シニアUXデザイナーのチェルシーです!本日は、私が所属するProttチームで実践しているユーザーテストの方法と、ユーザーテストの基本的なやり方についてご紹介したいと思います。

Prottチームは、ユーザーの意見に共感するよう努めています。私たちがプロダクトを開発するときは「どうやってアイデアを実現するか」について苦労することが多いですが、ユーザーと話すときは「どうやって」よりも「なぜ」について尋ねるようにしています。また、ユーザーテストにProttを用いることで、プロジェクトマネージャーやステークホルダーがデザインと密接になることができます。

週に1回ユーザーテストを始めたきっかけ

現在、Prottチームではアジャイル手法を採用しています。2週間のスプリントで、革新的かつ効果的な方法を学び、改善を重ねています。そして、私たちは毎週ユーザーテストを行なっています。ゴスエルフ・ジェフ氏(Jeff Gothelf)、セイデン・ジョシュア氏(Josh Seiden)による「Lean UX」に影響され、実施を決めました。Meetup.comのケーススタディーではユーザーテストの対象は「毎週木曜日、3人のユーザー」とあります。しかし、開発チームやステークホルダーを含めて毎週ユーザーテストを行うことが、私たちのデザインプロセスをアジャイルにしてくれるかどうかは疑問でした。

2018年1月から、実験的に毎週のユーザーテストを開始してから、チームには大きな影響があったと感じています。始めてから、次のような良い変化がありました!

  • たった数日で、何週間もかかる問題を解決しました
  • 「答えはユーザーが持っている」と分かったので、非生産的な議論がなくなりました
  • 「どのようにユーザーの効率を最大化するか」から「どのようにユーザーの満足度を最大化するか」という考え方に変わりました
  • 余分な機能をカットし、貴重な開発の時間を有効活用できるようになりました
  • Prottチームの中で、デザインリサーチへの期待が確固たるものになりました

ユーザーテストとは何か?

ユーザーテストは、ユーザーが開発チームに対して、要望やニーズを直接話す時間です。開発チームは、アプリケーションに関するフィードバックを直接受け取ることができますし、インスパイヤされて新しいデザインを作ることができます。

プロトタイプやコードを見せたり、ボードと付箋で作った簡易的な設計でも、ユーザーテストはできます。ユーザテストは、プロダクト開発の途中で行うことが大切です。

簡易的なユーザーテストに使用したボード

ユーザテストのポイント

チームの参加人数は1〜3人まで

ユーザーテストの場には、1人のユーザーと1〜3人の開発メンバーがいることが多いです。メンバーは役割分担をして、1人はインタビュアー、あとのメンバーが記録係、撮影係となります。開発チームを連れていくことで、テストの場での強力な同盟者になるでしょう。

ユーザーテストの最中は、インタビュアーとユーザーが基本的に話します。ユーザーテストに参加するチームの人数は、できれば少なめにしておきましょう。チームメンバーの人数が多すぎると、ユーザーは緊張して、正直なフィードバックを伝えづらくなってしまいます。どうしても大人数になってしまう場合は、SkypeまたはSilverbackを使って、リモートでユーザーテストの様子を見るようにしましょう。ユーザーテストの目的は、ユーザーからの正直なフィードバックを聞くことです。たくさんの人が同席して、ユーザーの意見を聞くことは目的ではないので、覚えておきましょう!

声に出してタスクを実行してもらう

ユーザテストでは「声に出しながら」タスクを実行してもらうように、ユーザーにお願いします。この方法は「思考発話法」といい、ユーザーの考えを理解するために有効な手段です。実際に、Prottのユーザーテストでは、このような声があがりました。

「全体的な印象は…かなり使いやすそう」

「ホットスポットを編集するためにここをタップします」

「写真を撮影する前に、プロトタイプを編集する必要があるのかな?まだ分かりません」

私たちは、日々の行動を全て口に出すわけではありません。そのため、ユーザーテストの最初は、考えを声に出すことを難しく感じるかもしれません。しかし、慣れてくるとほとんどの人は思ったことをしっかり口に出せるようになります。思考発話法により、ユーザーは自分が感じていることを明確にし、タスクを実行することができます。また、開発チームは、プロダクトの構造に対してユーザーの思考プロセスがどう移り変わるのか知ることができます。

ユーザーテストをするときは、インタビュアーは批判的にならないように気をつけながら、「どんな」「どのように」とオープンクエスチョンを続けましょう。記録係と撮影係は、ユーザーの言葉や表情を捉えておきます。

ユーザーテストが終わったら、インタビューに協力してくれた人に感謝の言葉を述べて、場合によって謝礼の品を渡します。謝礼は高価である必要はありません。Prottチームでは、ProttノートやTシャツ、チョコレートなどをお渡ししています(新しいProttのユーザーテストにご協力いただける方は、こちらまでご連絡ください )!

ユーザーテストのやり方

チームを準備する

多くの人は、ユーザーテストを依頼するとき、いつ始めるべきか分からないかもしれません。ユーザーテストについての考え方をより快適にするために、チーム全体でデザインリサーチトレーニングを受けることがおすすめです。良いインタビュアー、良い記録係、良い撮影係とはどんなものなのか話すためのセッションです。Prottチームでは、IDEOfrogのデザインリサーチのリソースを参考にしました。

問題と仮説を特定する

あるデザイン案Aと、別のデザイン案Bがあり、どちらが良いのか悩んだことはありませんか?例えば、マネージャーからのフィードバックが、実際にユーザーが望むものであるかどうかは、チームでテストできます。その際チームは「ユーザーがモバイルで写真を追加するためのデザインで、A案とB案どちらを好むのか知りたい」と、問題について書き留めておきます。

