今年も残すところあとわずかですね。皆さんは年末年始をどのように過ごされますか?

毎月恒例、Goodpatchで話題になったアプリやサービスをご紹介するこの記事も、今回が2021年最後のお届けとなります。それではどうぞ!

アプリケーション

3DCG制作ソフトのBlenderが21年ぶりにメジャーアップデート

https://www.blender.org/press/blender-3-0-a-new-era-for-content-creation

3DCG制作ソフトのBlenderが2021年12月3日、21年ぶりとなるメジャーアップデートBlender 3.0をリリースしました。Blenderは3DCG制作ソフトで無料提供しているものの中では最大級のシェアを獲得しており、今回のアップデートには全体的な速度改善の他、アセットと呼ばれる各種素材にアクセスしやすくなる機能が追加されるなどUIの改善も含まれます。

今回のアップデートはもちろん、その使い勝手が大幅に改善され3DCG制作のハードルが下がるという観点もあるのですが、それ以上にこのタイミングでメジャーアップデートが行われたというところに注目すべき部分があると感じました。Blenderはフリーソフトであるため、その資金は開発基金によってまかなわれています。今年の10月にはその開発基金にAppleが加わったことも報じられ、Blender開発の勢いは加速していっています。その裏側にはメタバースの盛り上がりがあるのではないかと思いました。メタバースの世界構築には3DCG制作は欠かすことができません。今年は各社がメタバースへの投資を発表しただけでなく、FacebookがMetaに社名変更するニュースもありました。この情勢があったからこそ、Blenderはより裾野を広げられる改善を、21年ぶりのメジャーアップデートとして打ち出したのではないでしょうか。

メタバースの広がりが避けられないものとなりつつある今、次に必要になってくるのはいかにメタバースを使いやすくするか、つまりメタバース上でのUIとUXの探求だと考えられます。今回のアップデートをきっかけに、いち早く3DCG制作に触れることでその可能性を探ることが次世代のデザイナーへの第一歩となるのかもしれません。

マッチングアプリTinderがSpotifyと連携した新機能「ミュージックモード」を提供開始

https://www.tinderpressroom.com/Tinder-Launches-Newest-Experience-In-Explore-Music-Mode

2021年12月9日、TinderはSpotifyと連携し、ユーザーのプロフィールにお気に入りの曲を30秒間掲載できる新機能「ミュージックモード」の導入を開始しました。ミュージックモードはプロフィールを表示すると自動的にユーザーの選択した音楽がかかる仕組み。外見で判断される印象の強いTinderですが、好きな音楽なら外からは見えない趣味などの内面を表現でき、アピールする手段が広がりますね。

実際、既に約40%のZ世代のユーザーがお気に入りの音楽を登録しており、マッチ率は10%向上したそうです。これまで音楽をプロフィールに登録できるアプリは様々ありましたが、「見知らぬ人と音楽をきっかけに出会う」という体験は他にはなく、Tinderはこの体験を「 party-like atomosphere 」と表現しています。パーティーで自分と同じ曲にノっている人に出会った時のときめきを、ミュージックモードは提供することを目指しているのでしょう。

このようにリアルの場で感情が揺さぶられる体験をデジタルサービスで提供する取り組みと、そのための企業間のコラボレーションは、ユーザーだけでなく企業に対しても幸福をもたらすと感じました。上述の通り、Tinderにとってはマッチ率が向上しユーザーのサービスへの粘着性を高められるでしょう。一方、Spotifyとっては異性の好みと音楽の好みのレコメンドの精度を高めるデータの蓄積が可能となったり、新たな楽曲への出会いの確率も向上するためサービスへの新規流入が期待できたりするはずです。このような企業間のコラボレーションがビジネスとユーザーにどのようなポジティブな価値を提供するか、今後も見逃せませんね。

サービス

メルカリ、スキマ時間にゲーム感覚でタスクをこなすだけてポイントがもらえる「メルワーク」を開始

https://about.mercari.com/press/news/articles/20211206_merwork/

2021年12月6日、株式会社メルカリは簡単な質問に答えることでポイントがもらえる新サービス「メルワーク」の試験提供を開始すると発表しました。「メルワーク」では、ユーザーは簡単な質問に答えることでサービス改善に参加し、報酬として「メルカリ」内で使用できる「メルカリポイント」を獲得します。

