2021年9月に創業10周年を迎えたGoodpatch。先日、10年間の歩みと未来への想いを込めた、初のブランドブックが完成しました!社内でも手探りで始まったブランドブック制作のプロセスを、デザインを担当したBrand Experience Designer(以下 BXデザイナー)大久保が代表して紹介します。
デザインの力を使ったコーポレートブランディング、従業員エンゲージメント向上の取り組みとして、参考にしてもらえると嬉しいです。
目次
10年分の感謝を届け、分かち合うために
Goodpatchの10周年を祝うために発足した通称「群青プロジェクト」の一貫として生まれたのが、ブランドブック制作プロジェクトでした。
一般的に「ブランドブック」と呼ばれるものはインナー/アウターを問わず、企業やブランドの理念や価値観を伝え、一連の活動への理解・共感を促すために制作される傾向にあります。しかし、今回の場合は「Goodpatchメンバーやパートナーが共に10周年を祝えるようなものを作りたい!」という代表土屋やプロジェクトメンバーたちの想いに共感し、デザイナーとして参画する事になりました。ここから、Goodpatchの登場人物たちに焦点を当てた、体温を感じられるブックを届けるために約1年半に渡るプロジェクトがスタートしました。
変わらないGoodpatchのDNAを伝える
企業はたえず成長と変化を続けていくものですが、そのなかでも変わらないDNAをブックには凝縮したいと考えました。たとえばGoodpatchが生まれた背景や、パートナー・メンバーへの向き合い方、デザインに対する想いなどです。
そこでブックの表紙には、Goodpatch創業前に代表土屋が訪れたサンフランシスコの空の色、コーポレートカラーのブルー1色を纏わせ、いつでも初心を思い出すことが出来るよう願いを込めました。質の高いソフトウェアプロダクトを手がけるGoodpatchの堅牢さと、親しみやすくチャーミングなブランドパーソナリティーを、硬質な上製本と触れたくなるようなロゴのエンボス加工の組み合わせで表現しています。
また、手に取った時のモノとしての存在感を強めるために、小口もブルーに染めています。「小口染め」という装丁の技法で、本文ページを刷った後に紙の束を積み重ねてプレスした状態で、職人の方が手作業で染料を刷毛で塗られています。製本や印刷は、昭和21年の創業以来 小口染めを受け継ぐ数少ない製本工房である渡邉製本株式会社さんにご協力いただきました。
デジタルではなく書籍ならではの見せ方を考える
企画とデザインを進めるにあたっては「Web上のコンテンツではなく、書籍だからこそ楽しんでもらえるものになっているかどうか」を判断軸としました。
Web記事の場合、あくまで記事がメインで写真は付随した見え方になりますが、書籍の場合は注視する対象を見開き毎に変えられるため、ビジュアルで世界観を伝えるのに適しています。
今回はそんな適性を活かし、冒頭13ページ分は写真のみで構成し、Goodpatchの世界観を情緒的に見せるプロローグとしてページを贅沢に割り当てました。
現在はリモートワークで自由に働く場所を選べるからこそ、ブックを開いた瞬間、Goodpatchに足を踏み入れたような感情になってもらうことを目指しています。
多くの写真は写真家の吉田周平さんに撮り下ろしていただきました。(一部は個人提供)
特にブックのプロローグで使われるカットについては、写真家さんと一緒にオフィス内を練り歩きながら、Goodpatchらしい風景を切り取ることにこだわっています。
ネタ探しに奔走したコンテンツ企画
ブランドブックを手に取るのはGoodpatch社員や卒業生、パートナーなので、彼らが手に取った時に新鮮な気持ちで楽しめることが理想です。しかしGoodpatchは、創業間もない頃からオウンドメディアで情報発信を活発にしてきたからこそ「伝えたいことは大体コンテンツ化されている」というハードルがありました。
