デザイナーをマネジメントするデザインリードの役割とは?

デザインリード

マティアス・フルークは、2016年3月にUIデザイナーとしてグッドパッチでのキャリアをスタートしました。それから数ヶ月後にデザインリードとなり、今ではベルリンオフィスのデザイナー全員をマネジメントしています。

3月頭に私がグッドパッチのベルリンオフィスへ訪れた際に、彼にインタビューをする機会がありました。デザインリードとして普段行なっている業務、デザイナーとしてどのようなことを達成したいかについて聞いてきました。

3つの役割を横断するデザインリードとは

──グッドパッチにUIデザイナーとしてジョインしてから、ちょうど2年が経ったかと思います。今日では組織のデザインリードとして働くだけでなく、様々な役割を担っていますよね。少しだけご自身の役割について説明してもらえますか?

私は2016年にUIデザイナーとしてグッドパッチに入りました。その時は、60%UIデザイナー、40%UXデザイナーというような形で、ベルリンのさまざまなスタートアップの支援をしていました。それから約半年経った2016年10月に、世界の大手自動車会社と一緒に仕事をさせていただく機会がありました。クライアントから問い合わせがあり、初の自動車業界とのコラボレーションで、クライアントのベースラインを上げることにも貢献できると考えたので、すぐに引き受けました。

同時期に、グッドパッチのデザイナーのチームを引率するデザインリードとして働き始めました。チームが小さかった始めのうちから、ゆくゆくチームが大きくなり、責任を割り振らなくてはならなくなることは想定していました。

また、最近は自社で自動運転にまつわる新規事業をはじめました。このプロジェクトでは、私はコンサルタント(もしくはエキスパート)として、チームにアイデアやフィードバックを与えています。まとめると、現在は自社のデザインリード・クライアントワークのUXリード・新規事業のコンサルタントという3つの役割を担っています。

ホラクラシーから学ぶ、新しいマネジメントシステム

──1人でチーム全体をマネジメントするのは簡単なことではなかったですよね。

その通りです。現在は3人のデベロッパー、15人のデザイナー、そしてデザインストラテジストとゼネラルマネージャーのボリスがいます。15人のデザイナーをマネジメントするというのは非常に難易度の高いことでした。週に私と行う約1時間の1on1では、彼らのコーチングは務まりません。私自身もクライアントと一緒に働く中で、デザイナー全員をマネジメントすることに限界を感じていました。マネジメント層内の役割分担はまだ検証中です。

これは、新しいマネジメント層の役割分担のプロトタイプです。図に現れている2つの層について説明します。

クライアントリード

水色の部分が一番大きな層で「クライアントリード」と呼ばれる部分です。インターン生からシニアのデザイナー、デベロッパーまでがクライアントリードになることができます。

コーチ

クライアントリード層の内側には、「スキルリード」と「ピープルリード」を含んだコーチという層があります。スキルリードには、UX・UI・ストラテジスト・デベロッパーなどのスキルをコーチングする人が居ます。ピープルリードは、プロジェクトのレビューを行う人のことです。それぞれのデザイナーが、スキルリードとピープルリードの中から自分自身の、もしくは自分が関わっているプロジェクトのコーチとなる人を選択し、1on1や他のコーチングプログラムを受けることができます。

この方法を用いることで、今までデザインリードとして1人で担っていた責任を複数人に分配することができます。このような流動的なシステムを導入したことには、組織のヒエラルキーをフラットに保ち、メンバーに役職を超えて交流をしてもらいたいという理由があります。先ほど言ったように、このシステムはまだ導入して間もないので、どのように機能するかはこれから検証していきます。

──素晴らしいシステムですね。このアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

これはホラクラシーシステム導入の一貫です。ホラクラシーとは、アジャイル組織やユニークな意思決定を促す、カスタマイズ可能な組織マネジメントシステムです。グッドパッチのベルリンオフィスでは、このシステムを昨年度から導入し、この制度をライトに適応しています(ホラクラシーの項目すべてを適応しているのではないということ)。例えば、私たちは名刺の肩書きに即さず、さまざまな役割に責任を持ちます。全ての人に会社に対するオーナーシップと責任を持ってもらうためです。私にとってホラクラシーのコアとは、会社のビジョンに即した個々人のゴールとモチベーションを定めてもらうことです。

私たちは、チームにとって最も重要なのはメンバー同士の信頼であると考えています。マネジメントをする人は、ハンズオンで、デザイナーやエンジニアが何を行なっているのかを知らなくてはならないし、彼らが行なっている仕事に対して共感を示さなくてはならない。私たちにとって、チームのメンバーが何を考えているかを知ることはとても重要です。

少し例を使って説明しますね。ここに1つのボックスがあります。片方の側面にはピンクのポストイットを、片方には黄色のポストイットをつけたとします。このボックスをクライアントとして捉えてください。仮に私がメンバーに対して「あなたの意見は聞かないけど、クライアントはとても黄色いと思う」と言ったとします。その場合、私は自分の価値観しか知ることができないし、メンバーも自分の意見をシェアする機会を失います。ですが、もし私が「あなたはどう思う?」と聞いたとします。そうすれば、メンバーから全く違う意見を聞くことができるし、より広い視野をもつことができます。

つまり、多くの人をディスカッションに巻き込めば巻き込むほど、物事をより大きく捉えられるということです。私はリーダーとして、自分が一番正しい見解をもっていると感じたことはありません。異なる価値観をもつメンバーの意見を常に聞き、より良い決断を下したいと思っています。もちろんメンバーによって専門性は異なりますが、それがイコール人からの意見を聞かないということにはならないと思うのです。

自動運転をデザインするということ

── あなたのデザインリードとして以外の役割を教えていただけますか?

