「炎を燃やし続ける覚悟はあるか」新卒に想いを伝える内定証書デザインプロセス
初めまして、Goodpatchの21卒UIデザイナー 平尾と申します。
私は今年の内定式で使用する内定証書を制作しました!
今回、たくさんの時間をかけて、たくさんの先輩の時間を頂き、たくさんの想いを込めてこの内定証書を制作しました。内定証書を制作するのは勿論一筋縄ではいかず、悔しさや葛藤もありました。そんな失敗や葛藤も含めて、この記事が少しでも誰かの役に立つことを願って、プロセスを記そうと思います。
2022新卒の内定式当日のレポートは以下からご覧ください!
目次
内定者に伝えたかった想い「炎を燃やし続ける覚悟はあるか」
今回内定証書に私が込めたコンセプトはこちらです。
炎を燃やし続ける覚悟はあるか
モチーフは昼も夜も輝き続ける、燃え続けている白夜の太陽。
今年行われた10周年の社員総会におけるグラフィックデザインが、未来の道を照らす青の炎の光、“Torchlight”というテーマだったのですが、その青い炎の火種をグッドパッチの内定者は持っていると思っています。
これからその炎を燃やし続ける中で、グッドパッチの未来を照らしていくことができる。
その一方で、辛いこと苦しいこと、時間、色んな要因でその火種は細く、弱くなってしまうこともあるかもしれません。
苦しくて火種が弱くなってしまいそうな時、この内定証書を思い返して、この夜の中でも輝く白夜の太陽のように、炎を燃やし続けてほしい、その覚悟をもって今までにない新しい道を照らして欲しい。そんな想いを胸に今回の内定証書を制作しました。
コンセプトメイキングプロセス
1. コンセプトの骨格となる「グッドパッチに入るという『意思と覚悟』」
まず、今回行う内定式の目的やコンセプトを確認しました。今回のコンセプトは、10周年社員総会のテーマだったTorchlightから派生した「自身の火種を燃やす」というもの。
このコンセプトや内定式の目的、新卒に期待することから、グッドパッチとしてこの内定証書で届けたい想い。そして去年参加した内定式で内定者という立場で固めた「覚悟」。
21卒内定式で、私たちに向けて土屋が送ったこんな言葉があります。
「みんなが今いるのは、誰かが座りたかった席なんだよ」
土屋からこの言葉を聞いたとき、改めて自分に「本当に覚悟があるのか」と問われているようで、正直まだ少しふわふわとした気持ちでいた当時の私は、初めてしっかりと覚悟を決められたんじゃないかと思います。
自分が内定者時代に心に残った言葉と、グッドパッチの一社員として届けたい「炎を燃やし続けてほしい」という想いが交わり、
グッドパッチに入るという「意思と覚悟」
を改めて確認してもらえるような内定書をつくろう、とコンセプトの骨格を決めました。
2. コンセプトコピーとモチーフ
まず、ビジュアルに落とし込むために、コンセプトの骨格をビジュアル表現に落とし込めるモチーフを探しつつ、ビジュアルを体現できるコンセプトコピーを考えます。炎に関連する画像やモチーフを集め、さらに関連する画像やモチーフを…と調べていくと、最後の方は石油の分子構造を調べていました。(多分テンションが上がってたんだろうな)
ちなみに以下のようなアイデア発散をする際は、オンラインホワイトボードのStrapを使っています。
モチーフから考えたコピーや、簡単な内定証書のラフを含めたコンセプト案をいくつか作成し、コピーを決定。それが、今回の内定証書のコンセプトの根幹となった「炎を燃やし続ける覚悟はあるか」というコピーです。
こんなストーリーを頭の中で描き、このコピーが生まれました。
そういえば炎って燃焼の3要素である可燃物、酸素供給体、熱源がなければ絶えてしまうけど、それって今回のコンセプトの骨格である、「グッドパッチに入るという『意思と覚悟』の再確認」を表現できるんじゃないか?
内定者は内定式を終え、これから入社まで半年の時間がある。入社してからも時間は過ぎていく。火種はグッドパッチに入社を決めた時点で灯っていて、刻々と過ぎる時間の中で、その火種を燃焼の3要素を供給し続けることで維持し、未来を照らすことができる光を持つ炎を絶やさず燃やし続けることができるか。
3. コンセプトモチーフを再考
コンセプトコピーは好評だったものの、モチーフが少し安直でもらった時に感動がない、というフィードバックをもらい、モチーフを再考することに。(社内では先輩方が快くフィードバックをくれました!)
