2021年もあと1ヶ月。年末に向けて忙しい日々が続きますね。
今月も、Goodpatchで話題になったアプリケーションやサービスをご紹介します!

アプリケーション

買い物を自動で記録し栄養管理ができるアプリ「SIRU+」がダイエー全店に導入

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000031233.html

買い物を自動で記録し栄養管理ができるアプリである「SIRU+」が2021年11月24日からダイエー全店に導入されることが発表されました。SIRU+はスーパーのポイントカードなどに紐づく購買履歴から栄養の偏りを可視化し、栄養バランスが整う食材やレシピをオススメするスマホアプリです。

今まで自分の普段の食事などを記録し栄養を管理するアプリはありましたが、わざわざ手入力したり写真を撮ったりして記録するのは面倒なもの。SIRU+のスーパーで買い物するだけで記録をしてくれるという体験は、まさに面倒くさがりでズボラな方に刺さる、快適な体験となるのではないでしょうか。

またこのSIRU+は繰り返し利用することで、食の好みをアプリが機械学習し、個人の食生活に合わせて最適な買い物を提案してくれるとのことです。「記録をする」面倒さを払拭し、さらに「買い物時」の面倒臭さや「レシピを考える」面倒臭さなど、徹底的に食事にまつわる面倒臭さを感じない体験設計となっており、一貫したコンセプトが感じられます。買い物を自動で記録する技術は一貫した体験をもたらし、ユーザーの快適さを向上させるだけではありません。このアプリを運営するシルタスは、スーパーの来店者の栄養状態や健康ニーズがわかるようになり、消費者行動を促す潜在的な欲求のスイッチとなる新たなインサイトの発見にも役立ちます。そのためこの技術はただ体験を向上させるだけでなく、アプリの体験向上のサイクルを循環させるコアとなるでしょう。

サービス

いつ何が届くかわからない!?食品ロスのサブスクリプション「ロスゼロ不定期便」が誕生

https://ampmedia.jp/2021/11/06/losszero-subsc/

食品ロス削減事業を行う株式会社ロスゼロは、業界初、いつ何が届くかわからない、食品ロスをポジティブに楽しめるサブスクリプション「ロスゼロ不定期便」をスタートしました。食品ロスは不定期不定量に集まることから、このアイデアが生まれたそうです。廃棄物というマイナスなイメージをポジティブに持っていく発想が面白いですね。

届けるものは食品だけでなく、「行き場を失ったストーリーも届ける」、と公式サイトに書いてあります。ストーリーがあることでその商品の食品ロス削減に貢献している実感が湧くのではないでしょうか。ストーリーは共感をよび、人の記憶に残りやすくする効果があります。この体験が印象に残ったエピソードとなり、日常生活で食品を見るたびに食品ロスについて思い出すきっかけになるでしょう。食品ロスは環境問題や飢餓問題の解決に繋がるなど、SDGsにも取り上げられている重要な課題です。人間は食べることが大好きです。SDGsの取り組みとしてこのロスゼロ不定期便からはじめてみるのはいかがですか?

プロダクト

バルミューダが「BALMUDA Phone」を発売

https://tech.balmuda.com/jp/phone/

2021年11月26日にバルミューダ(BALMUDA)が手掛けるスマートフォン「バルミューダフォン(BALMUDA Phone)」が発表されました。2021年11月19日より同日オープンしたバルミューダ ザ・ストア 青山(BALMUDA The Store Aoyama)およびバルミューダ ブランドストアにて予約を開始し、同26日より発売されました。スマートフォンが大型化し、画一的になっているという現状に対し、新しい選択肢を提供するために開発されたそうです。

バルミューダが発売するスマートフォンということで発売前から注目度は高く、発表後すぐにさまざまな意見がインターネットで交わされていました。そこで実際に旗艦店であるバルミューダ ザ・ストア 青山で実機を体験してきました!
まずは外観とサイズ。背面が湾曲しているため、画像で見た時よりも薄く感じるというのが第一印象でした。コンパクトなサイズに形も相まって、手に収まる感覚があります。また、プラスチックを採用していることもあり軽量です。

