UXデザインへの理解を深める〜これからのデザイナーがすべきこと〜
Design Div.マネージャーの長岡です。私は先日、京都で開催された『「FISH & TIPS」for Web Creators ~片手でつまめるオイシイTIPS~』というイベントに登壇させていただきました。
なぜビジネスの現場においてデザインが重要視されるようになったのか。従来と未来のデザイナー像、グッドパッチのUXデザインのプロセスなど、登壇内容を元にご紹介したいと思います。
はじめに
現在、デザインをする前のプロセスの重要性が高まってきています。
ユーザー体験の向上への理解、それらが与えるマーケットへのインパクトが注目される中で、これからのデザイナーはどのようなスキルを身につけ、どのようなことにチャレンジしていくべきか?どのように領域を広げていくべきか?また、UXやフィールドリサーチ・コンサルティングといった、より上流へ踏み込むことへの意義や重要性とはどんなところにあるのか。そして、具体的にグッドパッチのデザイナーがどのようなことを行なっているのかご紹介します。
なぜ今デザインシンキングなのか
デザインプロセスのお話の前に、なせ今デザインシンキングが注目されているのかに触れておきます。
ロジカルシンキングの限界
データ社会が当たり前となり、ロジカルシンキングでの分析・業務改善・効率化・最適化に限界がきているため、新しいイノベーションを起こすためには、今までの既存概念を覆すようなアイデアが必要です。そこで、デザインシンキングのアプローチに注目が集まっているのです。
海外・国内でもデザイン会社の買収や業務提携などの動きが活発化している
海外だけではなく、日本国内でもデザイン会社の買収や業務提携、社内でデザイン組織を構築、CDO/CCO/CXOとして経営層にデザインの責任者を置くなど、急速にデザインシンキングを取り込む動きが加速しています。
参照:スタートアップにCDOが必要な理由 CDO Night #1レポート【オープニングトーク編】
モノが飽和し、差別化が難しい時代に
同じような製品やサービスに溢れ、差別化が難しい現代。ヒット商品やサービスを作るためには、利用者の行動や本質(インサイト)を理解し、コンセプトやストーリーなどを使い、新たな驚きや感動・喜び、体験の心地よさ・使いやすさ・便利さといったエモーショナルなアプローチが必要になってきています。
既存フレームワークの再構築、新しいアイデアの創出
今までの視点を疑い、既存の枠組みや概念を覆すような新たなフレームワークを再構築(リフレーミング)する必要が出てきているのです。
ビジネスとデザインがより切り離せない時代に
- ユーザーにとって、モノに溢れ、選択肢も多く、産業の成熟化により差別化が難しい時代に
- ユーザーが、物質的な価値ではなく、情緒的価値を求めるように
- ユーザーが、モノではなくストーリーを買う意味的消費へ
このような背景があり、デザインを行う前にユーザーを知るためのプロセスに注目が集まっています。
続いて、実際にどのように製品の経験価値を作るのかをご紹介していきます。
UXデザインとは
UXデザインとは、オンライン、オフラインを通じて、ユーザーの体験をデザイン(設計・企画)することです。「体験」が量産・再生産される仕組みを作ることも指します。
Webサービスを例にあげると、導入する前の体験から、導入した後の「使いやすい、分かりやすい」「心地いい・楽しい」「また使いたくなる」といった体験の設計・企画がこれに当たります。
こうしたUXデザインで重要な点は3点で、誰(属性層)がどんな体験(行為層)をすることでどういう価値(価値層)を得ているか、の視点で分析することで、ユーザーの利用文脈をより深く理解できるようになります。
【関連記事】UXデザインとは?UIデザインとの違いや設計プロセス、事例を紹介
【関連記事】ユーザーの本質的ニーズに辿り着くために必要な3つの視点とは?
