ビジネスデザインとは?重要性やプロセス、成功事例をわかりやすく解説
ビジネスデザインとは、企業戦略とサービス/プロダクトを結びつけ、新たな価値創造を目指す手法のことです。ユーザーインサイトに重きを置いた手法で、特に新規事業開発でよく活用されています。
DX化に伴う時代の変化や消費者ニーズの変化によって重要性が増しているビジネスデザインですが
「ビジネスデザインはなぜ必要なの?」
「ビジネスデザインを進めるにはどうすればいいの?」
と悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、2011年の創業以来デザインファームのパイオニアとして多くの企業にデザイン支援をしてきたグッドパッチが、ビジネスデザインの重要性やプロセスを解説します。ビジネスデザインを取り入れた成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
監修者:株式会社グッドパッチ 大本理絵
目次
ビジネスデザインとは?
ビジネスデザインとは、企業戦略とサービス/プロダクトを結びつけ、事業の強化を目指す手法のことです。ユーザーインサイトの追求やプロトタイピング、Whyの言語化といった体系的なプロセスを通じ、変化の激しい環境下で新しい価値を創出します。
近年では、急速な技術の発展や消費者ニーズの変化に伴い、単純に「モノを売る」だけで業績を伸ばすのが難しくなってきました。新しい時代に対応するためにも、企業にはビジネスモデルの変革や新たな価値創造への取り組みが求められます。
このような段階で重視されるのが「ビジネスデザイン」で、特に新規事業開発で重要な役割を果たしています。実際にグッドパッチには、ビジネスデザインを担う「デザインストラテジスト」と呼ばれる職種があり、時代の変化によって新たな価値創造を必要とする企業の新規事業プロジェクトに参画することが増えてきました。
経営にデザインのアプローチを取り入れる手法は、ここ10年で急速に発展しています。今後も不確実性の高い新規事業開発において、ビジネスデザインは重要な鍵を握るでしょう。
ビジネスデザインとデザイン思考の違い
ビジネスデザインは企業戦略とサービス/プロダクトを結び付け、ユーザーインサイトを重視しながら新しい価値を創造する手法です。
一方デザイン思考はデザインのプロセスをモデル化し、ビジネス上の課題解決を図る考え方を指します。デザイナーはもちろん、ビジネス人材全員に関わる思考法で、プロダクト開発やプロジェクト進行など様々な場面で活用できるのが特徴です。
ビジネスデザインとデザイン思考は、どちらもユーザー中心のアプローチを共有しますが、適用範囲が異なると覚えておきましょう。
【関連記事】デザイン思考とは?5つのプロセスや役立つフレームワークも紹介
ビジネスデザインとサービスデザインの違い
サービスデザインとは、プロダクトだけでなくプロダクトの提供プロセスやサービス提供側の価値など、プロダクトに関連するすべての体験の品質向上を目指す手法です。
ビジネスデザインではロジックの積み上げが有効な事業視点や定量的な観点で事業アイデアを評価していくのに対し、サービスデザインでは主に顧客視点や定性的な視点で事業アイデアを創造していきます。
ほかにもビジネスデザインとサービスデザインは上図のように視点が異なり、両者を整合させながら新規事業開発に取り組むことが大切です。
【関連記事】Goodpatchが実践するサービスデザインとは?
ビジネスデザインの重要性
ビジネスデザインは、DXに代表される時代の変化やユーザーの思考/行動の変化に伴い重要性が増してきています。
特に現代は「VUCAの時代」と呼ばれるほど物事の不確実性が高く、ビジネスを取り巻く環境も大きく変化しています。
将来の予測が困難な時代において、企業が変化に適応し新規事業を作り出すため、またそのような状況下で新規事業の意思決定を行っていくためには、ビジネスデザインが非常に重要です。
ビジネスデザインのプロセスを使えば新規事業を定量的、論理的な観点で具現化することができ、投資判断に役立てることができます。
同様に、技術の発展によって消費者の思考や行動も変化を見せています。消費の傾向は「モノからコト」へと変化し、従来のビジネスモデルやフレームワークに当てはめるだけでは顧客に選び続けてもらうことが難しくなってきました。
顧客に選ばれる新規事業を生み出していくためには、どのような課題を持つ顧客に、どのような価値を提供するのか、そしてなぜ自社がその取り組みを行うのかを多角的に検討していく必要があります。
顧客の本質的なニーズを理解したプロダクト・サービス開発を目指すためにも、ユーザーインサイトを重視するビジネスデザインに取り組むことが重要です。
