NTT東日本からグッドパッチへ派遣研修 怒涛の1年で学んだ「Go Beyond」の精神と価値観の変化
こんにちは!グッドパッチのProject Manager(以下、PM)の宇野です。
突然ですが私、実はNTT東日本の社員なのです。この1年間、「研修」という形でグッドパッチにて働いていました。
「研修で働く?なんで?」と疑問に思う方もいるかもしれません。この記事では、私がグッドパッチでの研修に至った経緯と、プロジェクトを通じて得た学びを紹介していきます。
目次
ユーザー体験を主軸に仕事を進めるヒントを──社内公募施策でグッドパッチへ
私は新卒入社でNTT東日本に入り、通信サービスの営業やプリセールス、サービス開発など行ってきました。
大学時代にデザインを学んでいたこともあり、常に「ユーザー体験の向上」に興味を持って仕事をしていました。一方で仕事では、技術・市場動向に寄った議論が大部分を占めており、ユーザーにフォーカスした仕事も経験したいと思うようになったのです。
もっとニーズと価値を丁寧に紐解いて、サービスに落とし込めるようになりたい。既存の仕事軸ではなく新しい観点をインストールするにはどうすれば良いだろうか……と悩む日々。そんな中で「もしもデザインの会社で働くことができたら、ユーザー体験を主軸に仕事を進めるヒントが得られるかもしれない」と思いつきました。
NTT東日本には「国内企業派遣」という社内公募施策があります。NTT東日本では得られない、自身と事業の成長に必要な知見・スキルを得ることを目的に他企業へ1年間社員を派遣し、多種多様な業種、企業の技術やカルチャーに触れ、社内にフィードバックする取り組みです。
この施策を活用して、SaaS領域でのデザイン伴走実績が多数あるグッドパッチに「PM兼UXデザイナーサポート」として受け入れていただきました。
グッドパッチに入ってみて感じた「組織の違い」
勢いよく飛び込んではみたものの、自分らしさが光るデザイナーがひしめく環境に最初は戸惑いました。
グッドパッチのデザイナーは自身の価値感を大切に、公私ともにその人らしく活躍している人ばかり。入社早々、この自由な企業の中で、自分はどう動けば力を発揮できるだろう……と、かなり面食らったのを覚えています。
動き方がクリアになったきっかけは「オンボーディングプログラム」でした。グッドパッチでは、仕事人として社員に求める姿勢を「組織のDo’s/Dont’s」として言語化しており、新参者でも行動軸からなじめるようにPeople Empowerment Office(いわゆる、総務人事部)がサポートしてくれます。
リモートワーク中心でも、さまざまな社員とコミュニケーションが取りやすいよう、入社者が最初にさまざまな同僚と1on1ができる仕組みや、Welcomeイベントなどの交流機会を提供してもらいました。
多様なメンバーとの会話を通じて「自分のスキルと組織の行動軸を掛け合わせれば、PMとして自分らしい価値提供ができそうだ」と思えてからは、徐々に能動的に動けるようになったと思います。
また、社内にいるだけで入ってくる情報量がグッと増えたのも印象深いです。「デザインの会社」として良い意味で尖った(!)リーダーがおり、得意分野に関する新情報・面白ナレッジ・プロジェクトでの実践知が日々やりとりされています。
しかも、単純なナレッジのシェアに留まらず、それをシェアするに至ったストーリーや紆余曲折のディテイルがとても面白く、読み手の興味を惹く形で残されているのです。皆さん、日々ユーザーのことを考えているからなのでしょうか。
ドキュメントからその人の思考経路や判断軸が伝わってくるので、自分の悩みに合わせてナレッジを活用できますし、より詳しいところは1on1で相談させてもらう、といったコミュニケーションも促進されます。このカルチャーに触発されて、自身もこれまで以上に積極的にインプットもアウトプットもするようになりました。自分の学びを外に出すことは「Giver」であるということ。これは自分にとって生涯継続したい変化です。
「デザインの力」の発見 失敗や不確実性への認識も変わった
研修期間中は、いくつかのクライアントワークにPMとして参画しつつ、UXデザイナーの支援をしました。
グッドパッチが手がけるクライアントワークはテーマが多様です。さまざまな業界の新規事業の創出・既存サービスの刷新・製品やコーポレートビジョン作りなどをプロジェクトとして進めます。私も毎日クライアントチームの一員として、チームづくりやユーザーとの対話を重ねました。
特に印象的だったのは、「いかにスピーディにユーザー理解度を高め、不確実性を下げていけるか?」という取り組み姿勢です。
私はもともと、手を動かす前に考えるタイプでしたが「まず形にして検証する」というデザインプロセスを通じて、「ユーザー不在の考えすぎは禁物」だと気がつきました。サービスサイドの思い込みやこだわりが増してしまうのです。