最初に問題を特定するのは難しいかもしれませんが、あなたが立ち往生している気持ちに従って、「なぜ」の理由を尋ねましょう。A案はなぜ問題なのか?あなたは、マネージャーが提案するB案に賛同できない。ではなぜ、マネージャーはB案を提案したのか?マネージャーは、B案がユーザーにとってはより良い方法だと考えているからです。こんなときは、A案とB案の両方を試してみるという解決策がに見つかります。

それぞれの問題について、仮説を立てるようにしましょう。仮説を検証することは、自身のバイアスを理解することにつながります。デザインについての問題を書き留めていないと、ユーザーが欲している案と異なる案を採用したいときに苦労します。自分がバイアスを持っていることを忘れず、バランスを意識しましょう。

開発チームに、テストしたいことがあるかどうかを尋ねてみてください。これはデザインだけではありません。ただし、ユーザーテストセッションごとに聞けるのは、3つまでにしましょう。たくさんの問題についてテストをしても、表面レベルの会話で時間が終わってしまい、ひとつの問題を深堀りすることができなくなります。

ユーザーの目標を決める

次に、短く箇条書きされたリストで実行するユーザーの目標/タスクを書き留めます。たとえば、上記で取り上げた「ユーザーがモバイルで写真を追加するためのデザインで、A案とB案どちらを好むのか」という問題を取り上げると、ユーザーの目標は次のようになると思います。

  • このプロトタイプ[A]を使って、写真を撮影してみてください
  • このプロトタイプ[B]を使って、写真を撮影してみてください
  • 両方のプロトタイプを使ってみて、あなたの印象はどうでしたか?

ここで重要なのは、あなたの質問をオープンにすることです。「はい、いいえ」では、微妙なニュアンスを汲み取ることができません。「あなたはどちらを好むのですか?」という問いの答えは、あなたが思っている以上に複雑かもしれません。自由回答になるように、オープンクエスチョンで質問すると、単純な答えではなく、微妙なニュアンスをキャッチすることができます。

書き出した問題と、箇条書きしたユーザーの目標を「リサーチプラン」と呼びます。これはより長い形式のプランの略称ですが、ユーザーテストで質問する内容を覚えておくためにもやってみてくださいね。

プロトタイプを作成する

プロトタイプは、ノートから紙、デジタルにいたるまで、さまざまな形、サイズで作成できます。Prottを使えば、素早いプロトタイプアプリケーションを作成できます。あなたのアイデアから、複数のオプションのプロトタイプが生まれます。紙の上に画面のアイデアをスケッチして、写真をProttで取り込めば、わずか15分で完成です!

ユーザーを募集する

最初にユーザーを募集し始めたとき、私たちは社内ではなく、社外からテスト対象を探し始めました。「Prottを使ったことがない人」というターゲットは、社内にいなかったからです。ユーザーテストの対象が社内にいない時は、ユーザー像を明確にすると、当てはまるユーザーを尋ねることができるメンバーは誰か?ということを考えられます。

例えば、スタイリングを見れるアプリを使っていて、ファッションを意識しているユーザーを探すとします。そんな時は、他の同僚と話をして、あなたの会社にいるファッションを意識した人たちを見て、彼らに募集を呼びかけてください。アプリに関して直接的なやりとりをしていない同僚は、1)1つの解決策に偏らず、2)アポイントメントを取り付けやすいので、おすすめです。

リクルーティングにあたって、FacebookやTwitterだけでなく、信頼の置けるセールスチームやカスタマーサクセスチームにも頼り、チームのネットワークの外に目を向けました。セールスやカスタマーサクセスのメンバーは、クライアントと日常的にやりとりをしているので、チームにとって非常に貴重な洞察を持っています。
リクルーティングのために、チームの誰かを「リクルーター」に任命しましょう。ただし、リクルーターとプロトタイプを作るメンバーは分けましょう。

ユーザーテストをスタート!

さあ、準備は完了しました。準備した会議室にチームメンバーを連れて行き、まずは時間を作ってくれたユーザーに感謝を伝えることから始めましょう。ユーザーには、テストに正しい答えはないことを伝えます。そして、チームが作った目標を実行してください。 記録係はメモを取る必要があります。撮影者はカメラでテストの様子を撮影する必要があります。それぞれが役割を実行し、しっかり記録しましょう。記録は、次のステップで役立ちます。

ドキュメンテーション

ユーザーテストを終えたら、15分ほど使って、全員のメモや考察を集めます。それらを記録し、写真やビデオと共に、チーム全体に共有しましょう。2〜3分のビデオは、ユーザーテストに参加していないデベロッパーやCEOがインタビューの内容を断片的に把握するために有効です。ビデオ録画するときは、自分のPCのスクリーンを収めることを忘れないでください。この作業は、ユーザーテストの結果を伝えるための記録と同じくらい重要です。しばらくすると、あなたはチームから、次のユーザーテストはいつかと尋ねられるようになるでしょう。ユーザーテストは、それほどチームに素晴らしい洞察をもたらしてくれます。これは、あなたの日々の仕事にデザインリサーチを組み込む素晴らしい方法です。チームがデザインリサーチに習熟しているほど、UXデザインのマインドセットを採用しやすくなります。


ぜひこの記事を読んで、ユーザーテストを試してみてもらえたら嬉しいです!始めるときは大変そうに見えても、実施するメリットはコストをはるかに上回ります。チームの継続的な努力と絶え間ない改善のおかげで、私たちはユーザーテストにかかる準備のサイクルを短縮し、必要な数日だけで柔軟にスケジュールを組み、テストができるようになりました。今後、私たちはより革新的で思いやりを持ったアジャイルなチームに近づけると思います。

ユーザーテストを試してみてどうだったか、私たちに教えてください! @prott_jp@prott_app 、Facebookでお待ちしています。