スタートアップにCDOが必要な理由 CDO Night #1レポート【オープニングトーク編】

海外では大企業によるデザインファームの買収が相次いでいます。先日、IBMがオーストラリアのデザイン会社Vivantを買収したことが発表されました。他にもAccentureはデザイン会社Fjordを、Facebookはソフトウェアデザイン等を手がけるsofaを、GoogleはMike & Maaikeをそれぞれ買収し、ビジネスをデザインの力で加速させようとする動きは非常に活発です。

そして2017年の現在、日本のスタートアップにCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)という役職が増え始めています。なぜ、そこまで経営にデザインが求められているのでしょうか。
2017年10月3日、TECH PLAYデザイナー部によるイベント「スタートアップにCDOが必要な理由 CDO Night #1」が開催され、デザインを武器に挑戦を続ける6名のCDOが集まりました。当日はハッシュタグ「#cdonight」がTwitterのトレンド入りを果たすなど、大盛況に終わった第一回より、オープニングトークの様子をお届けします。

当日の資料は以下をご覧ください。

ハッシュタグ「#cdonight」のつぶやきのまとめは、こちらからご覧いただけます。

なぜ、CDOが求められるのか

トップバッターとして登壇した坪田 朋氏は、livedoorやDeNAなど事業会社を経て、現在はOnedot株式会社のCCOを務める人物です。数々の新規事業を立ち上げ、プロダクトを作っていく上で、デザイナーが予算やアサインをコントロールできないことに疑問を感じていたと言います。

モノづくりをする組織のあるべき姿

坪田氏は従来のよくある組織構成と、本来あるべき姿について、次のように述べています。

“左の図は、よくある組織構成です。スタートアップでも大企業でも、組織では意思決定者と決済範囲を決めます。仮に非エンジニアが責任者の場合エンジニアリング領域に関しては「餅は餅屋で専門的な分野だから意思決定権は移譲する」という流れが多く、昨今はCTOなどの責任者を作って権限委譲する文化になってきています。
ただ、デザイン領域はプログラムに比べて作る工程が想像しやすいので、専門家でなくてもある程度意思決定できてしまいます。事業責任者がそれを担うことが多いと思いますが、見えないプロセスが考慮されないなど現場に最適化されていないケースも多く、一方通行的に決まった事をやらざるを得ない現場も多いのではないでしょうか。”

坪田氏はまず、エンジニアリングにはCTOという責任者を立て、裁量を移譲するにも関わらず、デザインの領域ではデザイナーに予算策定の関与しない、意思決定権がない事実に着目しました。

一方で、デザイナーに予算や意思決定を任せる「CDOがいる組織」も増えてきています。
この組織構成の違いが、プロダクトの質にどのような影響をもたらすのでしょうか。

“高品質なモノを早く作れる組織になるためには、意思決定速度に加えて、中長期を見越した判断を下せる体制が必要だと考えています。UI/UXへの投資が高品質に欠かせない今だからこそ、その領域の事を考え抜けるデザイナーがプロダクト・人事・会社作りにコミットして組織作りに参加することで、高品質でスピード感のある環境が作れると思います。”

CDO/CCO/CXOの仕事

坪田氏が考えるCDO/CCO/CXOの仕事は、大きく分けるとプロダクト、人事権、会社作りに分類されます。それぞれのどのような部分にコミットしているのか述べました。

1.プロダクト

“見た目のデザインだけではなく、KPIにコミットしその設計にも関わります。KPIの設計次第で「目の前の数字を追うのに精一杯で、中長期を考慮した仕事ができない」事態は回避できますし、目標を達成するために何が足りないのか、見た目のデザイン以外の話を経営陣とコミュニケーションできるかが、重要だと考えています。

「上の方で決まったことが降りてきたけどなんか違う」と戸惑った事があるデザイナーも多いと思います。
多くの場合、現場で感じているユーザー体験の課題が経営やKPIに反映されていない事が本質的な問題なので、社長ビジョンのビジョンを理解すると同時に、その課題を経営に反映させることでデザイン経営ができるようになります。その関係地が積み上がると阿吽の呼吸となり、対等なパートナーとして更にスピード経営ができるようになりますし、それを目指したいと思っています。
予算や人事権はないのに「デザインお任せします」と丸投げされて抱え込んでしまい苦労しているデザイナーはとても多いです。自走する組織を作るために権限委譲、時には他部門との調整をしやすいように役職を付けてると言う手段が必要で、これはとても大事な点です。”

2.人事権

“理想を目指すためには社内のリソースを回す選択肢だけではなく、実現できる最適な人材確保が必要です。作りたいモノから逆算して採用計画 / 外部パートナーに頼るのか決めて実行する方針を考えていく。そして内部人材に関しては責任を持ってスタッフの給与や育成計画も担っていきます。経産省の資料で、デザイナーの年収が他職種平均で200万円ほど低いというデータがありますが、適切な給与を決められる人間が居ない原因もありますし、トップの給与が上がらないことにはスタッフの給与も引き上げられないので、僕は道を切り開いて業界での給与底上げに貢献したいと考えています。”