不確実性を着実に下げるためには、いったん目の前の不確実さを許容して「自分はユーザーを知らない」と客観的に認知する必要があります。これも慣れるまでは、意外と怖さがあるものです。
そんな状態で検証を進めれば、当然失敗をするのですが、失敗は貴重な「発見」です。ユーザーのリアクションから学びを得ることで、不確実性を一段階下げることができます。失敗と分析の積み重ねによって、徐々にユーザーの心理やサービスの路線が明確になっていくのです。
何度もリサーチを重ねるうちに自身のマインドセットも変化し、「失敗はウェルカム、早い段階で気付けてラッキー」と思えるようになりました。不確実性への忍耐力もついたと思います。
ユーザーインタビューでは、目的に合わせて自由に工夫を仕掛けてリアクションを引き出すリサーチの醍醐味も経験しました。型にはめすぎず、聞き出したいポイントをどう炙り出していくかという思考は、普段とは違う頭の使い方が必要で、とても学びが多いものでした。
あるユーザーにプロトタイプをお見せした際は「一度もこの職に就いたことがないのに、こんなに具体的に思っていることを想像できるなんて。ちょっと感動しました。」という、うれしいコメントもいただきました。ユーザーの言葉はチームのやる気に直結しますし、仕事への思い入れも高めてくれます。これも「デザインの力」かもしれません。
デザイナーと開発陣のコラボに学び ワークショップのファシリにも挑戦
巨大なIT企業に身を置く立場として、デザイナーの「開発への関わり方」にも学びがありました。ユーザーは当事者であり、デザイナーは当事者意識を最も強く持つことができる存在の一つです。
開発が絡むプロジェクトの初期からデザイナーが関わることで、ユーザー目線でまずはどの品質を目指すのか、そのために取り組むべきことの優先軸を整理し、開発プロセスにも具体的に反映できます。ユーザー価値を積み上げるプロジェクト推進によって、各段階の目標値も定めやすくなり、順を追ったサービス成長を計画することもできました。
さらに、「最終形のイメージってこんな感じですか?」と、初期から具体イメージを描く力がチームの議論を促進してくれます。プロジェクトメンバーの中で一歩先を進むリーダーとして、チームのクオリティやスピードを引き上げるスタイルはとても勉強になりました。
このほかにも、デザインに詳しくない人にもデザインを伝えるスキルも身につけられたら……という思いから、デザインプロセスをお客さまに体験いただくワークショップのファシリテーターも務めました。
場の状態を把握したり、学びが深まる方向にアシストをしたりといったアドバイスをもらいつつ、限られた時間でより多くの学びを持ち帰ってもらうために、その時々にあったサポートを提供していきます。
同じワークショップタイトルでも、クライアントごとに受講に至った背景や目的は異なるため、参加者のバックグラウンドや目的に合わせて場が活性化しそうな内容に調整し、楽しく遊び心をもって取り組みました。
最終的には、丸1日かかるワークショップのメインファシリテーターにもチャレンジし、お客さまから満足度の高い評価もいただくことができました。デザイン活用の幅を広げるために必須のスキルとも言えるファシリテーション力が鍛えられ、今後の自信につながりました。
研修が終わっても「Go beyond」であり続ける、新しい挑戦の始まり
忙しいながらも楽しい時間だった1年間。本当に研修期間はあっという間に過ぎ、振り返りも兼ねて、今、この記事の執筆にも挑戦しています。
グッドパッチには「Go beyond(領域を超えよう)」というバリューがあります。自らのコンフォートゾーンを飛び越えて、より良いビジネス・より良いデザインを追求しようという姿勢を表したものです。
まるで畑の違う会社からポン、と入った私は、このカルチャーの中でさまざまなチャレンジをする機会をもらい、自分のマインドセットとしてインストールできたのではないかと感じます。不確実性の高いテーマにも前向きに、好奇心をガソリンにしてまず走ってみる。そういう勢い(ノリ)を分けてもらった1年間でした。
また、デザインを活用してユーザーニーズの本質を追求する過程で、自分自身の仕事軸・価値観にも変化がありました。
数字や表面的な理解では引き出せない「定性的な声」をまとめて共通認識化し、具体物に落とし込むことが自分の仕事軸になったほか、検証を通じて周囲を巻き込みながら仕事を進める力もつきました。まだまだ経験不足ではありますが、先輩がたくさんいる環境で得たものを元手として、スキルアップも継続できそうです。
研修期間後、自社に戻って何をするかはまさに今考えているところですが、役職や部署に捉われず、デザインを活用したトライが気軽にできる土壌を作っていこうと思っています。
NTT東日本には、まだまだ面白くなるサービスやプロジェクトがある──ロジックだけでは解決できないような地域の課題を捉え直し、デザインを活用してユーザーとビジネスの行き違いを繋ぎ合わせるような仕事をしていきたい。また環境が変わってもGo beyondな動きができるのか、新しい挑戦を前にワクワクしています。