「メルワーク」は、ユーザー視点で考えられた満足度の高いサービスであるといえます。これまでも、タスクをこなすことでポイントを得られるサービスは存在していました。しかし、タスクが煩雑であったり他社サービスへの登録が必要であったり、ポイントの付与に時間がかかったりとユーザーが満足できるサービスとはいえませんでした。一方、「メルワーク」はこなすタスクももらえるポイントも「メルカリ」内で完結しており、タスクの内容も数十秒でこなすことができる簡単な質問となっています。さらに、メルワークの不要な時間を価値に変えるという特徴は、不用品に新しい価値を付加する「メルカリ」のサービスと親和性が高く「メルカリ」ユーザーにマッチしたサービスとなっています。出品や取引体験の向上に貢献することができる達成感も感じられるという点でもユーザーにとって嬉しいポイントでしょう。

「メルワーク」はサービスの成長という視点で見ても優れています。フリマアプリでは出品者と購入者をいかに繋ぐか=検索やレコメンドの精度をどれだけ高められるかが鍵になります。「メルワーク」では、「メルカリ」が持っているユーザーの取引履歴や登録情報とタスクを組み合わせることでそれらの精度を高め、よりユーザー体験を向上していくことが期待できるでしょう。ユーザーの視点や声をサービスに取り入れることはサービス開発において必須である一方、個人情報の取り扱いに対する規制は厳しさを増しています。そのような中で、ユーザーが自主的にサービス改善に参加する仕組みを「メルワーク」が作っていけるかに注目が集まりそうです。

米アマゾンが家族向けの高齢者介護サブスクを提供開始

https://jp.techcrunch.com/2021/12/08/2021-12-07-amazon-launches-its-19-99-per-month-alexa-together-elder-care-subscription-for-families/

2021年12月7日(米国時間)、Amazonは自立した生活を送る高齢者を介護する家族を対象としたサブスクリプションサービスAlexa Togetherの正式な開始を発表しました。この機能は、Amazonの既存サービスAlexa Care Hubを拡張し、月額19.99ドル(約2200円)または年額199ドル(約2万2000円)のサブスクリプションサービスとしてパッケージ化したものです。

既存サービスのAlexa Care Hubは、相手の許可を得た上で、高齢な家族のアレクサの使用情報を得たり、助けを呼んでいるときにその通知を受け取ることができるサービスです。今回発表されたAlexa Togetherでは、これらの機能に加えて、緊急時の救急手配やサードパーティ製デバイスと連携によって転倒検知などにも対応可能になりました。
いざという時にも頼れる機能が搭載されたことで、家族は安心して離れた場所から高齢の家族を見守ることができます。それによって高齢者自身は自立した生活の継続を選択しやすくなるはずです。自立した生活を送ることは介護予防の効果も期待できるのではないでしょうか。

また、これらのサービスがEcho、Echo Dot、Echo Showなどの対応するAlexaデバイスで動作し、無料期間も設定されているため導入が容易な点にも注目です。入手しやすく広く普及しているデバイスでサービスが展開されることで、多くの人がサービスを享受できるだけでなく、利用者が多いことでサードパーティのマーケットも活性化し、サービス全体の価値向上が期待できます。高齢者とその家族を支える価値の循環は成立するのか、このサービスはまだ産声をあげたばかりです。

ルート検索アプリのMoovit、視覚障がいを持つ人がより安全に目的地に到達できるようスマート杖のWeWALKと提携

https://moovit.com/press-releases/moovit-and-wewalk-announce-partnership-to-enhance-mobility-of-visually-impaired-people/

国際障がい者デーとなる2021年12月3日、ルート検索アプリを提供するMoovitはスマート白杖のWeWALKと提携することを発表しました。これまでのWeWALKの機能は、センサーで障害物を検知したり、徒歩での道順を音声で確認したりできるというものでした。今回の提携で、WeWALKのアプリはMoovitのAPIを使用し、公共交通機関を利用したルートを導き出すことができるようになりました。視覚障がいを持つ人はより安全に、そして公共交通機関を利用することで効率的に目的地に到達できるようになります。

