今回ご紹介するのは、UIデザインリードの栃尾 行美。
Goodpatch入社当初は、パートナー(クライアント)とワンチームになってプロジェクトを進めることが苦手だったと振り返ります。

そんな彼女は今、UIデザインリードとして、UIデザインユニットの1チームをまとめています。どんなときも「メンバーファースト」でいたいと話す栃尾に、この4年間を振り返ってもらいました。

「すごいデザイン会社?」興味本位で応募したGoodpatch

私はGoodpatchが2社目になります。前職は、リクルート系列の制作会社ニジボックスで、代理店さんと一緒に行う制作案件や新規事業のデザイン領域などを担当していました。約3年の間で、Webからアプリ、ロゴ、グラフィック、パンフレットといった、デザインに関わることはほとんど経験させてもらいました。今考えると、前職ではとてもありがたい環境を1年目から用意してもらったと思います。たくさんの案件を経験したことで、今でも活きる仕事のノウハウを習得したり、理想となるマネジメントの形を肌で感じることができていました。

実は、私は大学でグラフィックデザインやエディトリアルデザインを専門に学んでいたので、就活のときにはWebデザインの知識はほとんどなかったんです。でもデザインと名がつく領域ならなんでもやりたかった私は、あえて大学で学ばなかったWebの領域を選びました。生涯の学びの延長線として、自分の中で未知の世界だったWebデザインを仕事にしたいと考えたんです。入社後は「自力で勉強すればなんとかなる!」と思い、先輩の仕事を横で盗み見しながら独学で知識を身につけました。

転職を決めたのも、そんな未知の世界への強い興味がきっかけでした。あるとき、同僚から「Goodpatchというデザイン会社が勢いがあるらしい」と聞いて。「そんなすごいデザイン会社なんてどんなところなんだろう。ちょっと見てやろう」って(笑)、今思うとすごく恥ずかしいのですが、すぐにTwitterのアカウントを作り、人事の小山に面接をお願いしました。

Goodpatchについては「すごいデザイナーがいっぱいいる」「デザイナーを大事にしているらしい」という噂を聞いていたので、組織としての仕組みがしっかりしている会社なんだろうな、とイメージを持っていました。しかし実際は、組織崩壊後の立て直しの最中で。当時の面接でも取締役執行役員の松岡から「思っているよりもいい会社じゃないよ」と赤裸々に言われたことをとても覚えています。

どんな会社も何かしら問題は抱えているので、組織が抱えている問題と、それに対する解決策を正直に示してもらえたことで、ネガティブな感情は抱きませんでした。それに、私自身デザイナーの組織作りにもともと興味があったので、これからGoodpatchがどう成長していくのか立ち会うことができるいいチャンスだとも思いました。

グラフィックやエディトリアルの世界からWebに飛び込んで、今度はUIへ。入社する時点ではUIデザインは自分の専門領域ではありませんでしたが、「新しい世界に挑戦したい」という好奇心から入社を決めました。生来の負けず嫌いもあって、なぜか「自分なら絶対にやれる」と思っていましたね(笑)。

チーム戦に馴染めなかった入社直後の気持ちが変わった瞬間

職人気質のデザイナーが多いのかと思っていたので、入社してみるとアットホームな雰囲気で驚きました。ビジュアルデザイナーの中田が話していましたが、私も彼女と同じことを感じました。

私が「Goodpatchで働いていて嬉しい瞬間はいつですか?」と質問したとき、クリエイティブディレクターの難波から「メンバーの成長が感じられたとき」という答えが返ってきて、さらに「僕はみんなのことが大好きなんです」と笑顔で話している様子を見て、とてもシンプルですがすごく素敵だと思いました。その瞬間、Goodpatchで働こうと気持ちが決まりました。一緒に働く人と気兼ねなく気持ちや考えを伝えられる環境があること、これがGoodpatchを選んだ決め手です。

前職ではとにかく案件数が多かったこともあってそれまで一匹狼のように寡黙にアウトプットを作り続けてきたので、「パートナーとみんなで決める、みんなで結果を出す」という空気に正直戸惑ってしまいました。私が初めてアサインされたプロジェクトで、パートナー(クライアント)と一体感を持つためにプロジェクトのロゴを作ろうという話が出たんです。「成果物のロゴではなく、みんなの気持ちをひとつにするためだけにロゴを作るの?」と当時はすごく不思議で仕方なかったし、正直あまり腑に落ちていませんでした。その頃の私は、結果さえ出せればそれでいいと思っていたんです。

