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生成AIプロダクトの競争優位(MOAT)徹底解説!体験価値と模倣困難な成長構造の作り方【ウェビナーレポート】

生成AIの進化により、誰もが短期間でAIプロダクトを作れる時代が到来しました。しかしその一方で、「作れること」自体はもはや競争優位にはなり得ず、持続的に選ばれ続けるための設計思想が問われています。

グッドパッチは2025年11月にセミナー「生成AIプロダクトの競争優位(MOAT)徹底解説!AIプロダクトのあるべき体験価値と模倣困難な競争優位の作り方」を開催しました。

本記事では、セミナーでお話しした、「従来のソフトウェア産業との比較を起点に、生成AI時代における競争の主戦場がどこへ移行するのか」「データフライホイール、ブランド、ディストリビューションといった模倣困難な競争優位(MOAT)をどのように構築すべきか」などをまとめてご紹介いたします。

生成AIプロダクトで長期的な価値創出を目指す企業にとって、設計の指針となる内容です。生成AIを単なる技術導入で終わらせず、事業成長へとつなげたいと考えるご担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

▼「登壇者本人のAIプロダクトに対する熱量」をセミナー動画から直接感じてください(グッドパッチ)【アーカイブ動画】生成AIプロダクトの競争優位(MOAT)徹底解説!〜AIプロダクトのあるべき体験価値と模倣困難な競争優位の作り方〜

生成AI産業を取り巻く背景

従来のソフトウェア産業(〜2010年代)の主役レイヤについて

従来のソフトウェア産業(〜2010年代)の主役レイヤについて
引用:生成AIプロダクトの競争優位(MOAT)徹底解説!AIプロダクトのあるべき体験価値と模倣困難な競争優位の作り方(以下同)

生成AIプロダクトの競争優位性(MOAT)を考察する前に、まずは生成AI登場以前のソフトウェア産業において、どのレイヤを中心に競争が繰り広げられていたのかを振り返ってみましょう。

2010年代までのソフトウェア産業では、アプリケーションレイヤが主導的な役割を果たしていました。インフラやハードウェアのコモディティ化により、差別化の軸はユーザー体験(UX)、開発・提供のスピード、さらにはマーケティング力へと移っていきました。

Slack、Salesforce、Instagramといったアプリケーション層の企業が高い収益を上げている事例からも、UXを制した企業が市場の勝者となったことが明らかです。さらに、クラウドやAPIの普及によりスタートアップの参入障壁が下がり、機能の優位性に加えて、それをいかに迅速に市場へ届けるかが競争力の鍵となっていきました。

今後の生成AIソフトウェア産業(2026年〜)の主役レイヤの予想

今後の生成AIソフトウェア産業(2026年〜)の主役レイヤの予想

では、生成AIの登場により、この産業構造は今後どのように変化していくのでしょうか。次に、主役となるレイヤの変遷について考察します。

生成AI時代には、まず基盤モデル(LLM)層が一時的に主役となり、その後、再びアプリケーションレイヤーが中心的な役割を担うと予想されます。これは、LLMの進化と普及によって、汎用的な知的処理が誰でも使えるインフラへと変化するためです。今後は、そうした基盤を活用しつつ、いかに独自の体験価値や文脈情報(顧客固有データ)を組み込めるかが成功の鍵となります。生成AIを活用したアプリケーションで成果を上げるには、単なる機能提供にとどまらず、ユーザーの信頼や日常に深く入り込むような体験設計が求められます。

生成AI技術の活用でプロダクトを作ること自体は誰でもできる時代に

アプリケーションレイヤの競争優位は顧客体験(データ・スピード・ネットワーク効果)

アプリケーションレイヤの競争優位は顧客体験(データ・スピード・ネットワーク効果)
引用:生成AIプロダクトの競争優位(MOAT)徹底解説!AIプロダクトのあるべき体験価値と模倣困難な競争優位の作り方(以下同)

生成AIの登場により、アプリケーション開発のハードルは大幅に下がりました。GPTなどの基盤モデルにシンプルなUIを組み合わせるだけで動作する「ラッパーアプリ」は、その代表的な例です。