スマート杖の柄の部分にはアプリと接続されたタッチパッドが内蔵されており、ユーザーはそのタッチパッドをジェスチャーで操作することで、公共交通機関がいつ到着するかといったリアルタイムの情報や、目的の停留所に到着したタイミングを把握できます。ユーザーはスマホを操作する必要がないため、スマート白杖だけで公共交通機関を利用して目的地まで行くことができます。

アプリ開発会社が視覚障がい者や何らかの障がいを持っている方も含めた、あらゆる人により良いサービスを提供するには、今回のMoovitとWeWALKの提携のようにアプリ内の機能だけに閉じず、リアルのプロダクトと滑らかに接続することも時には必要となってくるのではないでしょうか。より適切なインターフェイスとは何なのか、広い視点を持ってデザインをしていきたいですね。

セクシャルヘルスケアにアプローチするサブスクリプションサービスRemojo

https://jp.techcrunch.com/2021/12/04/2021-11-18-remojo-gets-funding-to-help-men-quit-porn/

男性のセクシャルヘルスをテーマに、英国のスタートアップが活発な動きを見せています。今回ご紹介するのは、ジャック・ジェンキンス氏が創業したポルノコンテンツをブロックするサブスクリプションサービス「Remojo」です。男性のセクシャルヘルスに関して深刻な問題としてあげられるポルノ依存。RemojoのWebサイトではポルノを断ち切ることで時間の節約や注意力をコントロールできるようになり、人間関係も改善されると説明されています。

しかし、依存症だった人にとって依存から脱した後の心の穴はなかなか埋めることは難しいですよね。Romojoのプランには習慣を変えられるようなサポートコミュニティや、依存症の回復を実感できるように進展を確認できるツールもあります。一人で辛い治療を我慢するのではなくサポートを受けながら前向きに変わっていけるのです。

「ダイエットしたいのに食べるのをやめられない」「タバコをやめたいのにやめられない」といった依存についてはごく普通に語られている一方、ポルノ依存についてはこれまであまり公に語られてきませんでした。しかし、何かをやめたいけどやめられないという気持ちは誰にでもあり、それはポルノも同じです。Remojoのような取り組みやこのような問題に悩んでいる人がいることが、少しでも多くの人に認知されることが望まれます。

トレンド

24日はGoogleマップでサンタを追跡!Google Santa Tracker

​​https://santatracker.google.com/intl/ja/

Googleは2021年12月1日、サンタの住む「サンタ村」を探検したり、サンタを追跡できる「​​Google Santa Tracker」を公開しました。Google検索で「クリスマス」と入力するとサイトへの案内が表示され、サンタが荷物を配り終えるまでの期間限定で公開される予定です。毎年恒例のこのサイトには、今年からGoogle アシスタントを使った音声コンテンツも導入されました。忙しい12月のサンタと妖精たちの様子をお届けする「北極速報」を聞いたり、サンタと電話をすることもできるようになりました。

このサイトではクリスマスにまつわる27個以上のゲームがコンテンツとして用意されています。しかもいつの間にかコーディングやクリエイティビティ、地理や文化を学ぶことができるように工夫されています。そして何よりも目を引くのは、遊び心を詰め込んだワクワクするアニメーション。サンタを待つ子供の気持ちに答えたストーリーとデザインの作り込みに、私たちも思わず見入ってしまいます。

日常的なサービスとして使われているGoogleマップやアシスタントも、イベントに合わせて楽しいサービスに変身させる取り組みはGoogleならでは。ユーザーの心を掴む企画は、サービスの作り手としても注目ですね。さて本日24日19時からは待ちに待ったサンタの追跡が始まります。今年は「​​Google Santa Tracker」で遊び心に溢れる楽しいクリスマスを!


以上、12月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
今年も一年ありがとうございました。来年も毎月新しい情報をお届けしていきます。どうぞお楽しみに!

過去の月間まとめ記事はこちらからどうぞ!