今回インタビューをお届けするのはBXデザイナーの米永さら沙。2017年、UIデザイナーとしてGoodpatchにジョインし、ビジュアルアイデンティティの構築からロゴデザイン、UIデザインまでを担当したCatariでは社内MVPを受賞。その後も事業ビジョンの策定など領域を切り拓いてきた彼女は、現在、企業の根幹にある経営者の想いを言語化・構造化して新たな価値を紡ぎ出すBXデザイナーとして様々なクライアントを前進させています。GoodpatchのIPOブランディングも担当した彼女のストーリーから、企業を内側からデザインするBXデザイナーの仕事を紐解きます。

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「なぜ作るのか」から考えて、残るデザインを作りたい

私は美大出身ではなく、言語学専攻の文系の学生でした。就活中、偶然目にした「未経験でも3ヶ月でWebデザイナーになれる」という広告がきっかけでWebデザインの勉強を始めて、新卒でデジタルを中心とした広告の制作会社に入社したのがファーストキャリアです。入社してから3年間は、右も左も分からない未経験の状態から自分だけでデザインができるようになることを目標に、とにかくがむしゃらに働きました。先輩と自分のアウトプットを比べてあまりの違いに落ち込んだりもしましたが、新人でも本当にいろんな経験をさせてもらいました。一人前として自走している手応えを感じ始めてから、転職を意識するようになりました。次に行くなら広告代理店か、さらにデザインスキルを磨ける制作会社への道がありましたが、単純にデザイン業界のことをもっと深く知りたくなって、どんな会社があるのか幅広く見てみることにしたんです。何社か話を聞きに行った中に、Goodpatchがありました。

カジュアル面談では、クライアントとワンチームになってサービスをつくるGoodpatchの姿勢に強く惹かれました。もともと働いていた制作会社では、デザイナーがクライアントと顔をあわせる機会は少なくて、企画書以上の情報がもらえないことも。複数アイデアを提案しても、「なぜA案ではなくB案に決まったのか」の背景が詳しく共有されないまま案件が終わることも多く、モヤモヤした気持ちを抱えることもありました。
デザイナーとして働く中で、私は「心に残り続けるデザインが作りたい」という気持ちが強くあります。残るものを作るためには、「なぜ作るのか」から紐解いて考えていくべきで、Goodpatchならそれができると思いました。デザイナーが直接クライアントとやりとりをして、判断基準がクリアな状態で仕事ができることが大きな決め手となり、2017年7月にGoodpatchへ入社しました。

デザイナーがクライアントと対等に議論する環境

入社してから驚いたのは、想像以上にクライアントとの距離が近かったことです。プロジェクトにおいて自分の関わり方や、デザインの意思決定の方法なども180度違っていて、いい意味でギャップを感じることばかりでしたね。

今まではクライアントから直接フィードバックをもらうことがなかったので、喜んだ顔も、期待を超えられずがっかりされる顔も見たことがなかったんです。Goodpatchにクライアントが期待していることは「なぜこのデザインなのか」を提案すること。対等に対話することが求められていたので、「もう逃げられない、向き合うしかない」と腹を括り、苦手だったプレゼンの練習を重ねました。どれだけ自分がいいと思うデザインを作っても、クライアントに必要性が伝わらなければ作ったものが無駄になるからです。

自分でプレゼンをしたり、上流から入り込む経験もなかったので、初めはクライアントと自分の共通言語が見つけられませんでした。ただ成果物だけを見せても会話が成り立たないのです。そこでコミュニケーション能力の重要性を痛感し、クライアントと会話をするための共通言語、デザインしやすい環境を作りにいくことが自分の役割だと考えるようになりました。

そのために、「なぜ作るのか」の意図やストーリーを自分で紡ぎ、細部のアウトプットへ落とし込むスタイルを編み出しました。その経験を初めてできたのが、TBSテレビさんのCatariのプロジェクトです。デザインするために必要な材料をクライアントと一緒に探し出すためのワークショップ設計など、ストーリーを作るための道筋をプロジェクトに組み込み、ビジュアルアイデンティティという手法でサービスの世界観を言語化・ビジュアル化した初めてのプロジェクトでした。アウトプットは社内でも評価していただき、この年のベストプロジェクト賞を受賞することもできました。この経験を通して、デザインする全ての要素には必ず役割や目的を与える必要があることを学び、自信にもつながりました。

Catariのデザインプロセスはこちら

経営者、事業責任者と同じ景色を見るために

クライアントとのコミュニケーションの次にぶつかった壁は、事業理解でした。ビジネスの全体像がわからないと、デザインするために何を材料として集めればいいのかもわかりません。クライアントが意思決定するために必要な材料が何なのか、マーケットを知る必要性を感じるようになりました。

事業理解の方法に関しては、周りのメンバーから学びました。自分と違う専門性を持ったメンバーは、思考プロセスが異なるので、その人のいいなと思う視野や観点を自分にマージしていきました。
また、クライアントと話していて、彼らが見えている景色が自分には見えていないと気づく瞬間もありました。細かい解像度を全てクライアントと揃えることはできなくても、これまで自分が経験した案件の中から、近い強い業界構造のものをリプレイスして考えたり、どれくらい先の未来を見ているのか?を知るために、自分もまた未来を描き、ぶつけてすり合わせてみるなど工夫をこらしました。