続いて気になるのがその使用感。起動すると、ホーム画面に2本の斜線が入っているのが最初に目につきます。これは単なる意匠ではありません。線に沿ってスワイプする操作にショートカットを割り当てることで、よく使う機能に簡単にアクセスできるのです。オリジナルのアプリケーションで面白いと思わされたのは「メモ」。これまでのメモを良くも悪くも裏切っており、メモに「色」と「画面内の位置」という情報を付加して貯めていくことができます。これまでのメモのメンタルモデルから逸脱しているため慣れるには時間が必要そうですが、脳内でビジュアルとともに残して思い出せることに新しさを感じました。
現時点で賛否両論ある当製品ですが、iPhoneが日本に上陸した際は「こんなもの誰も使わない」と言われていたと聞きます。BALMUDA Phoneはどうか。ぜひ今後も挑戦を続けて欲しいと願っています。

廃車前のバスを使った移動型サウナバス「サバス」の製作を発表

https://www.axismag.jp/posts/2021/11/424254.html

リバースは2021年11月4日、どこでも本格的なサウナが体験できる移動型サウナバス「サバス」を2022年2月完成に向けて製作していることを発表しました。サバスの製作において、日本最大のサウナ検索サイト「サウナイキタイ」と連携し、デザインカンパニーのNODと設計事務所のOSTRが内装設計を手掛けます。

「サバス」で使われるのは実際に兵庫県で運行されていた廃車前の路線バス。車両は本格薪ストーブを使用したサウナ室と休憩スペースに改装される予定です。バスは大型駐車スペースのある施設やアウトドア施設の企業や事業者向けに貸し出しを検討しています。

2015年に採択されたSDGsを機に、世界中で環境に優しい取り組みが活発に進められてきました。近年は日本でも様々な資源のリサイクルやリユースが注目されていますが、真面目な面だけではなく、「そんな手もあったか」と驚き、心をくすぐられるような体験ができたら楽しいですよね。バスをサウナにしてしまうアイディアもその一つ。路線バスの座席配置はそのまま、降車ボタンはサウナストーンに水をかけて蒸発させる「押しボタン式のオートロウリュ​​(通称:蒸気降りますボタン)」に。路線バスらしさも残した遊び心のあるサウナ室に今から期待が高まります。

画面を触らず視線で操作できるiPadスタンド「TD Pilot」をTobiiが発売

https://jp.techcrunch.com/2021/11/16/2021-11-15-tobii-eye-gaze-tracking-ipad-typing-text-to-speech-and-apps/

2021年11月16日、アイトラッキング(視線計測)の技術を手がけるスウェーデンのTobiが、iPadの画面を直接触らずに視線を追跡しアプリを操作できるiPadスタンド「TD Pilot」を発売しました。アイトラッキングは人間が何を、いつ、どのように見ているか明らかにする技術です。TD PilotをiPadに装着すると、ユーザーは視線だけでアプリを起動したり、素早くタイピングし背面ディスプレイに表示したり、テキストを読み上げる合成音声がスピーカーから出力されます。TD Pilotは、ホーキング博士のような筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、両手が動かせない人や発声が難しい人にとっての救世主になるかもしれません。

私たちデザイナーは、障がいのある人なども含めて、すべての人が同等に目的の情報にアクセスできる度合い「アクセシビリティ」を高めるよう努めなければなりません。アクセシビリティはユーザビリティやサービスの満足度の土台となるためです。例えば、高齢者の人や色覚異常の方、ディスプレイ性能によって変化する見え方に配慮し、UIの配色のコントラスト比を検討します。TD Pilotはアクセシビリティを高めるプロダクトと言えるでしょう。また、TD Pilotのようなプロダクトが増えれば、タブレットの利用者層の拡張にも繋がり、メーカーとしてもメリットがあります。
このように「三方善し」なプロダクトが今後より求められていくことでしょう。

NHK紅白歌合戦が新ロゴを公表、「多様な価値観」を尊重するデザイン

https://cultureuniversitytokyo.com/2021/10/29/newskohakunewlogo/

2021年10月29日、今年で72回目を迎える大型音楽特別番組「NHK紅白歌合戦」が新しいロゴを公表しました。紅と白がはっきりと分かれたこれまでのロゴが大きく刷新され、紅白の境界線をなくして、紅から白に変わっていくグラデーションのデザインに変更しました。グラデーションの先にはもっとカラフルな色があると感じられ、その形に込められたのは、番組として「多様な価値観」を認め合おうという思いと、コロナ禍で激変した日常生活を「カラフル」に彩りたいという願いです。また、これまで「紅組司会・白組司会・総合司会」と区別されていた呼称も全員「司会」に統一することを発表しました。

