再生医療等のプラットフォームとして、医療機関・研究機関と連携した新しい療法の開発、再生医療等に用いるための脂肪組織・血液の加工受託並びに、医療機関への法規対応支援までを提供しているセルソース株式会社。事業のひとつとして、医療機関から患者の血液を預かり「PFC-FD ™」に加工する血液加工受託サービスを展開しています。

そんなセルソースでは、より多くの患者様に血液由来加工受託サービスを認知していただくための施策を検討していました。しかし、どのような施策を取り入れるべきか優先順位が整理できていなかったといいます。

そこでグッドパッチでは、人を起点としたリサーチと分析から、アクションへの落とし込みまで密着して実施する探索型リサーチ「Insight Research(インサイトリサーチ)」を実行。

プロジェクトを一緒に進めた3か月間の軌跡について、プロジェクトメンバーであるセルソース営業戦略担当片岡さん、カスタマーサクセスチーム 高山さん、そしてグッドパッチのデザインリサーチャー 米田、村上へ話を聞きました。

投資すべき施策の優先順位を明確に

-- まず、セルソースさんがデザインを用いた課題解決に取り組みたいと考えられた経緯についてお聞かせください。

セルソース 片岡さん:
会社の業績は右肩上がりではありましたが、営業チームとして、成長角度を更に上げていきたいと考えていました。そんなときにグッドパッチ CEOの土屋さんとお会いする機会があったのです。

実はセルソース社内ではデザイン思考についての書籍が課題図書になっていて、ユーザー起点で事業やサービスを考えることの重要性は理解していたものの、アクションにつなげる方法が定まっていなくて。具体的なアウトプットまで落とし込む部分は、外部のパートナーさんのお力をお借りすることも一つの選択肢だと考えていました。

土屋さんにお会いしてお話を聞くなかで、グッドパッチさんのビジョンとセルソースがやりたいことがマッチしていることに感銘を受け、一緒に取り組むことを決めました。

セルソース営業戦略担当 片岡さん

-- 具体的にはどのような事業課題があったのでしょうか。

セルソース 片岡さん:
当社が契約している医療機関さまにおいて、より多くの患者さまに血液由来加工受託サービスのことを知ってもらいたいと考えていました。

サービスを利用してもらうために行うべき施策案は、医療機関さまと接する現場のメンバーからも挙がってきていたものの、投資すべき施策の優先度が決められていませんでした。

-- サービスの利用件数を増やすための営業施策検討にあたり、リサーチャーのふたりが提案したプロジェクトプランはどんなものでしたか。

グッドパッチ 村上:
リサーチの目的設定と分析、続いて施策の方向性検討とアクションへの落とし込みが大枠のプロセスです。今回は、実際にサービスを利用される患者さまのインサイトを明らかにすることがポイントだと考え、患者さまとそのご家族へのインタビューを提案しました。

グッドパッチ リサーチャー 村上

セルソース 片岡さん:
営業やカスタマーサクセスは、医療機関さまにセルソースのサービスを提供することがメイン業務なので、サービス利用者である患者さまが実際にどう考えているのかなど、深層心理までは分かっていませんでした。患者さまへインタビューをするという発想も、自分たちだけでは出てこなかったと思います。

プロジェクト開始時に、リサーチャーのおふたりから「グッドパッチが患者さまの声を聞き、セルソースさんにない視点を補います」と言ってくださったことが頼もしかったです。

グッドパッチ 米田:
プロジェクトが始まる前から、一緒にいろいろと作戦を練っていましたよね。また、事業内容を調べるなかで、セルソースさんが提供する再生医療が多くの症状への効果が期待されていること、世の中にとって本当に価値がある事業をされていることが分かりました。デスクトップリサーチの段階で「この取り組みを意味あるものにしたい」とモチベーションが高まりましたし、私たちの提案にみなさんが「やってみましょう!」とポジティブに応えてくださるので、プロジェクト期間中はセルソースの社員になった気持ちで臨んでいました。

グッドパッチ リサーチャー 米田

セルソース 片岡さん:
ちゃんまいさん(グッドパッチ 米田)とまりりんさん(グッドパッチ 村上)に初めてお会いしたときから「めっちゃいい人!セルソースに来てくれないかな」と思っていました(笑)。考え方がロジカルで伝え方もクリアで分かりやすいし、なにより人柄も含めて直感的にいいなと感じました。

セルソース 高山さん:
私たちがやりたいことや検討しているアイデアをお話ししたときに「これとこれなら、優先順位はどっちが高いですか?」「このふたつは一緒にできそうですね」と都度提案をしてくれたことが印象的でした。プロジェクトの方向性がクリアになったので印象に残っています。

セルソース カスタマーサクセスチーム 高山さん

医師と患者へのインタビューで明らかになった認知ギャップ

-- リサーチャーが実施した医師と患者さまへのインタビュー結果について、どう感じましたか?

セルソース 片岡さん:
想像以上の発見がありました。我々が多くの医師から聞いていたのは「健康保険対象外のサービス(PFC-FD™療法)を勧めたら、営業のように感じられて患者さんが離れていくのではないか」という意見でした。

しかし、今回グッドパッチさんが患者さまやご家族にインタビューをしてくれた結果、患者さまの視点では「費用負担の大小に関わらず、治療の選択肢をすべて知りたい」と考えていることが分かったのです。

医師と患者さまの認知ギャップを発見できたことが、最大の価値でした。

画像:医師と患者さまの認知ギャップについてグッドパッチが要約した資料

グッドパッチ 村上:
医師が最初から選択肢としてPFC-FD™療法を提示しやすくするために、アクションとして「診断シートを配布する」ことを提案させてもらいました。その後、医師のみなさんの反応はいかがでしたか?

