新しいものが大好きなGoodpatchで8月話題になったアプリ、サービス、デザインまとめ(2021)
まだまだ暑い日が続きますが、いかがお過ごしですか?
今月も、Goodpatchで話題になったアプリケーションやサービスをご紹介します!
目次
アプリ
LINEトークに気軽にメッセージや画像に反応できる「リアクション」機能が新登場
https://guide.line.me/ja/chats-calls-notifications/chats/message-reaction.html
2021年8月2日、LINEはトーク内でのメッセージや画像、スタンプに直接反応できる「リアクション」機能の提供を開始しました。リアクションは表情豊かな6つのアイコンから選択することができ、選択したアイコンはメッセージの下に表示されます。
新機能の大きな特徴は、ピンポイントで反応したいメッセージにリアクションができることです。グループで話していると、反応したかったメッセージが他のメッセージによってすぐに流れてしまったり、同じ文脈のスタンプが連続で続いて、後からスタンプを送るのに戸惑ってしまうことがあります。リアクション機能のリリースにより、反応のタイミングを逃さないだけでなく、相手に通知が届くことなく絵文字一つで意思表示ができるので、安心して反応することができます。反応をもらったユーザーも、相手がどう思っているのか簡単に確認することができるのでとても便利です。
リアクション機能はTwitter 、FacebookなどのSNS他、ヒジネスで使われるメッセージアプリでも頻繁に使われています。「気軽さ」「安心」といった心理的安全性の高いコミュニケーションをとることが昨今のビジネスシーンでも重要視されています。家族や友達に対してはどうでしょう。ある程度の関係値があると、察し合うコミュニケーションに変わり、反応が少なくなっていることはないでしょうか。親しい人でも、反応がないと不安に感じてしまいます。心理的安全性は誰に対してもあるべき状態だと考え、LINEに今回の新機能が登場したのかもしれません。
気軽なコミュニケーションに注目すると、まだまだ提供できる価値が出てきそうです。Instagramのオンラインマークのように特定の人に向けて自分が今話せる状態であることをアピールできる機能がLINEにもあると、普段話すタイミングが合わなかった人と話すきっかけができたり、電話をかける時間も気にしないで済んだりするかもしれません。
アプリには人との距離を感じさせないコミュニケーションを生み出す力がある、そう考えさせられます。
三井住友銀行、全手続きをアプリで完結
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB16CB80W1A810C2000000/
2021年8月17日、日本経済新聞は三井住友銀行が年内に全ての手続きを原則アプリ(三井住友銀行アプリ)内で完結できるようにすることを報じました。現在アプリでは店頭の約3割ほどの手続きが可能です。コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて非対面・非接触で手続きが可能になるニーズ拡大やネット銀行の台頭を受け、大手銀行のデジタルシフトが加速しています。
近年、同行では新規口座開設の際に紙の通帳発行に手数料を設定したり、未使用の口座(Web通帳未選択で2年以上未入出金、残高1万円未満の普通預金口座)に手数料を設定したりと通帳のデジタル化を進めてきました。一方で、依然として店舗に来店し印鑑を必要とする手続きも多く、そのギャップがユーザーの不満となっていました。全手続きがアプリで完結できることは、様々なサービスをスマホアプリで行うデジタルネイティブ世代や店舗の少ない地域には歓迎されることでしょう。
しかし、デジタル化が急速に進むことにはデメリットもあります。同行は引き続き店頭でのサービスを続けますが、全国の4分の3の店舗を資産運用の相談などの業務に特化した「軽量店」化し、振り込みなどの手続きはインターネットへ誘導する方針を掲げています。インターネットにアクセスできる環境が整っていないユーザーや知識が乏しいユーザーは不便な思いをすることになるでしょう。このようにリアルの仕事がデジタルに移行することによって、インターネットへのアクセスやリテラシーが低い人が取り残される「デジタルディバイド(情報格差)」が問題となることがあるのです。実際に、銀行や行政手続きのデジタル化が進む国々の中には、高齢者を中心にこの問題が表面化しています。
資源の効率化、コスト削減、ユーザーの利便性などの面で銀行のデジタル化は急務といえるでしょう。その中で全国に多数の店舗とユーザーを持つ大手銀行には、リアルとデジタルのバランスをとり、情報弱者を取り残さない新しい銀行の形を模索していくことが望まれます。
サービス
グリーが「メタバース事業」への参入を発表
https://corp.gree.net/jp/ja/news/press/2021/0806-01.html
