「生成AIを業務に活用してみたいけれど、何から手をつけていいか分からない」

そんな声を耳にすることが増えてきました。最近ではPMやPdM(プロダクトマネージャー)領域でのAI活用に注目が集まっています。ステークホルダーが多いため、いわゆる「雑務」が増えがちな職種であるためです。

特に新規事業の立ち上げに取り組むPdMの場合、仮説検証や意思決定のスピードは重要な鍵を握ります。なるべくなら雑務に使う時間を減らして、検証や意思決定に時間を割きたいところ。

私は2025年3月頃から、生成AI(主にChatGPT)をPdM業務に本格的に導入し、業務の効率化と省力化を試みてきました。本記事では、その過程で蓄積した新規事業フェーズでのPdM業務に特化したプロンプト活用法とテンプレート集をご紹介します。

この記事はこんな方におすすめです。

  • 生成AIを活用して新規事業のアイデア出しや構想を効率化したい方
  • PdM業務のどこをAIに任せられるのか、まだ見えていない方
  • 小さなことでもいいからAI活用を実験的に始めてみたい方

PdM業務とAIの役割分担

PdMの業務はさまざまなものがありますが、大きく以下の2つに分けられます。

  1. 【思考・意思決定】プロダクトを良くするために考え抜く時間
  2. 【伝える・共有する】その考えをチームに伝え、形にするための時間

このうち1.【思考・意思決定】については、現時点のGPTでも完全に代替することは困難でしょう。プロダクトビジョンやロードマップの方針決め、プロダクト戦略、マーケティング戦略の思案など、市場や組織の空気をリアルタイムに読み取って判断するのは、定型化が難しく、まだまだ人間の役割です。

一方で、2.【伝える・共有する】領域、例えば仕様書の作成、チケットの分解、PoCの詳細設計などは、「何をやるかは決まっているが、手が追いつかない」領域であり、AIの力を活用しやすいポイントです。

2.【伝える・共有する】領域の特徴的な業務

  • フォーマットが決まっている作業(Markdown/CSV/テーブル)
  • 定型文での説明整理(前提→課題→解決策)
  • 類似作業の量産(例:チケットの一括生成)

こうした業務は、適切なプロンプトを設計することで、大幅に効率化が可能です。

出力の精度を高めるためには、プロンプトを“型化”する

AI活用初期は「○○を出して」といった簡易的な指示を試していましたが、思ったような出力にならず、何度も修正が必要なことが多々ありました。

この試行錯誤を経て、出力の精度を高めるためにたどり着いたのが「プロンプトの型化」です。必要な要素を列挙し、AI側が解釈しやすいように指示を与える。具体的には、以下の4点を明確にして指示をすることが鍵となります。

  • コンテキスト(概要、ゴール、背景、AIへの期待)
  • 入力データと出力データの明示
  • 出力フォーマットの指定
  • 制約条件や優先ポイントの明記

LLMに伝わりやすいプロンプトの基本ルール(初心者向け10カ条)

また、もう少し具体的なテクニックとして、プロンプトづくりに慣れていない方向けに、基本のルールをまとめました。

コツは「やさしく」「短く」「理由を添えて」書くこと。人に説明するように書けば、AIにもちゃんと伝わります。試行錯誤が大切なので、一度や二度失敗したくらいでは諦めてはいけません。ルールを意識しながら根気強く取り組みましょう。

  1. 「お願い」と「ゴール」を冒頭で一言にまとめる
  2. コンテキストは「共通ルール」と「現在の状況」に分けて記述
  3. 指示には理由を添える(例:「図で出力して。読みやすいためです。」)
  4. 手順 → 出力形式 → サンプルの順で並べる
  5. 重要な一言は末尾で繰り返す(例:「最終出力はCSVで」)
  6. 役割を指定する(例:「あなたは10年経験のPdMです」)
  7. 思考の手順を明示する(ステップバイステップ)
  8. お手本やURLを添える(Few-Shot)
  9. 余計な情報は書かない(LLMは深読みしがち)
  10. 評価基準をチェックリストで伝える

