SUNTORY+(グロース)
- Client
- サントリー食品インターナショナル株式会社
- Expertise
- Business/Strategy Design, Digital Product & Service Design, Brand Experience Design
- Date
- Client
- サントリー食品インターナショナル株式会社
- Expertise
- Business/Strategy Design, Digital Product & Service Design, Brand Experience Design
- Date
Overview
企業が健康経営に取り組み、経営資源である従業員の健康増進を図ることが必要不可欠な時代が到来している中、サントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)様は2020年、従業員の健康行動習慣化をサポートするヘルスケアサービスアプリ「SUNTORY+」(以下、サントリープラス)をリリースしました。
しかし、アプリをリリースできたものの、こうしたデジタルサービスをグロースしていくための知見が社内にあまりなく、どう改善し利用者数を伸ばしていくかという悩みを抱えていた中、サントリープラスが構想段階だった2018年12月からプロジェクトに参画してきたグッドパッチは、事業と組織の両面をデザインしたさまざまな施策を実行。リリースから4年が経ち、導入企業が1200社を突破するなど、同サービスの飛躍的な成長を支援しています。
※本記事は、2020年のリリース当時のご支援内容を記した以下の記事の続編になります。
リリース当時の詳細を知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
https://goodpatch.com/work/suntory
Client
サントリー食品インターナショナル株式会社 様
Suntory Beverage & Food Limited
Summary
ご支援前の課題
- サービスをリリースしたが、導入企業の増やし方が分からない
- サービスの満足度やユーザーの利用継続率を高めたい
Goodpatchの対応
- ユーザーリサーチを基にしたUI改善や新規施策の立案
- 導入企業増加に向け、企業担当者向けのプロダクト(管理アプリ)をリリース
- 営業やCS戦略の策定、自動販売機のポップや展示会ブースの設計などプロダクト外を含めた複数タッチポイントをデザイン
- UXマスタやプロダクトビジョン策定など、組織に「デザイン思考」が残り続けるアウトプットを提供
支援後の成果
- リリースから4年で、導入企業数が1200社を突破
- 本プロジェクトの成功をふまえ、サントリー社内のソフトウェアプロダクト立ち上げが活性化
- サントリー社内の表彰制度の「やってみなはれ大賞」で特別賞受賞
- シンプルな操作性と親しみやすいイラストが社外からも高く評価され、「グッドデザイン賞」(2020年)、「iF Design Award」(2021年)を受賞
リリース→グロースを引き続きGoodpatchが支援
サントリープラスがリリースされた2020年は、新型コロナウイルスによる自粛ムード真っ只中で、身体的な健康の推進はなかなか難しい状況でした。そんな中、サントリープラスはハードルが低く気軽に始められ、楽しく続けられ、クーポンやポイントがつく特典があるといった点が企業から魅力に感じられ、注目を集め続けていました。
しかしリリース直後、サントリー様は主に以下のような悩みを抱えていました。
- サービスをリリースしたが、導入企業の増やし方が分からない
- サービスの満足度やユーザーの利用継続率を高めたい
こうした悩みを踏まえ、「グロース領域も得意ということで、引き続き(グッドパッチに)見ていただこうと考え、継続をお願いしました」(サントリープラス プロダクト開発責任者 東さん※以下、サントリー・東さん)
以下より、グッドパッチがどんなグロース支援を行ったかを記載していきます。
さまざまなグロース支援
アプリ機能の企画・開発を通した、ユーザー体験強化
グッドパッチは、利用ユーザーを増やすためにはアプリの「体験価値」の磨き込みが重要と捉え、サントリー様と徹底的に議論を重ねました。
まず、アプリの新規ユーザーの初期離脱を防ぐための「スタートミッション」を作り、オンボーディングプログラムをアプリ内で行えるようにしました。