グリー株式会社が2021年8月6日、子会社であるREALITY株式会社を中心に「メタバース事業」に参入することを発表しました。今後数年で100億円規模の投資を行うとしており、それに伴って開発者200名強の採用を計画しているとのことです。
近年GAFAMなどの会社も、注目している「メタバース」。メタバースとは、「現実社会に近い遊びや生活ができるデジタル世界」のことを指します。その言葉自体は、1992年に書かれた「スノウ・クラッシュ」というSF小説がはじまりでした。最近の話題のように見えますが、実は2020年の年末にPC版のサービス終了することでも話題になったサイバーエージェントのアメーバピグなどのサービスも、メタバースの一種でした。過去のメタバースサービスと、昨今話題になっているメタバースの一番の違いはやはりXR技術や通信環境など、周辺技術の発展でしょう。5Gなどの通信環境は、より場所を選ばず、なおかつ遅延を感じることなくメタバース内でのコミュニケーションをとることを可能にします。XR技術は、現実にデジタルをとけこませたり、デジタルを現実のように知覚できるようにすることで、よりデジタルと現実の差を少なくし没入感を高めます。
今回のグリーの動きは、その潮流をみての判断であり、中心となるのは元々の強みであるエンタメ領域や、日常生活の延長線として楽しめるメタバースでしょう。しかし、上述した技術の発展に着目すると、これからのメタバースにはまた違った活用法が見えてくると感じました。それはリモートワークやオンライン教育における活用です。コロナ禍の中、急速に普及したリモートワークですが、一方でそのコミュニケーションの質の違いにより、やはり対面の方が働きやすいという声があるのもまた事実です。メタバース事業の成熟により、その残るギャップを埋められるものが見つけられるのか。そういったアンテナも貼りながら、今後もメタバースとうまく付き合っていきたいですね。
デリバリープラットフォームの一元化SaaS「Orderly(オーダリー)」が1.1億円の資金調達を実施
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000037788.html
2021年8月11日、様々なデリバリーサービスの受注・売上を一括管理可能なサービス「Orderly」を提供する株式会社Toremoroが総額1億1,000万円の資金調達を発表しました。
同社はデリバリー専門の飲食店を経営する中で、デリバリーマーケット特有のペインを感じ取り、新たにデリバリープラットフォームの一元化SaaSを開発をスタート。デリバリー事業者毎に店舗に増え続ける受注用タブレットや、サービス毎に分散される管理画面や本部オペレーション、POSへの二度打ち作業等を解決するサービスとして「Orderly」は提供されています。
コロナ禍で店舗にとっても消費者にとっても必要不可欠になったデリバリーサービスですが、複数サービスが台頭することで店舗の負担が増えることは望まれない状態です。飲食店経営に携わっていたからこそ触れられたペインが今回の新サービスにつながっており、改めて現場の負の側面に事業創出のヒントが隠されているのだと考えさせられます。
一方で、これまでも旅行代理店を取りまとめるサービスや多くの不動産屋が開示する情報を一括検索できるサービスなど、複数業者の台頭と熟成期間を経て成立するサービスが提供されてきました。新しい価値提案やサービスが続々と登場する現代において、複数業者の台頭による恩恵はそのままに、そこで生じる様々な負担をサポートする業態は今後も重要性を増していきそうです。
アップルがiCloud上にある子どもへの性的虐待コンテンツを検知する技術を発表
https://www.apple.com/child-safety/
2021年8月5日、AppleはiCloud内に保存される前に子どもへの性的虐待画像を検知し、警察機関に通報する技術を2021年中に導入すると発表しました。
昨今子どもに対する性的虐待の様子が記録された画像が発見される事例が世界中で増加しています。日本では対策として、児童ポルノサイトへのアクセスを防止するブロッキングや、スマホフィルタリングの義務化などを行っているものの、被害件数は増加しているそうです。今回のAppleの技術は、まず子どもへの性的虐待画像がアップロードされることを防止します。こういった性的虐待に関わる問題を新たな切り口で解決する糸口となる可能性が大いにあるのではないでしょうか。
一方、この導入に対して、プライバシーが侵害されるのではないかと不安視し、反対声明を出す団体もあります。この懸念に対し、Appleはプライバシーとセキュリティを保護する対策を行なっており、Appleがコンテンツの内容を見ることはないと主張しています。
このように、人が生み出した技術は、社会問題を解決するなどプラスに働く可能性がある一方、画像によって個人が監視されるかもしれないといった危険性を孕んでいることもあるのです。デザイナーとして、サービスの先にユーザーがいることを常に意識し、自らがデザインしたものが本当にユーザーを幸せにすることができるのかという視点を忘れないようにしたいですね。
サブウェイ店舗でOKIの「提案型注文システム」を実証実験