手に取る人にとって既知の情報をブック用に焼き直すだけではなく、このブックならではの価値を宿したい。オリジナルのコンテンツに出来るネタをプロジェクトメンバーで探しまわり、編集していくことに長い期間 苦戦しました。
オリジナル企画1.メンバーの対談「An Insider’s Look」
普段は見ることが少ない顔ぶれのメンバー対談企画「An Insider’s Look」。部署をまたいでひとつのテーマについて語ってもらったり、マネージャー同士の絡みをあえて作ってみたりと、4つの対談企画を社内で実施しました。イラストが得意なUI/ビジュアルデザイナーのようちゃん(Peiyuan Yang)が似顔絵を描いてくれたことで、実際にメンバー同士で会話する声が聞こえてきそうな仕上がりに。
オリジナル企画2.Goodpatchトリビアを集めた「公式噂話」
会社が10年以上続くと、いろいろな「昔話」をしてくれるメンバーの存在が大事になってきたりします。実際に私自身、Goodpatchに入社したのが2021年5月で、会社の歴史について知らないことがほとんどでした。そんななかでブランドブックを制作することにプレッシャーもあったのですが、同じように、10年間の歴史のなかで起こったちょっとした出来事を共有できると、一気にGoodpatchを身近に感じることができるのではないかとプロジェクトメンバーで出てきた企画が「公式噂話」でした。
Goodpatchにまつわる「知ってるとちょっと嬉しいトリビア」を遊びごころたっぷりに紹介するこの企画は、社内ゴシッパーからの情報収集・集計・デザインまでを分科会のメンバーが遂行してくれました。
ビジュアルデザイナーとUXデザイナーの打ち合わせ。オンラインホワイトボードStrapを駆使して要件定義までバッチリ!
ブックに込めた想いをムービーにも展開
完成したブランドブックはFY2023グループ総会にて配布することに決定。
グループ総会にオンラインで参加するメンバーには事前に郵送のうえで、当日全員が同じ温度感で楽しめる工夫を凝らしました。
当日の様子はこちらでレポートしています。
ただ配布するだけではなく、想いが伝わる特別な演出でお披露目したい!と考え、お披露目ムービーを制作し始めたのは、グループ総会 2週間前のことでした。
お披露目ムービーは、動画制作経験が長いGoodpatch BXデザイナーの知見を集約させて、オフィスにて撮影を行いました。とても地道な撮影風景をちょこっとだけ紹介します。
全編ストップモーションで撮影したため、ミリ単位でブックを少しずつ動かしてはシャッターを切る、を繰り返したり…総会のグラフィックエレメントを紙吹雪のように降らせたり…気が遠くなる場面もありましたが、イメージが形になった時の喜びはひとしおでした。
ブランドを体験する接点として、文章やプレゼンだけではなく、映像という手段も取り入れたことで、グループ総会当日の没入感と一体感がぐっと高まったように思います。
グループ総会当日の会場では、運営メンバーが直接ブックを手渡し。
「その場で読んでいる表情を眺めたり、感想をもらえるのが何より嬉しかった」とのこと!
一冊を起点に、パートナーや新たな仲間と想いを共有する
ブランドブックを社員にお披露目したその後、誌面の取材などに協力してくださったクライアント、制作に関わってくれたパートナーの皆さんには、ちょっとした遊びごころを取り入れたカードを添えてお届けしました。
同封したお礼カードはこちら。グループ総会で打ち出したビジュアルコンセプトを展開したデザインになっています。
感想を送ってくださる方も多く、とても嬉しかったです!