クライアントとのミーティング風景

もともと、自分が全く知らない領域に対しての興味や好奇心は強い方です。ひとつの専門性を深めるよりも、色々な領域のことを知りたいし、自分が知らないことをネガティブに受け止めず、学んでいくタイプではあるかなと思います。ビジネスを知ればデザインももっと考えやすくなりますしね。

米永が担当した主なデザインパートナー事例:
価値の構造化で、プロダクトの未来を描く。FORCASとGoodpatchの共創
未来へ企業の思想をつなぐ。UniposとGoodpatchが紡ぐブランドエクスペリエンスデザイン

Brand Experienceで重要なのは「ストーリーづくり」

Goodpatchでは自分も立ち上げに関わったBX(Brand Experience)領域でBXデザイナーとして働いています。BXには企業・組織・プロダクト・マーケティング・ブランディングなど様々な要素が絡み合っていて、白黒つけづらい領域です。BXデザイナーは俯瞰した視点で様々な専門性をもつ人の観点を繋げて、チームの視点をまとめることが役割の一つです。

私の強みはファーストキャリアで経験を積んだビジュアルデザインよりも、「ストーリー作り」だと考えています。社会性や時代性に対して、その企業の存在価値を見出し、社会にどのような価値を与えられるのかを表現すること。
最近は歴史や哲学、ギリシャ神話に興味があります。考え方を現代に置き換えたり、ヒントが必ずあると思うんです。なぜその文化が浸透したのか、なぜその宗教は伝播し衰退したのかなどを考えるのは楽しいです。思考のきっかけにもなりますし、実際にプロジェクトで活用したこともあります。

やりがいを感じるのは、構造化したアウトプットを評価された時です。クライアントやチームメンバーが言いたかったことをうまく言語化できた瞬間は自信になりますし、自分の武器になります。「よくわかんないけど、すごいね、かっこいいね」ではなく、チームの血肉となってその後も活用できるものをアウトプットとして出したいです。

また、私が担当してきたプロジェクトはtoBの事業が多く、社会に与える影響力が大きいことも魅力の一つです。契約マネジメントサービスを展開しているHolmesさんや、物流スタートアップのShippioさんなど、5年後10年後の世界を変えるようなプロダクトを、デザインの力で前進させられることはとても嬉しいです。BXデザイナーとしてプロジェクトを通して、世の中を前進させられていることが大きなやりがいです。

HolmesのBXデザイン事例。ミッションステートメントのポスター、ボードなどを提案した。

Holmesのデザインプロセスはこちら

ShippioのBXデザイン事例。ビジョン・ミッションのほか、バリューとなる”Anchors”を提案した。物流業界で挑戦するShippioの碇となるように、と想いが込められている。

Shippioのデザインプロセスはこちら

最近は、クライアントワーク以外にGoodpatch自体のコーポレートブランディングにも関わっています。IPO前に準備したコーポレートサイトのリニューアルでは、代表の土屋と何度も議論しながらGoodpatchの提供できる価値や、私たちが信じるデザインについて言語化しました。そこで生まれた“Design to empower.”というキャッチコピーは、IPO時に作った目論見書の表紙にもなっています。

「夢叶う」花言葉を持つブルーローズを用いてデザインした目論見書

関連記事:BXデザイナーが振り返る、 グッドパッチIPOブランディングの舞台裏🌹

米永が代表土屋との対話からシナリオ、コピーを担当したGoodpatchのブランドムービー

BXの観点でビジネスをサポートし、企業を前進させる

BXデザイナーという仕事は、手を動かす時間は少なくなるので向き不向きはあります。ただ、モノだけではなく、思想を残すことに意味を見出しているデザイナーも増えているので、興味を持ってくれる方もいるのではないかなと思います。

今後も企業やサービスのビジョンを言語化、形にすることで挑戦者たちのサポートをしていきたいです。素晴らしい志を抱いているのにうまく言語化できていなかったり、自信を持てていない人はまだ世の中にたくさんいます。高みを見ている人たちは、時に意思決定の場面で孤独と戦うこともあると思います。そんな人たちにBXの価値を届けていくことで、背中を押し、前進する勇気を届けたいです。

2016年の創業から、少しずつ組織が大きくなる中で、僕たちはVision,Missionを考えようとして二回失敗しています。オフサイトミーティングでアイデアのタネが生まれたのに実行できずに終わったり、創業者の熱量が先行した言葉になってしまってメンバーに伝わらなかったり…。スタートアップのアンチパターンを全部通ってきているかもしれません。そんなことがあったので「もう同じ失敗はできない」と思っていました。
引用:内側からデザインする。ShippioとGoodpatchが向き合ったブランドエクスペリエンス

僕の頭の中だけにあったイメージを概念図で可視化してもらったことでブランドの解像度が一気に上がり、ついに言語化できるようになったんです。
引用:ビジョンドリブンなアプローチによるブランドデザイン事例。 契約マネジメントシステム「Holmes」

クライアントのビジネスをBXの観点でサポートし、企業そのものを前進させることができたら、それはクライアントを通してGoodpatchがデザインの力を証明していることになる。今後もBXデザイナーとして、挑戦者たちのエネルギーになる仕事をしていきたいです。


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