そこで実装した「歩数計機能」は一つの目玉機能に。「リリース時はあえて省いたのですが、ユーザーの声を聞く中で、 やはり間口が圧倒的に広いのは歩数だと分かったので、追加しています。歩くのって、一番簡単な健康行動ですから。ただ、単なる歩数計と見られてしまうと、届けたい価値とずれてしまうので、そうならないように気を付けました」(サントリー・東さん)
「歩こうフェス」というサントリープラスアプリで実施できるウォーキングイベントは、楽しみながら歩くことで健康意識を高め、さらにコミュニケーションを活性化させることができるもので、グッドパッチはアプリ・管理アプリ両方の体験設計・UIデザインや、担当者側のユーザーへのメールなど含めたサポート設計を行いました。
2021年に「歩こうフェスお手軽プラン」をリリースし、「手間なく、無料で実施できるウォーキングイベント」として提供してきましたが、サントリープラスを導入している企業のご担当者から、部署や任意チームでの歩数対抗戦と、個人のがんばりが評価される個人戦の2つを同時に開催したいというご意見、ご要望を多くいただいたことが、「歩こうフェス充実プラン」のきっかけだったのです。
「サントリープラスらしさ」を生むために、例えばイベント期間中の自分の歩数が「富士山登頂に換算して何回分になるのか」の表示を出すなど、歩数の競争を楽しむだけではなく、自分のペースで歩くことも大切にしてもらえる工夫もしています。
イベントの画面に使われる言葉やビジュアルも、これまでブランド設計でグッドパッチのBXデザイナーやUIデザイナーが構築した言葉遣いやデザインガイドラインを基に、通常時もイベント時も統一された世界観でユーザーが体験できるようになりました。
導入企業の担当者にとって使いやすい管理画面に改修
サントリープラスは、導入企業の担当者が使う管理画面(サントリープラス+Navi)にも課題を抱えていました。ファーストビューである「Naviホーム画面」は、「コンテンツの更新」や「データの変化」を感じづらく、アクティブ率が下がる傾向にあったといいます。
他社がスピード重視で作ったという管理画面を人事や企業担当者が使いやすいものに変えていくため、グッドパッチは以下を実施しました。
- ブランディングイメージに合わせたデザインシステムの構築及び表層設計
- 各機能やコンテンツへの直感的なアクセスを可能にする情報構造の設計
- データや最新情報をユーザーにより効率的に提供するためのホーム画面の改善
- データ管理におけるダッシュボードの設計(アプリ利用分析ページ)
- 各機能やコンテンツの閲覧体験を改善するため、サイト全体の回遊性とユーザビリティの向上
- よくある質問・問い合わせフローの改善
管理側の機能や施策が強化されたことは、サントリーの営業の方にとって企業に売り込みやすい要素にもなり、2021年末時点では導入企業が67社だったのが、2022年末には218社と3倍以上になったといいます。
サントリー・東さんは管理画面の改修について、導入企業から「ポジティブな評価をいただいたと思っている」とし、「従業員の利用率やタスクの実施数、歩数といったデータが分かりますし、『歩こうフェス』などのプッシュ型の施策もできる。結果として、人事の皆さんの関心も強くなった感覚はあります」と振り返ります。
サービスサイトのリニューアル
従来のサービスサイトでは、サントリープラスとは何かが分かりづらいことや、アプリ以外の新規サービスに対する情報が不足し、問い合わせをしないと得られない情報が多く、デザイン面でも見直せるポイントが多くありました。
リニューアルにあたりグッドパッチは、全体の構成を見直すワイヤーフレームを各ブロックに分けて作成しサントリー様に提案。その後は構成ごとのデザインパターン作成、サイト全体のワーディングをふまえ、PCとSPの仕様書を作成し外部の開発企業と連携しました。
リニューアルされたサービスサイトは、「歩こうフェス」の情報や管理アプリの使いやすさのアピール、導入事例記事、導入までの流れ、導入企業ロゴなども織り交ぜることで、正しくサービスを認知してもらうことに成功。資料ダウンロード数、問い合わせ数の増加に繋がりました。
多種多様なコンテンツ制作
グッドパッチでは、オンライン上のコンテンツだけでなくオフライン上のコンテンツ制作も行いました。サントリー様が定期的に出展している「健康経営EXPO」などの展示会ブースや、サントリープラス専用自販機の囲い込みPOP、サントリープラスアプリの利用促進ポスターなどの制作を通して、さまざまなタッチポイントをデザインしました。
