今回インタビューしたのは、GoodpatchのUIデザインユニットに所属する中田 彩。東京藝術大学のデザイン学科でデザインを学び、Web制作会社でビジュアルデザインのスキルを磨いてきた彼女は、2020年12月にGoodpatchへ入社。「長く使われて愛されるものを作りたい」という想いや、そのためにビジュアルデザイナーができること、今後挑戦したいことについてお話を聞きました。

藝大時代に出会ったデジタル領域のデザイン

学生時代は、東京藝術大学のデザイン科で、平面から立体までデザインに関わる全般を学びました。幅広い領域で制作経験を積みながら、自分のやりたいデザイン領域を探索していました。

そんな当時、とあるアーティストのプロモーションビデオを見て衝撃を受けました。SNSを連動させたコンテンツで、ユーザーが自身のSNSアカウントでログインすると、プロモーションビデオ内に自分と友達のアイコンが表示されアーティストを形作っていく。鑑賞者だったユーザーをアーティストのビデオの参加者として巻き込んでいくコンテンツでした。デジタルの技術によって人と作品の間にインタラクティブ性をもたらす面白さに気づいて、自分はデザインの力をそういう領域に生かしていきたいと思いました。そんな思いから、新卒で入社したのは大阪にあるAID-DCCというクリエイティブカンパニーです。

入社当時の肩書きはデザイナー。でも、デジタル領域のデザイン経験はほとんどなかったので、最初の数年はWebサイトに使うパーツ素材やバナー制作などを繰り返し、いわば修行期間でした。3年目あたりから1つのサイトを任せてもらえるようになり、デザイナー兼アートディレクターとして、プロモーションやポータル、ブランド、ECサイトなど、計8年間で約60件のデジタル制作案件に携わりました。

手にとって長く使ってもらえるものを作りたい

働き始めて5年目、今へのターニングポイントになった印象深い仕事がありました。Webサイトではなくオフラインイベントの仕事を任されたんです。お子さんと親御さんが一緒に会場を回りながら楽しむイベントで、私が担当したのは、その時に使うタブレットアプリのUIデザインでした。

デジタル領域の画を作るデザイナーとしてアサインされたのは私一人だったので、体験の流れから画面に定着させるまで、とても広い範囲を任せてもらいました。アプリ制作は初めてで苦労も多かったのですが、その分完成したときの達成感も大きくて。自分が作ったものを手にして参加者が楽しんでくれている光景を直に見て、今までにない喜びを感じたんです

それまで私がやってきたのは、Webを使ったプロモーションなどの瞬間的に注目を集めて記憶に残すためのデザインでしたが、この経験をきっかけに、ユーザーが生活の中で手にとって、長く使ってくれるものを作りたいという気持ちが芽生えました。そんなとき、社内の先輩がGoodpatchに転職したんです。エースプレイヤーとして活躍していた人だったので、なぜUI/UXデザインの会社に行くんだろうと疑問に思いましたが、私自身「デジタル領域の制作経験を生かしながら、長く使われるものを作りたい」という気持ちが芽生えてから、それが実現できそうな会社に色々話を聞きに行ってみることにしました。

決め手は、素直に気持ちや考えを伝えられる環境

UX/UIデザインができる会社を探す中で転職エージェントも利用していて、あげてもらった候補の中にGoodpatchがありました。2回目の面接でデザインマネージャーの2人と話す中で、心を打たれた瞬間がありました。

面接をしてくれたデザインディレクターの野崎は、第一印象が“尖ったデザイナー”という雰囲気なので、最初はとても緊張しました(笑)。ですが、お互いに自分のデザイン観やこれまでしてきた仕事について話す中で、この人たちは自分と近い感性を持っていると感じました。

また私が「Goodpatchで働いていて嬉しい瞬間はいつですか?」と質問したとき、クリエイティブディレクターの難波から「メンバーの成長が感じられたとき」という答えが返ってきて、さらに「僕はみんなのことが大好きなんです」と笑顔で話している様子を見て、とてもシンプルですがすごく素敵だと思いました。その瞬間、Goodpatchで働こうと気持ちが決まりました。一緒に働く人と気兼ねなく気持ちや考えを伝えられる環境があること、これがGoodpatchを選んだ決め手です。

入社して衝撃を受けたカルチャーの違い

1.職種間の境界がいい意味であいまい

入社後は、いい意味で前職とギャップを感じることがたくさんありました。まず、UIデザイナーの仕事の幅が広いこと。入社して初めて担当することになったのは、建設現場で働くすべての人を支えるプラットフォームサービス「助太刀」で、チームメンバー全員が「いいものを作るために領域を超えて何でもやろう」という姿勢を持っていることに感銘を受けました。私もUIデザイナーとして参加しましたが、アプリやWebのUIだけでなく、UXデザイナーとプラットフォームサービス全体の提供価値を検討したり、サービス名を発散したりしていました。

