この記事は2017年7月26日に開催した、Goodpatchで初めての試みとなるバックオフィス向けのイベント、Backpatchレポートです。


初回のテーマは『急成長する組織を支える経理』。経理に特化したイベントが珍しいこともあり、当日は60名を超える方にご参加いただきました。

『乾杯』の音頭でスタートした当イベント、普段のお堅いイメージとは真逆のフランクな雰囲気をお伝えしていきたいと思います。
今回は3名の方にご登壇いただきました。

freee株式会社 経営ナビゲーターチーム 高橋 啓太様(写真右、以下freee 高橋様)
一橋大学経済学部卒業後、ソニー㈱に入社後、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ㈱にて経理業務に従事。経費精算や支払依頼等の日常業務から月次決算、年次決算、税務申告などの一通りの経理業務を積んだほか、予算実績管理やBPR推進、システム導入とそれに伴う業務整理等も経験。フリー㈱に入社後は経理業務全般を担当しつつ、給与計算・社会保険事務、カスタマーサポート、マーケティング等にも従事。

株式会社FiNC 経営戦略本部 財務経理部長/公認会計士 高橋 宏治様 (写真中央、以下FiNC 高橋様)
中央大学経済学部卒業後、公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツにて国内大手上場メーカーを中心に監査業務、公開支援業務に従事。その後、大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ㈱で企業再生投資業務に関与、新日本パブリックアフェアーズ㈱にて、官営組織の民営化業務を経た後、Webコンサルティング会社の㈱フリーセルで、財務担当の執行役員として管理体制の構築、上場準備業務を行う。

株式会社グッドパッチ 管理部 経理財務マネージャー 瀬川貴之(写真左、Goodpatch 瀬川)
早稲田大学政治経済学部卒業後、ミズノ㈱にて9年間経理業務全般に従事。途中、イギリス2年間とフランス2年間の海外駐在の間に、スペイン・ノルウェーの現地法人の設置や経営企画業務を担当。帰任後は再び本社経理財務部で開示業務等を担当。その後、アディダスジャパン㈱でFP&A業務に従事し、2017年2月からGoodpatchにジョイン。平日は管理部マネージャー、週末は大学院生の二足の草鞋を履く。

— では、まずはみなさんが今のお仕事である経理になったきっかけを教えてください。
Goodpatch瀬川 
僕は本当にひょんなことがきっかけです。大学では政治学を専攻していました。新卒でご縁をいただいたスポーツメーカーの人事面談の配属で「どこでもいい」といったら経理になったんです(笑)(笑)。

FiNC高橋様 
僕は家族の影響で高校から株式運用をやっていました。当時からマーケットに関与する仕事に就きたいと考えていましたね。学生時代には公認会計士受験して、ファーストキャリアでは、監査法人入社しました。しばらくすると、もっとマーケットに近い仕事がしたくなって、証券会社へ移り事業会社で上場準備などを経験しました。そこからFiNCですね。

freee 高橋様
私はお金にかかわる仕事はこの先無くならないという考えで『お金』にかかわる仕事を中心に就活しソニーに経理で採用され、決算からシステム導入まで幅広く経験しました。freeeには最初カスタマーサポートとして入社しましたが、現在は専任経理担当としてまた経理の仕事をしています。

— 経理に従事されていると会社の状況がよく見えると思うのですが、社内の他のメンバーへの情報の伝え方で気を付けていることはありますか?
freee 高橋様
伝えるべき情報というのは会社の規模によって変わってくるんですよね。私は社員4名の頃にfreeeに入社しましたが、その頃はP/L、B/Sに加えキャッシュフロー含めて伝えていました。少し規模が大きくなって100名を超えてくると、すべてを伝えるのではなく、伝えるべきものを絞ってました。150名を超えたあたりからは会計のリテラシーが様々なので売上を中心に伝えています。

Goodpatch 瀬川
経営メンバーにはすべての情報を伝えています。ですが、それ以外のメンバーがどういった情報を求めていて何をどこまで伝えるべきなのかは実は僕も一番の悩みどころです。Goodpatchでは全社会議を毎月開催しているので大まかなところは共有できていると思いますが、細かい部門ごとの売上や利益といった情報がまだ伝えきれていないですね。日々試行錯誤といった感じです。

FiNC 高橋様
各部門長へはすべての情報を伝えています。メンバーへはそこまで細かく伝えていないです。というのも、どの程度会計のリテラシーがあるかによっての受け取り方が変わってしまい、こちらが意図しない取られ方をされてしまう事を懸念して積極開示はしていません。もし業務で必要としていて、本当に知りたいのなら自分から聞きにきてくれますから。

— 社長や役員といった経営陣とのコミュニケーションはどのようにされていますか?
Goodpatch 瀬川
経営陣とのコミュニケーションは密に行っています。少々ネガティブな数字でも、必要以上に不安をあおらないように、あえてカジュアルに話すように気を付けています。あとは情報をかみ砕いて理解しやすいように伝えるよう心がけますね。

FiNC 高橋様
経営メンバーが社内外含めると10名以上いてそれぞれ経験豊富で個性豊かなので、様々切り口の指摘が飛んできます。一つひとつにロジカルに答えられるように気を付けています。

freee 高橋様
常に経営陣と近い位置にいるので簡単にいうと苦しいポジションです。経営陣と自分の見えてるところや課題意識が違うことも多々あり、そこは自分の道を信じて自分の意見を通しています。それとキャッシュポジションが重要なので常に気にかけて伝えています。

