旅行や出張の際に、「高級ホテルよりも安く、ビジネスホテルよりも快適な場所に泊まりたい」と思うことはないですか?民泊サービスのプラットフォームを利用すれば、この課題が簡単に解決できます。最も代表的なサービスとしてはAirbnbが挙げられますが、本記事では中国北京発祥の『途家(トゥージア)』というサービスを取り上げます。

途家は中国国内138都市に渡る9万近くの物件をウェブサイトに掲載しています。2017年には3億ドルの資金調達に成功し、現在は中国国内最大の民泊プラットフォームへと成長しています。同社が近年どのように世界的に事業を拡大してきたのか。本記事ではその戦略をご紹介します。

途家が日本を選ぶ理由とは

同社は2016年に「日本途家株式会社」を東京に設立しました。2017年には楽天との提携も発表し、そこから3年以内に国内の登録物件数を10万件に事業を拡大することを目標に置いています。

最大の目的は、日本へ訪れる中国人旅行客のためのプラットフォームを用意することだと言います。同社のWantedlyには次のような言葉が掲載されていました。

“訪日中国人に日本の良さを知ってもらいたい。そして、そのためにより良い宿泊施設に滞在してもらうお手伝いをしていきたい。”

中国にとって日本は参入しやすいマーケットの1つでもあり、出国先として選ぶ人数が最も多い国でもあります。2017年時点で日本の訪日外国人の4分の1を中国人が占めている点から、今後さらに訪日中国人が増えることを見越して日本進出へと踏み切ったのでしょう。

途家のサービス戦略

中国には蚂蚁短租住百家木鸟短租keys潮宿朋友家など多数の民泊サービスがありますが、どれもユーザーからの信頼を得ることに頭をかかえていました。「他人の家に泊まりに行く」という行為は、中国人にとってはまだ違和感を感じるものだったのでしょう。そんな中、途家は他のサービスとは違う戦略を立て、自らユーザーと物件オーナーの仲介に入りBtoCサービスを提供する事業として、中国人の信頼とサービスの認知を得ていきました。

オンラインとオフライン双方からの施策

2017年に途家はオンラインとオフラインを切り分けて、それぞれに戦略を打つことを決めました。
オンラインの部分では、プラットフォームのユーザー体験を向上させるため、ユーザーの予約体験、物件のオーナー側に対する保証の改善を行いました。
オフラインの部分では、オーナー側が洗練したサービスを提供できるようなサポートを行いました。例えば、全物件に共通してリネン製品を取り入れたり、清掃サービスを提供するなどの施策を打っています。

途家のオフラインでのサービス提供は、決してオンライン上でのサービスから切り離されたものではなく、どちらもユーザー体験をよりよくするために導入されたものです。つまり、オンライン・オフライン双方のサービス強化によるユーザー体験の向上を目指しているのです。

デザインへのこだわり

参照:途家标志VI系统设计

途家のロゴは、「家」という文字を家の屋根の形としてデザインに落とし込んでいます。このロゴには、「ユーザーが旅先で『家』と呼べるような場所に出会えますように。そして、旅から帰った後もその暖かい気持ちを家族や友人と分かち合えますように」という願いが込められているそうです。

途家とAirbnbの違い

Airbnbはもともとユーザーと貸し出しオーナーを繋ぐためのプラットフォームとしてサービスを提供していましたが、近年ではプロのカメラマンを雇い直接オーナーの家の写真を取りに行くなどオフラインの活動にも力を注いでいます。そのため、明確に途家とサービスの違いを定義することが難しくなりました。

しかし、両者のサービス仕様には、多少なりとも違いがあると感じています。

左:途家のホーム画面 右:Airbnbのホーム画面

どちらも白を基調としたシンプルで見やすいUIとなっています。タブの部分もほとんど同じような構造で、実際にユーザーが体験したストーリーに基づいたコンテンツを多数掲載していました。
大きな違いとしては、途家ではタブを上下両方に設置することで、より複雑な導線を描いていることです。上部分の5つ目のタブ「特卖(特売)」では、セール価格になっている物件一覧を見ることができます。

ユーザーの利用シーンをどこまでも深く追求する

CEOの罗军の見解によると、これからの民泊の発展傾向は2つあります。貸出物件を1室からマンションやビルなどへと拡大する規模の連鎖による発展と、物件ごとの設備を充実させることによる個人資源の改善による発展です。例えば、洗濯機が用意された部屋には洗剤が必要です。洗剤も粉製のものではなく、小包装になっている方が良いでしょう。その方がユーザーもより清潔だという印象を受けるはずです。このように、個々の設備を改善することにより、ユーザー体験の向上を測ることができます。

罗军は、誰もが部屋を貸し出すことができるプラットフォームを目指しています。時にはオーナー自らその部屋に住みたい。時には誰かと住みたい。時には出張や旅行で別の都市へ訪れたい。このようにユーザーの利用シーンをどこまでも深く追求して、さまざまなニーズに答えられる柔軟なサービスを築いていきたいそうです。

“ある物件がシェア物件であるか、貸出物件であるかを定義することは非常に難しいです。この新しいロジックとも呼べる分別不可能な概念が、あなたの旅行をより快適なものにし、貸出側により安心して施設を提供できるようなサービスを作り出します。”

(参考記事:途家网罗军

すでに多くの日本人オーナーも物件掲載をしている途家。今後、訪日中国人がAirbnbではなく途家を使えば、ますますサービスの認知は広まるはずです。あくまでも途家がターゲットにしているのは中国人旅行客ですが、今後ターゲット層を広げ、世界で使われるサービスになる日が来ると私は予想しています。