グッドパッチの10周年アニバーサリーブックのクオリティが異常。いい意味でちょっと正気の沙汰じゃない笑
土屋さんに自分の写真以外にしてって言われたんですがどう考えてもこのページがかっこいいので投稿。土屋さんごめんなさい🙏 pic.twitter.com/ma5QbgGaEV
— 宮下尚之 / ONE CAREER Inc. (@takathy) October 18, 2022
Goodpatch 10th Anniversary Brand Book📘💙自宅に届いた〜〜〜!!! @GoodpatchTokyo
エネルギーと想いと歴史が詰まった上質な一冊…(僭越ながら、10周年のお祝いコメント載せていただいてます)次の10年でも何かしらGoodpatchさんとご一緒できると嬉しいです…がんばります…❤️🔥🔥❤️🔥 pic.twitter.com/hlg3hMH4RP
— ᴀ ʏ ᴜ ᴍ ɪ 〰️ ɢ ᴏ ᴛ ᴏ (@ayupys) October 13, 2022
また現在は、新しく入社したメンバーにもブックを贈っています。会社がたどった10年間を追体験し、理解を深めた状態でスタートを切ってもらうオンボーディングツールとしても活用されています。
デザイナー個人としての振り返り
ここまで良いことばかりを書き連ねましたが、社内プロジェクトへの熱量をメンバー全員が持続し続けること、人を巻き込むことの難しさをこのブランドブック制作のプロジェクトを通して実感しました。本を1冊作るには多くの工程と役割分担が必要であると知りながらも、エディトリアルデザインの経験がある手前、必要以上にタスクや相談事を抱え込もうとしてしまい、疲弊してしまった場面もありました。
一方で「相談に乗ってほしい」「協力してほしい」と声をかければ、120%の力で応じてくれるメンバーたちがいることを知り、トータル1年半かかったプロジェクトの間に、少しずつ自分の意識が変わっていきました。
普段の業務と並行して社内プロジェクトを前に進めるには、コアメンバーの強い意志が不可欠ですが、同時に状況や考えをオープンにすることで多くの人を巻き込み、可能性を広げていけるという気付きを得られた本当に良い機会でした。
改めて、Goodpatchのブランドブックプロジェクトに関わってくださった全ての方々、本当にありがとうございました!
社員の心に残るブランド体験を
GoodpatchのBXデザインチームは、クライアントの組織の内側に深く入り込み、共有指針となるビジョンを言語化したり、組織の一体感やミッションへの共感を強化する仕掛けをデザインします。
社内を巻き込んだブランディングの全工程を一緒におこなうほか、策定したビジョンを今回のようにブランドブックやムービー、お披露目会として実装していくことが可能です。将来的には企業の中だけでブランドを作っていけるよう、土壌を整えるパートナーとして数々の実績があります。
「リブランディングを通して社内の一体感を高めたい」「共通のビジョンや行動指針を根付かせたい」など、お悩みがある方はぜひ私たちにご相談ください💙
Goodpatch 10th Anniversary Brand Book Credits
Production
- Project Direction: Naofumi Tsuchiya
- Project Management: Aya Fujiwara / Kanta Miura / Kaori Sugimoto / Saki Yoshida / Yoko Takano / Yuki Gondaira
- Planning: Kanta Miura / Mika Ehara / Sarasa Yonenaga
- Printing: Watanabe Book Binding Co., Ltd / TAKACHIHO printing Co., Ltd
Content
- Editing: Kaori Sugimoto / Kazuyuki Koyama(designing) / Aya Kuroki
- Editing Cooperation: Koyuki Shioda / Haruko Sugimoto / Takayuki Segawa / Yoshinobu Tanaka
- Gossip Reporting: Naofumi Tsuchiya / Yoko Takano / Yusuke Endoh / Kento Norita / Ayaka Katayama / Yoshitake Furuie / Toshiki Kunimitsu / Misaki Miyamoto / Masahiro Ishizuka / Keita Saito
- Translation: Amitt Co., Ltd / KYT Co., Ltd.
- Translation Cooperation: Kai Qin / Koyuki Shioda / Tomoki Sato / Jun Saso
Creative
- Brand Book
- Design: Ayaka Okubo / Peiyuan Yang p.118-119
- Photography: Gavi Ravi / Shuhei Yoshida / Obayashi-san
- Illustration: Peiyuan Yang
- Brand Book Promo Video & Photos
- Direction: Ayaka Okubo
- Video Production & Editing: Yoshimasa Watanabe
- Videography & Photography: Kai Qin
- Sound Design: Hirofumi Minamisawa
- Assistance: Masumi Toyota / Yasuyuki Nakabayashi
- Brand Book Report
- Writing: Ayaka Okubo
- Editing: Kaori Sugimoto
- Images: Kai Qin
Special Thanks
All Goodchies 💙