「ノウハウを吸収して自走したい」Jootoリニューアルチームをひとつにした想い
Jootoは株式会社 PR TIMESが提供するタスク・プロジェクト管理ツールです。Goodpatchは2018年7月に行われたJootoの大幅リニューアルにおいて、UX/UIデザインとロゴデザインのパートナーを務めました。
“今” が見える 安心感というコンセプトのもと行われたリニューアルについて、どのように開発が行われていったのか Jooto事業本部長の下田さん、技術責任者の原さん、GoodpatchのPM/UXデザイナー 神、デザイナー のってぃにお話を伺いました。
本記事は2018年10月のインタビュー内容です。
Jootoについて
株式会社PR TIMESが提供するプロジェクト管理ツール。コンセプトの「“今” が見える 安心感」をプレイヤー、マネージャー両方の観点から実現します。タスク管理が初めてでも直感的に理解できる操作性、複数プロジェクトの管理、GoogleカレンダーやSlackなどの外部ツール連携、ガントチャート機能などが特徴。Web、iOS、Androidに対応しています。
実践知としてデザインプロセスを習得したかった
— まずは、Jootoのリニューアルの経緯について教えてください。
下田さん:
Jootoは2013年6月にシンガポールでローンチされたプロジェクト管理ツールです。そのころはまだ私ひとりだったのですが、途中から技術責任者の原が加わり、2017年までシンガポール法人として開発していました。
ローンチ以来成長は続けてきたものの、プロダクトに穴があることはずっと感じていて、一度プロダクトを見直して一新させようと思っていたんです。そのタイミングでPR TIMESへ事業譲渡しました。契約を結んだその日に、代表の山口から「明日Goodpatchさんのところに行こう」と言われ、伺ったことがはじまりですね。そこからすぐにリニューアルプロジェクトがスタートしました。2017年9月のことです。
僕はもともとGoodpatchさんが手がけたプロダクトの実績を知っていて、Goodpatch Blogも読んでいたので、お願いできることになった時は「いいチャンスがきた!」と思いました。Goodpatchさんに期待していたことは3つです。
1.UI/UXデザインを習得して自走したい
漠然とUI/UXデザインに課題を感じていたので、書籍や記事を読んで、さまざまなフレームワークやデザイン手法があることは知っていました。でも、インプットを元にいざJootoのUI/UXデザインに取り組もうとしても、どの手法を使ってどう実行すればいいのか?というところまでは分からなかったんです。なので、Goodpatchさんにデザインプロセスを共有してもらえて、一緒に働きながら学べることはとても大きなチャンスだと感じていました。
2.SaaSビジネスのノウハウ
GoodpatchさんがProttなどSaaSビジネスも手がけている点は、我々と共通する部分です。なので、SaaSビジネスで得たノウハウを、Jootoにも活かしてもらえたらいいなという思いもありました。
3.発信力
僕の周りのスタートアップ界隈でもGoodpatchさんは発信力で注目されていたので、プロジェクトが終わっても、発信を通して多くの方にJootoを知ってもらえる機会にしたいと思っていました。プロダクトのリニューアルから取り組みの発信まで、ひと通り全てに期待していましたね。
神:
お話を伺った時、すぐにJootoに親近感を持ちました。プロジェクト管理ツールですから、一番のユーザーになり得るのはプロジェクトマネージャー(以下PM)です。PMである自分自身の体験や観点が活かせるんじゃないかな、と思いました。
「自走したい」という想いがチームをひとつにした
下田さん:
プロジェクトの初期は、週に1回うちのオフィスに来てもらって、Goodpatchさんからアウトプットを共有していただくスタイルでした。でも、我々はアウトプットに至るまでのプロセスをもっと知りたかったので、それを正直にお伝えしました。
全てGoodpatchさんにやってもらうのではなく、いずれは自分たちだけでも実践できるようになりたかったからです。それからは、かなり密にコミュニケーションを取りながら一緒にワークするようにプロジェクトの進め方が変わりました。
付箋を使ってアイデア出しをしたり、可視化するワークが多かったので、大きなホワイトボードがあるGoodpatchさんのオフィスへは頻繁に行っていました。僕たちはGoodpatchさんにUI/UXデザインのプロフェッショナルとしてのリスペクトがあったので、原と2人で話していても「ここは分からないから、Goodpatchさんに聞くしかない」とすごく頼らせてもらいましたね。
神:
Goodpatchの広めの会議室をプロジェクトルームにして、いつでもチームで使えるようにしました。それからはますますチームのコミュニケーションが加速して「今日これからいいですか?」ってすぐに会ったり、対面で話すことが多かったですね。同じプロセスを経ていても、Goodpatchのメンバーだけで進めて結果をおふたりに共有するのと、チーム全員で一緒に取り組むのではこんなに一体感が違うんだなと思いました。
プロジェクトの最初に実施したエグゼクティブインタビューでも、チームがひとつになるきっかけが多かったかなと思います。下田さんと原さんはPR TIMESさんに事業譲渡されるまで、ずっとシンガポールにいらっしゃったので、ユーザーの声を聞けていないという課題をお持ちでした。それなら一緒にやろうということで、一緒にユーザーさんに会いに行って、初めてユーザーインタビューを実施したんですよね。
下田さん:
ユーザーインタビューはJootoの有料ユーザーに連絡をして、3〜4社に伺いました。しっかりインタビューという形式でユーザーに話を聞いたのは初めてでしたね。「こういう使い方もあるんだ」「こんな悩みがあるんだ」とユーザーの声を目の当たりにして驚きました。
のってぃ:
