今回ご紹介するのは、UXデザインリードの神 一樹です。
2017年4月にGoodpatchに入社し、丸4年を迎えた彼は入社当時を「とにかく自信がなかった」と振り返ります。そんな彼は現在、約30名のUXデザイナー組織においてマネジメントにも挑戦しています。

彼が4年間でどのような変化をしていったのか、お話を聞きました。

7年半勤めた制作会社から、次も決めずに飛び出した

デザイナーになりたいと考えたのは高校生の頃です。もともとインターネットが好きで、Webサイト巡りが原体験にあります。はじめに気になったのはWebサイトの中でもビジュアルデザインの部分でした。でも、僕自身は絵を描くことは苦手だしな、と考えていた時に、絵を描かなくても入れるデザイン学科があるようだと千葉工業大学 工学部 デザイン科学科の存在を知りました。

大学では情報デザインや人と物との関係について学び、新卒でとある制作会社に入社しました。僕のファーストキャリアはUIデザイナーで、ガラケーのプリセットコンテンツを担当していました。

3年目からはディレクターも兼任するようになったのですが、元々意思決定することもコミュニケーションも苦手だったので、戦々恐々としながらのスタートでした。でも、一緒に働いた人から褒められたりする中で少しずつ自信がつき、手を動かすこともディレクションも両方やり続けながら、同じ会社で7年働きました。

その頃、Twitterや自身のWebサイトでデザイナーが情報発信をすることが流行り始めていて、ふと「自分はこのままでいいんだろうか」という気持ちが芽生えたんです。
活発に発信している人には「このサービスのデザインしました」という実績がありますが、自分にはそういう仲間がいないことに気づきました。当時の自分は大手のメーカーと働くことが多く、公開できる実績はおろかデザイナーの友人もいない。もしかすると、井の中の蛙になっているのではないか。そう感じました。

それからは、次の行き先も決めずに「あと半年で退職します」と宣言をして、本当に半年きっかりで退職をしました。実際に転職活動を始めたのは、2017年1月からのことです。

デザイナーとしての自分をアップデートしたい

新卒から7年、ずっと受託の会社にいたので、2社目は事業会社に行くつもりでした。何か一つのことに集中できる環境に憧れていたんです。
Goodpatchは特殊な環境だと思うのですが、一般的には受託だと色々なしがらみがあり「いいからこれ作ってくださいよ」という文化が根強いです。僕はその中でもR&D(研究開発)など、面白いこともやらせてもらっていた方ではあるのですが、様々なしがらみから仕方なく何かを作る場面も少なからずあって、それに疲れてしまっていたんですよね。

同時に、デザイナーの仲間がもっと欲しい気持ちも大きかったです。デザイナーと気軽に話せたり、意見交換ができる環境で自分の考えをアップデートしたいと思った時に、実績のあるデザイナーが数多く在籍しているGoodpatchは魅力的な環境でした。

でも、入社した2017年当時はまだ組織崩壊を抜け切っていない頃で、周囲からも「組織の状態があまり良くないらしい」という話を聞いていました。僕自身は組織崩壊についてはそこまで気にしておらず、「崩壊していたからといって何か気にするようなことでもない。自分が仕事ですべきことは変わりない」と考えていましたし、それよりも自分の考えをアップデートすること、仲間を作ることを目的に、入社を決めました。

組織崩壊中のログを読んで感じた、デザイナーの責務

GoodpatchにはPM/UXデザイナーとして入社しました。前職でUIデザイナーとディレクターを兼務してきましたが、自分は手を動かしてUIデザインを作ることはそこまで得意ではないと感じていたからです。作ることに関してはもっと適任がいるので、自分はUX寄りの方が向いているのだろうと。また、前職でクライアントとのフロントに立つPMの仕事も行っていたというのも理由の一つです。

入社してまず、社内のQiita(2018年ごろまで全社で導入していたドキュメントツール)を全部読みました。自分が入社する前に組織崩壊していたことは聞いていたので、これから一緒に働く人が過去にどんな経験をしてきたのか知りたいと思ったんです。

それで全部の記事に目を通していくと、当時荒れていたドキュメントには明らかに目を引くタイトルがつけられていて、記事を開いてみると案の定すごい数のやりとりが残っているんですね。「この伝え方は良くない」とか「今それは関係ないだろ」といったコメントの嵐(笑)。

きっとそれぞれに「こうしたらもっと良くなるのに」という気持ちがあったと思うんですが、意図が伝わらずすれ違っていた状態のように感じられました。でも、僕はデザインとは意図や本質を相手に伝えることだし、自身の主張をするだけではなく、ちゃんと相手に伝えるための行動をとって初めてデザイナーと名乗れるんだろうな、と思ったんです。じゃあ、どうすれば「ちゃんと伝えていく」ことができるんだろう?と、今までになかった視点が加わったことは覚えています。

でも、入社当時は自分に自信が持てなかったので、何か行動に起こせていたわけではないんです。周囲の人に働きかけていくことができるようになったのはもう少しあとの話ですね。

「前に出てもいいのかもしれない」自信が持てたきっかけ

入社直後からなぜか安定感ある人に見られがちで、「もう1年くらいGoodpatchで働いているよね?」という声をかけられることが多かったんですが、中身は全然そんなことなくて。内心「Goodpatch流って何だ?」「Goodpatchのやり方にはめ込まなきゃ」とずっと焦っていました