https://jp.techcrunch.com/2021/08/02/oki-subway-japan/
OKI(沖電気工業株式会社)では感情AI技術を活用した「提案型注文システム」を開発しています。その有用性を検証するために、2021年8月2日、OKIと日本サブウェイはサブウェイ実店舗で期間限定の実証実験を実施しました。そもそも感情AI技術とは、ディープラーニングを用いて、人の表情や振る舞いから心の中にある感情を推定することができるもの。この提案型注文システムでは、まず表情データを端末にあるカメラで、視線データを視線センサーで集めます。次にOKIの「興味・関心推定技術」のアルゴリズムを使って注文客の興味・関心を分析。それを基におすすめメニューを提案し、さらに注文までサポートすることができます。
お店側のおすすめではなく個人に合わせた商品提供に注目が集まる現代、サブウェイのように豊富な商品とカスタマイズ可能なメニューを提供するサービスは増えていくでしょう。しかし何を選ぼうかメニューを見てワクワクする一方、慣れていなかったり忙しい時には決められずにとうとう注文を諦めてしまったー誰しもそんな経験もあるのではないでしょうか?だからこそ自身の判断で自分好みにカスタマイズできる選択肢を提供しつつ、ユーザーの背景によって生じかねない選択の負担はおすすめを提案してくれる提案型注文システムが広まることで解消できそうだと期待しています。使いづらさが改善される未来の生活に期待が膨らみつつ、実際に私の興味・関心には何がオススメされるのか気になります。サブウェイの店舗をはじめ、街中で実際に使える日が待ち遠しいですね。
デザイン
Twitterの新UIに「目が疲れる・頭が痛くなる」などの声が多数、ボタンの表示コントラストを再調整することを発表
https://jp.techcrunch.com/2021/08/16/twitter-tones-down-new-buttons/
8月12日、Twitterはウェブ版とモバイル版の両方において、アプリのUIを一部変更しました。多くの変更点の中で、フォローボタンを青から黒に変更したのがSNS上で話題になりました。従来青背景に白文字で表示されていた「フォロー中」のボタンが白背景の黒文字に、「フォロー」のボタンは黒背景に白文字へと変更されました。なお、ダークモードではこの配色が反転になります。しかし、UIの変更後ユーザーからは「目が疲れる」「フォローボタンの色が反転したことで、間違えてフォローを外してしまうという」といった声が多く寄せられる事態になりました。このような反応を受けて、Twitterは目に優しいものにするため再び配色を調整することを発表しています。
今回の新UIは「フォロー中」のボタンより「フォロー」のボタンをより目立たせるように表示しています。そこにはフォローを促進させたいという狙いがあるのかもしれません。この仕様変更は以前のバージョンと濃淡が逆転しており、それがユーザーに違和感を与えてしまっている要因だと考えられます。しかし、このようなデザインが間違っているとはまだ断言できません。ユーザーが新しいデザインに慣れるまでには少し時間がかかるものです。今回のUI変更によって各ユーザーのフォロー数の増減など、今後どのような効果があるか注目していきたいと思います。
湖池屋、「5年保存できるポテチ」などが入った一斗缶を板橋区に提供
https://koikeya.co.jp/news/detail/1249.html
2021年8月16日、株式会社湖池屋はローリングストックを広める目的で、「KOIKEYA LONG LIFE SNACK」シリーズの5年間保存可能なポテトチップスなどが入った「あんしん5年缶」を板橋区に提供したと発表しました。ローリングストック法とは、非常時に利用できる食材や生活用品を多めにストックし日常的に使用、不足したら買い足すという方法。常に使用期限内の非常アイテムを家庭内にストックすることが可能で、近年推奨されている防災対策です。
湖池屋が今回「あんしん5年缶」を市町村に提供したことは、企業のESGの取り組みとして意義があると考えられます。ポテトチップスといえば、ついついつまみたくなる食べ慣れた味で安心感が印象的。そんなポテトチップスが防災用品に加わることで、ローリングストック法の普及に一役買うと考えられるでしょう。なお、ポテトチップスはかつて一斗缶に入れられて販売されていた時代があるそう。近年の防災用品は軽量性やコスト削減当の観点などからプラスティック包装が用いられることが一般的でした。一方で、一斗缶は遮光性・密封性にすぐれ、隙間なく積み上げられるのも特徴です。そんな機能的価値はもちろんのこと、一斗缶とポテトチップスの懐かしい組み合わせは、情緒的価値を非常食にもたらしています。このように、私たちデザイナーは本来機能的価値に注力される対象物に対しても、情緒的価値をもたらせるよう取り組んでいきたいですね。
以上、8月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!
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