皆さんはデザインと聞くと何を思い浮かべますか?洗練されたアーキテクトでしょうか?それとも駅地下で目にするポスターでしょうか?

デザインとアートの違いは専門家の間でも議論され続けているトピックの1つです。違いはありつつも、両者は切っても切り離せない関係にあるのです。


グッドパッチでは、わかりやすくアートとデザインの違いを定義するために、デザインを「課題解決するための手法」と定義しています。デザインプロセスを用いて、ユーザー視点でユーザーが心地よく使えるプロダクトを世の中にリリースし、ビジネスとしても成功させることが、グッドパッチのミッションです。

この記事ではビジネスとデザインの関係を過去の記事を参考にしながら紐解いていきたいと思います。

モノを作るだけでは売れない時代

アートとデザインを明確に分けるものとして、取り入れるべきものがデザイン思考です。デザイン思考は21世紀において、プロダクトデザインや組織問題の解決において最も重要なアイデアとして重宝されてきました。

モノが溢れたこの時代に、すでに機能やスペックの競争でプロダクトが売れることはなくなってきました。ユーザーのインサイトを正確に取り込んだプロダクトを作るためには、デザイン思考が欠かせません。

世界各地でイノベーションを牽引するデザインコンサルティングファームIDEOの創設者であるデビット・ケリーや、デザイン思考が広まるきっかけとなった『デザイン思考が世界を変える』の著者ティム・ブラウンは、自身のTED Talksでユーザー視点でモノを作る重要性について語られています。

また、本屋へ行けばデザインの定義や思考法、プロセスについて学べる本が数多くあります。その中でも特におすすめなのが原研哉氏による『デザインのデザイン』です。デザインの歴史から「デザインそのものの定義」を全編を通じて解説しています。昔からデザインというものの本質は変わっていないことが、この本を読むことで少し理解できます。

デザイン思考を取り入れたデザインプロセス

デザイン思考の重要性が理解できたところで、次はどのようにデザイン思考をビジネス視点へ取り入れ、売れるものを作るかを考えなくてはいけません。冒頭でも述べたように、デザイン思考を取り入れながらプロダクトデザインをするには、デザインプロセスを応用する必要があります。デザインプロセスとは、プロダクトのコンセプト策定からユーザーの手へ届くまでのプロセスを指します。会社によって、デザインプロセスの内容は多少異なります。

グッドパッチでは、リフレーミング・要件定義・アイディエーション・プロトタイピング・テスト・グロースと大きく6つのフェーズに分けてデザインをしています。

ユーザー中心なプロダクトを作るためには、まずユーザーがどのようなインサイトを持っているのかを抽出しなくてはなりません。ユーザーインタビューやユーザーテストを行い、実際にプロダクトを使うであろうユーザーと接触することで、プロダクトデザインのアイデアを得ます。

プロセスの中で何度も行われるプロトタイピングは、どのようなプロセスにおいても欠かせません。プロトタイピングはプロダクトの質を向上するだけでなく、チームのコミュニケーションを円滑にもします。

デザインプロセスを経てできたプロダクトをマーケットへリリースした後は、グロースが必要になります。より多くのユーザーがプロダクトを使い、結果ビジネスの成長にも貢献するためには、マーケティングの視点を持ちつつ、課題を再定義してデザインプロセスを反復することが大切になります。

クライアントの要望によっては、デザインプロセスを短縮化し、素早くアイデアを検証するために「デザインスプリント」を行う場合もあります。元々はGoogle Venturesがスタートアップ支援のために始めたプログラムでした。グッドパッチでもスタートアップに限らず、さまざまな企業を対象に取り入れているフレームワークです。

デザインプロセスと同様、デザイン思考とも明確な違いがあります。ベルリン発のAJ&SmartのCEOであるジョナサン・コートニーがその違いをわかりやすく記事にしています。結論からお伝えすると、デザイン思考は根本原理にすぎず、その思想を体系的に実行へと落とし込む方法がデザインスプリントです。

偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる

デザイン思考を取り入れ、デザインプロセスに沿ってプロダクトデザインを行うことは重要です。しかし、良いプロダクトは1人ではできません。グッドパッチでも、「偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる」という思想を大事に、日々クライアントとパートナーシップを組み、一緒にデザインをしています。

良いチームは、どれだけプロジェクト進行を任されるプロジェクトマネージャーがコミュニケーションに長けているかということにかかっています。クライアントとチームのメンバー全員と円滑なコミュニケーションを取りながら、プロダクトにも視点を向け、ユーザーやクライアントの課題を解決することが重要です。以下の記事では、プロジェクトマネージャーとしてより良いチームをデザインするノウハウを共有しています。

デザインとビジネス両方を理解し、チームとプロダクト両方のデザインを行える人はなかなかいません。UIデザイン・UXデザイン・チームデザイン・ビジネスデザイン・マーケティングなどの基礎知識は、本から知識を得ながら試してみるのがおすすめです。

成功企業は最初からデザインを大事にする

デザインがものづくりにおいて重要だということは繰り返し主張してきましたが、その根拠はどこにあるのでしょうか?世界各国では創業者の中にデザイナーがいる成功企業が数多くあります。米国のAirbnbInstagram、中国のAlibabaXiaomiは創業者にデザイナーがいたからこそ成功した企業のいくつかです。いかにプロダクトのリリース時点からユーザー目線を取り入れて本質的な課題を解決し、使い心地の良いプロダクトを提供することが重要かがわかります。

2017年10月3日に開催された「スタートアップにCDOが必要な理由 CDO Night #1」では、実際にCDO(Chief Design Officer)として働く現場のトップが公演で、ビジネスにおけるデザインの重要性について話しています。

また、2011年以降、多くの大手企業においてデザインがこれまで以上に重要視される動きが出てきていることがわかります。Design in Tech Report 2016 from John Maeda

中でも注目したいのは、世界的コンサルティングファームであるアクセンチュアがFjordを、Capital OneがAdaptive Pathを買収したことです。「ビジネスパーソンがもつ戦略的思考」と「デザイナーがもつデザイン思考」を掛け合わせ、ビジネスとユーザーの課題両方を解決することが重要となっています。

実際にデザインを変更したことで、ビジネス成果を向上した製品は数多くあります。例えば、meiji THE Chocolateはパッケージデザインをユーザー視点でリデザインし、リニューアル時の目標であった数値の2倍の売上を達成しました。

ビジネスとデザインは本来重なり合うもの

いかがでしたでしょうか?デザインの定義はさまざまですが、ビジネス成果を残さなければ、せっかく時間をかけて作ったデザインも「表層的な装飾」で終わってしまいます。ビジネス視点とユーザー視点両方をかけあわせることは容易ではありませんが、両者をかけ合わせてこそ、売れるものを作ることができます。

グッドパッチにもビジネスのバックグラウンドをベースとして、デザインの道を歩み始めた人は多くいます。日本ではまだあまり馴染みのない「デザインストラテジスト」という職種は、グッドパッチにおいては「ビジネス・デザイン・テクノロジーの領域を相互横断しながら、言語変換ができる人」と定義しています。

また、一般の大学を卒業した後にデザインの道を歩み始める人も多数います。デザイン思考というものに触れたことのない人は、はじめてその思想を耳にするときに衝撃を受ける人も多いようです。しかし、デザインのバックグラウンドを持たないことで、その後活きる別領域の知識が強みとなり、現場で活躍している人も多いです。

 

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