ユーザーインタビューで集まった声をもとに、プロダクトの価値を定義して、UIデザインに落としていきました。今回のリニューアルは既存ユーザー向けでもあったので、そこまで従来のデザインを崩さず、使いやすさ、分かりやすさを向上するというバランスの取り方にこだわりました。
僕はアプリのデザインを担当したのですが、アプリの利用シーンの調査を行った結果、アプリではWebのコア機能である「タスクを見る」に絞り、極力ユーザーの負担を減らす方向でデザインしました。アニメーションをつけたプロトタイプを複数パターン作り、そこからユーザーテストまでに4パターンを用意しましたね。
神:
具体的には「カンバン形式/リスト形式」、「情報が多い/少ない」の組み合わせが異なる4パターンのプロトタイプをユーザーに触ってもらいました。ユーザーテストでのユーザーの反応は、ポジティブ・ネガティブ・興味なしの3つで分類し、色ごとに分類しました。すると、カンバン形式で情報が少ないUIで全員の意見が合致していました。通常ユーザーテストでは意見が分かれることが多いのですが、見事にみなさん僕たちの仮説と同じ意見だったんです。
下田さん:
仮説が今までにないくらい正しかったので、UIデザイン策定までのスピードがとても速かったと思います。
利用シーンに対応したデザインを追求
のってぃ:
当初、Jootoのアプリはユーザーが使いこなせないほど機能過多でした。そのため、機能を削ることが必要だったんです。チームで機能を削る議論をするためにも、まず「画面数の多さをユーザーの立場になって体験してもらおう」と考え、全画面プロトタイプを作りました。リストで見てもらうだけでは機能の多さは体験できないので、プロトタイプとしてアウトプットすることにこだわりました。全部で100画面以上あったのですが、開発が控えていたこともあり、短期間でのプロトタイプ作成が求められました。そこで、エラー時やコンテンツがない状態の画面も含め、1週間ぐらいかけて集中して全画面を作りました。
— プロジェクトを通して、苦労されたポイントはありますか。
のってぃ:
Webとアプリは、ユーザーの利用シーンが違うという点ですね。Jootoでは、具体的にはこのような違いがありました。
- Web…プロジェクトの進行状況を俯瞰して見る行動に特化している
- アプリ…通知を見るなど、個人がタスク確認する行動に特化している
全体のタスクを確認できるWeb、個人のタスクを確認できるアプリの整合性、バランス調整には苦労しました。
下田さん:
Webとアプリでは、操作性も違うんですよね。PCだとクリックしかないけど、スマートフォンだとタップ、スワイプ、3D touchなど色々な操作ができるじゃないですか。その違いがキャッチアップできるまではちょっと大変でした。
原さん:
我々にはアプリの知見がまったくなかったので、開発もマーケティングも全部が手探りだったんです。でもWebの機能をそのままアプリに移行すると破綻してしまうので、どうバランスを取ろうか?ということをのってぃさんとは何度も話しましたね。「アプリだからこそ、こうした方がいいんじゃないか」って議論ができたので、よかったと思います。
のってぃ:
クライアントさんとここまで密にコミュニケーションできたことが新鮮でしたし、うれしかったです。チームで認識を揃えるためにアプリの価値の定義を話し合ったり、チームで進めていったという感覚がすごくあります。
下田さん:
iOSアプリはもうリリースしているのですが、以前は週1くらいで来ていたユーザーからのフィードバックがなくなって、かなりいい評価をいただけています。
身についたのは、長期的なキャリアにも活用できる知識
— では続いて、プロジェクトのよかったことを教えてください。
下田さん:
まず、UI/UXデザインを実践知レベルまで習得できたことです。例えば、またJootoをリニューアルするときや、今後自分がスタートアップを立ち上げる時などに、今回習得したプロセスが役に立つと思います。UI/UXデザインのフレームワークって、ゼロイチのフェーズに活用できるものが多いと思うので、今後の自分の長いキャリアを考えてみても活用できそうです。
Goodpatchさんはチームに必要なことであれば、専門領域外でも柔軟に助けてくれました。分析のお手伝いをしてもらったり、Jootoロゴのステッカーを作ったり。チームとして同じ空間を過ごす中で出てきた「やったほうがいいこと」を積極的にお手伝いしてくれたことにも助けられましたね。
あと、リニューアルのプレスリリースにご協力いただいたこともうれしかったです。Goodpatchさんのオフィスの近くで、チームメンバーのアー写を撮ったり(笑)。あのプレスリリース、とても評判が良かったんですよ。
神:
クライアントのプレスリリースで、僕たちがこんなに大々的に掲載されることってあまりないと思うんです。僕たちの写真とコメントも載せていただいて「本当にいいのかな?」って気持ちもありつつ、すごく貴重な経験をさせてもらったと思います。
— 最後に、これからのJootoの展望について教えてください!
原さん:
開発体制なども含めて、まだまだ足りないところもたくさんあるので、今度はGoodpatchさんに教えていただいたことを自分たちでも実践しながら、改善を続けていきたいです。
下田さん:
リニューアルの目的だった「バケツの穴を埋める」という目的は達成できたと思います。今後は、どこかのタイミングでスプリントをやりたいねと話しているのですが、その時に今回習得したフレームワークが活用してJootoのゴールである「タスク管理をしなくていい世界」を実現するために、プロダクトをもっと磨いていきたいです。
今回は、Jootoのリニューアルについて事例に基づいた取り組みをご紹介しました。
Goodpatchでは、UI/UXデザインを用いて企業のビジネス課題を解決するお手伝いをしています。下記のご提供サービス一覧の内容のほか、デザインや既存・新規事業に関してのお困りのことがあれば個別にご相談をお受けします。「バケツの穴を埋めたい」とお考えのご担当者の方は、ぜひお問い合わせください!お待ちしています。
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