サービスやプロダクトの開発者にとってユーザー視点は必要不可欠です。ユーザー視点が身につけられる方法の1つとして、潜在的なユーザーのニーズやインサイトを見出す、ユーザーインタビューが挙げられます。

ユーザーインタビューと一口に言っても、正しく実践するためにはユーザーインタビューの種類やプロセス、抽出したユーザーの声の収束方法などを理解しておくことが重要です。

開発の質の向上につながる実りのあるユーザーインタビューにすべく、ぜひこの記事を読んでユーザーインタビューに対する理解を深めた上で取り組みましょう!

ユーザーインタビューとは

ユーザーインタビューとは、みなさんがご存知のインタビューにデザイン思考を組み込んだもので、サービスやプロダクトに対してユーザーから潜在的なニーズを引き出すためのプロセスです。デザイン思考という、ユーザーに寄り添った考え方をインタビューの手法にも取り入れることで、より相手のプロダクトに対する潜在的な意識(課題やニーズ)を引き出すことができます。数字だけでは分かりづらい人の感情、本心などを知ることができる点もメリットです。相手を知り、共感することで初めてユーザー視点に立ってプロダクトを評価することができます。常にユーザー視点に立ってプロセスを進めるデザイン思考では、ユーザーインタビューは欠かせないプロセスです。

では、どうしてユーザーインタビューが必要なのでしょうか?ユーザーにより良いサービス体験を届けるためにはユーザーエクスペリエンス(UX)デザインヒューマンセンタードデザイン(HCD)が欠かせません。実際にユーザーの声を聞き、その声をサービスに落とし込み、ユーザーテストをしてサービスの価値を検証する。その一連のプロセスにつながる最初の骨格の部分として、ユーザーインタビューがあるからです。そのユーザーインタビューの重要性・利点・実施すべき理由について以下の記事にてご紹介しております!

また、ユーザーインタビューは、UXの5段階モデルにおける土台となり根幹となる戦略段階に位置しており、サービスやプロダクトの方向性「誰に対して、どのような価値を届けて、対価をもらうのか?」を定める指針をを集める重要な手法です。UXの5段階モデルにおけるユーザーインタビューの位置づけやどういったアウトプットを出すべきかについて以下の記事にてご紹介しております!

 

デザイン思考におけるインタビューの種類

ここまで本記事を読んでいただくと、ユーザーインタビューについておおよそ理解していただけたかと思います。ここで、デザイン思考における他の関連プロセスも合わせてご紹介します。関連プロセスとの”違い”を理解することでよりユーザーインタビューについての理解が深まるはずです!

エグゼクティブインタビュー

経営層や意思決定者などにインタビューを行い、会社やサービスのビジョンやゴールを導き出すプロセスです。このプロセスにより、クライアントに対して、達成したいビジョンや提供したい価値に基づいた上で、柔軟な提案を行うことが可能となります。

 

半構造化インタビュー

事前にいくつかの質問の骨子とスクリプトを用意しておき、録音やメモを取りながらインタビューを行う手法です。インタビュー中に質問の順番を組み替えたり、あえてスクリプトを脱線し後から思いついた質問をしたりと、必ずしも準備しておいた通りに進行しないインタビューのことを指します。対話の中で必要に応じて深掘りを行うことで、調査前には見えていなかった深層心理やステークホルダーを見出すことができます。

 

AImインタビュー

AImインタビューとは、質的デザイン方法論エイム(AIm:Appreciative & Imaginative)インタビューのことを指し、実際のユーザーのもつ意識や価値などを視覚化し明らかにする手法です。ユーザーインタビューを実施後、ペルソナ法などを用いて分析するのに対し、AImインタビューでは、インタビュー結果の分析・視覚化までの流れも含まれているのが大きな違いです。

 

グループインタビュー

フォーカスグループインタビューと呼ばれる場合の多い、ターゲットユーザーに近しい少人数(5~6名)の対象者に対し、インタビュアーが座談会形式でインタビューを行う手法です。複数の対象者を必要とするためコストは倍増しますが、さまざまな視点からの意見を同時に得られるのがメリットです。

 

