「なぜ、ユーザーインタビューをしなくてはいけないの?プロダクトを使っているユーザーのことはデータからわかるよ」なんて思ってはいませんか?
ユーザーインタビューとは、ユーザーから教えを乞うためのプロセスです。これを失くして、良いプロダクトは生まれません。プロダクトデザインに携わるUXデザイナーやプロジェクトマネージャーは、データからはわからない情報を実際にユーザーに会いに行き、ユーザーの口から聞く必要があります。その際最も重要となるのは、ユーザーが抱えている課題やニーズを発見することです。

本記事では、ユーザーの課題をより正確に発見できるユーザーインタビューを実施するために、取り入れるべき方法と踏まえておきたい点をご紹介します。

良いユーザーインタビューとは

「正しい聞き方をしなければ、正しい答えは得られない。」

良いユーザーインタビューとは、ユーザーに対してクローズド型質問ではなく、オープンエンド型質問を投げかけ、ユーザーのインサイトやストーリーを最大限に抽出するものです。

統計をとる際にはクローズエンド型の質問の方が向いているかもしれません。しかし、UXインタビューにおいては「インタビューする側も予想していないような回答」を得たいはずです。そのため、オープンエンド型の質問を投げかけ、いかに多くのインサイトやストーリーをユーザーから聞き出せるかが重要となります。

はい・いいえ、もしくはA・Bで答えられる質問はなるべく聞かない方が良いでしょう。逆に、「どれぐらい・どのように」などの質問をユーザーに対してすることにより、ユーザーは自身の思うことを自由に答えてくれます。

例えば、同じ「サービスに対する満足度」を測る質問だとしても、「このサービスに対して満足していますか?」という「はい」もしくは「いいえ」で答えられる質問をするより、「このサービスに対してどのぐらい満足していますか?」と聞く方がユーザーが抱える本質的な課題を発見できるでしょう。

このように、フォーマットをなくしたオープンエンド型のリサーチクエスチョンを使うことで、本質的な課題が見えてきたり、より広い視点で課題に向き合えるようになります。

良いユーザーインタビュー設計ガイド

オープンエンド型質問を設計する際の有効的な手法の1つとして、KJ法というものがあります。もちろんスプレッドシートなどに質問したい項目を書き出しても良いのですが、複数の人でインタビュー項目を考えたいときはKJ法を利用する方が効果的です。

KJ法とは

KJ法とは、アイデアを整理する際に使う方法の1つです。個人の発想をカード(ポストイットなど)に書き、ボードに貼り付けていくことで、似たようなアイデアを整理します。出来上がったクラスタに見出しをつけて、大枠のテーマや課題を明確化することが目的です。

KJ法を用いたインタビュー質問項目設計

① 質問項目をカードに書き出しましょう。
② KJ法でグループを作りましょう。
→相対的に似た内容が書かれたカードをくっつけてクラスタを作りましょう。
③ 同じクラスタに集まった付箋に見出し(タイトル)をつけましょう。
④ 再度グループを作りましょう。
⑤ フローチャートを作りましょう。
→見出しを質問したい順に並べましょう。
⑤ 文章化してみましょう。
見出しに付随するクラスタに沿った内容のオープンエンド型質問を考えましょう。

※本内容は一部利用品質ラボ代表樽本哲也氏の考えを参考にしたものです。

KJ法が有効な理由

2次元空間でカードをボードに配置するKJ法を用いれば、文字の移動が自由自在にできます。最後に配置された全てのカードを一線で繋げば、全体を1次元で表すことができます。
KJ法が有効な理由は、人間の「直感」にフォーカスして思考整理ができることです。個人でも行えますが、グループの場合はカードを見ながらディスカッションをしながらアイデアを整理していきましょう。

ユーザーインタビューをする際に留意したいこと

仮に、ユーザーインタビューがうまくいかなかった場合、プロジェクト全体の方向性に影響を及ぼす可能性があります。そうならないためにも、ここではユーザーインタビューを行う際に留意したい点をいくつかまとめてみました。

1. 誘導型質問は避けましょう

ユーザーインタビューは、抽象的に捉えていたユーザーの価値観やインサイトを具体化するために用いられる手法です。そのため、ユーザーの答えを誘導するような質問の仕方は避けるべきです。