ですが、実際に、成果物が社会にリリースされ、パートナーから「頼んでよかった」と追加発注を受けたときに、結果だけではない信頼関係の重要性を実感して。「信頼の初速の大切さ」を、Goodpatchのデザインプロセスを通じて改めて再確認しました。

事業成長に寄与するUIデザインへのこだわり

クライアントと近い距離で働くことも、入社直後はいい意味でギャップに感じました。
Goodpatchのデザインパートナー事業は、事業責任者や経営者とデザイナーが直接やりとりを重ねます。その中で、「この人たちの想いをどうUIやビジュアルに落とし込んでいけば良いんだろう。いちデザイナーとして何を残せたら事業は成長するんだろう」という疑問が出てきて。その疑問に向き合うために挑戦したのが、契約マネジメントシステムContractS(旧:Holmes)のリニューアルプロジェクトでした。

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ContractSは、もともとGoodpatchのブランドエクスペリエンス(BX)チームが支援していたパートナーさんです。企業としての世界観を社内で共有するためのブランドデザインを支援したフェーズ1から1年経った2019年に、ContractS CLM(旧:Holmesクラウド)​​というプロダクトの設計思想を言語化し、ブランドから一貫性を保ったUIデザインの支援を担当しました。事業成長に対応し、寄与できるUIを作るためには、Goodpatchが離れた後もパートナーが自走して改善していけることが重要です。そこで、プロダクトのUIとして正しい振る舞いかどうかをパートナーだけで判断できる状態を作るため、社員さんのほぼ全員を巻き込んでブランドパーソナリティをアップデートしました。

社内で共通認識を形成しながらアップデートしたブランドパーソナリティは、さらに細分化してプロダクトとしての「しないこと」や、実際の文言の例にまで落とし込みました。今後事業が成長していく中で立ち戻る場所として、デザインガイドラインも納品することで、ブランドから実際にユーザーが触れるUIまで、一貫したブランド体験を届けることを意識したプロジェクトでした。

2021年5月にContractSさん主催のウェビナーに登壇させていただく機会があったのですが、Goodpatchが残したものが今も社内で共通言語として使われているそうです。デザイナーだけでなく、エンジニア、広報、営業など幅広い業種の方が、ブランドパーソナリティを拠り所にしてサービス改善を行っており、新しいアイディアを検討する際にも「それはブランドパーソナリティ侵害じゃないですか?」といった言葉が社内で飛び交うらしいです。

▲栃尾が残したブランドパーソナリティ。「こうあるべき」の定義の他に「Don’t」でやらないことも明記している

プロダクトのUIというわかりやすい成果物以外にも、組織に根付く文化を残せたことがとても嬉しかったです。信頼関係を構築しながら、パートナーとして仕事ができるGoodpatchだからこその仕事だったのかなと思います。

ContractS のプロジェクトを担当している期間は、ブランドエクスペリエンス(BX)フェーズを担当していた米永が毎週時間をとって壁打ちに付き合ってくれました。

Goodpatchにいる人たちは、みんながデザインが大好きで、どんなことを話していても自然とデザインの話になるので、常に何かを吸収できる環境です。プロジェクトで困ったことが起きても、誰かがすぐに手を差し伸べてくれます。「自分の仕事に直接関係しないのに、こんなに親身になって教えてくれるんだ!」と私自身、感激したくらいです。自然と助け合う空気はGoodpatchの良さのひとつだと思いますし、マネージャーになることを決めたのも、この組織の雰囲気に惹かれた部分が大きかったのかもしれません。

後悔したくないから、やれることはすべてやる。メンバーファーストに込める想い

現在は、マネージャー見習いとしてデザインユニットの中の1チームのマネジメントに挑戦しています。マネージャーの仕事を始めて半年が経ちますが、これまでと頭の使い方がまったく異なるので大変です。私はどうしてもメンバー目線になってしまいがちで。ですが、組織をドライブしていくことを考えると、売上を作ることや採用、育成のことも考えなければなりません。そのバランスをとっていく力は、正直まだまだと感じます。

前任のマネージャーが「メンバーファースト」ということを掲げていたんです。マネージャーは時として組織全体のことを考えて意思決定をしなければなりません。でも彼女がどんな時もまずは「メンバーファースト」でいる姿を見ていたので、その影響をとても受けていると思います