3.会社作り

“今日登壇いただく方たちの会社もそうですが、デザイナーが組織作りに参加している会社ってとてもカッコよく見えるんですよね。スタートアップにおいてこの「カッコよさ」って結構重要で、上手く組織デザインすると、志向の近しい人が集まり採用がマッチするので、よりスピードがあげられる。
ブランディングだけではなく、働き方に合わせた適切なツールや勤務体系を決めていくことがスピードにも繋がると思いますのでそこの責任も持っていきます。”

デザイナーに求められる新たなスキル

これまでデザイナーとは、グラフィックを描いたり、UIを設計している人とされていましたが、今後は特化したジャンルに精通していたり、フィージビリティの知識がなければ、デザインができなくなると予想されます。その理由を坪田氏は、株式会社FOLIO CCO 広野 萌氏の徹底的に法と向き合う姿勢を例に挙げ説明しました。

“例えば証券や決済サービスって法律がとても複雑なんですが、法律上の制約をきちんと理解せずに「これが理想のUI/UXだ!」などとコンテンツを置いてきぼりにしたデザイナーは信用されないと思うんですよね。周りの信用もそうですが、実現できないデザインは資産にならないのでCEOから信頼されにくい。自分はデザイナーなのでと言う逃げ道を作って、それ以外とは向き合わないというのはかっこ悪いと思います。
きちんと向き合って実現するためにどうするか、専門家やエンジニアと話して実現方法を考えられるかどうかでプロダクトの品質が変わってきます。例えば「送金決済サービスの法律」に詳しいとか、僕であれば、今は育児領域の知識を勉強してますが、各ジャンルの強さを持って言語化できることが大事なのではないでしょうか。”

坪田氏は、仕事で中国に滞在していた時に、WeChatやAlipayなどのプロダクトを日常的に使ってFinTech領域の知識を付けた経験のおかげで、日本と中国の法律の差分が掴めたと言います。さらに、このような経験を通じて、プロダクトを作る時に構想がしやすくなり、結果的に経営層とも対等に話ができるようになると述べました。
ひとつの領域に向き合い、勉強をしていくことで、プロダクトのデザインに反映ができる。より論理的な思考能力がこれからのデザイナーには求められるのでしょう。

経営者に伝えたい事

イベント会場には、スタートアップの経営者だという方が多く来場されていました。そこで坪田氏から、経営者に向けて3つのメッセージが投げかけられました。

1.将来のリターンが大きい

デザイナーが最初からいた方がリターンは大きいです」と話し始めた坪田氏。その根拠は明白で、10〜50人規模のスタートアップでその事業領域に精通してるデザイナーがいないと、市場背景や調査結果を説明するコミュニケーションコストが都度掛かり、その後の一人目のデザイナー採用が難航することを指しています。そうなる前にも、組織のブランドデザインや、リソース設計を担うCDOを初期から置くことが、長期的なリターンに繋がると主張しました。

2. プロダクトが早く高品質で作れる

そして「デザイナーは作って壊すを繰り返すことができる」と特徴を挙げ、初期のスタートアップには特に欠かせないスピード感を損なわず、高品質なプロダクトを作ることができるからこそ、信頼のおけるデザイナーが必要だと説きました。

3.ジャンル特化型デザイナーを初期から育てる

最後のポイントが、ジャンル特化型のデザイナーを初期から育てることについてです。坪田氏は、「UIデザイン経験がどんなに豊富でも、扱っている市場知識や法律、フィージビリティ考慮ができないと品質の底上げができない。調査に時間がかかって納期が迫り、作り込みが浅くなってしまい不本意な仕上がりになるケースも多い」と話しました。そのケースをなくすためにも、初期からジャンル特化型のデザイナーを育てることがおすすめなのだそうです。

スタートアップに飛び込みたいなら

若手のデザイナーに対しては、自らの経験に基づいた言葉を発信されました。

“事業会社でいちデザイナーとしてのモノづくりも楽しいけど、CEOやCTOと上下関係なくパートナーとして仕事ができる環境ってすごく楽しいです。個人的には組織の大きさではなく、この関係性でモノを作れる環境が大事という実感も持ちました。
正しいモノを作るには裁量が必要。結果を出して交渉をして範囲を広げていきやすいので、キャリアを積むにも良いと思います。最近は週末フリーランスの動きも認められてきているので、先ずはそこからでもいいと思います。
あとは強いジャンルを作り、フィージビリティと向き合い続けられるような好きな領域を作る。こういう知識は転職時の交渉にも役立つし、周りのデザイナーとの競争でも有利に働きます。”

これからスタートアップに挑戦するデザイナーは、CDOとして経営に近い存在でデザインの力を浸透させ、証明していくことが可能なのだと感じます。正しいモノを早くリリースし、イノベーションを起こすことは、CDOの存在無くしては叶わないのでしょう。

今回はCDO Night #1より、オープニングトークの様子をお届けしました。
近日、同じく盛り上がりを見せたパネルディスカッション編を公開予定です。お楽しみに!

ABOUTこの記事をかいた人

Kaori Sugimoto

エディターをしています。デザインをもっと身近に感じてもらえるように、色々なコンテンツをお届けします!
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