「平成」は、世界時価総額ランキングでトップ10のほとんどを日本企業が占めていた時代から、日本企業の50位以内へのランクインが1社のみという時代になり、大きく日本の状況が変わった30年間でした。現在は多くの国内企業が、変革を目指して新規事業創出や既存事業のインキュベーションに取り組んでいます(参考)。

しかし、変革とは当然簡単に起こせるようなものではないのはご存知の通りです。例えば新規事業創出の場合、事業アイディアの立案・ユーザー検証・技術検証と開発・収支計画の検討・マーケティングプランの立案・そして彼方此方に立ちはだかる社内の壁…見えているものだけでも山のような課題をクリアしてゆかなければなりません。

Goodpatchには「デザインストラテジスト」という人材がいます。私自身もデザインストラテジストとして企業の新規事業立ち上げを支援しており、ユーザーサイド(ユーザーが使い続けたくなるための仕組み)とビジネスサイド(お金が流れるための仕組み)の双方を繋ぐ役割を担っています。私は、デザインストラテジストこそ、実は新規事業(サービス)開発において大きな鍵となるのではないかと考えています。この記事では、そんなデザインストラテジストについて「なぜ必要なのか」「いつ・どのように有効なのか」をご紹介します。

事業開発・サービス開発は不確実性の塊

どのような企業においても事業やサービス開発のプランニング段階では不確実性の高いことばかりです。ローンチの社内判断基準や推進体制の整備などがなされていないことも多く、何から手をつけるべきかが曖昧なまま手探りで検討が進められることがほとんどです。不確実性の高いプランニングの段階でこそ、迅速且つ着実に課題の見落としや優先順位の誤りを減らし、確度の高いと思える状態でローンチまで漕ぎ着くことが最優先の目的です。

しかしながら、とにかく考えなければいけないことは山ほどあるので、見落としや誤りはどうしても起こります。

その大きな原因のひとつとして、一人で(または長い間同じチームメンバーで)手探りをしていることが挙げられます。知らず知らずのうちに思い込みが強まっていてフォーカスすべきことにフォーカスできていない状況に陥るためです。例えば、サービスのユーザー受容性の検討が未熟なことに気づかないままビジネスモデルを検討してみたものの、「本当にこのサービス売れるの?」という役員からの疑問を論破できず、改めて密にユーザーテストを実施してみたところ、全く違う方向性が見えてきて1からやり直し…といったケースがよくあります。つまり、プランニングの段階では課題をどのように洗い出して、どのタイミングでどの課題にフォーカスするのか、そしてどのように解決するのかを、あらゆる視点で検討することがとても重要です。また、目に見えている課題に取り組むことで、意外な原因や見えないところに潜んでいた別の課題が見つかることもあります

助っ人、デザインストラテジスト

さて「あらゆる視点で」…と言うのは簡単ですが、実際はあらゆる視点を常に持ち続けるのはとても難しいことです。では、視点を増やすにはどうしたら良いでしょうか。最も有効的な方法はとてもシンプルで「他人の力を借りる」ことです。しかしここでとても重要なのは「どのような人の力を借りるか?」です。

常にあらゆる視点を持ってフラットに現状を俯瞰することに慣れていて、解決策も含めて検討できる人材こそが最適であり、まさにそれがデザインストラテジストという人材です。デザインストラテジストは、事業会社やプロフェッショナルファーム、クリエイティブ関係などの多様なバックグラウンドと先述したマインドセットを持ち、雑然とした状況を整理することを得意としています。

また、課題をフレームワークで整理したり、素早くプロトタイプを作ったりするなど、アウトプットを行いイメージを具現化するという重要な役割も担っています。課題や状況を言葉だけではなくビジュアルなどでも表現し、常に他者と齟齬なくイメージを共有することは、コミュニケーションロスを抑えるために大変重要です。俯瞰し、マインドとツールで状況を整理する、それがデザインストラテジストです。

デザインストラテジストの存在が鍵

実際に、煮詰まったと思われたアイディアに対し、改めて切り口を変えて分析し、変えた方がいい部分と変えない方がいい部分を切り分けて迅速ににピボットを繰り返して結果的に社内説得に成功、事業化推進の予算を確保し実現性が高まった…など、世の中にはサービスや事業プランニングの段階でデザインストラテジストが活躍している事例は多々あります。

以下は事業立ち上げにGoodpatchのUXデザイナーがデザインストラテジストとして参画した事例をお話ししたレポートです。ぜひご覧ください。
ビジネスを推進するUXデザイナーの働き方とは?

冒頭にお伝えした通り、ユーザーサイドとビジネスサイドを繋ぐことがデザインストラテジストの守備範囲ですので、プランニングの段階のみならず、サービスを実際に開発するフェーズやローンチ後のフェーズでも同様に重要な役割を担いますが、今回は特に事業やサービス開発のフェーズにおける重要性について説明させていただきました。

まとめ

もし現在、事業(サービス)開発がうまく進まずに悩まれているのであれば、足りないのはデザインストラテジストという人材かもしれません。Goodpatchには熱いデザインストラテジストがたくさんいます。ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

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