グッドパッチでは、UXデザイナーがPdMとしてクライアントワークにアサインされるケースが増えていますが、プロダクトの開発においては、各ステークホルダーで意見がまとまらず、苦戦することがよくあります。

例えば、プロダクト開発でこんな悩みを抱えている方はいませんか?

  • プロダクトの戦略や企画を検討する時点で、ターゲットユーザーの認識がバラバラ
  • UIデザインの議論のタイミングで、的外れな議論が起こっていてなかなか収束しない
  • せっかくユーザーリサーチをしたのに、プロダクト開発メンバーやBizメンバーがその内容を咀嚼しきれていない

このあたりの悩みは、事業戦略とプロダクト開発の組織が分断されており、各ステークホルダーが見ている「世界」が違うために起こる課題だと思っています。

そこで私たちは、プロジェクトが円滑に進むよう、「UXマスター」と呼ぶ「プロダクトとユーザーについての仮説を一箇所にまとめた資料」を作成し、関係者に共有しています。

見る世界や目指すKPIが異なっても、同じ目標に向かってスピーディーに前進できるように。この記事では、実プロジェクトでの実践例をベースに、作り方から運用の注意点まで、UXマスターの活用法をご紹介していきます。

「UXマスター」とは、プロダクトとユーザーに関する仮説をまとめたもの

「UXマスター」と名付けてはいますが、内容としては大層なものではなく、日頃プロダクトデザインに関わっている皆さんなら、特に違和感なく理解できる内容だと思います。具体的な項目としては、以下のようなイメージです。

MUST

  • ターゲットユーザーのペルソナ
  • ターゲットユーザーの課題
  • プロダクトの提供価値
  • プロダクト価値を享受した時のユーザーの体験サイクル(グロースサイクルなど)

BETTER

  • ユーザーの成長ステップ(または「顧客ピラミッド」)
  • サービスブループリント(ユーザーのタッチポイントごとにどんなコミュニケーションをするかまとめたもの)

UXマスターを作るときのポイント

モノとしては分かりやすいUXマスターですが、作成する際は「継続的な運用」を見据えて作ることがポイントになります。ここでは代表的な3点を挙げます。

1. 定性リサーチをしっかり結論づけること

特にグロースフェーズに入ると、開発などに追われてユーザーリサーチに時間が割けず、分析などがおざなりになってしまいがちです。ユーザーリサーチをして「分かったこと、決めたこと」をいつでも見返せるように資料化しておきましょう。特に定性的な情報をどう判断したか、分析したかを残しておくことが、後々役に立ちます。

UXマスターができたら、関係者を集めて1時間ほどの共有会をするのも効果的です👌

2. 資料が勝手に一人歩きしてもいいようにPDF化すること

この資料を作っておけば、新しいメンバーが来た時のオンボーディングや、営業部/カスタマーサクセス部など、別の部署の方と協力するときの説明、外部の協力会社のオリエンテーションに使うこともできます。

だからこそ、初見の人が見てもある程度理解できるような言語化や抽象度を意識するのが大事です。作成段階で、他部署からフィードバックをもらってアップデートかけておくのも良いでしょう👌

3. 時間をかけすぎずに一旦作る、アップデートする前提で運用する

資料を作ることが目的化しては本末転倒なので、関係者で合意を取れるレベルの完成度で仕上げることを心がけてください。合意まで含め、約2週間でやり切るのがベストです。

UXマスターは、ユーザー理解が進めばアップデートされていくものです。リサーチするたびにアップデートをかけていくことが前提になれば、開発メンバー皆の脳裏に常にUXマスターがよぎる状態が維持できるので、彼らとも会話がしやすくなります。最低限、半年に一回くらいはアップデートしていくものだと意識してください。

UXマスター作成についてのご相談はこちらから!

UXマスターを作成、運用するメリット

UXマスターは正しく運用できれば、関係者の認識の齟齬を防ぎ、プロジェクトの進行をスムーズにできます。ここではそのメリットを3つ紹介しましょう。

1. 資料を作る過程で、各ステークホルダーとの認識が擦り合う

資料化するプロセスでプロダクトオーナーと細かく認識をすり合わせることができるので、その先のプロダクト企画段階になったときも「やる/やらない」の意思決定が非常にスムーズになります。

「UXマスター作るときにこういう定義をしたから、今の議論はこう結論づけよう」といった感じです。

2. 日頃の活動で仮説と実態のずれを発見しやすい

自分たちの現時点での仮説が、言葉と図になってPDFでバージョン管理されていると、資料化したものと現実とのズレに敏感に気付けるようになります。「仮説のズレが新たに分かったら、資料をアップデートしましょう」というルーティンを決めると建設的な議論も起こりやすくなるはず。

3. パワーバランスによる「予期せぬ注文」を取捨選択できる

事業責任者やプロダクトオーナーとここまで握れていれば、クライアントの上司や経営メンバー、他部署から、プロダクトの方向性や施策について突っ込まれた時に、慌てずに対応できます。
ここで慌ててしまうとパワーバランスで、予期せぬものを作らなきゃいけなくなったりしますよね(自戒を込めて)。

「営業部から言われたから、この機能を作ろう」となっているときに「でもそれ、UXマスターのときに言ってたターゲットとズレてますよね、ターゲットを変えるってことですか?」と自信を持って議論ができます。

実際のプロジェクトで活用して生まれた効果

上記のようなUXマスターを作成し、実際のグロースフェーズのプロジェクトにおいて活用してみました。

  • 既存ユーザーのリサーチを実施し、結果のまとめとともにUXマスターを作成
  • 開発チーム、CSチーム、営業チームなどを巻き込んで、共有会、ディスカッション会を実施
    • プロダクトとしてどのようなユーザーを対象としているのか、普段の業務での認識とギャップがないかを確認
  • プロダクト開発を進める上で、企画を立てるときにはUXマスターの内容を参照し、仮説の前提認識をそろえた状態で企画を始める
  • 半年後、再度ユーザーリサーチを行った際に、仮説の修正を追記して資料をアップデート
    • 共有会も再度実施。キックオフや方針発表のタイミングで合わせて読み合わせをする資料として扱われるようになった

実際に活用したプロジェクトでは、「共有会で話したあのターゲットに対して〜」や「この企画は、UXマスターの中のどの仮説に基づいたものでしたっけ?」など、立ち返るポイントとして活用できているシーンが見られました。

資料を作って共有会をして、というのはなかなか負荷がかかる施策ではありますが、「ユーザーリサーチ→資料アップデート→共有会」のサイクルを3カ月〜半年くらいのスパンで回していくことで、ステークホルダーが多い組織でも、同じ方向を向いて議論することができるようになると実感しました。

プロダクト開発の中で、ステークホルダーとの議論にお悩みの方、開発をより円滑に進めたい方は、ぜひ試してみてください。

プロダクトグロースのご相談はグッドパッチへ

グッドパッチでは、グロースフェーズの事業におけるプロダクトマネージャーが抱えるナレッジ不足、リソース不足の課題に対して、UXデザインを強みとしたプロダクトマネジメントスキルを用いて、プロダクトの価値向上とビジネス成果向上にコミットしていきます。

これまで多くのクライアントワークで発揮した戦略〜ビジネスまでのケイパビリティをフルに活用し、ビジョン達成に向けた組織デザイン、内製化支援を行っています。詳しくは以下のページをご覧ください。

 

関連リンク

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