そこで、前回モチーフを考えたときは炎に限定して調べていましたが、少し視野を広げて、炎に関連するもの以外も探していきました。
関連画像で探したりWikipediaを回遊したりしていたのですが、どうしてもしっくりくるモチーフが見つからず、手詰まりになった私は最終的に「コピーに関連するモチーフが出てきそうな私が好きなアーティストの曲の歌詞を調べる」という手段に行き着きました。
(この辺り、IZ*ONEのPanoramaとかFIESTAですね。いや本当に改めて見ると歌詞が素敵ワードだらけだな)
そしてこのFIESTAという曲の歌詞の一部にある「蜃気楼」から、色々と自然現象に関する発散が生まれ、今回のモチーフである「白夜」になんとか辿り着くことができました。夜になっても太陽が沈まず輝き続ける「白夜」が、「炎を燃やし続ける」というコンセプトにパズルのピースのようにぴったりはまったんです。
ビジュアルメイキングプロセス
1. ビジュアルがイメージできないコンセプトボードをつくってしまう事件が発生
モチーフが決定し、配色や画像を用いてビジュアルのタッチを表現するコンセプトボードを作成しましたが、お世辞にも他者が見た時にビジュアルをイメージできるコンセプトボードだ、とは言えないボヤッとしたボードを作ってしまいました。このボードを元にビジュアルを制作していくのですから、土台がしっかりしていないといつかブレが生じ手戻りが発生する、伝えたいものも伝えられない。そんな内定証書をつくってしまうかもしれません。
このようなボヤボヤボードをつくってしまった原因は何故か。それはコピーやモチーフは決まっているものの、自分の伝えたい想いをビジュアルでどういう表現をしたいのか、全く詰まっていないから、というフィードバックをいただき、ハッとしました。私は近道を行こうとして逆に回り道を選んでしまっていたのです。
2. コンセプトからビジュアルへと落とし込むための土台作り
以前グッドパッチ社内で行われた講座プログラムで「寄り添い」という1つの言葉から連想できる画像を集めてくる、というワークを複数人で行なったことがあるのですが、みんな違う雰囲気の画像を持ってきており、言葉ひとつとってもこんなにもイメージが違うんだ、とびっくりしたことがあります。今回も例外ではありません。
覚悟の言語化
まずどんな「覚悟」を表現したいかビジュアル化できるところまで言語化するところから始めます。自分が表現したい「覚悟」を示せそうと感じたワードを発散し、「不安な感情はあるものの、自分なりのどっしりとした芯をもっている覚悟」という言葉に収束しました。
表現方法のピックアップ
そして、その覚悟を表現するにはどんな方法があるのか調べ、適切なのかを検討していきます。ビジュアルの表現方法についての知識にあまり明るくない私はまずデザインの歴史から調べることに。記事を読み漁っていたところ、ロシア・アヴァンギャルドの表現に辿り着きました。
先程言語化した「不安な感情はあるものの、自分なりのどっしりとした芯をもっている覚悟」というコンセプトに、ロシア・アヴァンギャルドを代表するデザイナーである、エル・リシツキーがよく使用していた、塗りつぶされた幾何学図形の表現がぴったりだと感じたのです。またエル・リシツキーは「鑑賞するものに行動を促す」というテーマを持ち、幾何学図形を用いて誰が見てもわかる構図でメッセージを表現しており、今回の内定証書のデザインで想いを届けたいと思っていた自分と重なり、このロシア・アヴァンギャルドの表現方法を取り入れることに。
具体的な表現の検討
「覚悟」の表現に加えて今回のモチーフである「白夜」の表現、そして「内定証書」としての表現も踏まえて、色や余白感、レイアウトや線の太さ、テクスチャや紙のサイズといった、今回のコンセプトを表現するためにより具体的な表現を検討していきます。
3. カラーでラフを描きイメージを具体的に
コンセプトからビジュアルへと落とし込む土台が完成したら、それを元にラフを描いていきます。モノクロで描くよりスピードは遅いものの、今回白夜のイメージを表現するのに、昼と夜を両立させる色の表現がマストだと思ったため、Procreateでカラーでラフを描いてみたところ、ぐっとモノクロの時よりもイメージがつきやすくなりました。
4. 要素に分けてパターン出し
「覚悟」「白夜」「内定証書」の表現が最も上手くできたと思うラフ案を元に一旦イラレで起こし、大体の構成を決定しました。ここから1つ1つ要素に分けてデザインのパターン出しをしていきます。
メインで大きくパターン出しをしたのは、2つ。1つ目は、白夜らしさを表現する上で重要となるグラデーションの表現。2つ目は、太陽が輝く表現です。燃え続ける炎は、未来の道を照らす、という想いを総会のテーマからバトンを繋ぐため、そのテーマのメタファーとして表現に反映しました。
