プロジェクトを進行するにあたって、プロジェクトメンバーだけでなく、開発するサービスを実際に利用するユーザーの声を聞くことは重要です。その手法として、まず挙げられるのがユーザーインタビューです。

「ユーザーインタビュー」ってつまりは人の話を聞くってことでしょう?そんな風に思っているそこのあなた。間違ってはいませんが、「ただ話を聞くこと」がユーザーインタビューという訳ではありません。
ユーザーインタビューは、プロダクト・サービスをもっと良くするための有意義なヒントを得られる貴重な機会です。それはユーザーという未開の鉱山から、金塊を掘り出すような作業に似ています。まさか丸腰のまま金塊を掘り出せるわけがないですよね?採掘にシャベルやヘルメットが必要なように、ユーザーインタビューもしかるべき準備が必要というわけです。

今回は、初めてのユーザーインタビューで失敗したくない人のために、インタビューの1つの練習方法をご紹介します。

ペアで行うインタビュー練習方法

今回記載するのは、GoodpatchのUIデザイナーが大学の頃に所属していたゼミの教授が、自ら発案したインタビューの練習方法です。とてもシンプルな方法で、自分の聞き方を客観的に分析してもらったり、他人の聞き方から学ぶことができます。今回は教授に許可を得て、その方法を掲載させていただくことになりました。
実際に教授のもとでインタビューの練習をしていた彼女に、やり方とメリットを教えてもらいました。

ペアインタビューのやり方

① まず、3人組を作りましょう。ここではAさん、Bさん、Cさんと呼ぶことにします。

② ペアインタビューはどこでも実施可能ですが、心地よく話せる場所を選ぶと良いでしょう。普段接触機会の少ないメンバーが3人集まったのであれば、「心地よく話せる場所はどこだろう?」と議論することで、アイスブレイクにもなります。

③ 次に、インタビューのテーマを決めてください。できれば、テーマは練習実施日の2-3日前に決めて、各々が実施日までにどう質問するかを考えておくと良いでしょう。テーマは抽象的な方が各々の考える質問に多様性が生まれます。

例えばこんなテーマが考えられます。
・私はこんな人
・私を変えた出来事
・大切なもの

④ 後日に再び3人で集まります。Aさんはインタビュアー(インタビューする人)になり、用意した項目をもとにしてBさんに15分間インタビューをします。この場合、Bさんはインタビュイー(インタビューを受ける人)の役になります。Cさんはオブザーバー(インタビューを見ている人)になり、Aさんの聞き方を観察しましょう。

⑤ インタビュー終了後、CさんがAさんに聞き方のフィードバックをします。
BさんがAさんに「語り手としてどう感じたか・質問の聞き方・流れはどうだったか」を伝えます。

⑥ 聞き手を変えて2セット行います。

インタビュー参加者それぞれのメリット

インタビュアー・インタビュイー・オブザーバーは、それぞれ以下のような「インタビューを成功に導くヒント」が得られます。

インタビュアー

インタビュアーは、インタビュイーから直接インタビュー内容に対するフィードバックが得られるので、その学びを本番に活かすことができます。また、通常はいないオブザーバーからの客観的なフィードバックを得られるのも大きなメリットです。

インタビュイー

インタビュイーは、実際にインタビューされる側の感覚を味わうことができます。どういう質問は答えやすく、聞き手がどういう態度であれば話しやすいかなど、語り手として感じる細かい部分を知ることができます。練習を重ねることで、本番のインタビューでも、相手の立場に立って質問をすることができるようになるでしょう。

オブザーバー

オブザーバーは、第三者としてインタビューを観察することで、聞き手と語り手の間の空気や表情などを観察する力が身につけられます。練習を重ねることで、実際に自分がインタビュアーになったときにも、相手の微妙な表情の変化に気づくことができるでしょう。


とてもシンプルですね!全員が全ての役割を終えると、それぞれのインタビューのやり方がいかに違うかがわかるでしょう。同時に、インタビューに答えるユーザーの気持ちも理解できるはずです。例えば、テーマが「私はこんな人」だとしたら、あなたはどんな風に質問項目を組み立てますか?たった15分という限られた時間でのインタビューのゴールをどこに設定しますか?

もしゴールが「その人の一週間を明らかにする」だとしたら、最初の質問は「あなたの休日の過ごし方は?」かもしれませんし、白い紙を渡して「あなたの平日の時間の使い方を円グラフで描いてください」とお願いするかもしれません。一方でゴールが「その人が見せたい自分を明らかにする」だとしたら、最初の質問は「あなたが憧れる人は誰ですか?」かもしれませんし、「あなたは自分がどのくらい好きですか?」かもしれません。「本当のあなたの色と、ここにいるあなたの色を教えてください」なんて感覚的な質問でもいいかもしれませんね。

どのゴールを選ぶか、どの質問を選ぶか、それらをどんな順番で組み立てるかを考慮したインタビュー内容をデザインすることによって、引き出される言葉は天と地ほど変わってきます。インタビュー後のユーザーの感想も変わってくるでしょう。

フィードバックを活かしてより良いインタビューをしよう

今回ご紹介したインタビューの練習方法は、プロジェクト内でユーザーインタビューをする際に限らず、あらゆる相手から何かを引き出そうとする場面で活用できます。すでにインタビュー慣れをしていて、ユーザーから課題を聞き出すことが得意だと自覚している人でも、もう一度他人に観察してもらいフィードバックを受けることで、さらにインタビュー上手になれるかもしれません。

ユーザーの課題を明確にするような質問項目の立て方は、以下の記事でも紹介していますので是非併せてご覧ください。