「ユーザー」と「プロダクト」から、「市場」まで視野が広がったJootoのフルリニューアル

入社して一番最初に担当したプロジェクトはうまくいかなくて、なおのことそう思っていました。ターニングポイントになったのはJootoのプロジェクトですね。

「ノウハウを吸収して自走したい」Jootoリニューアルチームをひとつにした想い

ユーザー調査から求められてることを引き出し、そこから機能の優先順位を考えていくということをやりました。今見返すと、なにか特別なことをしたわけではなく、やるべきことや自分なりに意味のあると思ったことを地道に一歩ずつ取り組んでいったのですが、クライアントや社内からも評価をしてもらえて。ここで「普通」レベルにはなれたのかなと思います。それで「決められたプロセスをなぞるよりも、自分でプロセスは組み替えていいんだ」というところに行き着きました。

Jootoのプロジェクトでは、4パターンのプロトタイプを使ってユーザーテストを実施。通常ユーザーテストでは意見が分かれやすいが、仮説と意見が合致した。

加えて、視座が広がったのもこの頃のことです。ずっと「ユーザー」と「プロダクト」だけに向き合うスタイルだったところから、そのプロダクトが市場においてどんなポジショニングで、これからどこに行くべきなのかという「市場」にまで視野が広がりました。

初めてプロジェクトで成功体験を得たことで自分に自信が持てるようになりました。入社してからずっと「このやり方でいいのかな」と自信がなかったところから、「もうちょっと前に出てもいいのかもしれないな」と思えるくらいにはなっていたので、誰かにアドバイスをしてみたり、後輩を育成したり、自分の考えを抽象化して伝えていくことをもっとしていくべきなんだろうなと、意識や行動を少しずつ変え始めました。それからは、自分がプロジェクトを担当する中で大事なことを抽象化する、メタ化することは強く意識するようになりましたね。この頃から、人生で初めて社外のイベントで登壇もするようになりました。

神が登壇したサイバーエージェントさんとの合同勉強会:
「苦難を乗り越えるチームとプロセス」

その後も様々なプロジェクトに関わりましたが、思い入れが深いのはワンキャリアクラウドです。僕らだけがデザインを語るのではなく、クライアントが語ってくれることがデザインの力の証明になると考えているので、デザイナーとしてどれだけクライアントに影響を与えられるかはいつも意識しています。

ワンキャリアクラウドのデザインプロセスはこちら

マネジメントを始めてから、自身に「組織」の観点が加わった

2020年7月からUXデザイナー組織のマネジメントにも挑戦しています。
初めはマネージャーになるつもりはありませんでした。もっと前から打診はもらっていたのですが、単純にややこしいことが増えそうで、やりたくないなと逃げ続けていました。でも体制変更などがあって、30名近くいるUXデザイナーグループのマネージャーが2人しかいなくなってしまって。さすがにこの状況はスルーできないし、以前から声はかけていただいていたのでやってみようと決意しました。

実際にマネージャーを始めてからはピープルマネジメントだけでなくプロジェクトのクオリティマネジメントや採用にも関わるようになったので、頭の切り替えに慣れるまでが大変でした。ただ、想像していたよりも苦しくなかった。むしろ楽しんでできています。メンバーに恵まれているからかもしれませんね。

さらに組織に対する気づきが増えました。今まで自分たちがプロジェクトだけを見ていたあいだに、マネージャーは様々な情報を集めて、多角的に意思決定をしていたんだなと気づき、尊敬の念を抱きましたね。あとは「会社や事業がこんな風になっていくから、あの人にこの部分を任せよう」と、組織の観点で判断できるようになったことは面白いです。それまでは本人の話や状況を外から見て判断することしかできなかったのですが、インプットが増えたことで、違った観点で考えられるようになりました。

意識的に変えたのは、自分のことをオープンにすることです。これまでは自分のことをあまり話さないタイプでしたが、マネジメントされる側からすると、何を考えているのか分からない人にあれこれ言われたくないだろうなと思って。なのでできる範囲で発信を増やすように変わりました。とは言いつつ今でも自分のことを話すのは苦手なので社内のSlackにtimesチャンネルをつくり、カジュアルにTwitterでつぶやくようなレベルで地道にやっています(笑)。

今までの僕は、営業や開発、マネジメントなど、色々なことから逃げてきました。ですがGoodpatchは自ら領域を超えることが求められる環境です。だから僕も、逃げるのはもうやめました。今振り返っても、2017年にGoodpatchに入ることを決めて後悔したことは一度もありません。

僕はGoodpatchが社会に還元できる価値のひとつがユーザーの手に渡る「ものを作りきること」だと考えています。2012年当時にGunosyのUIリニューアルが話題を呼んだのも、最後まで作りきったからこそだと思うんです。

今、この会社には戦略やブランドなど多岐にわたるケイパビリティがありますし、実際にご相談をいただくのも上流から入るプロジェクトが増えています。今後も経営戦略、事業戦略からクライアントを支援していく際に、コンサルティングファームとも異なる独自性になるのが、ものを作りきることができる点だと思います。だからこそ、そのアイデンティティは大事にし続けたいです。

そのためにもUXデザイナーの専門領域として、例えば行動心理学や人間の行動特性について実践しながら知見を貯めていきたいです。もっとUXデザインの重要性を裏付けていきたいし、証明していきたいと思っています。


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