しかし現在、競争優位の焦点は「迅速な開発」から「継続的な利用」へとシフトしています。具体的には、プロダクトを通じて得られる顧客固有のデータ、優れたUX(使いやすさ)、そして自然な拡散を生むネットワーク効果を、いかに戦略的に設計できるかが重要となります。

もはやAIモデル単体の性能だけでは競争優位は築けません。生成AIプロダクト全体としての「包括的な体験設計」こそが、真の価値の源泉になりつつあります。

(基盤モデルを活用する)AIスタートアップは「基盤モデルの進化を前提に設計」すべき

このような競争環境において、AIスタートアップが特に意識すべきなのは、「AI基盤モデルとの向き合い方」です。

重要なのは、「AI基盤モデルの進化を前提にしたプロダクト設計」を行うことです。モデルのアップデートと連動して自社プロダクトの価値も向上するように設計する、このアプローチこそが「模倣が難しい競争優位性(MOAT)の本質」といえるでしょう。

OpenAIのサム・アルトマンが述べているように、今後のアプリケーションには「基盤モデルの進化を前提とした設計」が不可欠です。例えば、現行の基盤モデルの弱点を補完するだけの機能は、モデルの進化によってすぐに不要となり、価値を失うリスクがあるため注意が必要です。

▶︎本セミナー動画で「AI基盤モデルの進化を前提とすべき理由」を失敗事例を紹介しながら解説しています

生成AIプロダクトの競争優位(MOAT)を構成する要素

Product Coreレイヤ

Product Coreレイヤ
引用:生成AIプロダクトの競争優位(MOAT)徹底解説!AIプロダクトのあるべき体験価値と模倣困難な競争優位の作り方(以下同)

ここからは、生成AIプロダクトの競争優位性を構造的に分解し、それぞれの要素を整理していきます。まず中核を成すのが、プロダクト自体の設計に関わる「Product Coreレイヤ」です。

このレイヤは、生成AIの出力品質を継続的に向上させる仕組み全体を指します。ユーザー体験(UX)を起点にデータが収集され、そのデータがAIモデルの強化に活用され、さらにUXが改善される──このような好循環、いわゆる「データフライホイール構造」の構築が鍵となります。重要なのは、プロダクトが単に使われるだけでなく、「その利用から得られるデータが直接的にモデル改善に役立つよう設計されている」ことです。例えば、ユーザーによるテキストの修正や補足が自然に学習データとして取り込まれるようなフィードバックループが理想的です。

Ecosystemレイヤ

Ecosystemレイヤ

AIプロダクトを持続的に進化させるためには、ユーザー、データ、パートナーとの連携を基盤としたエコシステムの構築も不可欠です。信頼性のあるブランドを育て、他ツールとの連携、効果的なマーケティング施策、ユーザーコミュニティの形成などを通じて、プロダクトの価値を広く深く届けていく必要があります。

中でもユーザーコミュニティは、継続利用を促進するだけでなく、学習データの質向上や製品改善へのフィードバック提供といった多方面で価値をもたらす重要な存在です。

Teamレイヤ

Teamレイヤ

最後に、これらの仕組みを継続的に機能させるためには、「Teamレイヤ」の要素も慎重に設計・検討する必要があります。

優れたAIプロダクトは、「Tiny Team」と呼ばれる小規模で機動力のあるチームから生まれることが多くあります。AIネイティブな開発手法を導入することで、少人数でも迅速な検証・改善サイクルを回す体制が整い、それが競争優位性につながります。

特に重要なのは、UX、技術、データ、ビジネスといった多様な視点を横断的に統合することです。エンジニア、デザイナー、ビジネス担当が密に連携し、迅速に市場へ価値を提供する体制こそが、強固なMOATの基盤となります。

生成AIプロダクトで特に重要な競争優位(MOAT)要素

生成AIプロダクトで特に重要な競争優位(MOAT)要素
引用:生成AIプロダクトの競争優位(MOAT)徹底解説!AIプロダクトのあるべき体験価値と模倣困難な競争優位の作り方(以下同)

ではここから、生成AIプロダクトで特に重要な競争優位(MOAT)となる要素を以下3つご紹介します。

 

Data Flywheel(データフライホイール)