参考書籍:LLMのプロンプトエンジニアリング―GitHub Copilotを生んだ開発者が教える生成AIアプリケーション開発

実際に使っていた4種類のプロンプトをご紹介

ここからは実際に私が使っているプロンプトを紹介していきます。私はPdMの業務フローに沿って、次のようなプロンプトテンプレートを整理しています。

インプットした情報を基にテキストとCSVが出力される設定になっているため、GPTに出してもらった情報を現在利用しているプロジェクト管理ツール上に流し込み、目的によって形を整えていくのがおすすめです。

  • A:コンセプト定義
     (例:ペルソナ設計、課題整理、コア価値の明文化)

# === プロンプト: コンセプト定義 ===

あなたはスタートアップのシニアPdMです。以下の入力を踏まえ、  

1) テキスト解説(日本語)
2) CSV形式のサマリー表(UTF-8, ヘッダ付き)  

を順番に出力してください。

## 入力(編集可)

事業ドメイン: {{例: 食事管理アプリ}}
対象ユーザー像: {{例: 最近ダイエットを始めた女性トレーニー/20代前半}}
主なユーザージョブ: {{例: 健康的な食生活の習慣化}}
仮説課題: {{例:日々の食事管理を行いたいが、記録をついつい忘れてしまう}}
想定競合: {{例: あすけん}}
想定ビジネス規模 (TAM/SAM/SOM 推定): {{数字 or “不明”}}
既存インサイトや調査結果: {{自由記述}}

## 出力フォーマット

### テキスト解説  

<3000 文字で、以下セクションを Markdown   

  1. ターゲットユーザー像
  2. コア課題 (JTBD)
  3. 独自価値提案 (UVP)
  4. 競合差別化ポイント
  5. 事業機会サイズと根拠
  6. 初期成功指標 (NSM など)
  7. 想定リスク & アンチパターン  

### CSVサマリー  

列: Persona, JTBD, UVP, Main Metric, TAM_M(円), Key_Risk
必ず Markdown コードブロック内に “““`csv “““` で出力

  • B:PoC設計
     (例:仮説・検証指標・進め方の整理)

# === プロンプト: PoC設計 ===

あなたは新規事業PdM兼実験デザイナーです。以下インプットを基に  

1) テキスト解説
2) CSV形式の実験計画表  

を返してください。

## 入力

コア価値仮説: {{例: 1日5分以内で、リアルタイムに全ての食事記録と振り返りが完了できる}}
技術/運用制約: {{例:画像認識AIを活用}}
検証したい補助仮説: {{箇条書き可}}
リソース: {{例: PdM1, Eng2, Design1}}
想定ユーザー数: {{例: リリース初期は500~1000人, 将来的には1000万人規模 }}
計測可能なログ or イベント: {{例: 提案採用率, 操作回数}}

## 出力フォーマット

### テキスト解説  

1. 目的と主要仮説
2. 優先度マトリクス根拠 (影響度×実行コスト)
3. MVPスコープ (MoSCoW)
4. リスク管理 & ステークホルダー調整
5. タイムライン概要  

### CSV実験計画表  

列: Hypothesis, Metric, Success_Criteria, Method, Sample_Size, Timeline(週), Owner
Markdown コードブロックで `csv` 指定

  • C:ロードマップ策定
     (例:フェーズごとの機能開発計画の出力)

# === プロンプト: ロードマップ策定 ===

あなたはプロダクト戦略リードです。下記インプットを踏まえて

1) テキストでロードマップ解説
2) CSVで四半期ロードマップ表  

を作成してください。

## 入力

3年後ビジョン: {{自由記述}}
ビジネス目標 (売上・KPI): {{数字 or “非公開”}}
リソース上限 (人月): {{例: 12MM/Q}}
主要外部依存: {{例:パートナーAPI公開がFY25の4Qに予定されている}}
既存機能や契約: {{概要}}

