リモートワーク・テレワークでのユーザーインタビュー・ユーザビリティテスト実践方法
目次
はじめに
昨今コロナウィルスの影響で、外出自粛等の措置が導入されています。そんな中、リモートワーク(テレワーク)での在宅勤務となっている企業も多く見受けられるようになりました。弊社Goodpatchでも、2/17よりリモートワーク推奨、3/30より原則出社禁止の措置をとっています。
そんな中でも、前向きに社会に価値を届けたいという思いから、今回は遠隔でのユーザビリティテストやインタビューの方法についてまとめたいと思います!
リモートワークになった直後にGoodpatch Anywhereからコミュニケーションに関するナレッジをお届けしましたが、今回はより実務に寄った記事になっております。
※今回は被験者のリクルーティングに関する内容は含まれません。事前準備→実施→分析における方法を記載していますので、ご注意ください
リモート活用で得られるメリット
もちろん、ウイルス感染リスクを抑えられるというメリットもありますが、リモート活用によるメリットは他にもあります。例えば
- 遠方の被験者とも実施ができる(外国語堪能であれば、海外でも!)
- 移動のコストが抑えられる
- 被験者の緊張感が少ない場でのテスト実施ができる
等が挙げられます。距離の制約を排除するだけでなく、例えばセンシティブなトピックを扱う際等、つい人は緊張してしまうものですが、リモートで画面越しでのインタビューであればある程度、緊張感を減らすことも可能です。状況に応じて、遠隔での実施も常に選択肢に入れておきたいですね!
リモートでの実施において、必要な環境
リモートで実施するにあたって、必要な環境を分解すると、以下に分けられると考えています。
- ビデオチャットツール
- スクリプトメモ用ドキュメント
- 議事録用ツール
- プロトタイプツール
- プロトタイプ画面録画ツール
Goodpatchではクライアントの環境、被験者の環境によって、適宜ツールを柔軟に設定した上で実施に臨もうとしています。
これらのツールを駆使しつつ、いかにインタビューやテストを実施していくのか、実際の手順とともに説明していきます。
インタビューの事前準備
まずは、インタビュー実施前の事前準備編です。
スクリプトメモ用ドキュメント
インタビューやユーザビリティテストにはもちろん事前準備としてスクリプトの用意が必要です。※スクリプト設計自体のTipはこちらを参照ください!
弊社の実際のリアルの現場では、ポストイット等で仮説を洗い出し、それをGoogle SpreadsheetやExcelでスクリプトにするのが一般的ですが、リアルで集まることのできない場合は、SlackやMiro、Notionで、仮説の発散をするワークをチームで行うのがオススメです。洗い出した検証したい仮説をスクリプト化し、インタビュアーが手元で確認できるようGoogle SpreadsheetやNotion,Google Docsなどでチームが閲覧出来るよう一覧化しておきましょう。
被験者に課すタスクやインタビュー質問を出来るだけシンプルに
対面の場合、ユーザビリティテストにおいて被験者が躓いた場合など容易にヘルプすることができますが、リモートの場合そうは行きません。検証内容はできるだけシンプルにしましょう(被験者が躓く時点でそれは良いプロトタイプとは言えないのかもしれませんが笑)
また、設問も長く理解しづらいものではなく、シンプルで回答しやすい設計にすることで、スムーズにインタビューを進行できます。
ユーザビリティテストであれば、プロトタイプの用意を
ユーザビリティテストであれば、ProttやInvision,Adobe XDやFigmaでプロトタイプを作成しておきましょう。この際、PC利用におけるユーザビリティテストであれば、後述のビデオチャットツールの画面共有機能を利用します。スマートフォンのユースケースのユーザビリティテストはリアルタイムで画面共有する難易度が上がりますが、対応出来るツールもあるので、それも同時に後述します。
インタビュー・テストの実施
続いて、実際のインタビュー・テストの実施方法です。
実施の際のビデオチャットツール
ビデオチャットツールは、インタビューやテストを実施するために必須なツールです。主に
- 音声での会話
- 表情の観察
の2点を達成する用途で使用します。先程述べたようにツールの選定には自由度を持たせていますが、よく使われているツールはやはりZoomではないでしょうか?
