本記事では、SaaS業界の新たな潮流である「コンパウンド戦略」について、コンパウンド戦略とは何か?注意点、事例、成果創出方法、Tipsまで分かりやすく徹底解説します。
コンパウンド戦略は単に「複数のプロダクトを開発する戦略」ではありません。顧客課題を深く捉えて各プロダクトを連携させることで、従来にない顧客体験を生み出す新しい事業戦略です。本記事を読み「コンパウンド戦略の魅力」をぜひ感じてください。
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目次
コンパウンド戦略とは?

複数プロダクトを同時に展開する事業戦略モデル
コンパウンド戦略とは、創業初期から複数のプロダクトを連携させて同時に展開するビジネスモデルを指します。これにより、複数プロダクトを同時進行で開発・提供することで、市場における競争優位性を高めることが可能になります。
「コンパウンド(Compound)」は「複合」を意味し、顧客が抱える複数の課題を一体的に解決することを目的としている点が最大の特徴です。この戦略を採用する企業は「コンパウンドスタートアップ」と呼ばれ、従来の単一プロダクト型スタートアップとは異なる動きをとっています。
米スタートアップ「Rippling」より提唱された事業戦略モデル(2021年)
コンパウンド戦略は、米国スタートアップ「Rippling」のCEO、Parker Conrad氏が、2021年の「Startup Grind Global Conference」にて提唱した競争戦略です。
この戦略の要は、複数のプロダクトを共通のデータ基盤やシステム上に構築するという点にあります。一つのプラットフォーム上でシームレスに各プロダクトが連携することにより、単一プロダクトでは実現できない、統合された体験価値を提供し、大きな事業成長につなげることが可能になります。
「コンパウンド戦略」と「従来のSaaS戦略」の違い
コンパウンド戦略と従来のSaaS戦略の違いは「市場へのアプローチ方法」にあります。
コンパウンド戦略では、複数のプロダクトを同時に立ち上げ、顧客の多様な課題をひとつのプラットフォームで統合的に解決する価値を提供します。一方、従来のSaaS戦略は、特定の課題に特化した単一プロダクトを深く磨き上げ、市場でのポジションを確立するアプローチです(=複数プロダクトの同時展開は行わない)。
コンパウンド戦略は、多様な市場ニーズに柔軟に対応できるため、単一プロダクトよりも競争優位性が高まりやすいのが特長です。
「コンパウンド戦略」と「マルチプロダクト戦略」の違い
| コンパウンド戦略 | マルチプロダクト戦略 | |
|---|---|---|
| 特徴(詳細) | 創業初期から一貫した顧客課題の解決を重視 | 既存事業とは異なる市場・顧客層向けに新プロダクトを追加 |
| 目的 | 顧客課題の包括的解決 | 新たな収益源の確保 |
| プロダクト間の関係性 | 各プロダクトが密接に連携し、相乗効果を前提に設計 | 各プロダクトは独立して価値を提供、連携は必須でない |
コンパウンド戦略とマルチプロダクト戦略は、いずれも「複数のプロダクトを展開する点」で共通しています。しかし、特徴・目的・プロダクト間の関係性といった観点では、明確な違いがあります。上記の表を参考に、それぞれの戦略の違いを理解しておきましょう。
コンパウンド戦略が注目される理由