グラデーションのパターン出しでは、文字でグラデーションを表現したり、グラデーションの向きやちょっとした色味を変えたりとパターンを出していき、どのパターンが今回表現したいことにマッチしているか?を探っていきました。
太陽が輝く表現のパターン出しには本当に本当に悩まされました。どうしてもやりたい表現ができない。表現と表現がぶつかり、合わない。自分の力量不足に何度唇を噛んだことでしょうか。
5. 拘ってきた表現方法を捨てる勇気
パターン出しを終え、これからなんとか1つのデザインをブラッシュアップしていく、という段階でビジュアルデザイナーの先輩 中田にほぼ初見の状態でアウトプットを見てもらった時のこと。
中田からもらったのは、完全に抽象的なグラフィックではなく写実的に描写している部分がある(フレアの表現、背景の星など)が、主役の太陽がからっぽで抽象的な処理になっているので、単純に絵としてみたとき寂しい&重みがない。そしてそのせいでフレアが太陽より印象・存在感が大きくなってしまっているというフィードバック。
フィードバックをもらう前まで、無意識的に今まで自分が目を背けていたであろう違和感を言語化してもらい、腹を括りました。この時点で、残り作業できる日数は2日。ここからすべて抽象的なものに寄せることはできない。今まで自分が拘ってきた、ロシア・アヴァンギャルドの表現を取り入れることは、もう難しいという現実。拘っていた表現方法を捨て、太陽の表現を背景の写実度合いに合わせることに決心しました。
6. 様々な方の手を借りたブラッシュアップ
真ん中の太陽を少し写実的にすることで周りの表現と合わせ、会社で印刷しながら色々と太陽のカラーや表現、周りの枠の色・文字の色などを検討していきました。
太陽のパターンを決めきれず、どの表現が適切か、そしてなぜそう感じたのかについて、時間もなかったこともありSlackでたくさんの方にアンケートを取らせてもらいました。忙しい中、回答・理由だけでなくフィードバックまでくれた先輩・同期。本当に感謝してもしきれません。
Slackでのアンケートやフィードバックを踏まえ、周りをオレンジの光にすることで太陽の感じは残しつつ、中心の太陽は白っぽいカラーにすることで白夜という言葉の印象を損なわないものに。下の山や背景の星、周りのタイムラプスの太陽のカラーなどを馴染むようにブラッシュアップしました。
7. タイポグラフィが重要な裏面
今回も内定証書は表面はコンセプトを最大限表現するビジュアルに、裏面は内定者一人一人の名前と内定書に込めた想いを綴りました。裏面は文字がメインなため、フォント選定も慎重に行いました。
・大文字小文字の使い方
・字間
・フォントの太さ
・文字幅
をあらかじめ決めておき、そこから合うフォントを選定し、実際にデザインに置いてみて比較検討しました。最終的に目立たせたい名前部分は「Nelphim」、他の英字は少し癖の少ない「Cochin」、日本語は「りょう Text PlusN」というフォントに決定。
8. 印刷
紙屋さんで今回の内定証書に合いそうな紙を3種類ほど買い、キンコーズで試し刷りし、一番色が綺麗に出ている&太陽に当てた時にキラキラと光るのが今回の内定証書にぴったりで、質感も高級感があったペルーラという紙に印刷。紙がツルツルで滑りそうだった&自分が不器用なため、キンコーズの方に裁断もしていただきました。ありがたい。
内定式を終えて
内定式当日。実際に内定者の方と会って内定証書に込めた想いを伝えることができて、来年自分も内定証書を作りたい、内定証書が宝物になったという声をもらい、先輩ぶって少しクールめな感じで返事をしてしまった気がしますが、内心は小躍りしていました。
自分の込めた内定証書への想いが内定者の方に伝わり、同じ仕事をやりたいと言ってくれる、こんなに嬉しいことはありません。そう言ってもらえる内定証書をデザインできて、かけがえのない経験となりました。
今までこんなにビジュアルを長時間かけて制作したことはなかったですし、ここまで想いを大事にしてつくったこともありませんでした。今回内定証書を制作するにあたって本当にたくさんの方々に助けていただきました。
先輩・同期がいなければここまでの完成はあり得ませんでした。自分の実力不足で悔しい場面に何度も直面しましたが、その度に温かい手を差し伸べて下さったメンター、上長、会社の皆さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
グッドパッチの皆さん、ここまで読んでくださったあなた、ありがとうございました!
最後になりますが、グッドパッチでは一緒に未来を作る仲間を募集中です。
炎を燃やし続けられる覚悟がある!という方は、ぜひご連絡ください!
◆新卒採用