私は、誰かのために何かをすることが根本的に好きなんです。デザインを志したのも、自分が作ったものでユーザーやクライアントが喜んでくれることが幸せだったから。マネジメントの仕事も同じです。自分が頑張ることで、メンバーが仕事をしやすくなったり、楽しさを感じてくれるようになる。なのでメンバー理解は徹底して努めたいと思っていますし、上司と部下ではなく対等な理解者でありたいと常に考えています。

キャリアパスを書くためのキャリアシートを用意したり、メンバーそれぞれの「取扱説明書」を準備したり。どんな言葉をかけられたら嬉しいのか、逆にどんなことが嫌でストレスになるのかなどを共有してもらい、都度必ず見直すようにしています。

最近、マネジメントの仕事をしていて嬉しかった出来事は、私のチームのメンバーが内定証書のデザインを担当したことです。
自ら「やりたいです」と手を挙げてくれたのもあり、メンバーにとっていい経験になればと、メンターと力を合わせつつ密にコミュニケーションを取りながら内定書を作っていきました。

制作の過程では大変なことや、つらかったこともいっぱいあったと思うのですが、自ら違う部署の先輩にフィードバックをもらいに行き、そして試行錯誤して作り上げた内定書は、内定者の心を響かせる素敵なデザインになっていると思います。完成した内定書のクオリティもそうですが、なによりもデザインを通して、彼女の内定書制作への思いがたくさんの人に伝わったことが、本当に自分ごとのように嬉しかったです。

メンバーが日々成長していく姿を一番近くで感じさせてもらえるのは、マネジメントの仕事をさせてもらっているからこその特権だなと思います。

また、私はマネジメントにおいてやれることは先にすべてやっておきたいという思いで常に動いています。「たられば」で物事を考えるのが嫌なんです。「あと少しこの人に寄り添えていたら、こうだったかもしれない」など、残念な結果になってしまうことを考えると、先回りして思いつく限りのことをやっておきたいと思うんです。失敗することも多いですが、やらなかった後悔よりやった後悔がモットーです

ビジネスにインパクトを与えるUI/UXを創造できる人材

GoodpatchはUI/UXが得意な会社として、随分と社会から認知してもらえるまでに成長しています。そのため、これからは今以上にビジネスへの寄与度を考えた上で、適切なUIや組織に根ざしたデザイン設計の仕組みを作れる人材を増やしていかなければならないと感じています。ただ綺麗なUIを納品するのではなく、パートナーはなぜGoodpatchに依頼をしてくれていて、どういう状態が幸せで、ビジネスが前進したと言えるのか。そして、パートナーがいまよりももっと自走してデザインができる組織になるために、私たちには何ができるのか。そのことに真摯に向き合える人と一緒に、ビジネスにとってもユーザーにとっても良いデザインを作っていきたいです。

また現在、私のチームでは「ビジネスのニーズに寄り添った質の高いUIを作る」という目標を掲げていますが、それを実現する方法は決めていません。メンバーそれぞれの大事にしたいことや価値観を尊重したいからです。なので現在は、企業戦略から最適なUIを落とし込むことを得意とするメンバー、KPIからアプローチして数字とデザインを結びつけることを得意とするメンバー、エモーショナルデザインを深堀りしてさらに新しいアプローチを考えてくれるメンバーなど、定量や定性どちらも包含した様々な方面からビジネスへの寄与を考えられるメンバーに囲まれて仕事をしています。各々が大事にしたいことを尊重しながら、質の高いものを作る。自分たちが作ったものが、どれぐらいパートナーにインパクトを残せたのかをしっかり測っていける組織やチームを作っていきたいです。

適切なKPIを設定し定量・定性調査を行い、その結果をUIに落としこんでいくことができれば、今よりももっとパートナーのビジネスに貢献できると思います。今のチームにはそういう視点を持ったメンバーが揃っているので、それぞれの持ち味を存分に発揮して、これからのGoodpatchにいい影響を与えられるように、マネージャーとしても、いちプレイヤーとしても奮闘していきたいです。


栃尾も所属するUIデザインチームでは、UIデザインが大好きな方、誰かのためにデザインを作ることが好きな方、ビジネス的な価値を追求したい方を探しています。ぜひ気軽にご連絡ください!

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