サービス開発・改善に欠かせない、ユーザビリティテストのやり方【準備〜実施〜分析まで】
UI/UXデザインでサービス開発を進める際に欠かすことのできないプロセスの1つに、ユーザビリティテストが挙げられます。しかし「聞いたことはあるけどどんなものか説明できない」「導入したいけど何をすれば良いのか分からない」といった悩みを持つ方は多いのではないでしょうか?そこで今回は、ユーザビリティテストがなぜ必要なのか、やり方、注意点についてご紹介します。チームでサービス開発をしている方は是非参考にしてみてください。
目次
ユーザビリティテストとは
ユーザビリティテスト(Usability Test)とは、システムやサービスのユーザビリティの程度や内容を調査することです。ユーザー対象者に対して、製品のプロトタイプを使ってもらうことでどの程度使いやすいか/使いにくいかといった問題が明らかになり、開発の貴重な指標を得ることができます。開発チームは、ユーザーからプロトタイプに関するフィードバックを直接受け取りプロトタイピングを重ねていくことができます。サービス開発にプロトタイピングが浸透することで、デザインプロセスが効率化され、チームのコラボレーションを促進されます。プロトタイピングについて詳しくは以下の記事をご覧ください!
ユーザビリティテストでは、5人のユーザーに実施するすることで、直ちに改善するべき部分の85%を突き止められると言われています。ここで注意しなければならないのは、ユーザビリティテストとはユーザーを通して「ユーザビリティ(Usability)」を「テスト(Test)」する、すなわち「使いやすさ」を「検証」することです。決してユーザーをテストすることではありません。
ユーザビリティとUX、UIの関係性についてはこちらの記事をご覧ください。
では、ユーザビリティテストではどのようなことを行うのでしょうか?まずはじめに、ユーザビリティテスト(以下、テスト)を実施するにあたっての流れを以下に示します。
作業 | 作業内容 |
---|---|
目的の設定 | 実施するテストの目的を具体的に決める |
仮説の設定 | ユーザがどのような操作を行うか仮説を立てる |
タスクの設計 | 仮説を検証するためのタスクを設計する |
質問事項の作成 | テストユーザへの質問事項を考える |
人・場所・モノの準備 | テストを実施する人・場所・機材の用意と、テストユーザの条件を決めリクルートを行う |
パイロットテスト | 内部でテストを通しで行う。結果をブラッシュアップし、本番へ |
本番テスト | テストを実施 |
結果の解釈 | ユーザが言った言葉を鵜呑みにせず、ユーザの行動から言葉の原因を探して結果を解釈する |
結果の評価 | 解釈した結果を評価し、改善案にする |
ユーザビリティテストの準備
目的の設定
実施するテストの目的を具体的に決めましょう。大きな目的は「プロトタイプがどれだけ使いやすいかを調査し評価する」ことですが、ここでは細かな目的を決めておきます。例えば、
- 開発目的とそれに対する設計が一致しているか
- ユーザーの操作に迷いや間違いが無いか
- ユーザーは実行結果をきちんと知覚しているか
- 製品AとBどちらが優れているのか
- 今まで使っていた人が使えるのか
などが挙げられます。目的を決めておくことで、結論も求めやすくなります。
仮説の設定
先程決めた目的を基に、ユーザが製品に対してどんな操作を行うか、どう感じるか仮説を立てましょう。仮説を検証することは、自身の製品に対するバイアスを理解することに繋がります。自分たちでは良いと思っているものでも、ユーザーが欲しているものとは異なる場合があります。自分たちがバイアスを持っていることを忘れず、バランスを意識した仮説を設定しましょう。
タスクの設計
次に、箇条書きで、ユーザーに実行してもらうタスクを設計しましょう。例えば、アプリのプロトタイプをテストする場合だと、「ログインしてもらう」「アプリで〇〇の機能を使ってもらう」といったタスクが考えられます。
質問事項の作成
ユーザーへの質問事項を作成しましょう。実行してもらいたいタスクから、質問項目を洗い出します。タスク1つに対して、最大3つ程度の質問にしましょう。沢山のタスクについて質問をしても、表面レベルの会話で時間が終わってしまい、1つの問題を深堀りすることができなくなります。
質問事項の作成で重要なのは、はい・いいえ、もしくはA・Bで答えられる質問は控えることです。
「どれぐらい・どのように」などの質問をユーザーに対してすることで、ユーザーの本心をより導き出せるようになります。例えば、同じ「サービスに対する満足度」を測る質問だとしても「このサービスに対して満足していますか?」という「はい・いいえ」で答えられる質問をするより、「このサービスに対してどのぐらい満足していますか?」と尋ねる方がユーザーが抱える本質的な課題を発見できるでしょう。自由回答になるように質問すると、単純な答えではなく、ユーザーの微妙なニュアンスをキャッチすることができるようになります。
