桜の咲く季節がやってきました。今月はAppleが次々と新しいプロダクトを予告もせずにリリースするなど、春らしいニュースが多く飛び交う月でしたね。Goodpatchでも話題になった数々の新しいプロダクトやサービス、デザインをご紹介します。

過去の月間まとめはコチラからどうぞ。

プロダクト

STADIA

https://www.youtube.com/watch?v=HikAuH40fHc

Googleが多種多様なデバイスからネットワークを通してプレイできるクラウドゲーミング・サービス「STADIA」を発表しました。ストリーミングのゲームプレイは、高速インターネットとコントローラーさえあれば、高価なハードウェアを購入したり、長いダウンロード時間に待ちくたびれることはありません。

「STADIA」の中でも特に注目すべき点は、Youtubeと密接に連携できることです。プレイヤーは簡単に動画配信ができ、視聴者は配信された動画にアクセスするだけですぐにゲームをスタートできます。これにより、双方のハードルはグッと下がり、「プレイ&シェア」のサイクルがさらに活発になることが予想できます。

Googleがクラウドゲーミングサービスとしてビデオゲーム市場に参入したことで、ゲームのストリーミングプレイがどれだけ普及されるでしょうか。さらに今後のゲームメーカー企業の動きに注目です。

code-server

https://github.com/codercom/code-server

ブラウザ上からテキストエディタVisual Studio Codeを利用できるサービス「Coder.com」がオープンソース化されました。ChromebookやiPadなどでもインターネット接続さえあれば開発ができるCoderですが、オープンソースのソースコードを用いれば自分で持っているサーバ環境にホストして使用することができるようになります。独自のチューニングをしたり、Pull Requestを出して開発に貢献することもできますね。

上述したSTADIA同様、従来は手元で立ち上げるのが当たり前だったソフトウェアも、次々にクラウド上へ展開される傾向が強まっています。コンピューターリソースはもはや「所有」するものではなく、共有財産としてクラウド上に存在するものを使うのが当たり前になるのかもしれません。ネットワーク環境やアプリケーションのパフォーマンス、そしてプライバシーの問題など懸念事項は多そうですが、Webサービス展開のトレンドとして注目しておきたいですね。

GauGAN

https://blogs.nvidia.com/blog/2019/03/18/gaugan-photorealistic-landscapes-nvidia-research/

超簡単に描かれたラクガキを、写実的な絵に変換してしまう「GauGAN」は、コンピューターのグラフィックス処理を担うGPUのメーカーとして有名なNVIDIA(エヌビディア)が生み出した新技術です。何百万もの風景画像を学習したAIが、質感や反射、色合いなどを再現しており、リアルタイムに画像を合成させ描画しているようです。

この技術が普及すると、非デザイナーによる視覚化の具体度が高まるだけでなく、瞬時に描かれることで、ディレクターとデザイナーのコミュニケーションがさらに活発化すると考えています。近い未来、建築やランドスケープデザインの分野において重宝されそうですね。

Dashボタン販売終了

https://www.androidcentral.com/amazon-prime-members-can-grab-1-dash-buttons-and-still-get-5-credit-limited-time

Amazonが2015年に販売を開始した、洗剤や食料などの日用品がボタンひとつでAmazon上で注文できる「Dashボタン」は多くのユーザーに利用され、Amazonユーザーの増加に大きく貢献してきました。今年2月下旬、そのDashボタンが廃止されることが発表されました。

Amazonによると、Dashボタンをリリースした当初はDashボタン以外の選択肢は非常に少なく、定期的に購入する必要がある生活日用品を購入する手間を省くにはDashボタンは非常に効率的な手段だったそうです。しかし、Amazonの音声AIアシスタントのAlexaを始め、Amazon内でもすぐに注文できる機能が組み込まれた商品などが徐々に販売され始め、機能の価値衰退と共に今回の廃止へと至りました。

これまでDashボタンはAmazonの注文までの流れを格段に効率化する役割を担っていたのですが、4年弱という短い期間でその役目を終えるほどの業界の流れの速さには驚きました。自社の主要製品を廃止するという決断を下したAmazonの判断力には、見習うものがあるのではないでしょうか

サービス

MY SCOOTER

https://www.myscooter.jp/

3月16日に月額3980円で公道を走行可能な電動キックボードを所有できる「MYSCOOTER」がβ版ユーザーの事前登録受付を開始しました。
電動キックボードは免許さえ持っていれば公道を約20キロほどの速度で移動でき、電車やバスにも持ち込むことができます。

2012年にUBERが登場してからというものの、ライドシェアやシェアバイクなど様々な新しい移動手段が登場しましたが、他の交通機関との親和性が高い電動スクーターはまた新しい移動体験になるのではないでしょうか。「MYSCOOTER」の登場によって少し駅から遠くて今まで人があまり来なかった場所に人が集まるようになるなど、人と街の関わり方も変わっていくかもしれません。

OYO LIFE

https://www.oyolife.co.jp/tokyo-cp/

圧倒的な勢いで取扱物件数を増やしているインドのホテル運営会社OYOが日本初の賃貸サービス「OYOLIFE」を発表しました。
「OYOLIFE」は”旅するように暮らす”というコンセプトの賃貸サービスです。家具・家電・インターネット設備も完備されており、電気や水道のライフラインも契約済みなので入居から退去までスマホだけで完結させることができます。

「OYO」は高い技術力で地域の宿泊データをAIで分析し、全ての空室の料金をダイナミックに変動させています。また予約サイト・経理・清掃管理などホテルオーナー向けの管理ツールも内製しており、これらが驚異的な成長を遂げた理由と言えるでしょう。