※VUCA(ブーカ):「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧さ)」の頭文字を取ったもので、社会やビジネス環境の複雑性が増大し、予測困難で複雑となった現代の特性を指す。 |
ビジネスデザインで重要なプロセス
グッドパッチでは、大きく5つのプロセスに分けてビジネスをデザインしています。
- リサーチとインサイトの追求
- コンセプト設計
- ビジネス設計
- サービス設計~開発
- マーケット検証
ここではビジネスデザインで重要なプロセスについて詳しく見ていきましょう。
事業設計〜リサーチ
ビジネスデザインの初期段階では、ユーザーインタビューやユーザーテストなどのリサーチを通じ、プロジェクトの本質的な課題を定めていきます。
実際にプロダクトを使用するユーザーを観察し、仮説と検証を繰り返すことで、ユーザーのインサイトを探ります。
この段階では「ユーザーインサイトの追求」に重きを置くのが特徴です。最後にリサーチで見つけたさまざまなユーザーインサイトから、プロジェクトで取り組むべきインサイトを定義します。
新規事業がユーザー中心の価値を創造し、持続的に成長するためにも、まずは適切なユーザーインサイトを導き出す必要があります。
【関連記事】【保存版】UXリサーチ完全ガイド|成功のポイントと手順を徹底解説
コンセプト設計
ユーザーインサイトを定義したら、アイデアを生み出す、またはアイデアを形成する過程を指すアイディエーションを実施します。
アイディエーションによって、前段階で決めたユーザーインサイトに対する理想と現状のギャップを埋める解決策を定義し、設計と骨格を構築します。またプロトタイプの作成を通じてプロダクトのコンセプトを提示し、以降のプロセスや議論における基盤を形成するのもこの段階です。
コンセプト設計では「Whyの言語化」に注力し「ユーザーの心を動かす設計」に取り組みます。
【関連記事】深ぼりすべきコンセプトをどう絞り込む?|定量コンセプトテストの進め方
ビジネス設計
ビジネス設計では、市場性・戦略性・収益性などの観点から実際に成立するビジネス戦略を練っていきます。
対象となる市場の競合環境や、各プレイヤーの戦略の違い、ビジネスモデルの優位性など、事業アイデアの実現に向けて、論理的、定量的な観点で検証していきます。また、サービスブループリントによって提供までのプロセスやユーザーの動きを可視化することで、プロダクト/サービスの運用の実現性を探ります。
ビジネス設計は事業リサーチ・コンセプト設計を踏まえ、ユーザーに価値提供をし、事業として持続的に利益を創出できる状態へと導くプロセスです。
【関連記事】サービスリニューアルする際、チームでユーザー体験を向上させるためのサービスブループリント
サービス設計〜開発
サービスの具体的な設計や開発を通じ、デザインしたものをユーザーが使用できるプロダクトへと変えていきます。この段階ではスプリントを繰り返すことで様々な機能を付け加え、MLP(Minimum Lovable Product)を目指します。
MLPとは「ファンになってくれるユーザーが存在するのか」を検証するための最小限のプロダクトです。ユーザーが愛着を持ち、選ばれ続けるプロダクト/サービスにするためにも、MLPの視点が重要になります。
MLPに辿り着くには、何度もスプリントを反復することが有効です。
【関連記事】ユーザーのハートを掴むMLP(Minimum Lovable Product)を生むには?
マーケット検証
マーケット検証ではプロダクトの公開準備を行い、実際にマーケットへの公開を行います。ビジネスデザインとより強く紐づけるため、マーケット検証から得たフィードバックをもとにプロダクトの開発や改善を進める段階です。
あらゆる観点から入念に検討したプロダクトでも、検証するとユーザーのニーズに沿っていないということは少なくありません。実際のユーザーの反応を確認し、サービスやプロダクトを継続的に改善していくことが大切です。
グッドパッチのビジネスデザインアプローチ
グッドパッチでは独自のビジネスデザインキャンバスを活用し、顧客セグメント・顧客課題・収益モデル・KPIといった要素を包括的に分析・設計しています。
ビジネスデザインキャンバスを活用したアプローチによって、ビジネス全体を俯瞰しながら各要素の整合性と実現可能性を高めることが可能です。
ビジネスデザインキャンバスを活用したレビュー
ビジネスデザインキャンバスとは、ビジネスモデルを構成する主要な要素を1枚のシートにまとめたフレームワークツールです。グッドパッチでは企業が検討されている「アイデア」をはじめ「市場性」「戦略性」「収益性」という3つの評価軸でビジネスデザインキャンバスを用意しています。
ビジネスデザインキャンバスを使えば、ビジネスの全体像を可視化し、各要素間の関係性や整合性を効果的にレビューできます。フレームワークに沿って考えを整理できるので、現状のビジネスモデルの優位性や弱点を把握しやすくなるでしょう。