ある1単語や1文、その聞き方によって簡単に、知らず識らずのうちにユーザーの答えを誘導している場合があります。そうなってしまっては、せっかく時間を割いてインサイトを得るためにユーザーインタビューをしている意味がなくなってしまいます。

例えば、「改良された本サービスは好きですか?」という質問があったとします。「改良された」という形容詞でサービスを表すことにより、ユーザーがサービスに対して良い印象を抱く可能性が高まります。そのため、ユーザーが「はい」と答える可能性も上がると予想できます。

2. フォローアップする質問を投げかけましょう

ユーザーは特にインタビューの序盤において、質問に答えることに緊張や警戒心を抱く可能性があります。そのような際に応用できるのがフォローアップをする質問です。

フォローアップをする質問を投げかければ、あなたも予想していたよりはるかに多くのインサイトを得ることができるでしょう。また、ユーザーも自分の話に興味を持ってくれていると感じることができます。興味や共感を示すことにより、ユーザーからより深いインサイトやストーリーを導き出すことができます。

例えば、ユーザーがサービスについて「タスク管理をするために使っている」と答えたのなら、「どのように本サービスがタスク管理に役立っていますか?」とフォローアップする質問を投げかけましょう。そうすることで、あなたのプロダクトがどのようにユーザーに使われていて、何に役立っているのかが具体的にわかります。

3. 1つの方向から質問を投げかけましょう

良いリサーチクエスチョンは、1文1質問で構成されています。よく「聞きたいことは2つあります」などと質問を被せて聞く場合があります。しかし、これはユーザーの答えを不完全・不正確にする恐れがあります。

同じように、1つの質問文に2つの要素を組み込んでしまうと、ユーザーの混乱を招きかねません。例えば、「うちのプロダクトについて何か困ったこと不満に思うことはありますか?」という質問は、「困ったこと」と「不満に思うこと」という2つの質問に分けて聞くことができます。

4. 用意した質問のとおりに聞いてはいけません

ユーザーインタビューは調査ではありません。用意しておいた質問に沿って聞くだけなら、質問項目を相手に渡して答えてもらえば良いです。せっかく対面で話す機会を設けているのですから、用意した質問はあくまでも会話が脱線しないようにするためのガイドとして使いましょう。

また、聞きたい項目はユーザーの話を聞いている時に後からどんどん出てくるものです。先ほど設計した見出しやオープンエンド型質問を参照しながら、脱線しない程度に聞きたい内容をその都度盛り込みましょう。

5. 「なぜ」という言葉は極力使わないようにしましょう

「なぜ」という言葉は深いインサイトを得るためには活用すべき言葉のように聞こえます。しかし、なぜと聞くことによって、ユーザーの反発心を招きかねないのです。そういう時は「なぜ」ではなく、「〜について教えてください」というように言い換えましょう。「教えてください」という言い方をすることにより、ユーザーの心に寄り添った質問へと変えることができます。

6. ユーザーに対して何が必要かを聞いてはいけません

ユーザー自身が何が欲しいのかを分かっていることは滅多にありません。ユーザーが話す内容から課題やニーズを汲み取るのがあなたの仕事です。「民泊サービスに関する課題は何だと思いますか?」と聞くよりも、「あなたが民泊サービスを利用する際に最も困った体験を教えて下さい」などとユーザー自身のストーリーにフォーカスしたリサーチクエスチョンを投げかけるべきでしょう。

(参考文献:The Art Of Asking: Good Research Questions Vs Bad Research Questions

結びとして

ユーザーインタビューは、人間中心設計されたプロダクトデザインをするのであれば、必ず取り入れるべきプロセスです。

良いリサーチクエスチョンは、ユーザーから深いインサイトを引き出すようなオープンエンド型質問で構成されます。また、ユーザーインタビュー時にユーザーから引き出せるインサイトの量と質は、上で書いた6つのポイントに依存します。ここで挙げたのはほんの一部ですが、良いユーザーインタビューをするには他にもさまざまなことに留意する必要があります。

実は、日常的なことを話しただけの対談は、良いインタビューができた1つの指標だと言えます。ユーザーの本質的なインサイトや思想を理解するためには、日常で考えていることを話してもらうことが一番参考になるからです。

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