ヤフー株式会社
メディアグループメディアカンパニーメディア事業本部グループ推進室スポーツ戦略室
ワイズ・スポーツ株式会社 デザイン部部長 兼 クリエイティブディレクター
小林 靖大さん

小林さんには以前よりスポーツ総合サイト「スポーツナビ」でProttをご活用いただいていましたが、スポーツ生中継の見放題アプリ「スポナビライブ」の開発でも活用いただきました。今回はスポナビライブの開発でProttがどのように役立ったか、伺ってきました。

Prottはプロトタイピングツールではなく、コミュニケーションツールになってきた

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──2015年の夏からProttを導入していただいていますが、それから約2年が経ち、使い方に変化はありましたか?

小林 プロトタイピングツールとしての基本的な使い方に大きな変化はないかな、と思っています。ただ、自分自身の使用用途が少し変わってきました。

一般的にはアイデアを素早く形にするためにプロトタイピングツールを使うと思うのですが、自分の場合は“共通言語化”のためにProttを使っています。

分かりやすい例でいえば、2016年3月にローンチされた人気スポーツの生中継が見放題のアプリ「スポナビライブ」の開発です。このアプリはソフトバンクとヤフーが共同で開発を行ったのですが、会社も違えば、文化も異なる2社ということで、さまざまな障壁がありました。

ロゴやフォントひとつとっても、ガイドラインが異なるため決定に時間がかかってしまったり、認識のズレが生じてしまい想像していたアウトプットが上がってこなかったり……。開発当初、そんな状況がいつも待ち受けていたのですが、今回は開発初期段階からProttを使い、動くものを見られるようにすることでチーム全体が共通言語を持つことができました。

そのおかげで効率よく開発ができた、と思っています。前回のインタビューで話したかもしれませんが、Prottは遠隔地であろうが、複数人であろうが、同じ環境で同じものを見る事ができます。そのためプロトタイピングツールというより、コミュニケーションツールとして使っているニュアンスが強いかもしれません。

──ちなみに開発チームはどれくらいの人数だったのですか?

小林 かなり多かったですね。スポナビライブは店頭の販売員、広告代理店などを巻き込んだ一大プロジェクトだったので、50〜60名くらいだったと思います。

ただ、常にコミュニケーションをとっていたメンバーは7〜10名くらいでした。

──なるほど。チームの共通認識を合わせるために、Prottを使っていたと。

小林 アプリの開発段階においてはProttのワイヤーフレーム作成機能を使ってワイヤーフレームを作成しましたし、開発会社とはProttでワイヤーフレームや設計書の共有も行いました。

──チームの中にはProttを初めて見る人もいらっしゃったと思うのですが、反応はいかがでしたか?

小林 あまりにも自然にチームに溶け込んでいたので、反応はなかったですね(笑)。Prottは本番に近い画面を共有できるので、見る側に対してツールという感覚を与えないからだと思います。
「え、もう出来たの?」と言われて、「まだプロトタイプなんですけど…」と答える。そんなやり取りは数回ありましたね。チーム内でのProttの評価は上々でした。

共通言語化できない部分にフォーカスして、Prottを活用

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──一般的なイメージでいくと、大企業は承認フローが長い気がするのですが、Prottは承認フローで何か役に立ちましたか?

小林 とても役に立ちましたね。承認フローは長ければ長いほど伝言ゲームになってしまうので、自分が「A」と言ったものが最終的に「C」として伝わってしまう可能性が少なからずあります。直接見せ合える機会があれば良いのですが、普通の会社ではなかなか経営層に直接見せる機会はなく、人伝いに見せるしかない。

ただ、Prottは本番に近い画面をどこにいようが、プレゼンモードのURLを共有するだけで直接見てもらえる。言葉の説明も不要なので、承認フローを進めていく上では、すごく役立ちました。

──スポナビライブは動画を体感できることがサービスの醍醐味であり、人気の要素だと思うのですが、「ここで動画が流れます」という説明はどのようにされたんですか?

小林 当時、Prott内で動画は流せなかったので、承認フローでは流しませんでした。ただ、映像は再生ボタンを押せば、スタートする……と大体想像がつくので、想像できる部分は一旦見せなくても共通認識が持てるかな、と。

それよりもスポナビライブは他の動画サービスにはない、映像以外の情報を載せられることが強みなので、試合速報などのテキスト情報におけるUXや画面遷移の動きを確認するのにPorttは役立ちました。共通言語化されていない細部にフォーカスして、Prottを使って体験してもらい確認してもらうようにしましたね。

──確かに動画を見る部分は他の動画サービスなどもありますし、皆さんイメージがし易く、共通認識がありそうですね。それ以外の部分の動線をいかに分かりやすくするか、でProttが有効だったと。

小林 そうですね。プロトタイピングは早い段階で課題を見つけることができるので、工数やコストを最小限に抑え、スピード感を持って開発を進めていくのに有効なのだろうなと思います。

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Prottでのプロトタイピングがアプリ画面に反映されている画

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実際にローンチされた『スポナビライブ』アプリのキャプチャ

当たり前のように使われている。Prottは家族のような存在

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──前回の「スポナビ」のリニューアルでは小林さん主導でProttの導入に至ったと仰っていましたが、今回のスポナビライブも同様だったんですか?

小林 おかげさまで弊社にもProttが定着してきまして。自然とProttを活用してプロダクトを開発する人が増えてきていたので、自分が主導せずとも導入する感じになりましたね。

──今回の開発を振り返ってみて、いかがですか?

小林 テレビで出来ないことをアプリで出来たのは良かったな、と思います。テレビはあくまで受動的なデバイスですが、スマートフォンは能動的なデバイス。ユーザーが自ら情報を取りに行くのと流れてくる情報を受けるのでは、同じ映像が流れるデバイスだったとしても、ユーザーのマインドが全く違う。

そういう意味ではスポナビライブは情報をとりに行く人たちが動画を見てくれるので、選手情報や成績といったより詳細なデータソースにどうやったら最短でたどり着けるか。そこの設計をプロトタイプの段階から、かなり考えました。今回の開発リソースの7割くらいは設計に割いたと思います。

スマートデバイス時代になってからは、直感的に触って動かすのが当たり前になってきているので、プロトタイピングは必須になりましたね。

──開発はすごく大変なこともあったと思うのですが、Prottが役立ったエピソードは何かありますか?

小林 ユーザーの学習コストが少なくて済む。シンプルで非常に使いやすいんです。プロトタイピングツールに慣れていない人でも、簡単に実機で触って見ることができるのは大きかったですね。人を選ばずに使えるからこそ、承認フローにも「わかってくれるだろう」と自信を持ってProttを組み込むことができました。

──さきほどコミュニケーションツールとして使っていると仰っていましたが、コミュニケーションの質は変わりましたか?

小林 コミュニケーションの質も確実に上がっていると思います。ただ、Prottがスゴいのはそれを過剰に意識させないところなんですよね。あまりに定着しすぎていて、ツールとして使うというより開発工程に当たり前のように組み込まれているので、負担に感じる人が少なくなってきている。一緒にいることが自然、まるで家族のような存在ですね。

──ありがとうございます。最後にProttへのメッセージがあればお願いします。

小林 プロトタイピング文化を企業に根付かせたことは、本当にスゴいことだと思います。自分にとってProttは家族のような存在ですし、今後も使い倒していきます。

──本当に呼吸をするようにProttを使っていただいているんだな、と思いました。本日はありがとうございました!