その他にも、Skype for BusinessやWherebyやJitsi 等選択肢となるツールは多いですが、選ぶ際には、録画機能があるか?音質と画質はどうか?画面共有が可能か?を選定基準としています。録画機能があることで後日インタビューに参加していない方とも結果をシェア出来るため、録画機能のあるツールを選定したいところです。
また、別の観点で、Wherebyや、Jitsiなどのツールのメリットは、こちらでURLを発行してしまえば、被験者の方はURLを踏むだけでオンライン会議に参加出来ることです。(Zoomでは、アプリケーションのダウンロードが必要)。被験者がパソコンに不慣れな方を対象とする場合はこの観点でツールを選定することも必要です。
実施中の記録用ツール
上記の事前準備としてのドキュメントと同様に、インタビューやテストを実施している最中の記録も非常に重要です。対面で行う際は、インタビュイーの他に記録/観察係を置くのが一般的ですが、オンラインの場合でも同様に、記録係を置きましょう。ユーザーの声を文字起こしする役割と、分析の際助けとなるよう気づきをメモする二役用意出来ると理想的です。前者の文字起こしの役割は、スクリプト用ドキュメントにそのまま書き込む形がおすすめです。
また、後者の分析の足がかりとなる気づきを拾う役割の方にオススメなのが、MiroやWhimsicalなどのオンラインコラボレーションツールです。なぜなら、インタビュー後に分析する際、対面での実施の場合はホワイトボード等でユーザーの心の声やニーズをまとめ上げていくと思うのですが、それらのツールはまさにホワイトボードの代替として使えるからです。
その他、インタビュー実施のノウハウは以下にまとめられているのでぜひご覧ください!
インタビュー結果の分析
インタビューやテストの結果を分析する際にも、先述のオンラインコラボレーションツールによる分析が有効です。KA法や、価値観サークル など、遠隔でも共通認識が取れるよう積極的にフレームワークを使いつつ、結果を分析しましょう。KAカードのグルーピングや、関係性を示すなど、ホワイトボードで行うと簡単に出来る方法も、MiroやWhimsicalを使用すれば上手にビジュアライズすることが可能です。また、そのまま画像等で書き出すことも出来るので、結果のシェアにも有用です。
プロトタイプ画面の共有、及び録画ツール
ユーザビリティテストの場合は、被験者の手元に利用してもらうプロトタイプを同時に見れるのがベストです。PCだとWeb会議ツールの画面共有をすることで解決しますが、通話にPCを利用している際はスマートフォンではそうはいかないこともあります。その際、頼りになるツールがLookbackです。InvisionとLookback SDKを連携することで、リモートでもスマートフォンの画面を共有することができます。
他の方法では、少し難易度が上がりますが、iPhoneをPCに接続し、Quicktime Playerで画面録画をしながらその画面をビデオチャットツールで共有することでも共有できます。※ただし、iPhone/Macでの実査に限ります。
実施の際に、インタビュアーが気をつけるべきことワンポイントアドバイス
声色の明るさを5倍増しで話しましょう
オンライン通話では、自分の温度感や感情を伝えるためには声で伝えるしか有りません。相手は、声からこちらの姿や態度を想像します。また、電波にのった自分の声は想像以上に無愛想に聞こえてしまいます。相手に信頼してもらい、真意を聞くためにはいつも以上に感情をこめてオーバーに話す必要があります。
声量も3倍増しで話しましょう
オンラインでの会話の場合、途中で「すみません、もう一度お願いします」などの中断が続くと、なんとなく気まずい雰囲気になってきて、後半の重要な部分の聞き直しがしにくくなってきます。そのため、序盤にどれぐらいの声の大きさならしっかり相手に聞こえるのかを掴んでおくと良いと思います。会話のリズムを乱さないためにも、はっきり話すことを心がけたいです。
アイスブレイクをしっかり準備する&間に挟む