カスタマーサクセス(CS)戦略のアップデート
導入企業からのオンボーディングや問い合わせ対応は整ったものの、その後どんな伴走を行えばいいのかが分からない中で、グッドパッチは以下を実行しました。
- プロダクトのコア体験の設定・人事ユーザーのライフサイクル定義
- サービスブループリントの可視化
- ハイタッチ、ロータッチコミュニケーション内容の設計
結果、より能動的な顧客伴走ができるようになり、ハイタッチ成功率が約25%、伴走した企業のNPSスコアが21ポイントアップしました。
また、サントリー様は導入企業の担当者を自社オフィスに招きイベントを開催するなど、ロータッチコミュニケーションも実施。この施策設計もグッドパッチは支援しており、サントリープラス カスタマーマーケティングチームリーダー 四方さんは、「(グッドパッチは)当日のワークショップの体験も一緒にデザインしていただき、全てユーザーとの接点の1つとして捉えているんだなと感動しました」と話します。
組織に残る資産づくり
導入企業で「使われる」「使いやすい」と思われるアプリにするために、そもそもどんな人に使ってほしいのか?目指す姿や理想的な体験を参照できる環境がなかったため、グッドパッチはユーザーリサーチやCS(カスタマーサクセス)によるコミュニケーション結果をまとめた資料として、「UXマスタ」を作成しました。
これにより、導入企業側で主に管理を担当することが多い人事部門の方のコア体験に関する共通言語ができ、プロダクト戦略、CS戦略など、UXマスタを参照して実行できるようになったのです。
また、プロダクトのロードマップも短期的なものに留まっていたため、グッドパッチが主体となり、ターゲットペルソナがサントリープラスを通して今後どのようになってほしいのかをサントリーの方々と発散しあうワークショップを実施。そこで出た意見を基にプロダクトビジョンや中長期ロードマップを策定しました。
サントリー様からは、「プロダクトの向かう先が示されることで、チームとして何を大事にすべきなのかが早い段階で分かって良かった」「目の前の仕事に集中していると、優先度をつけることが難しくなる。中長期ロードマップをもとに自分の仕事に優先度をつけることを意識しようと思った」といったフィードバックをいただきました。
このように、サントリー様がプロダクト開発・グロースを自走化することも意識した上での資産づくり、文化の浸透にもグッドパッチは寄与しました。
成果とGoodpatchの評価
その他グッドパッチは、成功事例・ノウハウを持っているサントリーの営業の方々にヒアリングを行った上で営業内で横展開できそうな戦術を抽出、営業戦略をアップデートし、営業資料に組み込んだり、営業資料ビジュアルをサントリープラスの世界観に合わせてアップデートするなど、効果的な情報伝達の実現を支援しました。
こうした一連のさまざまなプロダクトグロース支援が奏功し、サントリープラスは今(2024年9月時点)、導入企業数が1200社を突破。導入企業のうち501社が健康経営優良法人に認定されるなど、飛躍的な成長を遂げています。また、サントリープラスの存在により、サントリー社内のソフトウェアプロダクト立ち上げの活性化にも繋がったようです。
ここまでのプロジェクトを踏まえ、サントリー・東さんはグッドパッチについて、
- 関わっているメンバー全員が本気でユーザーと向き合っていること
- 担当領域の捉え方や当事者意識が高いという点で、いわゆる一般的な「クライアントワーク」とは一線を画していること
- プロダクトだけではなく事業についても関心を持って、どこかデザインで解決できる部分がないかと常に考えていること
と評価します。
そして、「一緒にプロジェクトをして、その意識やスタイルが『良いチーム』や『良いプロダクト』に繋がっているんだと実感しました」と語ります。
グッドパッチは引き続き、サントリープラスのグロースを支援してまいります。
Interview
サントリー様、グッドパッチのプロジェクトメンバーがこれまでの道のりを振り返る座談記事も合わせてご覧ください。
Credit
BXデザイナー:石井 翔太郎
UIデザイナー:楊 霈塬、韓 悦生、大島 聖恵、石黒 澪
UXデザイナー:加納 俊平、小関 弾、大本 理絵
アカウントマネージャー:高橋 俊太郎