「OYO LIFE」によって日本の賃貸市場に革命が起これば、住居すらも所有しない新しい生活が当たり前になるかもしれません。

Checkout(β)

https://instagram.com

Instagramがサービス上で商品購入できる「Checkout(β)」をリリースしました。これまでは商品を購入する際にWebページに遷移する必要がありましたが、今回リリースしたCheckout(β)ではそのままInstagram上で商品を購入できます。これによりInstagramは、友人のアクティビティをチェックするSNSの用途に加え、超ビッグコマースプラットフォームとなり、売り手にとってはフォロワーを増やすためのInstagram戦略が更に必須になるのではないでしょうか。

また、InstagramはCheckout(β)を通して決済情報を取得することになるので、広告のターゲティング精度も高まるでしょう。これにより、友人のアクティビティを見ている時に出てくる広告も関心度の高いものがサジェストされることが期待できます。売り手は今まで以上に商品の情報を着実にターゲットに届けることができるのではないでしょうか。

リブランディング

miro

https://brand.realtimeboard.com/

ビジュアルコミュニケーションツールであるrealtimeboardがオランダのデザイン会Vruchtbvleesとコラボレーションし、リブランディングを行いました。新しいサービス名「miro」は「視覚的表現、実験的、国境を超えて多くの人に影響を与える作品」という意味を持っています。今回のリブランディングでは、サービス名に加え、ロゴ、アプリアイコン、さらにはレスポンス速度にも変化がありました。

The Visual Collaboration platform for modern-day pioneersというコンセプトからも分かる通り、ビジュアルコミュニケーションツールからデジタルワークスペースへサービスの方向性を変化させていることが読み取れます。またコンセプトを含めたすべての要素は、「チームの創造性を最大限に発揮してもらうために制約のないコラボレーションを実現する」というサービスが達成したいビジョンを目指してデザインされたそうです。

ブランドアイデンティティとはブランドイメージと違い、企業側がユーザに対してどう思われたいかが軸になるものです。最近のSlackMasterCardのロゴリニューアルからもわかるように、ブランドがユーザに与える影響について考えることの重要性がわかる事例になっています。

McKinsey & Company

https://www.mckinsey.com/about-us/overview/our-new-identity

グローバルコンサルファームのMcKinsey & Companyがリブランディングを行いました。オールドとニューのバランスをとり、”ハイコントラスト”を新しいアイデンティティとして掲げています。また、全社紹介の動画・パンフレット・ロゴ・写真・SNSのアイコンまでをも一新しました。
ブランドロゴはカスタムセリフを使用しています。傾いている”e”などから、McKinsey & Companyのパーソナリティとユニークネスを感じられます。サイト写真に活用している揺らめく青と紫のタブルトーンは、ブランドの一体感を演出しています。

McKinsey & Companyは2017年に50周年を迎えて以来、デザイン会社の買収やデザインがビジネスに与える影響をレポートとして発表するなど、業界にさまざまな影響を与えてきました。今後もその動向に目が離せませんね。

FiNC

https://finc.com/

昨年、Google Play ベスト オブ 2018 自己改善部門大賞を受賞した「FiNC」が、今月リブランディングを果たしました。FiNCブランドアンバサダーに女優の中村アンさんを就任した影響もあり、SNS上で多くの反響を呼びました。

「企業のミッションやビジョンをより目に見える形でユーザーに伝えたい──。」そうした想いから、FiNCのサービス価値を表す「Better Together」というメッセージと、メッセージに込められた想いを象徴するFiNC Uのシンボルが生まれただけでなく、ロゴやブランドカラーまでもが一新されました。FiNCユーザーの心理を細部まで考え抜いてつくられたデザインで、今後より多くのユーザーの心を掴んでいくことが期待できます。

スピーディなリブランディングの軌跡は、FiNC Technologies CCOの小出さんが執筆された記事に綴られていますので、ぜひご覧ください。

イベント

Design in tech report 2019

https://design.co/design-in-tech-report-2019-no-track/#1

テキサス州オースティンで開催される世界最大級のカンファレンスSXSWにて、John Maedaから毎年恒例の「Design in tech Report」が発表されました。
「社会の正義を実現するために必要なテクノロジーとデザイン」を議題とし、様々なフレームを通して組織におけるデザインチームの役割や、どのようにAIを活用すれば人間の良さを見い出せるかなどについて解説されていました。

特に、冒頭や最後の章でも語られていた「テクノロジーがもたらした不均衡にデザインはどう対処していくべきか」という議題が印象的です。組織の中におけるデザインのあり方、AIとの向き合い方、そして人間の多様性から学ぶインクルーシブデザインとどう向き合うかが鍵であると感じます。

本レポートではデザインの倫理観や考え方、組織のあり方についても再認識できますので、ぜひ一度目を通してみてください。2018年度のDesign in tech Reportのまとめ記事もぜひご覧ください。

光るグラフィック展


http://rcc.recruit.co.jp/g8/exhibition/201902/201902.html

2014年に開催された「光るグラフィック展」の第2弾が、クリエイションギャラリー G8にて開催されました。3DやVRなどといったテクノロジーが益々注目を集める中で、実空間(フィジカル)と仮想空間(デジタル・バーチャル)の融合を試み、幅広い層の人を魅了しました。

会場では、実空間と仮想空間の両方で同じ作品を鑑賞できます。多様な表現方法がある時代だからこそ、デジタルという制約を設けることで、クリエイティビティの比較・限界を超える表現の創造を実現したのでしょう。これほどまでに多種多様な領域で活躍するクリエイターが一度に集う展覧会は、なかなかないのではないでしょうか。

常にフィジカルとデジタルの新しい融合を模索する本展示が、今後どのような切り口で再び行われるのか楽しみです。

以上、3月に話題になったサービス、ニュース、デザインまとめでした。来月も新しい情報をお届けしますので、お楽しみに!