上記の通り、安心感の形成は対面より難しいです。そのため、アイスブレイクの準備や設計が重要になります。しかし、ボディランゲージが見えないため、場を和ませるための発言が伝わらない(真面目に捉えられてしまう)という可能性があります。相手の発言のテンションがあがってきたところに合わせてうまくアイスブレイクを入れていくことを意識したいです。
同席者やこちらの状況をきちんと伝える
リモートでのインタビューでは、「こちらはインタビュアーと記録係の二人がいます。PCでメモを取るのでちょっとタイピング音が聞こえてしまうかもしれません。」ということを事前に伝えると良いです。ビデオチャットツールでのやり取りは基本的に一対一だと思われるので、そうでない場合は始めに伝えておきましょう。事前に状況の共有しない場合、例えばインタビュー中にタイピング音やインタビュー以外の人の声が入ったときに、相手は自分の話が誰に聞かれているのか不安になり、話しづらくなってしまうでしょう。また、始めに同席者も名乗っておくことで、同席者からの追加質問もしやすくなります。
話の変遷を丁寧に伝える
インタビューシートやメモといった視覚情報は伝わらないので、特に話の転換は丁寧におこなう必要があります。対面の場合はシートをめくる動作などで相手側も話題が変わることをなんとなく察することができますが、リモートでの実施ではそうはいきません。そのため、「◯◯についてお伺いします。」「先程◯◯とおっしゃっていましたが〜」「続いて〇〇について〜」など、今何について聞いているのかを明確に伝えると良いと思います。
リモート実施における考慮するべきリスクやデメリット
リモートでの実施にはもちろんリスクやデメリットも伴います。そちらも常に頭に入れつつ、行っていきましょう。
セキュリティリスク
オンライン上で実施する以上、どうしても情報が漏洩するリスクが0%とはいい切れません。特にパーソナルな情報を扱う場合は、通話の録画等には十分に気を付けましょう。場合によっては録画しない方がベストな場合もあります。
ソフトウェアの環境を用意することによるリスク
被験者にソフトウェアのインストールが必要な場合は、事前に環境をセットアップしてもらう必要があります。その負荷を被験者に負ってもらうことで、それが失敗するリスクもあります。つながらなくなるなどのリスクを考慮して、緊急連絡先を用意することや、重要度の高い設問を優先的に聞くなどの対処をしましょう。
インターネットの接続とPCのスペックのリスク
ビデオの配信や、オンラインコラボレーションツール等、インターネット接続の観点、PCのCPUの観点で多くの負荷がかかります。インターネットの環境を事前にヒアリングしておくことなどはもちろんですが、場合によっては音声のみに切り替える等柔軟な対応も必要です。また、iPad等のタブレットで動画と音声を流し、オンラインコラボレーションツールはPC等と負荷を分散させることも良いアイデアです(その際、片方のマイクをミュートにしてハウリングを防ぐことも忘れてはいけません)
ボディランゲージが伝わらない欠点
ボディランゲージにおける被験者の感情の動きを察知できないということも留意が必要です。あくまで声と表情を分析したインサイトという制約を頭に入れておきましょう。
さいごに
対面でのインタビューと完全に同じクオリティで実施することは難しいとは思いますが、環境さえ整えばそれに近い形での実施が可能です。状況によってツールや方法を使い分けながら、ユーザーに価値を届けるために、是非リモートでのユーザビリティテストやユーザーインタビューに挑戦してみてください。
Goodpatchはデザインパートナーとして、オンラインでのインタビューやユーザビリティテストも支援していますので、気軽にお問い合わせください!
参考文献
https://xd.adobe.com/ideas/process/user-testing/remote-usability-testing/
https://www.usertesting.com/blog/what-is-remote-usability-testing