「従来のスタートアップと真逆のアプローチ」をとる事業戦略モデル
コンパウンド戦略が注目される理由の1つ目は、市場環境の変化により、従来とは真逆のアプローチが有効だと認識され始めたことです。
これまでのスタートアップでは、リソースを1つのプロダクトに集中させ、市場での地位を確立するのが一般的な手法でした。そのため、創業初期から複数プロダクトを展開するコンパウンド戦略は、リソースが分散する非効率な戦略と見なされていたのです。
しかし近年では、複数の顧客課題に同時にアプローチできる点が評価され、新たな事業戦略の潮流として注目を集めています。
顧客の課題を「まとめて解決」できる
コンパウンド戦略が注目される理由の2つ目は、顧客の複数の課題を一括で解決できることです。顧客にとって、複数のツールを使い分ける手間が省けるのは大きなメリットといえるでしょう。
従来の戦略では、1つの課題は解決できても、関連する他の課題には別のツールを使わざるを得ない状況が多く、業務が分断されがちでした。
例えば「経費精算」のプロセスでは、経費処理ツールと請求書処理ツール、さらには法人カードの管理ツールが別々で運用されるケースも少なくありません。
これに対し、コンパウンド戦略では、これらを一体的に連携させることで、「法人支出データ」を軸に経費精算から請求書処理、カード管理までをシームレスに統合することが可能です。
一般的なスタートアップの戦略よりも「市場規模を拡大」できる
コンパウンド戦略が注目される理由の3つ目は、複数プロダクトの連携によって市場規模(TAM)を拡大できることです。
従来の単一プロダクト戦略では、TAM(Total Addressable Market:潜在市場規模)に制限があるため、成長の上限が早期に訪れることがあります。
一方、コンパウンド戦略は、既存の顧客基盤を活用して別の市場や顧客層にプロダクトを展開できるため、より大きな市場にアプローチできます。
例えば、人事労務管理システムで獲得した顧客に対し、タレントマネジメントや給与計算といった別領域のプロダクトを提案することで、事業全体のTAMを拡大することが可能になります。
顧客ニーズのシフトに対応できる(機能ニーズから体験ニーズへ)
コンパウンド戦略が注目される理由の4つ目は、顧客ニーズが「機能重視」から「体験重視」へとシフトしていることに対応できることです。
SaaS市場の成熟により、顧客は「どんな機能があるか」よりも、「どんな体験が得られるか」に重きを置くようになっています。単に機能が豊富なだけでは選ばれず、業務全体をスムーズにつなぐ統合的なUX(ユーザー体験)が求められるようになっています。
例えば、企業の人事担当者が利用するシステムを考えてみましょう。採用管理・入社手続き・人事評価などをひとつのシステムで完結できれば、ツールの切り替えやデータ移行の手間がなくなり、管理コストや学習コストが大幅に削減されます。結果として、業務効率が大きく向上する“良い体験”が得られます。
また、部門ごとに異なるツールを使うことで発生していた「データの不整合」「機能の重複」「管理の手間」といった課題も解消され、全体最適な顧客体験を提供できるようになります。
「生成AI(特に大規模言語モデル)」との親和性が高い
これまでのSaaSプロダクトは、特定機能に特化し、閉じたデータ領域での活用が前提でした。しかし、大規模言語モデル(LLM)は、テキスト・画像・数値など異なる形式のデータを横断的に理解・生成できます。
コンパウンド戦略では、複数のプロダクトが連携しているため、こうした異種データの活用基盤が整っており、LLMを活用した高度な業務支援が可能です。
例えば、プロダクト間で共有されるデータを基に、AIが自動で最適な提案や処理を行うことで、顧客対応や業務自動化の精度を高められます。さらに、プロダクト全体をまたぐ知識の集積により、新たな価値創出にもつながります。
コンパウンド戦略の利用メリット(=優位性)