— 急激に企業規模が拡大したときに、業務や効率化などどのように対応されていますか?
FiNC 高橋様
企業規模に応じて会社の制度を流動的に変えていかなければならないと考えています。これがなかなか大変なんですよね。その点freeeさんのシステムは導入しやすく、事業規模に応じて適切なシステムを提供されているのでとてもよいですよ!(笑)

Goodpatch 瀬川
バックオフィスで「これがメンバーにとっても効率的だ!」と思って新しい制度を作っても、今までと変ってしまう事自体が面倒臭いと思われてしまう事が多々あります。バックオフィス以外のメンバーには、なぜそれが必要なのかを丁寧に説明していく必要がありますし、それがバックオフィスの責任だと思っています。

freee 高橋様
当社の場合、経理サービスを提供している会社なので、全部署のメンバーが経理を一時体験するという仕組みがあります。経理に詳しくないメンバーも経理業務を行うので、一時的に生産性は落ちます。でも一度メンバーが経理を体験することで、サービスに主体性を持って向き合えるのでとてもいい循環になっていると思います。あとは、20名規模のころから常に500名規模を想定し、そこに向かってハンドリングしてきたこともあり、将来像が描けているので迷うこともないですね。

— 皆様これまで様々なバックグラウンドをお持ちですが、それを踏まえて急成長ベンチャーのいいところ、そして悪いところがあればお話しください。
Goodpatch 瀬川
僕は前職まで大手企業に勤めていましたが、グッドパッチのスピード感と各々が仕事に求めるクオリティの高さは、素晴らしいと思っています。その一方でルールに慣れていない人が多いので、業務フローを少し変えるだけでも大きな変更と認識されてしまいます。丁寧に説明していくことが大事だと日々感じていますね。

freee 高橋様
僕は新卒からずっと経理を続けているのですが、長く経理をやっているとなぜこの業務をやるのかなど考えなくなってしまっている時期もありました。ベンチャー企業に来たことで経理の仕事を見つめ直すいい機会になりました。例えば内部統制がなぜ必要なのか理解できましたし(笑)。欠点は、一時の成功体験に縛られてしまう事です。企業の規模によって有効な方法は日々変化するものだと心得なければいけないですね。

FiNC 高橋様
なんといっても将来への期待感を日々感じられるところです。ベンチャー企業が成長するためにはファイナンスが必要不可欠。会計の専門家として企業の成長のキモになるファイナンスに携われることが醍醐味です。悪いところは、どこの企業でもありがちですが、創業メンバーと新メンバーとの溝ができがちなところです。組織を成長させていく上では、両者の融合が必要だと感じています。

ベンチャー企業の経理についてかなりざっくばらんにお話いただきました。なかなか普段聞くことができない経理の本音を垣間見る事ができたのではないでしょうか。
ここからは、来場された皆様からのご質問をいくつかご紹介します。

Q.企業理念、ミッションバリューが必ずしもバックオフィスの求める事と一致しないことがあると思いますがそのギャップはどうされていますか?
freee 高橋様
ミッションを具体的な状況に置き換えるようにしています。例えば当社の『世界一速く常識を変えよう。そして一緒に未来を作ろう!』をカスタマーサポート用に置き換えれば
『最速で正しい回答を提供する』とすることもできますよね。ミッションをそれぞれの業務の文脈に翻訳すると大きなギャップは生まれないと思います。

FiNC 高橋様
全社ビジョンの下に各部門のビジョン・ミッションを設定しているので、乖離は起こりえません。ちなみに僕たちのミッションは『数字を精緻化することに情熱をかけるより、その数字を各部門が利用できるかに注力する』です。

Goodpatch 瀬川
経理のミッションは明文化していません。約半年前に行った全社ワークショップで、自分たちのチームをどのようにしていきたいかというワークをしたんですが、バックオフィスは、メンバーみんなの背中を押していける組織でありたいなと考えています。管理部としては、精緻さより、未来がどうなるのかを正しく伝えることができる組織。ブレイクダウンを正しく、早く伝える事でミッション・ビジョンの達成。ということを考えています。

Q. ベンチャー企業の経理で求めている人材の特性などありますか?
Goodpatch 瀬川
Goopdatchのプロダクト、事業を好きになれる人で会社をよくすることに情熱がある人がいいですね。オープンマインドの方は歓迎されます。スキルというよりマインド重視でカルチャーと合うかどうかを重視しています。

freee 高橋様
freeeが行っている事業へ興味があるかを重視しています。それから当社のミッションであるfreeeのミッションは『「誰もが創造的な活動ができる社会」「スモールビジネスが強く、かっこよく活躍する社会」を実現すること』に共感できそうな原体験があると説得力がありますよね。

Finc高橋様
FiNCのビジョンと自分のビジョンが合うかどうかが大事になりますね。『経理はこうあるべきだ』というようなキャリア志向が強すぎるとベンチャーには合わないです。それから変化が激しいので過去の成功体験に縛られない事も必要な要素だと思います。

Q.これからやりたいことは何ですか?
Freee 高橋様
僕は経理部や財務部ではなくて経営ナビゲータチーム所属なんです。経営をナビゲートする事が求めらているので、意思決定のサポートを極めていきたいと思います!

FiNC 高橋様
FiNCが健康のインフラになるためにファイナンスの側面から支えていきたいです。

Goodpatch 瀬川
今の経理チームは入社が浅いメンバーばかりなのでまずはチームとしてまとまっていきたいと思います。僕個人としては将来CFOになりたいです。

当日の雰囲気を少しでもお伝えできたでしょうか?
懇親会ではなかなか集まることのない経理同士、皆さんピザをつまみながら他のご来場者の方と熱心にお話されていらっしゃいました。Backpatchをきっかけとして新しい繋がりになればと思います。それでは次回のBackpatchをお楽しみに!