UXデザイナーの主な仕事
グッドパッチの場合
グッドパッチでは、プロジェクトマネージャーまたはUIデザイナーが下記のUXデザイン領域の業務を行なっています。
- ビジネスデザイン(戦略立案、ビジネスモデル・キャンパス、バリュープロポジションなど)
- フィールドリサーチ(エグゼクティブ・ユーザーインタビュー、エスノグラフィー調査など)
- 分析(市場調査、競合分析、アナリティクス分析、ヒューリスティック分析など)
- ユーザーテストの計画・実施
- ペルソナ、ユーザーニーズの定義
- ストーリーボード、カスタマージャーニーマップの作成
- ワークショップ・デザインスプリントの計画、実施
- プロトタイピング
これからのデザイナー
今までのユーザー・企業・デザイナーの関係は、常に一方的でした。クライアントの下で、ユーザーのことが分からない状況でデザインをしなければならなかったのです。しかし、これからはクライアントと同じ視点を持ってユーザーを理解し、さらにクライアントの抱えている課題に向き合いながら解決手段を考えてデザインすることが求められます。
グッドパッチのデザインプロセスの一部をご紹介
デザインプロセスは、あくまでも目的を達成させるための手段です。クライアントの抱えている課題や内容によって、より最適なプロセスを選択して実行することが重要になります。
競合分析や市場調査などの分析から課題を可視化
競合分析や市場調査、定量調査などから、ユーザーの利用体験を分析し、課題や問題点を洗い出し可視化します。
インタビュー設計
エグゼクティブインタビュー
エグゼクティブインタビューとは、企業の経営層や意思決定者の方を対象にしたインタビュー。1人当たり30分〜1時間程度のお時間をいただき、企業とサービスのビジョンやゴールについてインタビューを実施しています。経営層の声を聞くことで、達成したいビジョンや提供したい価値に基づいた多様なデザイン提案が可能になるメリットがあります。
ユーザーインタビュー
実際にサービスを利用しているユーザーに対しインタビューを行い、定量分析からは引き出すことができない課題やインサイトについて調査を実施します。
ユーザーインタビューに関する手法はこちらからご覧ください。
ペルソナ策定
デプスインタビューを通し、サービスのターゲットとなるペルソナを定義します。ペルソナを定義するメリットは、ユーザの行動や心の動きに対して理解を深め、チーム内での認識のズレを防止することにあります。
可視化された課題に対するソリューションを検討
定量調査から出た課題を元に、ユーザーインタビューやアンケートを行ったあとは、ユーザーの利用体験の流れを整理するカスタマージャーニーマップを作成します。設定したペルソナを元にユーザー体験を定義し、ペルソナのとりうる行動を明確にすることで、心理と行動にあったアプローチの考察や課題を抽出することができます。
ビジネスモデル・キャンパス
ビジネスモデル・キャンパスとは、ビジネスモデルを9つの要素に分類し、それぞれが相互にどのように関わっているのかを図示したもの。メリットは、視覚的にビジネスモデルを把握できることです。
ストーリーボード作成
ストーリーボードとは、ユーザーを表現した簡単なイラストを使って、ユーザーストーリーを可視化する方法です。ストーリーボードでユーザー体験の評価と修正を行うことで、目標とするユーザー体験の完成度を高められます。
デザインスプリント
デザインスプリントは、限られた時間内で「理解」→「アイディエーション」→「アイデアの決定」→「プロトタイプ」→「検証」までを行う手法です。
決済者(ステークホルダー)を含めたプロジェクトメンバー全員で、スプリントの全プログラムを行うことで素早くクオリティの高い仮説検証を実施することができます。
プロトタイピング
仕様書、遷移図だけでは表現できない使い勝手・インタラクションも、Prottなどのツールを用いて動くプロトタイプとしてチームに共有します。プロトタイプを元にコミュニケーションをするのことで、多様なフィードバックを獲得でき、手戻りを防ぐことができます。コーディングが不要なので、デザイン・設計の追加や修正がとてもスピーディーというメリットもありますね。
おわりに
今回ご紹介したように、サービスやプロダクトづくりにおいてデザイナーが関わる範囲はとても広くなっており、デザイナーの種類は多様化しています。そしてグッドパッチのデザイナーは、クライアントさまのニーズに応じたソリューションを提供するべく、様々なプロセス、手法を用いてデザインをしています。
デザインシンキングやプロトタイピングを実践するワークショップの他、UI/UXフィードバックなども提供しています!ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。