デプスインタビュー

インタビュアーと対象者の1対1で長時間(約1時間程度)インタビューを行う手法です。時間を要しますが、インタビュアーも対象者も想定しなかったような深いレベルの心理を聞き出すことが可能です。

 

評価グリッド法

ユーザーのもつ評価の構造の解明を目的としたインタビュー手法です。対象者の回答に対し、ラダーアップ(それがあることで何が良いのか)、ラダーダウン(どういった点でそう思ったのか)を繰り返すことで、「評価構造ツリー」を構築していきます。この手法による結果は視覚的に階層的を持った構造として表現されるため、結果が分かりやすく、かつ定量的利用ができるというメリットがあります。

 

ユーザビリティテスト

ユーザビリティテストはユーザーインタビューと似た手法を持ちます。しかし、ユーザビリティテストはプロダクトのユーザビリティ(使いやすさ)をテスト(検証)する手法です。ユーザーの潜在的な意識を引き出すユーザーインタビューとは異なります。

 

インタビューの方法

それでは、ユーザーインタビューの方法について解説します。

事前準備

目的設定や下準備なしにはユーザーインタビューの成功はありません。ユーザーインタビューでは「はい・いいえ、もしくはA・Bで答えられる質問はなるべく聞かない」「”なぜ”という言葉は極力使わない」などといったユーザーインタビューで気をつけなければならないことがあります。解決すべき課題をしっかり特定するためにも、下記記事を参考にして、事前準備を怠らないようにしましょう。

 

練習

せっかく時間を割いてユーザーインタビューに協力してくれるユーザーのためにも、事前に練習しましょう。以下の記事では、具体的な練習方法についてご紹介しています。特に、初めてユーザーインタビューを実践する方におすすめです!

本番

ユーザーインタビューとは単純に「話を聞くこと」ではありません。目的設定も下準備も不十分な状態でのインタビューは、サービス開発の向上につながるユーザーインタビューにはなりえません。自身が持ってしまっているバイアスを外すといった、ユーザーインタビューの本番で必要な準備や、失敗経験を元に学んだ23個の心得を以下記事にてご紹介しています!

 

結果の解釈

ユーザーインタビューから得た結果は、すぐにすべてを取り入れることはできませんよね。ユーザーインタビュー後に大切なのが、抽出した意見の中でも重要度が高い点に着目し、次のプロセスに落としこむことです。以下の記事では、ユーザーインタビュー後にビジネス視点とユーザー視点の4象限で気になった点を整理するほか、「アサンプションマップ」を用いた整理の方法をご紹介しています。ユーザーの声を正しく整理した上で、サービス開発や改善に取り入れていきましょう。

 

実例

以上ユーザーインタビューの内容についてご紹介してきましたが、今度は実際にユーザーインタビューを行った事例についてご紹介します。

株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ様と実施したワークショップでは「ペルソナ確認・ユーザーヒアリング」のフェーズおいて、事前のヒアリングから作成したユーザーシートを読み込んだあと、ユーザーインタビューを実施し、ペルソナ法を用いてユーザーがどんな課題感を持っているのか深掘りしました。

 

株式会社 PR TIMES様のJootoのリニューアルを行った事例では、ユーザーインタビューから集まった声をもとに、プロダクトの価値を定義しました。その後、結果を基にUIデザインに落としていくことを行いました。ユーザーインタビューを通して生の声を聞くことで、サービス開発側が想定していなかったような発見があったそうです。

しっかりインタビューという形式でユーザーに話を聞いたのは初めてでしたね。「こういう使い方もあるんだ」「こんな悩みがあるんだ」とユーザーの声を目の当たりにして驚きました。

 

さらにインプットしたい方におすすめの本

ここまでユーザーインタビューについて解説してきましたが、もっとユーザーインタビューについて詳しく知りたい!と思った方は以下の記事にて関連書籍をご紹介していますので、ぜひ勉強にお役立てください!

 

まとめ

今回はユーザーインタビューについてご紹介しました。ユーザーインタビューは、ユーザーの無意識下にある考えを引き出し、ユーザー視点に立ってプロダクト開発を行うことを可能にする手法の1つです。実りあるユーザーインタビューにすべく、目的設定や事前準備を行った上で実行してみてくださいね!

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