業務やプロジェクト進行においてスケジュールやタスクを管理しこなすことに追われ、先々に起こりそうな問題にアンテナを張り、対策できていることは少ないのではないでしょうか。

Goodpatchでは、チームでプロジェクトを推進するために、リスクマネジメントについて学べるワークショップをクライアント様に提供しています。今回は、オンライン上で輸出入の発注、管理ができるデジタルフォワーディング業務を行う国際物流領域のスタートアップShippioさんと開催したリスクマネジメントワークショップをご紹介します。

リスクマネジメントワークショップとは?

リスクマネジメントワークショップとは、リスクについてやその管理方法を理解し、リスク管理を実践的に体験するワークショップです。今回は、ブロックを使い各チームごとに家を組み立てるワークを通じてリスク管理を意識したチーム構築を目指しました。リスク管理の視点を持ったチームでは、組織やプロジェクトの危機発生を回避することができたり危機発生時の損失を最小限に抑えることができます。

Shippioさんとのお取り組み

Goodpatchは、ShippioさんのVision,Mission,Value策定といったブランドエクスペリエンス(BX)領域やプロダクト改善、組織デザインなどを支援させていただきました。プロダクト改善・組織デザインプロジェクトの期間中、将来のプロダクト開発におけるリスクを軽減するためにリスク管理が重要であることが指摘されましたが、プロジェクト内でリスク管理やその実践方法についてきちんと理解しているメンバーはいませんでした。 そのため、本ワークショップの提供に至りました。当日の参加者は10名ほど。プロダクト開発チームメンバーの他、営業職や社長、副社長にも参加いただきました。

ShippioさんとのBXデザイン支援に関する記事:https://goodpatch.com/work/shippio

ワークショップ内容

ここからは、当日のワークショップの様子をお届けします。最初にPMとして6年間チームマネジメント経験を持つスティーブンからプレゼンしました。

ゴールの共有

このリスクマネジメントワークショップのゴールは3つあります。まず、リスク管理とその管理方法を理解すること。次にリスク管理の実践的な経験を得ること。そして組織におけるリスク管理戦略の実装を開始する準備ができるようになることです。

リスクには予算、時間、人員、環境、技術、法律など様々な要素に関わるタイプがありますが、今回は様々なリスクに柔軟に対応していく方法などを体験します。危険予知の視点を持ち、あらかじめ対策を講じておくことの大切さや、少しの工夫で安心・安全が生まれるということを実感してもらえたらと思います。

ブロックで家造り。楽しく学ぶ!リスクマネジメント体感ワーク

このワークショップでは各セクションごとに、リスクマネジメント論に関するレクチャーとチームでの実践的なワークを行い理解を深めます。リスクマネジメントのワークを踏まえた計画に基づいて、最終的に各チームで協力してブロックの家を組み立てます。

このブロックでの家造りを使用したアプローチによって、新しい観点からリスクを考えるキッカケや実践的な学びの機会を作ることができます。

このワークショップではリスク管理において上の図のようなプロセスを用います。まず起こりうるリスクを特定し(Identify)、その影響を分析します(Analyze)。そしてその対応策を決め(Respond)、その経過を観察します(Monitor)。このプロセスを繰り返し改善していくことでリスクに対処します。このリスク管理プロセスは下図のGoodpatchのデザインプロセスと非常に似ています。

1.Identify(発見)

まず、自分たちのプロジェクトがどのようなリスクに直面しているかを考えます。ビジネス的分析、インタビュー、ブレインストーミング、データを使った分析などで、リスクを洗い出します。

予め用意されたリスクカードから起こりそうなリスクを選び表に貼り付けていきます。例えば「材料確認をしていないため選んだ材料が足りず、品質が守られない。」というカードは今回のブロックでの家造りにおいて起こる可能性が高いと考えられるので表の「Risk」の列に貼り付けていきます。

実際のワークショップでリスクを洗い出したシート

このプロセスで重要なのは、リスクステートメントの解像度を上げることです。例えば、ただ「スコープが広がる」と書いてあるリスクカードを選ぶより、「ゴールが明確になっていないため、スコープが広がる可能性があり、その際にスケジュールが遅れコストが増加する」と書いたカードを選んだほうが具体的にリスク及ぼす影響と対応策のイメージがつきやすくなります。

2.Analyze(分析)

次にそれぞれのリスクがどのような影響を生み出すのかを分析します。リスクを評価する上ではそのリスクが起こる可能性とそのリスクが引き起こす影響の両方を考える必要があります。

Identifyフェーズで選んでもらったそれぞれのリスクに対して、可能性を0-100%で評価し、影響度を1-5の5段階で評価し、その掛け算によって対応優先度を算出します。例えば発生確率が50%、影響度が1のリスクは優先度は0.5と計算できます。

3.Respond(対応)

次に洗い出したリスクに対して対応策を考えていきます。リスクの対応策は大きく分けて4種類あります。

Accept(受容)は、リスクの影響度を加味した上で影響がそこまで大きくない場合などにリスクを受け入れることです。Avoid(回避)は、リスクが顕在化した場合の影響が大きい場合などにリスクを取ることを避けることです。Reduce(低減)とは、リスクが起きた際の影響や起こる可能性を低くするために危険因子の除去や原因の予防などを行うことです。Share(分散)は、互いに相関の低い複数のリスクを掛け合わせることで補完することです。

ワークでは1.Identify、2.Analyzeフェーズで洗い出したリスクそれぞれに対しどのような対処方法が良いかを話し合い、表に解決策カードを貼り出しました。

4.Monitor(確認)

次に今までのリスクマネジメントのワークを踏まえて、実際にブロックの家を建てるためのワークフローを考えます。実際のプランを練ることでリスクマネジメントを行動に反映しやすくなります。

5.Execution(実行)

最後に計画したワークフローに基づいてブロックの家をデザインし、実際に組み立てていきます。

まずデザインしながら必要なパーツを吟味します。

チームで組み立てます。

家が完成しました。

応用

最後にまとめとして、今回学んだことを生かして、Shippioさんが現在推進しているプロジェクトにおけるリスクを再度考えていただきました。このように実践を通して得た知見を速やかに実際のプロジェクトに応用していくことで今回のワークショップのメリットが最大化されます。

このワークショップのメリット

今回のようなインタラクティブなワークショップではさまざまなメリットがあります。実際にこのリスクマネジメントワークショップを社内で行ったところ、参加者から以下のようなコメントがありました。

  • 複雑に捉えがちなプロジェクトを単純化していることで、リスク管理の本質が理解できる
  • 実際のプロジェクト経験がある方にとっては、あえて少し異なる「家を建てる」という内容に置き換えることで、リスク管理について観点が程よく抽象化して理解できる
  • 実際に手を動かすことで、リスク管理について単にテキストを読むよりも格段に理解が進み、記憶にも強烈に残る
  • リスク管理という、少し堅苦しい印象の仕事が、楽しいものに思える
  • プロジェクトメンバー全員とリスク管理の大切さについて共通認識を持てる

最後に

以上、Goodpatchが初めて行ったチームでのリスクマネジメントワークショップの模様についてお届けしました。ブロックでの家造りを通したワークは実践的で本質が理解しやすいと好評をいただきました。

今後もGoodpatchはプロジェクトを通して得たノウハウを積極的に発信していきます。

Goodpatchでは、他にも様々なワークショップを実施しております。組織やブランド、新規事業開発や既存サービスの改善に役立てたい企業様などいらっしゃいましたらぜひお気軽にご相談ください!

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