビジネスにおいて、顧客体験(CX)は競争優位性を築くための重要な要素です。顧客はプロダクトそのものだけでなく、企業とのあらゆる接点における体験を通してブランドを評価するようになっています。
優れた顧客体験を提供し、顧客ロイヤルティを高めるために、サービスブランディングが注目されています。
サービスブランディングとは、顧客に一貫性のある、付加価値の高い体験を提供することで、ブランドに対する愛着や信頼を育むための戦略的な取り組みです。
顧客体験を向上させるサービスブランディングには、以下の4つの要素が重要です。
- 顧客視点に立ったデザイン
- デザイン基準の明確化と共有
- 提供価値の明確化と反映
- デザインレビューの仕組み化
1.顧客視点に立ったデザイン
サービスブランディングの品質を保つ上で最も重要な基盤となるのが「顧客視点に立ったデザイン」です。
顧客の深層心理や行動パターンを洗い出し、さまざまなタッチポイントを考慮し、サービス全体を通じて一貫した体験を提供することが重要です。
顧客理解を深め、一貫性のある顧客体験を設計するには、下記のポイントを踏まえて実践しましょう。
- ユーザーインタビューを定期的に実施する
- カスタマージャーニーマップを作成し、各タッチポイントの役割を明確化する
- サービス利用のログデータを分析し、実際の使用パターンを把握する
- カスタマーサポートチームと密に連携し、顧客の声を直接聞く
- 部門横断的なワークショップを開催し、一貫したメッセージングを確立する
2.デザイン基準の明確化と共有
ブランドの価値観を反映したデザイン基準を明確化し、チーム全体で共有することで、一貫性のあるブランド体験を提供できます。
デザインの瀕死基準は、単にビジュアルスタイルガイドを作ることではなく、ブランドの価値観やユーザー体験の減速なども含む、包括的なガイドラインであることが理想です。
また、定義された基準は、デザインチームだけでなくサービスに関わるすべてのチームに共有しましょう。デザイン基準を明確化し、共有するためには以下のポイントを踏まえることが重要です。
- 定期的なワークショップを開催し、基準やルールの理解と適用を促進する
- 基準の適用事例や成功事例を社内で共有する
- 市場動向や技術進化に合わせて定期的な基準のレビューと更新を行う
- 新たなプロジェクト開始時には必ずデザイン基準の確認セッションを設ける
- 新入社員のオンボーディングにデザイン基準の学習を組み込む
- デザインシステムを構築し全社で利用可能にする
3.提供価値の明確化と反映
提供価値の明確化と反映は、デザイン基準とほぼ同時に進む場合も多いです。この段階で重要なのは、デザインの根幹となるサービス価値を明確にし、それをサービスの隅々にまで反映させることです。
提供価値とは、単なるキャッチフレーズや美しいロゴにとどまるものではありません。顧客に提供する本質的な価値やサービスの存在意義を指します。
ブランド価値を明確にするには、以下のステップで進めましょう。
- ブランドの存在意義(パーパスなど)を言語化する
- ブランドの個性(ブランドパーソナリティ)を定義する
- ブランドが顧客に約束する価値(ブランドプロミス)を具体化する
- 上記の要素を簡潔なブランドステートメントにまとめる
上記で明文化されたブランド価値を、実際のサービスのデザインに反映させるには、以下のようなアプローチを行います。
- ブランド価値に基づいたデザイン減速を策定する
- 各デザイン要素(色、形、タイポグラフィ、イラストなど)がどのようにブランド価値を表現するかを明確にする
- ユーザーインターフェースの各要素(ボタン、フォーム、ナビゲーションなど)にブランド価値を反映させる方法を検討し具体化する
- ブランド価値に基づいたUXライティングガイドラインを作成する
4.デザインレビューの仕組み化
最後に、構築してきたデザイン基準やブランド価値の反映が適切に行われているかを確認する「デザインレビューの仕組み化」を行います。
デザインレビューを形骸化させず、真に価値あるプロセスとするには、下記のようなポイントがあげられます。
- レビューの目的と評価基準を明確に定義する
- 複数のレビューステージを設定し、段階的に品質を向上させる
- レビューアーの役割と責任を明確にする
- レビュー結果の記録と共有の仕組みを整える
まずは、レビューが一過性のもので終わらないように仕組み化することが重要です。サービスブランドを維持するための仕組みづくりに関しては下記の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せて確認してみてください。
