2019年1月6日に来日していたUnity DeveloperのSalmaは、Goodpatch Europe初の女性エンジニアです。現在開発中の自動運転プロトタイピングツールAthenaにプロダクトオーナーとして関わっています。

今回の来日に合わせて、社内ではAthenaを使ったデモを行ってくれました。本記事ではAthenaについてもご紹介しつつ、もともとAndroidデベロッパー出身の彼女がどのような想いでVR領域に身を投じているのかについて深掘ります。


まずはご自身のバックグラウンドについて少しお話を聞かせてください。どのようにしてデベロッパーになられたのでしょうか?

高校卒業時に進路を考えていたときに、私はどちらかというと理系だったので理系科目の中から選択肢を絞り込み、辿り着いたのがエンジニアリングでした。エンジニアリングの中でもソフトウェアエンジニアリングを学ぶことに決め、コンピューターサイエンスカレッジに進学しました。そこではプログラミングとITを4年間学び、卒業後さらに奨学金で母国であるエジプトのIT専門学院でAndroidやiOSに特化したモバイルデザインを学びました。専門学院を出た後は、Androidデベロッパーとして4年間働きました。

ご自身のバックグラウンドは今の役職にどのように影響していますか?

大学の頃に学生団体に所属していたことから、コミュニケーションやチームビルディングの能力には比較的長けていました。また、チームがうまく機能する方法や信頼を築く方法も学生団体を通じて学んだものです。これらは私自身の人間力を向上したと思います。

Goodpatchに来てからは、日々周りからの信頼を感じながら働くことができています。ここでは役職にとらわれることなく、全員と密にコミュニケーションを取りながら仕事を進める必要があります。前職での環境とはかなり違いもあったので、慣れるまでには多少時間を要しました。

どのようにGoodpatchでのキャリアをスタートさせましたか?

私より1年間早くGoodpatchに入社した社員から、ある日突然「Androidデベロッパーとして働かないか」と連絡があったんです。私はちょうどベルリンで働きたいと考えていたので、すぐに返事をしました。面接ではボリスからVRの領域で働いてみないかと聞かれ、最初はVRの門外漢なので戸惑いましたが、心から挑戦したいと思えたので「喜んで!」と返事をしました。今は自動運転のVRプロトタイピングツールAthenaを開発しています。

新しい領域で働いてみてどうですか?

前職のAndroidデベロッパーとはやることもかなり違いますが、楽しんでいます。Goodpatchは人として成長するために絶好な環境が整っていると思います。多くの組織は社員に対して、スキルを伸ばす場所もしくは高い給料のどちらか一方のみを提供します。どちらも絶妙なバランスで提供する会社は少ないのですが、Goodpatchは個人がチャレンジする領域を狭めずに、両方をバランスよく提供していると感じます。社員は常に高みを目指しながらも、自由に高々とビジョンを描くことを推奨されます。また、自分で会社の将来をつくれるから、インパクトを与える力があると自負できるんです。

Goodpatchはヒエラルキーのない、とてもフラットな組織に見えます。

フラットですね。私たちはいくつものサークル(円)の中で働くという考えをもつホラクラシーというコンセプトに沿って働いています。社員は複数のサークルに所属することができます。私はAthenaというサークルに属しながら、他にもいくつかのサークルで活動しています。

何かここまで来るのに乗り越えた大きな試練はありますか?

エジプトでAndroidデベロッパーとして働いていたときは、4年間同じ職種に就いて同じ環境の中で働いていたので、ある種その役職の極地に達したかのような感覚になっていたと思います。その後全く異なるカルチャーをもつGoodpatchへ転職したときは、全てが本当に新鮮でした。VRもほぼ未経験に近かったのですが、自分には成長するポテンシャルがあるということを信じたかったのです。もちろん未経験の領域に踏み入ることはチャレンジングでしたが、ボリスや他のメンバーは私をとても信頼してくれたので、私も彼らの期待に応えるために精一杯働くことができました。

現在の主な役職について教えていただけますか?

現在はデベロッパーチームに所属し、Athenaの開発を主に担当しています。デベロッパーとしてスクリプトを書きつつ、プロダクトオーナーとしても働いています。周りからはAthenaに関しては全てを把握している人として知られているので、プロダクトに関する質問があれば何でも答えられるようにしています。

Athenaについて全く何も知らない人にプロダクトを説明するとしたら、何と説明しますか?

自動運転を体験するVRプロトタイピングツールと説明します。Goodpatchでは常にユーザー体験を中心に考えます。なのでAthenaにおいても、ただ2Dのスクリーンを使うのではなく如何にユーザー体験を向上するためにより多くのリソースを駆使できるかを考えます。加えて、プロトタイピングはGoodpatchが強みとするプロセスの1つです。私たちが自動運転に力を入れるのは、この領域が社会的にも有望であると信じているからです。ここに他社ではなくGoodpatchが取り組む意義が潜んでいます。

自動運転と考えた時に、人々が想像するのは車自体のデザインだったりAIだったりします。極一部の人がユーザーを起点として考えはじめるでしょう。しかしGoodpatchはテクノロジーの可能性をユーザードリブンで最大化します。私たちはAIやジェスチャーコントロールなど、ありふれたテクノロジーの中から最適なものを選択し、テクノロジー自体が人間にとってより良いサービスになるようにデザインすることにチャレンジしています。

ソフトウェアやエンジニアリングの領域はある種男性が支配する領域のようにも感じますが、女性としてやりづらさを感じたりはしませんか?

時々女性だから真剣に向き合ってもらえない時もあります。もちろん男性はそのことに気がつきません。しかし女性としては敏感になるのです。これはIT業界だけでなく、多くの業界で起きていることです。女性はどの業界であろうと、1人ひとりが自分がそのポジションで優れた人材であることを証明しなくてはなりません。また男性は、女性に任せることを学ばなくてはならないでしょう。

Goodpatchでは多様性について語り合う機会が多くあります。それは人々が男女の平等性に対して興味を持っているという証拠であり、とても良いムーブメントだと感じています。

そうなんですね。これからますます平等な社会になると私も信じています。最後に、直近で携わりたい分野があれば教えてください。

Androidのデベロッパーとしていつかまた働きたいと密かに思っています。もちろんAthenaの開発も並行して進めますよ。Goodpatchが今後自動運転領域で益々名を上げられるように貢献したいと思います。

本記事は英語版インタビューを意訳したものです。元記事はこちらをご覧ください。