他にも質問事項については気を付けるべき点がいくつかあります。質問の仕方に関しては、ユーザビリティテストとユーザーインタビューは共通する点もあるので、ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。
人、場所、モノの準備
テストを行う人、場所、テストで使用する機材の用意と、テストユーザーの条件を決めてリクルートしましょう。テストの実施にあたっては、協力してもらうユーザーはもちろんのこと、以下の人、場所、モノが必要になります。
- インタビューアー
ユーザーに対して直接質問をする係です。ユーザーに精神的なプレッシャーをかけることや操作を教える行為は控えましょう。 -
記録係
ユーザーの発言を記録する係です。書き取りやタイピングが得意な人が適任でしょう。聞き漏らした際はテスト後、後述の録画機器にて撮影した映像を見直しましょう。 -
オブザーバー
第三者としてインタビューを観察し、ユーザーの発言以外の行動を記録する係です。ユーザーの気になった行動や、したかったと思われる内容をメモしましょう。例えば「押すべきボタンがどこにあるか探していた」「〇〇の画面で操作が止まっており、悩んでいる様子だった」などが挙げられます。 -
リクルーター
テストをしてもらうユーザーを募集する係です。リクルーティングにあたっては、以前定めたテストの目的と合致する人や、製品のターゲットに近い人を探しましょう。Goodpatchが開発するプロトタイピングツール「Prott」チームでは、SNSやbosyuを使ってリクルーティングすることもあるそうです。 -
場所
ユーザーが実際にプロトタイプを触り、その様子を撮影するので、ユーザーの気が散らないような静かな場所を選びましょう。 -
録画機器(カメラ・三脚)
録画機器を用いてテスト全体を記録します。機材の位置を固定し、ユーザーに対しても指定した場所でプロトタイプを操作してもらうことで、その場にいなかった開発メンバーにも共有しすくなります。撮影においては、ユーザーに対して撮影の了承を得るようにしましょう。また、製品がPCやスマートフォンの場合は、操作中の画面もキャプチャすることを忘れないでください。 -
メモを取るもの(紙と鉛筆 または PC)
テストを実施する人(インタビューアー、記録者、オブザーバー)がテストを記録するために使用します。
ユーザビリティテストを実施する
パイロットテスト
まずは社内でパイロットテストを行いましょう。パイロットテストの結果をブラッシュアップして本番へ臨みます。練習を行うことで、本番テストで良い結果へと繋がるようになるでしょう。
本番テスト
いざ本番テストです!準備した部屋にチームメンバーを連れて行き、まずは時間を作ってくれたユーザーに感謝を伝えることから始めましょう。また、ユーザーにはテストに正しい答えはないことを伝えます。そして、チームが作ったタスクを実行してもらいましょう。 記録係はメモを取る、オブザーバーはユーザーの発言以外の行動を記録するなど、それぞれが役割を実行しましょう。
実際に進めてみると、あらかじめ考えていた質問事項以外にも聞きたいことが沢山出てくると思います。その際は適宜ユーザーに聞いてみましょう。また、ユーザビリティテストを重ねていくと、質問事項以外の質問はその一人に対してのみ聞きがちです。新しい質問が出た場合は積極的にメモし、場合によっては正式な質問事項として追加しましょう。
ユーザビリティテスト結果を分析する
結果の解釈
テスト終了後は、モデレータ・記録者・オブザーバーで口頭で軽く結果をまとめて情報を共有しましょう。そして、次のテストではどう改善するか、どこの質問を修正するか話し合い、次のテストに活かしましょう。
すべてのテストを終えたら、各テスト毎に全員のメモや考察を集めます。それらを記録し、写真やビデオと共に、チーム全体に共有しましょう。
結果の評価
解釈した結果をもとに、テスト全体を評価しましょう。ここでは、評価する指標として「有効さ」「効率」「満足度」が挙げられます。
- 有効さ
「目標を達成できたかどうか」です.例えば「5人中4人が会員登録ができた」といった場合を指します。 -
効率
「目標を達成するために費やした資源」です。例えば「会員登録が完了するまでにユーザーは平均2分費やした」といった場合を指します。 -
満足度
「使用する際の不快感のなさ、および肯定的な態度」です。例えば「このサービスをまた使いたいと思う人は6割いた」という場合を指します。
その後、プロトタイプに対してどういう修正が必要か・どう改善すれば良いかをプロジェクトチームのメンバーで議論しましょう。
いかがでしたでしょうか?今回は、ユーザビリティテストについてご紹介しました。一見大変そうに見えますが、実施することでプロトタイピングの思考でサービス開発を進めていくことができます。是非この記事を読んで、ユーザーインタビューを実施してより良いサービス開発に役立ててもらえたら嬉しいです。