またワークショップ形式での利用も可能で、チーム内でのコミュニケーション促進やビジネスモデルの共通理解を深めるのにも役立ちます。
ビジネスデザインレビューの3ステップ
グッドパッチのビジネスデザインレビューは、以下の3ステップで構成されています。
- 全体の整合性確認:ビジネスモデルの各要素が相互に矛盾なく機能しているかを確認
- 各要素の具体性確認:個々の要素が十分に具体的で実行可能であるかを検証
- 検証計画の確認:ビジネスモデルの仮説を検証するための計画が適切であるかを確認
事業成立に欠かせない要素を過不足なくレビューするので、検討フェーズからサービスデザインフェーズへの移行時に重宝します。新規事業開発の知見が浅い企業や要素検討の過不足に悩んでいる企業は、ぜひ以下からビジネスデザインレビューの資料をダウンロードしてみてください。
ビジネスデザインを取り入れたグッドパッチの成功事例
ここでは、ビジネスデザインを取り入れたグッドパッチの成功事例を3つ紹介します。
- SUNTORY+アプリ開発(サントリー食品インターナショナル)
- ストックマーク ビジョンプロトタイプの作成(ストックマーク株式会社)
- ワンキャリアクラウド開発(株式会社ワンキャリア)
ビジネスデザインのプロセスや具体的な実績などを交えて紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
SUNTORY+アプリ開発(サントリー食品インターナショナル)
出典:株式会社グッドパッチ | Work 「サントリー食品インターナショナル」
「SUNTORY+(サントリープラス)」は、従業員の健康行動を促進する健康経営サービスです。サントリー食品インターナショナル初のヘルスケア事業となり、事業アイデアの創出からグロースまでグッドパッチがフルコミットしました。
デザインスクリプトを用いて高速でアイデア価値の検証を繰り返し、ユーザーインサイトに合致した事業アイデアを決定。事業アイデアを決めてからは、コア機能の検討や実際のアプリに近いワーキングプロトタイプの作成を進めました。
その後はユーザーテストで得たフィードバックをもとに、アプリを継続的に改善。サービスを着実にビジネス展開させるため、サントリープラスの短期的課題を整理したうえで、中長期的に事業が目指す将来像を支援しました。
グロースフェーズでの支援も行った結果、サントリープラスは企業の健康経営支援ツールとして確立し、導入企業数はリリース4年で1,200社を突破しています。
ストックマーク ビジョンプロトタイプの作成(ストックマーク株式会社)
出典:株式会社グッドパッチ|Work「ストックマーク株式会社」
ストックマーク株式会社の「Anews」は、AIを活用した企業向けニュースキュレーションサービスです。プロダクトの再構築と方針検討が必要になったことをきっかけに、グッドパッチによる支援がスタートしました。
徹底的な情報収集と現状分析から取り組み始め、ストックマークから提供されたUXリサーチの膨大なドキュメントを詳しく分析。その後、顧客だけでなく市場全体のニーズを捉えた多角的な視点を取り入れ、国内外のビジネスシーンにおける課題を洗い出しを行いました。抽出した課題をAI技術で解決可能な領域をマッピングすることで、新たな事業戦略の立案を支援しました。
プロジェクトの成果として「戦略ルート図」と「ビジョンプロトタイプ」を作成。戦略ルート図は目標達成までの道筋を可視化したもので、社内コミュニケーションの活性化に大きく貢献しました。また、ビジョンプロトタイプはAIエージェントが自動でドキュメント作成をしたり、情報を瞬時に検索・要約したりする「未来のAnewsの姿」をインタラクティブなデモで表現。ビジョンプロトタイプにより、ストックマーク社内でのイメージ共有が促進され、具体的な議論の深化につながりました。
将来の技術進化も踏まえたビジョンプロトタイプの作成により、経営陣から現場メンバーまで全員が同じ目線での議論が可能になっています。
ワンキャリアクラウド開発(株式会社ワンキャリア)
「ワンキャリアクラウド」は、戦略人事をターゲットとしたSaaSプロダクトです。グッドパッチでは、基盤となるアーキテクチャ設計とソフトウェアデザインを通じ、SaaSの事業成長を見据えた開発をサポートしました。
SaaSプロダクトの成長に欠かせない「拡張性」と「柔軟性」を意識したデザインにしたほか、グッドパッチから手が離れてもデザインが適切に運用されるよう、Sketchをベースとしたデザインシステムを提案。今後の方向性を把握するためにアジャイル開発プロセスを取り入れ、2週間ごとの実装・レビューを反復的に繰り返しました。