Data Flywheel(データフライホイール)

生成AIプロダクトにおいて、競争優位性の中核を成すのが「データ」の扱い方です。

データフライホイールとは、「ユーザーが自然にプロダクトを利用する中で、文脈データやフィードバックが収集され、それがモデル改善の学習データとして活用される仕組み」を指します。これは、生成AI時代における最も本質的な競争優位要素の一つです。

例えば、医療領域で展開されている「Abridge」では、診察中の会話を録音・文字起こしし、医師が加筆・修正した内容を学習データとして蓄積しています。このサイクルを通じて、AIはより高精度な電子カルテ案を生成できるようになります。

Brand(ブランド)

Brand(ブランド)

現代の生成AIプロダクトにおいては、ユーザーからの信頼を獲得するために「ブランド」の重要性がますます高まっています。

生成AIの出力は高度で知的である反面、「不安定さ」や「予測不能な挙動」といったリスクも伴います。現在のユーザーは、「このAIの出力は信頼できるのか?」という観点を重視して、利用するプロダクトを選ぶ傾向が強まっています。ユーザーの信頼を獲得するには、「透明性と説明可能性」「信頼性と一貫性」「倫理性とデータガバナンス」といった要素が不可欠です。これら要件を満たすことで、ブランドの中核である「Trust(信頼)」を獲得でき、ユーザーが安心して長期的に利用し続けるための強固なMOATを築くことが可能になります。

Distribution(ディストリビューション)

Distribution(ディストリビューション)

ディストリビューションとは、単なる製品の流通にとどまらず、「プロダクトがユーザーの文脈に自然に溶け込むための戦略設計」を指します。具体的には、バイラル性のある体験設計、戦略的パートナーシップを通じた市場浸透、そしてユーザーの既存ツールや業務フローへの自然な統合が、重要な構成要素となります。

どれほど優れたプロダクトであっても、適切にユーザーへ届けられなければ、その価値は発揮されません。例えば、「Abridge」は電子カルテ大手のEpic社と連携することで、多くの医療機関に一気に導入されました。これは「ユーザーの文脈に深く入り込みながら同時にスイッチングコストを高める戦略」の好例といえます。

▶︎本セミナー動画で「Data Flywheel」をAbridgeがどのように実現しているかを詳しく解説しています

まとめ(AIプロダクトのあるべき体験価値と模倣困難な競争優位を作るための要素を整理)

  1. 「AIプロダクトのMOAT(競争優位)要素」を俯瞰で捉えよう
  2. 「data flywheel/brand/distribution」を意識しよう
  3. 「各MOAT要素における力学」を理解しよう

生成AI時代のプロダクト開発では、まずMOAT(競争優位)を俯瞰的に捉える視点が重要です。中でも2025年時点では、「Data Flywheel」「Brand」「Distribution」の3要素が特に重要な構造的優位を形成します。また、各MOAT要素がどのように価値を生み、維持・拡大していくかという力学を理解することで、より強固な差別化が可能になるはずです。

もはや「何を作るか」だけでなく、「どのように成長させ続けるか」が問われる時代です。生成AIを活用したプロダクトの競争力を高めたいとお考えであれば、ぜひ今のうちからMOATを意識した設計・戦略を取り入れていくことをおすすめします。

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生成AI時代のプロダクト開発では、モデル性能だけではなく、「ユーザーに継続的に使われる体験設計」こそが、競争優位(MOAT)の鍵となります。グッドパッチが提供する「Goodpatch AX ~AI Experience Design~」は、生成AIとUXデザインを掛け合わせ、「事業価値と体験価値を両立したAIプロダクト」を共創する支援サービスです。

UXリサーチ、PoC設計、プロトタイプ開発までを一貫して支援し、単なるAI技術の実装ではなく、「使われ続ける体験」を通じて事業に根付くAI活用を実現します。累計2,000件以上の実績を持ち、PdM・UX・エンジニアが連携するBTC型チームが、戦略立案から実装まで並走。プロダクトの“使われ方”に着目した設計で、持続可能な競争力を支えます。AI導入に不安をお持ちの方も、まずはお気軽にアイデアの壁打ちからご相談ください。

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