こんにちは!プロジェクトマネージャーのKatsukiと申します。

今回は、私が日々の業務で意識している「ストーリー」についてや、誰でも簡単にアイデアを可視化できる「ストーリーボード」についてまとめました。

ストーリーって何?

ストーリーとは、物語論において物語世界の中で起きる出来事を時系列で表した流れのことを指します。例外はありますが、基本的にストーリーは「キャラクター」「シーン」「プロット(要約)」の3要素を含みます。

人類史上はじめて物語の構造を分析したと言われるアリストテレスは、「ストーリーは大きく3つのセクションに分けられる」と定義しました。それは、「始まり・中盤・結末」です。古代から人間はストーリーを楽しみ、ストーリーと主に発展してきました。

共感を生むストーリーは、観客の心を大きく動かし、そのストーリーに触れる前とは違う一皮むけたような感覚すら覚えさせてくれます。

そこから、観客がストーリーに求めるものが見えてきます。それは「変化」です。ストーリー内では、主人公がある困難にぶつかり、それを試行錯誤しながら解決します。観客は、この試行錯誤の上で変化していく主人公の姿に自分を照らし合わせることで大きな満足感を得るのです。

言い換えると、良いストーリーは、その物語に触れて変化した「自分」を与えてくれます。

デザインにおけるストーリー

デザイン(ここでは主にサービスデザインの意味)において、ストーリーという言葉は複数の文脈で使われます。私がこれまで触れたことのあるストーリーは、「コンセプトストーリー」「オリジンストーリー」「ストーリーマップ」「ストーリーボード」などです。

コンセプトストーリーは、ブランドの比較的上位の概念です。Red Bullの「翼を授ける」というコンセプトには、「かっこよくデザインされたRed Bullを飲むことで人の限界を超えることができる」、というストーリーが秘められています。噛み砕くと、「限界を迎える(始まり)→Redbullを飲む(中盤)→限界を超えた自分と出会うことができる(結末)」となるかもしれません。このストーリーに共感したユーザーは、普段より少し高いお金を払ってでも購入してくれるのです。

コンセプトストーリー以外の3つのストーリーは、実際の利用シーンを細かく時系列で分解して作ります。(まとめてユーセージストーリーとも言います)
その中でも、最もよく使われている「ストーリーボード」について述べていきます。

ストーリーボードとは

新卒研修で作成した、ストーリーボードの参考例です

ストーリーボードとは、ストーリーを表現したイラストで、描いたストーリーを可視化する手軽な手段です。(ワイヤーフレームとは違い、実際に使っているを中心に描いたものを指します)
このメソッドは、映画製作の文脈でよく使われています。トイ・ストーリー等で有名なPixarでも、製作の初期段階から膨大な時間をストーリーボード作成と、それを元にしたディスカッションに使っていることで有名です。ちなみにウォルト・ディズニースタジオでは、1920年代からスケッチを使ったストーリーボーディングを行なっています。

デザインにおいて、なぜストーリーボードを取り入れるべきなのか

ストーリーボードの最大の利点は、素早く簡単に誰でもアイデアを可視化することができる点です。

チームのエンゲージメントが高まる

デザインにおいてストーリーボードは、様々な文脈で使われています。新規サービスの立ち上げの際や、サービスの改善等、実際に画面のデザインをする前にユーザーがどのような行動を取るのか?を描き、それを中心にデザインを進めることで、自然とユーザーを中心に置いた共通認識がチームで形成されます。この共通認識は、チームの帰属意識を高めてくれるでしょう。

ユーザーへの共感度が増す

更に、ユーザーを中心においたストーリーボードを目の前にすることで、ユーザーへの共感度が増します。ユーザーの世界観に自分が存在しているかのような感覚を持つことで、今まで見えてこなかった世界が見えるはずです。

記憶に残りやすくなる

人の脳は、イメージで記憶することに非常に長けています。文字で羅列されたストーリーよりも、ビジュアライズされたストーリーは22倍もの記憶に残りやすいという研究結果も出ている程です。

方向転換し易い

ストーリーボードは、紙とペンさえあれば作成できます。共感できないアイデアが出てきた時、元のアイデアに固執することなく、素早く新しいアイデアの検討に移ることができます。

ストーリーの応用例

ストーリーボードは、サービスデザインの文脈で作られる事が多いですが、ストーリー自体は多くの場面に応用できると個人的には考えています。
例えば、プレゼンテーションの構成を練る際にもストーリーは有効です。オーディエンスをキャラクターと見立てて、自分のプレゼンテーションが相手の感情をどのように動かすのか?を時系列ごとに設計し、そこから初めてプレゼンテーションのコンテンツを作成します。設計したオーディエンスの感情曲線に沿ってプレゼンテーションのトーンも変えていくと、更に深みのあるプレゼンテーションができるでしょう。

これは、私が以前行ったプレゼンテーション準備の際に作成したストーリーです。(一部画像を修正しています)

オーディエンスの方にどのような変化をもたらしたいか?そのためにどのようなプロットを描き、どのように感情を上下させるのか?をはじめに可視化した上で、最後にスライド作成に取り掛かる。という方法をとりました。

そうすることで、「流れ」と「ポイント」のわかりやすいプレゼンだったとの評価をいただきました。これはまさに、「三幕構成」と「観客の変化」がカタチとして現れた証拠であると思い、自信につながりました。

まとめ

ここまでストーリーや、ストーリーボードに関して述べてきましたが、いかがでしたでしょうか?ストーリーを構成する三要素(キャラクター、シーン、プロット)さえあれば、ストーリーは誰でも描けます。今あなたがこの記事を読んでいるというのも、一つのストーリーなのです。
この記事が、読んで下さった方々にとってストーリーに関して考えるきっかけになれば幸いです。

ストーリーを学ぶ上で参考になった本

おまけで、ストーリーを学ぶ上で役に立った本をご紹介します。ストーリーについてわかりやすく学べるのでおすすめです!


※参考文献

「基礎」から学べる!デザイン記事特集。記事一覧を見る