日常の中にあふれたハプティックを探る
オンボーディングのグラフィックやサウンドエフェクト、通知許可を求めるモーダル。私たちが日々使うアプリケーションでは、ユーザーを惹きつけるために用途に合わせたデザインが日々模索されています。
最近ではゲミフィケーションが多くのアプリで導入されていますが、実はハプティック(触覚フィードバック)を使ったデザインもユーザーの記憶に残るデザインとして注目を集めています。
今回はアプリケーションにハプティックを取り入れる際のポイントを事例と共に考察します。これからハプティックを取り入れたい方に、ぜひ参考にしていただければと思います。
ハプティックとは?
まず、基本的な概念の部分についてご紹介します。五感の一つであるハプティック(触覚)は、私たちが身の回りの世界とどのように接触するかと関係しています。ハプティックは、重力や振動、モーションを使ってエンドユーザーに対して触覚を与えるものです。
ハプティックはフラットな媒体、すなわちモバイルまたはその他のデバイスのスクリーンを介した情報伝達システムに応用されます。例えば、Androidのオンスクリーンキーボードでタイピングをする際に感じる軽い振動、またはiTunesストアでアプリを購入した際に購入の完了を表す振動です。
ハプティックが使われるケース
ハプティックは、1990年代からコンソールゲーム内で使われてきました。任天堂が開発した振動パックは、ゲームコントローラに物理的に取り付けられなければならず、ハンドヘルドゲームカートリッジに組み込むタイプのものでした。取り付けたデバイスがユーザーに対して、選択された時間にのみフィードバックを与えます。
これらの振動は、プレイヤーをゲームに没頭させるために役立ちます。武器を手に握っているという合図やスクリーン上でのアクションをより明確にします。任天堂が振動パックを発表したとき、ゲーマーや評論家にも高く評価されました。これまで触れられていなかったフィードバックの形式に新たな気づきをもたらし、新しいレベルへと持っていったのです。
今日におけるハプティック
開発者はデバイスに合う最適なハプティックを模索し、常に改善をし続けています(例としては、Appleの「Taptic Engine」またはLGの「HD TouchSense」が挙げられます)。今日においては、モバイル機器が応答する触覚フィードバックを非常に細かく調整できます。
モバイルゲームの場合、これは大きな飛躍です。ユーザーがダメージを受けたり銃を使用したりする際など、デバイスはあらゆる状況に応じてユニークな振動で応答することができます。振動の違いは非常に明確で、ユーザーはピストルとショットガンの使用の違いを区別することもできます。また、ギターアプリケーションでは異なる周波数を表すために微妙に違う振動が出せるようになりました。
触覚フィードバックは、場合によっては特定のデバイス上で実際のボタンを置き換える役割を担うようになりました。さらに、IoT技術の世界でも使われはじめています。私たちは超音波振動を利用して、空中にあるゲームのスライダとノブを調整することができます。明らかに、これらの細かいディテールはゲームの質を向上しています。また、通常のアプリケーションをより使いやすく、満足感のあるものにすることにも役立ちます。
なぜハプティックなのか?
アプリケーション内で使われるハプティックは、ユーザーにもっと魅力的な体験を提供するだけでなく、現在何が起こっているのか、次に何ができるのかをより明確に伝えることに役立ちます。ユーザーがデバイスと接触する時、デバイスはユーザーに対して物理的に起きている事象に関するフィードバックをすることができます。開発者はこれらのレスポンスをカスタマイズして、ユーザーが特定のタスクを完了した際に特定のフィードバックをすることができます。
また、アプリケーションでハプティックを使用するだけで、競合他社と差をつけられる可能性もあります。開発者は、コードスニペットの無料ライブラリやあらかじめ設計されたパターンなど、ありふれたリソースにアクセスできます。もちろん、デザイナーや開発者は、さまざまなデバイスの限界を常に認識しておくべきでしょう。また、デバイスによってユーザーが体験するハプティックが異なることも認識しておく必要があるでしょう。
ハプティックの応用
ハプティックを利用することでアプリケーションを他のものと差別化することができるのは確かですが、過度に使用するとフィードバックの重要性を低下するリスクが生じます。一般的に、ユーザーは何か行動を起こした際にはシステムからのフィードバックを予期します。何がそれを引き起こしたのか原因が不明瞭なフィードバックはユーザーの混乱を招く可能性があります。ハプティックをどのタイミングで利用するかを見極めるのは難しいですが、リサーチをしている際に3つのパターンがあることが分かりました。
完了
ユーザーがタスクを正常に完了したら、何かしらのフィードバックを与えることが適切です。ショッピングカートに商品を追加することや、オンボードタスクを完了することなどはユーザーが行うタスクの一例です。 ハプティックはユーザーが行う行動に対してフィードバックを与えることで、ユーザーがタスクを完了した際にフィードバックを受け入れることに慣れさせることができます。
ユーザーが新しいアプリケーションをダウンロードする度にiPhoneが起こす振動は、誰もが慣れ親しんでいるハプティックの一つでしょう。また、スナップは成功を意味します。金融取引が成功した際やアプリケーションのデータがApp Storeと連動された時に起こります。
警告
制限文字数に近づいた時、ユーザーに対してハプティックまたはエラーを示すフィードバックが起こります。多くの場合は、残り20文字になった時に軽い振動が誘発され、限界に達すると決定的な振動が鳴ります。軽いフィードバックは、ユーザーに対してあらかじめ結果を予測できる余地を与えることができます。
警告は必ずしも否定的なフィードバックである必要はありません。システム自体あるいは別のユーザーから通知があった場合、それをユーザーに警告するのは当然のことです。これは、ユーザーの明示的な操作に対するフィードバックであり、肯定的でも否定的でもありません。
失敗
ほとんどの場合、ハプティックはユーザーが特定のタスクに失敗した時に役立ちます。間違ったパスワードを入力したり、短い振動とペアになっているエラーメッセージを表示すると、達成しようとしているタスクの中で「行き詰まり」になったことを伝えることができます。エラーメッセージは明確な次のステップを伝え、振動はその事象に対して物理的なフィードバックを与えます。
結論
これらの触覚技術を実装する上での最大の課題は、一貫性を保つことです。 ハプティックは、アプリケーションの中で再定義された際にその意味を失います。過度な使用は、アプリケーションの本来のメッセージ性を不明瞭にする可能性があります。今日のデザイナーや開発者がハプティックを念頭に置いてシステムをデザインする必要があることは間違い無いでしょう。グラフィックは鮮明でなければならず、アニメーションと振動は対応していなくてはなりません。
場合によっては、ユーザーのOSがフィードバックをサポートしていない、またはユーザーによってハプティックの機能がオフになっている可能性もあります。そういった環境の中でも、アプリケーションそれ自体が機能する状態でなくてはなりません。いつ如何なる時もユーザーに依存してはいけないのです。
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