概念モデル図やデザインシステムなどプロセスにおける選択肢を豊富に提案した結果、プロダクトが離れてからもワンキャリア社内で適切な運用・拡張が行われています。単純なアウトプットとしてプロダクトを納品するのではなく、クライアントのビジネス成長を目指して併走した事例のひとつです。
ビジネスデザインにおけるデザインパートナーの役割
新規事業開発で重要な意味を持つビジネスデザインですが「具体的なノウハウが不足している」「事業開発プロセスが構築できていない」といった企業も少なくありません。
特に新規事業開発ではスピード感が大切なので、ノウハウや専門性の獲得、新たな事業開発プロセスを取り入れる際は外部パートナーに協力を求めるのも有効です。
デザインファームのパイオニアとして数多くの企業のデザイン支援を行ってきたグッドパッチでは、デザインパートナーとして戦略フェーズから並走し、ビジネスの本質的な課題にコミットします。
定性と定量の複合リサーチによって仮説検証を繰り返し、ミクロなユーザーインサイトへも着目できるのが強みです。4万件以上のデザインノウハウと体系化されたプロセスを活用し、新たな価値創造に貢献します。
時代の変化に合わせてビジネスデザインに取り組みたいと考えている企業は、ぜひグッドパッチをはじめとするデザインパートナーへ相談してみてください。
\ 費用やサービス内容などお気軽にご相談ください /
ビジネスデザインを学べる書籍
最後に、ビジネスデザインを学べるおすすめの書籍を3つ紹介します。
- デザインマネジメント
- ビジネスデザイン—未来をつくるビジョンとプロセスとITの話
- ビジネスデザインのための行動経済学ノート
ビジネスパーソンとして役に立つ情報が記載された本ばかりなので、新規事業に携わる際には一度目を通してみると良いでしょう。
デザインマネジメント
デザインマネジメントの第一人者として知られ、幅広い産業分野のデザインに携わった田子 學氏の本です。実際に田子氏が手がけたエアコンやノートパソコンなどの開発事例を基に、デザインマネジメントの本質や切れ味が解説されています。
すぐにでも取り組むことができる具体的な実践論と、事例に沿った実践の物語が掲載されています。また、ホンダ経営企画部長の小林三郎氏との対談内容も収録されており、読み応えのある1冊です。
ビジネスデザイン—未来をつくるビジョンとプロセスとITの話
ITを活用したビジネスの進め方を学べる本です。単純なIT技術の知識ではなく、自分が望むビジネスが何かという「ビジョン」、ビジョン達成に必要な「仕事の設計」、ITを前提に仕事を行うための「要件定義」という3つの進め方を解説しています。
初心者でもわかりやすいよう丁寧に解説しているので、今後ITを活用して仕事したいと考えている方におすすめです。また、IT活用はもちろん、ビジネスの本質を理解するのにも最適な1冊と言えるでしょう。
ビジネスデザインのための行動経済学ノート
プロダクト/サービスとユーザーとの関係に行動経済学を活用する方法を、デザイナー視点でわかりやすく解説した本です。正常性バイアスや選択のパラドックスなど行動経済学の理論を理解し、新しいサービスやプロダクトの開発のヒントにすることを目的としています。
図解で説明しているため理解しやすく、実際のビジネスをイメージしながら読めるのが魅力です。実際のビジネスを想像しやすくするために、商品やサービスなどへの活用方法に言及していますので、新規事業開発のあらゆるプロセスで重宝するでしょう。
顧客視点のビジネスデザインで持続的な事業成長を実現しましょう
本記事では、ビジネスデザインの概要や重要性のほか、具体的なプロセスやグッドパッチの成功事例を解説しました。
ビジネスデザインとは、ユーザーインサイトを重視しながら新しい価値を事業として具体化・検証していくための手法です。特に新規事業開発で重要視されており、グッドパッチでは以下の3つのポイントを意識して、事業戦略立案からリサーチ、サービス設計・開発まで一貫した支援を提供しています。
- 論理、定量的な観点から事業アイデアを磨きこむビジネスデザイン
- 定性的な顧客の課題や価値に向き合うサービスデザイン
- 検討プロセスやナレッジの蓄積と型化により事業開発の文化を醸成
事業戦略とユーザーニーズをつなげたビジネスデザインを得意としているので、新規事業開発でお困りの企業はぜひ一度お問い合わせください。
事業アイデアをプロが多角的に検証
「Business Design Review」は、事業が成立するために必要な要素を元にグッドパッチが設計した4つの独自のフレームワークを活用しながらお客様と対話をし、事業案の成立性について検証・改善してゆくサービスです。
このような方におすすめです
- ・ 事業アイデアはあるが、どのように具体化すればよいかわからない
- ・ 既存事業の枠にとらわれず、新しい顧客体験を創造したい
- ・ 競争が激化する市場において、勝ち残るための戦略を練りたい