大きなリニューアルを行った「紅白」。新しいロゴは、紅と白の二択から選ぶものという前提に新たな視点をもたらしてくれます。紅と白の二択から選ぶという番組のコンセプトをいきなり拒絶するのではなく、大切な思いをこめて徐々に変化していく姿勢を示しているのではないでしょうか。そして中間で混ざり合う色からは「多様性」への理解が進む時代が感じられ、未来を見据えた新たな覚悟が伝わってきました。

トレンド

Facebookが「Meta」に社名を変更

https://about.fb.com/news/2021/10/facebook-company-is-now-meta/

FacebookやInstagramを運営するフェイスブックが2021年10月28日、社名を「Meta」に変更しました。社名変更は、同社のイベントである「Connect 2021」内で発表され、「メタバースによって、人々のコミュニケーションやビジネスを支援していく」という思いが込められています。

8月の記事でもグリー株式会社が参入することで紹介した「メタバース」。今回の社名変更は、社名にその言葉の一部を使うことでただ注力すると発表する以上の、会社としての強い姿勢を示す形になりました。今回のMetaの発表は、もちろん近年のメタバースが注目される流れの一つとも見られますが、一方で発表会の中ではより確固たるMetaとしての「メタバース」の捉え方が示されていました。それはXR技術を活用したメタバースです。Metaはメタバースを単なる仮想世界に留めず、現実世界との間を自由に行き来ができるもう一つの世界として定義していると考えられます。その理想の中では、人々はより距離や外見に捉われず自由に働き、暮らすことが可能となっています。

これまでにもMetaは、FacebookやInstagramを中心にSNSで人々のコミュニケーションやビジネスを支援してきていました。今回の発表で、その中心になる媒体がSNSからメタバースに切り替わったとはいえ、その考え方の部分は変わっていないと思われます。その根幹は、インターネットの世界を現実世界の延長に置く考え方にあるのではないかなと思いました。実名文化を重視したり、リアルのコミュニケーションの援助としてSNSを開発していたところからその考え方が伺えます。今までもゲームなどの世界では様々なメタバースが生まれていましたが、XR技術が成熟した今こそ、Metaが理想とするメタバースを作っていけると判断されたのではないでしょうか。

インターネット、そしてSNSで一気に拡張されたコミュニケーションの輪。しかし今のままでは、これ以上人々を密に繋ぐことは難しくなってきたのではないでしょうか。かつてこのSNS時代を作り上げる立役者になったMetaの社名変更は、次に来る時代を引き寄せる大きな一歩になるのかもしれません。

物々交換でしか仕事をしない会社「おすしカンパニー」設立

http://osushi.company/

2021年11月1日(寿司の日)、物々交換でしか仕事をしない世界初のVtoV(Value to Value)カンパニー「おすしカンパニー」が設立されました。おすしカンパニーは対価としてお金ではなく農産物や宿泊券などを受け取り、ブランディングやコンサルティング、クリエイティブなどを提供する任意団体です。

古来より行われてきた価値交換の方法である物々交換にとって代わり、18世紀以降は労働力をはじめあらゆるものがお金によって価値がつけられ交換されてきました。その中で、あえてお金ではなくもの(モノや体験)を対価として受け取る試みは、ものの価値や価値の付け方を問い直すきっかけとなるのではないでしょうか。おすしカンパニーが提供するブランディングやコンサルティングによって顧客企業の企業価値が高まることで、その対価となるものの市場における相対的価値も高まるかもしれません。物々交換がプライベートエクイティに変わる新たな投資の形になっている未来もあり得ます。

近年では、キャッシュレス決済が普及し現金以外の金銭交換が盛んに行われています。さらに、暗号資産のような新たな価値交換の方法も生まれてきています。おすしカンパニーの取り組みはまだ新しく、現行の法律では会社としての活動は困難です。キャッシュレスの普及に伴ってレジの動線や店舗の携帯が変わっていったように、価値時代の変化に合わせて法律や制度などもより適した形にデザインされていくことが求められるでしょう。


以上、11月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!

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