デザインを伝えるときに気をつけるべきこと
私がGoodpatchでプロダクトデザイナーとして働きはじめて、約1年半が経とうとしています。もちろんデザインのスキルを向上することが入社する前から抱いていたゴールですが、クライアントワークに関わる中で「デザインするだけでは物足りない」ということを実感しました。良いデザインをつくることと同様に、どのようにデザインを伝えるかが重要であることに気がついたのです。
ここでは、私がこの1年半で経験したクライアントワークの中で学んだことを記します。クライアントとパートナーになり、お互いを尊重しながらより良いサービスを作るためには欠かせない学びばかりです。国内のクライアントワークに関わる人に限らず、デザインをする全ての人のチームやクライアント、ステークホルダーと関わる際の参考になれば幸いです。
本記事は英語で執筆されたものを意訳したものです。元記事はこちらをご覧ください。
1. ミーティングには必ずアジェンダを用意する
当たり前のように聞こえますが、これが最も重要と言っても過言ではありません。ミーティングを行う目的は「意思決定をする」「議論する」「提案する」など様々ですが、どのような目的で行うにせよアジェンダをあらかじめ明示することとしないことではミーティングの効果が全く異なります。
目的を設定せずにミーティングを行う際は、往々にして別の時間に議論した方が良い議題や優先度の低い議題についてについて話してしまいます。またデザインについて話す際は、どの部分についてこれから話すのかをあらかじめ伝えてから話すと良いです。論点を明確にすることは、聞き手の不安を取り除き議論に集中させることにもつながります。
2. 自分のデザインは自分で伝える
私はどちらかというと、ミーティングの際は後ろの方で聞いている側の人間です。しかし、クライアントワークを通じて恥じらいを捨てて「自分のデザインは自分で伝える」ことが重要であることを学びました。デザインを一番よく理解しているのはデザインした本人なのです。
また、デザイナーが自らの考えを直接クライアントやエンジニアに伝えると、より建設的な議論につながる可能性が高いです。質問などがあった際には、プロジェクトマネージャーが仲介人となりデザインについて語るよりも、デザイナーが直接答えた方が圧倒的に早くコンセンサスに辿りつけます。さらに、人伝てに伝えられることで生じる情報の誤差もなくせるでしょう。
クライアントの前で話すことは容易ではありません。クライアントとの共通言語がデザイナー自身の第二言語なら尚更です。緊張を打破するには、プレゼンテーションの練習が欠かせません。私はまず自分の考えを書き出し、チームメンバーやプロジェクト外のメンバーに共有してフィードバックをもらいます。その際にもらったフィードバックや質問をもとにデザインの言語化の精度を高めます。
ビジネスにおけるデザインを伝える方法を体系的に学びたい人には、Tom Greeverのデザインの伝え方という本がオススメです。
3. コンテキスト(目的)からはじめる
機能(ソリューション)は、コンテキスト(目的)がある際に説得力を増します。つまり、機能を説明する前にまずデザインのコンテキストを明確にする必要があるのです。
一つ例を使って説明します。実際にクライアントに対してデザインを提案する際にはより複雑な状況であることが想定されますが、わかりやすくするためにここでは抽象的な話をします。
伝え方 (1)
決済ページのアイコンにラベルを加え、確認メッセージのテキストサイズを大きくしました。伝え方 (2)
ゴールは購買体験をよりわかりやすくすることです。
ユーザーテストではほとんどのユーザーが商品を買うプロセスで躓いてしまいました。理由は決済ページにあるアイコンが何を意味するのかが理解できなかったことと、確認メッセージに気がつかないことでした。
検証から決済プロセスの簡易化の必要性を再認識し、アイコンの下にラベルを加え、確認メッセージのテキストサイズを大きくしました。
これらの変更を適応した上で改めてユーザーテストを実施した結果、多くのユーザーが商品購入に成功しました。
前者は、コンテキストを話さず直接ソリューションの話をしています。この場合、「ラベルが少し邪魔に見える」「テキストサイズが少し大きすぎる」「個人的には前のデザインの方が好き」などといった主観的なフィードバックが返ってきてしまうことが多いです。
後者はゴールを明確にした上で課題を説明し、如何にソリューションがゴール達成に結びつくかを定量的に説明しています。コンテキストを説明することで、より聞き手に自分の思想を伝えることができます。また、自分の考えに対する賛同や効果的なフィードバックを得やすくもなります。
4. デザインに理由をもたせる
デザインを見せる際には、全てを上の例のように細かく説明する必要はありません。しかし、クライアントやエンジニアは「どうしてボタンのデザインをそうしたのか」「なぜこのデザイン通りに実装しなければならないのか」を疑問に思うはずです。したがってデザイナーはどんなに細かくとも全てのデザインに対して説明できる状態にならなくてはいけません。1つひとつのデザインに対して意味を持たせることは、確実にクライアントワークで役立ちます。
また、デザイナーの意図や思想を伝えることは、クライアアントとの信頼構築にも結びつきます。データやリサーチ結果を提示すれば、さらに説得力が増しより信頼を獲得できるでしょう。
Goodpatchはサービスの立ち上げから改善まで、様々な課題にクライアントとパートナーシップを組み一緒に取り組んでいます。ご興味のある方は是非こちらからお問い合わせください。