デザイナーであり続けるため、グッドパッチを選んだ。ものづくりを通して拡張する「デザイン」に真摯なチーム
今回インタビューしたのはCreative Design Unitに所属する山木 拓実。フリーランスやゲーム会社でのデザイナー歴を経て、なぜGoodpatchを選んだのか。デザイナーであり続けるための決意や仕事の幸福度のお話、デザイナーが向き合うものづくりの環境について聞いてみました。
デザイナーの意味を模索しながら歩んだキャリア
キャリアを遡ると、デザイン系の専門学校を出てから22歳ぐらいまでは広告代理店でアルバイトをしていました。フリーランスで5〜6年、前職のゲーム会社で9年働いてからGoodpatchに入社しています。デザイナー歴はそこそこに長いですが、正社員としては2社目です。
これまでに経験した業界は幅広いかもしれません。ただその分、デザイナーの役割がかなり限定的な環境も多く見てきました。
初めて働いた広告代理店では、デザイナーの仕事はほとんどオペレーターに近く、営業さんが仕事を取ってきて、言われた通りに作り、営業さんがクライアント先に持っていく。デザイナーの仕事はその後の工程で共有されますが、作業としては修正でした。修正する理由、どんなお金の動きがあったのか、どんな話し合いがされたのかもわからない状態でしたね。窓口が常に自分以外の誰かで、何も知らないままルーティンの仕事が続いていました。
あるとき「確かに自分はモノを作っているけど、本当にこの仕事はデザイナーなのか」と疑問が生まれました。そこで、お金の動き含めクライアントとの様々なやりとりなど、これまで見えていなかった部分を自分で体験したい、そして本当の意味でのデザインを模索したいと考え、広告代理店からフリーランスのデザイナーに転身しました。やることが極端なんです(笑)。
フリーランス時代はひたすら自分で営業して、デザインを作って納品して、費用対効果を考えて生活する日々。行政や飲食、映画など色々な業界の仕事を経験していた2008年、リーマンショックが起こりました。そこで、一度足を止めて新しい環境に飛び込んでみようと思ったんです。それで前職のゲーム会社に入社を決めました。
当時はまだスマートフォンがない時代。ガラケーのゲームにヒット作品は少なく、入社した会社もGPS機能を利用して、ゲーム要素をつなぎ合わせたサービスを作っている会社でした。私自身も入社当初は「ゲーム会社に入った」という自覚はありませんでしたが、スマートフォンの登場によって一気にゲーム会社にシフトしていきました。そんな変化の中で、「UI」という言葉が普及し始めたと思います。
自分はフリーランス時代にWebサイトの案件などにも携わっていたので、これからはUIデザイナーとして活動していくことになるとばかり思っていましたが、気づけば「ゲーム会社のグラフィックデザイナー」として9年間も働いていました。ゲーム会社なのに、入社してから数年間はイラストなどのビジュアルに強いデザイナーが僕以外にいなかったんです。そういったこともあり、様々なゲームのグラフィックやキービジュアルを通して世界観を表現するという仕事をやり続けたのですが、9年も同じ仕事を続けたのは初めての経験でしたね。そして大きな転機になりました。
仕事における4つの幸福度
色々な仕事や長い期間デザイナーを経験してきた中で、自分は、仕事における幸福度を4段階に分けて考えています。
- 自分がやりたくて、周りに求められている仕事
- 自分がやりたくないけど、周りに求められている仕事
- 自分がやりたいけど、周りに求められていない仕事
- 自分はやりたくないし、周りにも求められていない仕事
自分からも周りからも求められている仕事が最も幸福だと思っています。そして2番目と3番目の違いは、「周りから求められているかどうか」です。僕の当時の理想のデザイナー像って、求められることに適応できる人だったんですよね。だからこそ、3番目の仕事をするデザイナーにはならないように意識していました。
ゲーム会社でのキャリアを振り返ると「自分がやりたくて、求められている仕事」だったのかなと思います。求められていたからこそ続けられました。しかし、今後10年など長期的な視点でキャリアを考えたとき、デザイン、デザイナーという言葉や期待が多様化している流れの中で、同じ仕事ばかり続けているとデザイナーとして求められ続けるのは無理だだろうと感じたんです。自分の中で意識や物事の捉え方にパラダイムシフトを起こさないと、デザイナーは続けていけない。「デザイン」という言葉が多様化している中で、自分なりの答えを出せていないことにも危機感を覚えました。
このまま大きな組織の中で、言ってしまえばやれることだけをやって適応していくデザイナーを続けていくと、いつか自分が世の中に求められなくなる瞬間が増える気がしました。求められ続けるデザイナーになるためには、ここに留まっていてはいけない。新たな需要を作り出せるようなスキルセット、マインドをさらに身につけなくてはいけないと、新たな環境を探して前職を退職しました。
求められ続けるデザイナーでありたい
ちょうどその頃、Wantedlyを通じてスカウトが届いて、初めてGoodpatchのことを知りました。何よりも「デザインの力を証明する」という言葉が響いたんです。自分が目指してたのって、これじゃない?と思って、話を聞きに行くことにしました。
代表の土屋や執行役員の松岡と会ってみて、これまで限定的なものに感じていた「デザイン」というものが、より大きな価値を生み出すものになりうる可能性を感じました。表層を綺麗に作るだけがデザイナーではないというメッセージが伝わって、すごく正しいと共感したので、ジョインすることを決めました。とは言っても、自分が得意なのは表層の作り込みだったりするんですが(笑)。