## 出力フォーマット

### テキスト解説  

1. ビジョンからロードマップへのロジック
2. 各フェーズ目的と完了基準
3. メトリクスゲート
4. リスクバッファ設計
5. コミュニケーション方針(社内外)  

### CSVロードマップ(**横に時間軸**)

行: Theme/Epic
列: `Epic, {{Q1}}, {{Q2}}, {{Q3}}, …`(Quarter 列は入力順)
セル内容: 主要 Deliverable または “—”

  • D:バックログ作成
     (例:チケット分解や優先順位づけ)

# === プロンプト: バックログ生成(ストーリー/タスク+UXテスト対応) ===

あなたはスクラムPdMです。以下 *Input* を記入し、

1) テキスト概要 2) CSVチケットリスト

の順で出力してください。

## Input(* = 必須)

*対象フェーズ*: {{Discovery / Delivery / Launch / Growth}}
*対象エピック*: {{例: 食事記録}}
*チケット種別*: {{story | task | bug | **ux_test** }}   複数可/カンマ区切り
ユースケース一覧: {{例: ユーザーが朝食の写真を撮影する…}}
受け入れ基準テンプレ利用: {{はい / いいえ}}
優先度基準: {{RICE / WSJF / ICE}}

## Output Spec

### 1. テキスト概要  

A. バックログ分解方針(Epic Story Task **UX TEST**)
B. 優先順位付けの根拠(メトリクスゲート/影響度×工数)
C. UX TEST チケット指針
   目的/対象ユーザー/テストシナリオ/計測指標/所見メモ/次チケット化
   例として〈検索機能プロトAのユーザビリティ検証〉の構成を示す  

### 2. CSVチケットリスト  

**列:**
  Ticket_ID, Title, Type, Story_or_Objective, Acceptance_Criteria,
  Scenario/Steps, Metric, Finding/Note, Followup_Action,
  Priority, Est_Point, Dependency, Phase  

Ticket_ID “APP-###” 形式で連番
`Type` **ux_test** を指定した行は
   *Scenario/Steps* 列にテストシナリオ(箇条書き可)
   *Metric* 列に計測項目(例: SUS, 所要時間)
   *Finding/Note* 列に主観コメント or バグ要約
   *Followup_Action* 列に次チケット候補
必ず Markdown コードブロック内に “`csv “` として出力

実践Tips:スレッドを分けてAIをうまく使う

実際に生成AIを使うにあたっては、プロンプトを作るフェーズと、実際にアウトプットを出すフェーズ。この2つを別のスレッド(あるいはプロジェクト)で分けて進めるのが、おすすめです。

GPTは、これまでのやり取りのデータをふまえて返答を考えます。そのため、プロンプト作成中の文脈が残ったまま出力依頼をすると、意図しない影響が出ることもあります。スレッドを分けてあげることで、「このスレッドではこの指示(文言)のことだけ考えてね」と、AIに伝える範囲を整理できます。

AIをフル活用して、新規事業開発の推進力を手に入れよう

以上、新規事業PdMが活用したいプロンプトについて、お伝えしてきました。

新規事業の立ち上げには、スピード・柔軟性・粘り強さのすべてが求められます。考えることも、伝えることも、決めることも、山のようにある。そんな毎日の中で、生成AIはPdMにとって、確かな“推進力”となってくれる存在です。

人にしかできない意思決定や直感的な判断は、これまで通りPdMが担いながら、形式化されたドキュメント作成やチケット整理といった繰り返し業務は、GPTにサポートしてもらう。その分、もっと“考えること”や“仲間と対話すること”に時間を使えるようになります。

AIを味方につけて、新規事業開発のスピードアップとクオリティの向上を目指してみてはいかがでしょうか。

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