セルソース 高山さん:
ほとんどの医師が「まさしくこういうものが欲しかった!」と言ってくれています。これからグッドパッチさんが提案してくださったものを改良し、医師から患者さまに渡していってもらう予定です。診断シートを導入したあとも、医師と患者さまそれぞれの声を聞きながら常にアップデートしていきたいと考えています。

画像:医師から患者さまに渡す診断シート。グッドパッチが提案した案をセルソース社内でカスタマイズして完成した。

セルソース 片岡さん:
診断シートのほかにも、医師と患者さまのインサイトから20個ほどのアクションをグッドパッチさんと一緒に考えました。たくさんのアイデアを「インパクトの大きさ」「実現性の高さ」の2軸で整理してもらい、特に優先度が高いものは現在もセルソース社内で進めています。

また、患者さまが受診までの空き時間に、PFC-FD™療法について紹介した動画を流し、医師から受ける説明を予めイメージできるようにすることも提案いただきました。動画を通して医師の説明時間の短縮と患者さまに予め質問を準備いただける等十分な理解を得ていただくためのアクションです。これは現在、グッドパッチの別チームのみなさんに制作をお願いしており、僕もフルコミットで関わっています。

グッドパッチ 村上:
提案したアクションをその後すべて進めてくださっていると聞けて、安心しました!

一方通行の報告ではなく、プロセスを通して共創する価値

-- インタビューと結果の分析、実行可能なアクションの検討に取り組んでみてのご感想や、グッドパッチの並走スタイルを特に感じた部分があれば教えてください。

セルソース 高山さん:
並走してもらっている感覚はずっとあって。それは私だけではなく、このプロジェクトに関わったセルソースの社員がみんな感じていたことです。最終的に出てきたものは、グッドパッチのおふたりと一緒にワークして、一緒に考えたアイデアだと思っています。
普段あまりやったことがないアイデア出しの部分では、グッドパッチさんがリードする形で方向性を探ったりできたことがいい経験になりました。

-- 今後にも生かせると思うのはどんな部分ですか。

セルソース 高山さん:
私たちが業務に取り組むなかで、新たなアイデアを形にする機会は今まで多くはありませんでした。でも今回みんなで意見を交わしながら方向性を決めて、さまざまな施策としてアウトプットすることができたので、今後も自分たちでやってみようと思っています。

グッドパッチのおふたりは、ひとつのものごとに対して多面的に疑問を投げてくださるので、そうした考え方も今後に生かせると感じたポイントです。

セルソース 片岡さん:
今まで、アイデアはあってもそれを形にするのはすごく難しかったのです。ユーザー起点で考えることが重要だと理解していても、いざ実践しようとするとアウトプットする方法がわからなかったり、時間がなかったりします。アイデアを形にするまでのプロセスがすごく参考になりました。今後さまざまな戦略を走らせるうえで、物事の整理の仕方や、目に見えるかたちに落とし込むというところは生かしていきたいです。

また、今回の取り組みで患者さまの声を聞けたことで、既存事業の枠を超えたアイデアが次々と出てきたのです。既存のビジネスと異なるところでも、今回の調査結果を活用していくことができそうです。

セルソース 高山さん:
日頃の業務で「患者さまが本当に求めていることはなんだろう」とか「こんなこともできるんじゃないか」と考えるきっかけはなかなかありません。今回のプロジェクトがきっかけでこうした話ができて純粋に楽しかったですし、会社にとってプラスになると思います。

セルソース 片岡さん:
グッドパッチさんからは、最初に「私たちは一般的なデザインリサーチとは違い、並走するスタイルです」と聞いていました。そのとおりで、一緒に患者さまや医師にインタビューをしたり、リサーチを進めたりしていくなかで「我々がやるべきこと・やらなくても良いこと」がどんどんクリアになっていく感覚がありました。我々もリサーチの全工程に密着していたからこそ、納得感を持ってこれからのアクションを実行していくことができると思います。

スピーディーに調査結果をまとめる従来のリサーチにもいい面はあります。しかしグッドパッチさんはコミットメントにおいて明らかな違いを感じましたし、それならば僕らもフルコミットで応えねばという気持ちにさせられました。実際にメンバーにも「グッドパッチさんを超えるくらい食いつこう」と伝えていました。

グッドパッチ 村上:
リサーチ過程でセルソースの社員さんへのインタビューも実施したのですが、どの方も120%の気持ちで向き合ってくださることが伝わってきました。また、私たちがインタビューした医療機関の方々は、セルソースさんにとっては大切なクライアント。それでも今回のリサーチのために、第三者である私たちに医師のみなさんをたくさん紹介してくださったことも、とてもありがたかったです。

グッドパッチ 米田:
セルソースの皆さんには、すべてのインタビューにも同席いただきました。私が印象的だったのは、セルソースの営業担当と医師の関係性です。自社のサービスを売る相手として接するのではなく、患者さまの課題をいっしょに解決していくパートナーとして伴走されている姿が印象的でしたね。

一方で、第三者であるグッドパッチがインタビューすることで「セルソースの営業担当では踏み込めなかったことまで聞くことができた」と言っていただけたことが嬉しかったです。

セルソース 片岡さん:
現在、それぞれのアクション前後で当社のサービス利用件数にどのような影響が出るかを計測できるようにもしています。今後は月次で結果を確認し、必要に応じてアクションを改善していきたいと考えています。

グッドパッチ 米田:
グッドパッチの別チームが制作中の院内用の動画も楽しみですね。ぜひまた、計測結果を聞かせてください!これからもよろしくお願いします。本日はありがとうございました。


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