助太刀のデザインプロセス

助太刀のサービスアイデンティティ・リニューアルの現場【デザイナー対談】

2.デザイナーがクライアントと直接話す

クライアントの経営陣と対等に話し、距離が近いことにもとても驚きました。前職ではクライアントと話すのはプロデューサーやディレクターの仕事で、デザイナーはそこで決まったものを作ることが仕事だったので、最初はその違いに慣れることができませんでした。クライアントと一緒にミーティングをする時にも「こんなことを外部の私が発言して大丈夫なのかな」と委縮してしまい、発言ができなかった時期もありましたね。

クライアントと対等に話せるデザイナーになるために、意識的に自分を変化させた部分があります。クライアントが抱える課題の構造を整理し、それを解決するために何をどうしていけばいいのかというところから向き合うように意識しました。時々「こういう物を作りたいんだけど..」という要望をいただくことがあります。そんな時、私たちが「なぜそれをするのか」のWhyから尋ねて一緒に考えていけるようにしています。

元々の私は、どちらかというと人とのコミュニケーションが苦手なタイプだったのですが、Goodpatchに入社してから社内外問わずコミュニケーション量が増えたことは自分自身の成長にも繋がっています。今は入社当時よりも、クライアントとの共創が少しずつできるようになってきているんじゃないかなと思います。

3.ユーザー起点でデザインする

また、ユーザー起点のデザイン思考も、私にとっては新しいカルチャーでした。前職では、職人気質のクリエイティブが多く、ディレクターやデザイナーのひらめきから生まれた、主観的に良いと感じることを優先する物作りでした。しかしGoodpatchでは、ユーザーに共感し、ユーザーが使いやすい・いいと思うものを作るというマインドが根付いています。ギャップは大きかったのですが、長く使われるものを作るために大切なアプローチの一つですし、自分には足りてなかった観点なので、実践で取り入れていっています。

誰もがスマートに見える中で「賢く見せない」上司の存在

Goodpatchのメンバーは、それぞれ持っているスキルや考え方が違うところが魅力です。クライアントワークを担当する際は、プロジェクトごとに新しいチームが組まれるので、毎回いろんなメンバーと接することができます。中でも私が影響を受けているメンバーの一人が、直属の上司にあたるデザインリードの山木です。

Goodpatchのメンバーは筋道を立てて論理的に話す人が多く「賢そうな人たちだなぁ」と思い、自分は一つ一つの発言に慎重になっていました。そんな中でも、山木とはすぐに打ち解けることができたんです。それはどうしてだろうと思っていたら、彼は「自分のことを賢く見せないようにしている」と言っていたんです。チームメンバーやクライアントから本音を引き出したり、いいものを作っていくためには、自分を必要以上に大きく見せたり、賢く見せないことがとても重要だと思うので、私もロジカルに整理して話すだけでなく、話しやすい空気を作るデザイナーでありたいと心がけています。

1秒で使いたいと思わせるデザインを

これからGoodpatchで挑戦したいことは、大きく2つあります。

1つは、前職で行っていたようなアート思考のデザインプロセスを取り入れていくことです。日々リリースされる様々なサービスは、そのブランドの輪郭や顔が似通ってきていると感じます。機能価値がコモディティ化してきた時にもユーザーの目にとまって、使いたい、使い続けたいサービスを生み出すためには、ユーザーや市場調査を拠り所にしたファクトの積み上げ式プロセスだけでなく、作り手やブランドの主観に基づいたアプローチも必要だと感じています。

個人がそれまで培ってきた経験や人生観、美的センスというのは、捉えどころのないものです。でもそれらを糧にして個人の感覚で最高に好きだと思えるサービスを作っていくアプローチは、これからのGoodpatch、これからのサービスデザインに大きな力を与えてくれると信じています。デザイン思考とアート思考、どちらがいいという話ではなく、いいとこ取りでバランスを取りながら実践していきたいです。

もう1つは、サービスとユーザーの接点になる表層のクラフトにこだわることです。分かりやすい例としてはApple製品の箱の体験です。iPodやiPad、iMacの白い箱をスーッと上に持ち上げる時のあのドキドキや緊張感ある体験は、あの箱のサイズが1mmでもズレていたら実現しないですよね。Goodpatchが生み出すアウトプットにも、そんなクラフトマンシップをもっと宿らせていきたいと思っています。

Goodpatchのクリエイティブに関して、ビジュアルデザインを統括する山木は、「使いたいか使いたくないかは、見た瞬間の1秒で決まる」と言います。1秒で使いたいと思わせるデザインのためにも、やっぱりクラフトにはこだわりたいです。

Goodpatchには、まだまだ新しい挑戦ができる可能性が広がっています。アート思考を取り入れたプロセスでの物作りを得意とする方や、表層のクラフトにこだわれるデザイナーさんがいたら、ぜひ一緒にGoodpatchの未来を作っていきたいです。そして何より「表層がいいとユーザーが使いたくなる、ファンになる」ということを、まずは自分が実践で示していきたいです。

さいごに

Goodpatchには、ビジュアルデザインに強みを持つUIデザイナーがいます。サービスの思想を反映し、人の心を動かすデザインを作ることに興味のある方、ぜひこちらを覗いてみてください!

中途採用・ビジュアルデザイナー

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