【関連記事】サービスブランドを「維持」するための仕組みづくり──基準の定義からレビュー体制の構築まで
顧客体験向上に取り組む企業の事例
グッドパッチでは、これまでにさまざまな企業の顧客体験向上の取り組みを支援してきました。その取り組みの一部を紹介します。
会社名 | 概要 |
NTT東日本 | サービスサイト改修、コアバリューの見直し、申し込みフローの整理などのユーザー体験向上施策で、年間1,000万円のコスト削減 |
トヨタファイナンス | 身近な業務課題に取り組む実践型デザイン思考プログラムなど4日間の研修を支援。生成AI業務活用の社内プロジェクト化につながった |
1. ユーザー体験向上で年間1,000万円のコスト削減|NTT東日本
東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)では、法人向け学習管理サービス「ひかりクラウド スマートスタディ」を提供しています。「ユーザー体験(UX)に寄り添った開発ができていない」と感じた同社は、顧客体験向上に取り組みました。
グッドパッチが支援したのは、サービスサイトの改修やコアバリューの見直し、申し込みフローの整理などです。サイトリニューアルだけでなく、サービス申し込み部分の根本的な課題の解決を企図。申し込みから契約までをすべてウェブ上で処理できるように切り替えました。
この施策は、年間約1,000万円のコスト削減と社内の確認業務の削減につながりました。ユーザー体験に加え、社内の運用コストにも好影響を与えた結果です。
NTT東日本の事例について詳しく知りたい方は、ぜひ下記を確認してみてください。
【関連記事】年間1000万円以上のコスト減を実現。価格競争ではなく、ユーザー体験で勝負──NTT東日本の「ひかりクラウド スマートスタディ」開発プロジェクト(前編)
【関連記事】「そこまで任せていいんですか?」アジャイル開発体制の構築から、最適な人材の紹介まで──NTT東日本の「ひかりクラウド スマートスタディ」開発プロジェクト(後編)
2. デザイン思考研修で顧客視点を取り入れた課題解決を|トヨタファイナンス
トヨタファイナンス株式会社は、グッドパッチが提供する「Project-YOU」を含む研修を受講しました。「Project-YOU」は、顧客体験向上を可能とするデザイン思考を学ぶプログラムです。
同社は、お客様接点のデジタル化推進とビジネス戦略の転換を進める中で、エンドユーザー視点で業務や事業を考えることの重要性を強く認識しています。顧客視点を取り入れたサービス開発の必要性を感じていたものの、それを実際の成果に結びつける具体的な方法については課題を抱えていたのです。
そこで、グッドパッチが提供するデザイン思考研修プログラム「Project-YOU」を受講。
この研修は、座学ではなく、生きた業務課題でデザイン思考を実践しているのが特徴です。ワークショップを通して、デザイン思考のプロセスを体験的に学ぶことができます。
デザイン思考研修「Project-YOU」が、顧客体験向上のための具体的な行動を起こすきっかけとなった取り組みです。
詳細が気になる方は、ぜひ下記を確認してみてください。
【関連記事】デザイン思考で、あなたの周りの人を救ってください──超実践型研修「Project-YOU」をトヨタファイナンスが受講した結果
まとめ|顧客体験向上でビジネス成長を加速させる
本記事では、顧客体験(CX)の重要性やCXとUXの違い、具体的なサービスブランディングの進め方などについて解説しました。
顧客体験向上のための取り組みは、顧客満足度やブランドロイヤルティの向上に貢献します。そして最終的には、企業の収益向上にもつながる重要な施策になり得ます。
グッドパッチでは、デザイン思考を基にしたワークショップを提供しています。このワークショップを通して、顧客理解を深め、顧客中心のビジネスを実現するためのヒントを得ることができるでしょう。
顧客体験を向上させ、ビジネスを成功に導きたい方は、ぜひご参加ください。
デザイン思考のワークショップならグッドパッチへ

グッドパッチでは、デザイン思考やUI/UXの考え方に基づいたワークショップを実施しています。開発現場で培われたデザインプロセスワークショップでは、1回4〜6時間程度で、ユーザー中心の課題抽出、アイデア創出、検証などを実践的に学ぶことができます。現場ですぐに活かせるスキルを習得し、革新的なアイデアを形にしましょう。
このような方におすすめです
- ・ニーズの見込めるアイデアを生み出したい
- ・チーム全体のデザイン理解・スキルをアップさせたい
- ・詳しい料金体系や過去の実施事例を知りたい
- ・社内の新規事業プログラムを導いてほしい