先ほど言ったように、私はデザインリードの他にも、自動車分野でUXリードと新規事業のコンサルタントとして働いています。自動車は私にとって特別なものなので、このフィールドに関わることができてとても光栄です。私は小学生のときから自動車が大好きでした。特別どのモデルというわけではなく、車全般が好きでした。私は小学生になる前から、道に停まっている車のモデルを指差しで言うことができました。また、同時に絵を描くことも好きでした。だからその2つの分野を合体して、大学ではコミュニケーションとマーケティングを学び、その後自動車のアフターマーケット部品メーカーでグラフィックデザイナーとして働きました。

この時に、私は自分がマーケティングよりもデザインの方が好きだということを自覚しました。デザインは複雑な課題に対して、誰でも理解できるような簡単なソリューションを提示するものであるという文脈に惚れました。出来上がったプロダクトがデザインのことを考えさせないぐらい直感的であればあるほど、デザイナーが良い仕事をしたと言えます。

2010年に私はデザインを学ぶために、ベルリンの大学院へ進学しました。5年後、フリーランスのデザイナーとして某エージェンシーで働くことが決まり、その時に偶然グッドパッチのジェネラルマネージャーであるボリスに出会いました。デザイナーとしてジョインしてから、やっと自分の好きな2つの分野を掛け合わせて、自動車分野でデザイナーとして働くことができました。グッドパッチでは、自動車分野においてユーザーにより良い体験を提供することで、デザインの価値を証明することができます。自動車業界の人とデザイナーとしてコミュニケーションをとり、異なる物事の見方を提供することが私の最大のミッションです。

自動車分野に侵入して、デザイナーとしての痕跡を残すことは、非常にチャレンジングなことです。OEM(他社ブランドの製品を製造すること)は長きに渡りますが、着実に進んでいるプロセスです。今日では多くのハードウェアがデジタルサービスやソフトウェアに変わっています。例えば、Uberは自動車を一切生産せずにソフトウェアだけで大成功しました。私たちはグッドパッチがOEMチームの一員として、自動車のUXデザインやソフトウェア開発を行う会社であることを証明したいのです。これは、自動車分野のソフトウェアサプライヤーになり、近い将来、車に乗ったときにグッドパッチがデザインしたデジタルプロダクトを目にする社会がやってくるということを夢に描いているということです。これが本当に起こる未来を予想するだけで、今のチームのことをとても誇らしく思います。

私たちは自社がもつ自動車産業のナレッジとクライアントとのコラボレーションを通じて得た知見で、グッドパッチの自社プロダクトの開発をスタートさせました。自社プロダクトとしてProttを開発したのが4年前。次世代の自動車体験をデザインするための、Prottの次なる新しいプロトタイピングツールを開発するときが来たと感じたのです。2DのツールからVRプロトタイピングツールへの移行は、私たちにとってとても自然なものでした。このツールを使えば、未来の自動車体験をテストし、イテレーションを重ねることができます。これは、次の4-6年で私たちがおそらく実感するムーブメントでしょう。

── マティアスが予測する自動車産業の未来とはどのようなものでしょうか?

今日、自動車産業には密接に音声認識が関与しています。ドライバーが運転することに集中できるようにするために、音声認識やジェスチャー認識を強化しようとしているのです。自動運転には5つのレベルがあると思います。レベル5は完全な自動運転のことを指します。今のマーケットはレベル3の段階にあると考えています。

レベル5になると、ユーザーは何も動作を行わなくても運転できるようになります。車は自動で走り出し、ユーザーは自由な時間を得られるようになります。私たちはまだ完全な自動運転がどのようなものになるかは予測できませんが、プロトタイプを重ねることはできます。気軽に運転するシチュエーションも、事故に遭う直前のようなシチュエーションも。

── 5年後、どのようなデザインをしていると思いますか?

難しい質問ですね。自動運転のデザインをしていたいです。今あるグッドパッチのパリのオフィスがどれだけ高速に成長できるかにかかっています。今はパリのクライアント先に常駐して、長期間かけて自動運転にまつわるプロジェクトに関わっています。この状況を一刻も早くサスティナブルなものにすることが、私の次の目標です。

私がグッドパッチにジョインしたのは、自分のもっているナレッジで会社を成長させることができると感じたからです。この2年でグッドパッチを大きく成長させることができました。グッドパッチのメンバーは私を信頼しているし、チームやカルチャーを創造するチャンスをくれます。この先も今のような状況が続くことを願っています。グッドパッチをビジョンに向けてどれだけ前進させることができるか、とても楽しみです。

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ABOUTこの記事をかいた人

keika

'94年生まれ。中国と日本のハーフで、1歳から18歳までを中国・上海で過ごす。2016年にロンドンで写真・デザインを学ぶ。グッドパッチが注力しているFintechと、国外のデザイン組織情報を中心に発信。
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