Goodpatchでは、デザインパートナー事業のUIデザイナーとして働き始めました。これまで事業会社での経験が長かったので、クライアントの課題解決にちゃんと向き合うためには、頭を切り替えないと適応できないことを強く感じました。同時に、相手が抱えている課題を理解して一緒に取り組む、すごく面白い仕事だとも思いましたね。
パートナー事業の傍ら、自分の得意分野であるビジュアルデザインを活かしたバリュー浸透のためのステッカーやポスター制作などのサブプロジェクトも立ち上げ、自らも参加しました。自分のアウトプットに対して、社内のメンバーに驚かれたことは意外でしたね。これまで当たり前だと思って毎日やり続けていたことが、この会社ではなかなか新鮮に捉えられるんだなと。
社内イベントPizzapatchでのポスター発表の様子。Goodpatchの5つのコアバリューを5人のデザイナーがビジュアルで表現しポスターを制作した。
僕はみんなとは逆に、クライアントの課題解決ってこういう風に進めるんだな、など逆に驚く経験ばかりでした。感覚としては、プロサッカー選手がプロ野球チームに入ったような状態だったんじゃないでしょうか。おこがましいかもしれませんが(笑)。リフティングとかドリブルをすると周りが「おお!」と驚くけれど、僕にとってはそれは当たり前の話で、逆に私はグローブの使い方もバットの振り方も不慣れで、というようなことがお互いに起きていたのを感じました。それでも、同じスポーツ選手として考えると、身体の使い方や基礎的な部分では共通点があったことがよかったです。世界観をビジュアルで表現するという根底の部分はやはりみんな共通していました。
Goodpatchにはマネージャー・リードに正式になる前に一定期間、挑戦できる「ポテンシャル」という仕組みがあります。僕もプレイヤーとしていくつかのプロジェクトを担当したタイミングで、ポテンシャルリードに挑戦してみないかというお話をいただきました。挑戦してみようと決意できたのは、例の幸福度の考え方でいう「求められている仕事」だと思ったからです。求められることがプレイヤーとしてでも、マネージャーとしてでも最適化できるのであれば、組織に貢献できる。自分が力になれるのであれば、やってみたいと思ったんです。
実際にポテンシャルデザインリードとしてメンバーと向き合ってみると、文化の違いや人とのコミュニケーション、ナレッジ共有の方法、デザイナーというものに対する解釈、仕事のプロセス、何もかもがそれぞれ違っています。それが大きな学びであり、最初はカルチャーショックでもありました。
Goodpatchには独自のデザインプロセスがあって、どんなときもWhyやプロセスを大切にするカルチャーがあります。それはいいことでもある反面、アウトプットにたどり着くまでに時間が必要です。なのでしばらくは、プロセスを短く実際に手に取れるアウトプットにフォーカスできる機会を作ることに徹しました。代表的なアウトプットは、Goodpatchのコアバリューをビジュアルで表現したTシャツやステッカーです。僕はディレクションを担当し、毎回発表で驚くみんなの反応が新鮮でしたね。
そんなアウトプットを通してメンバーのスキルも磨かれたので、今期からはよりクオリティ向上に注力しています。私自身は、希望してプレイヤーとして手も動かし続けています。リードはメンバーにとって監督のような存在だと思うのですが、私は選手をまだまだやらなくちゃいけないな、と思ったんです。選手として打席に立ったり、守備に入って、試合に出る苦しさや楽しさを理解する。その上で監督としてチーム全体のクオリティアップに繋がるプレイングマネージャーのような動きをしたいと思っています。
「みんな」でやるから生み出せる、大きな成果
バリューTシャツ発表会の様子
ここ半年ほど、Goodpatchでは、メンバー同士が連携して様々な課題が洗い出されてきました。これからは、それぞれが得意分野という領域を超えた先でクオリティアップに繋がることが理想の姿なのではないでしょうか。それが機能して、チームでいいものを作るのが当たり前というスタイルにできたら、すごく良いものができるのだろうなと感じます。
Goodpatchにいて良いなと思うことは、デザインという言葉、概念に対して真摯に向き合うメンバーがこれだけいる環境そのものです。自分自身が惹かれたきっかけの一つでもある「デザインの力を証明する」というミッションを大切にして、全員が推進する取り組みをしている環境はなかなかないと思います。
私はフリーランス時代も長いこともあり、個人プレーが得意なタイプです。だけど、みんなで何かを作り上げる楽しさも知っています。
そんな私でもコアバリューの一つである「最高のチームのつくり手になる」を体現し、チーム運営を自主的にサポートしてくれるメンバーを見ていて、ふと気づいたんです。チームづくりも全員が均等に担ってもいいのだと。
チームメンバーが全部で7人いたら、1人が14.3%持つ計算で、ちょっと頑張ると20%ぐらいにもなりますよね。今では自分だけではやりきれなかったことや気づけなかったことに対して仲間が気づかせてくれる。相乗効果ってこういう風に生まれるのかと、初めて実感できています。
インパクトが大きいことを成し遂げるためには、100人の中の1人だけが頑張ってもあまり意味がない。1人が数%ずつで頑張るから大きいことができるのだと確信に変わりました。これからは、そんなみんなで大きなインパクトを生んでいきたいと思います。
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