「収益源の分散による経済的安定性」が保てる
コンパウンド戦略を利用するメリットの1つ目は「収益源の分散によって経済的な安定性を確保できる」ことです。
従来の単一プロダクト型SaaSでは、市場の変化により業績が大きく左右されるリスクがあり、「収益構造の脆弱さ」が事業の不安定要因となっていました。
一方、コンパウンド戦略では、複数のプロダクトが異なる顧客層や収益モデルに基づいて連携しているため、1つのプロダクトが不調でも他がそれを補完できます。その結果、安定したキャッシュフローを維持しやすく、クロスセルやLTV向上といった相乗効果も期待できます。
単なるリスク分散にとどまらず、成長性と安定性を両立する戦略として機能する点が、この戦略の大きな魅力です。
「顧客基盤の拡大と統合の柔軟性」が高い
コンパウンド戦略を利用するメリットの2つ目は「顧客基盤の拡大と統合を柔軟に行える」ことです。コンパウンド戦略では、既存プロダクトを利用している顧客に対し、関連性の高い新たなプロダクトを提案できる連鎖的な拡張モデルを構築できます。
例えば、会計ソフトを導入している企業に対して、経費精算や請求書発行システムを追加で提案することで、売上の拡大とデータ統合による利便性・信頼性の向上が同時に実現します。
同一企業が複数のサービスを利用することで、操作性やサポート対応の一貫性が高まり、顧客体験の質が向上します。さらに企業側も、アップセルやクロスセルの成功率が高まり、成長サイクルの加速につながります。
「クロスセル」と「アップセル」を自然な流れで実現しやすい
コンパウンド戦略を利用するメリットの3つ目は「クロスセルやアップセルを自然な流れで実現しやすい」ことです。
コンパウンド戦略は、複数のプロダクトが連携し、顧客の業務全体を一貫して支える構造を持っています。この構造により、顧客の利用データや課題を基に、関連性の高いプロダクトを無理なく提案でき、自然な導線でクロスセルへとつなげることが可能です。
さらに、複数のプロダクトをパッケージ化した上位プランを提示することで、業務効率やデータ統合の価値を訴求し、アップセルを促進することもできます。これらの取り組みによって、顧客生涯価値(LTV)の最大化が実現可能になります。
コンパウンド戦略における注意点4つ
コンパウンド戦略を実践する際に注意すべき上記の4つを解説します。
営業プロセスが複雑になりやすい
コンパウンド戦略における注意点の1つ目は「営業のプロセスが複雑になりやすい」ことです。
従来の単一プロダクト型の営業とは異なり、複数のプロダクトを異なる部署や関係者に対して提案する必要があるため、商談に関与するステークホルダーの数が増加し、営業の難度が高まります。
また、営業担当者には複数のプロダクトに関する知識や業界理解が求められ、準備工数も増える傾向にあります。対策としては、提案先の業界やターゲットを絞る、営業プロセスを標準化・仕組み化するなどが有効です。
顧客理解を高いレベルで維持する必要がある
コンパウンド戦略における注意点の2つ目は「高いレベルでの顧客理解を継続的に維持する必要がある」ことです。
コンパウンド戦略では、価値あるプロダクト連携を実現するために、顧客の業務課題や背景を深く理解することが不可欠です。業界や部門、担当者ごとにニーズは異なるため、そうした違いに対応できるよう、組織全体での継続的な顧客理解の取り組みが求められます。
顧客理解の解像度が不十分なままプロダクトを連携させると、期待された価値を提供できない連携機能を開発してしまうリスクが高まります。
経営資源が分散して組織運営が複雑化しやすい
コンパウンド戦略における注意点の3つ目は「経営資源が分散し、組織運営が複雑化しやすい」ことです。
複数のプロダクトを並行して開発・運用するには、多くの人材・資金・時間といった経営資源が必要となります。プロダクトごとに専任チームが必要になるため、組織構造が縦割り化しやすく、連携や情報共有の負荷も増加します。
各プロダクト間でシームレスな連携を保ちつつ、迅速な意思決定を行うためには、経営層によるリソース配分の最適化と明確なガバナンス体制が不可欠です。
プロダクト統合に関する課題が発生しやすい
コンパウンド戦略における注意点の4つ目は「複数プロダクトの統合時に技術的な課題が発生しやすい」ことです。
コンパウンド戦略の最大の価値は、統合された顧客体験(Integrated UX)の提供にあります。しかし、これを実現するには、以下のような技術的課題を乗り越える必要があります。
- データ構造や仕様の違いによる一貫性の担保の難しさ
- UI/UXの統一が不十分なことによるユーザー体験の断絶
- 個別プロダクト間で発生する技術的負債の蓄積
例えば、プロダクトごとにデータ形式や保管方法が異なると、統合管理が困難になります。また、UIや操作性に一貫性がなければ、顧客は「バラバラなツールを使っている感覚」になってしまいます。
こうした課題を解決できなければ、プロダクト間の連携が機能せず、「ただの寄せ集め」に終わるリスクが高まります。
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コンパウンド戦略の事例
コンパウンド戦略を実践する、代表的な上記3社の事例を紹介します。自社でコンパウンド戦略を考えるヒントにしてください。
Rippling|提唱者が示す「従業員データ」中心のモデル

画像出典元:Rippling公式サイト(表示画像は日本語に翻訳しています)
コンパウンド戦略の事例としてまず紹介するのは、米国のスタートアップ「Rippling」です。創業者兼CEOのParker Conrad氏は、自社を「コンパウンドスタートアップ(複数プロダクト展開型)」と位置付け、従来の“単一プロダクト集中型”とは異なるアプローチを採用しています。
Ripplingでは、「Employee Graph(従業員グラフ)」という独自概念を戦略の核としています。これは、従業員の入社・異動・退職といった情報を一元管理し、HR・IT・財務(例:給与計算、経費精算、デバイス管理)といった各領域のプロダクト間で共通基盤として活用する構造です。
このモデルにより、従来は分断されていた業務プロセスがデータレベルで統合・連携され、大幅な効率化が可能になります。Ripplingはこの統合的な仕組みを、自社の成長を支える中核戦略と位置付けています。
LayerX|「爆速」で複数事業を同時推進するモデル

画像出典元:LayerX公式サイト
次に紹介するのは、日本のスタートアップである株式会社LayerXの事例です。同社は創業初期から複数事業の同時展開を前提とした組織文化を築いており、コンパウンド戦略を積極的に実践しています。
LayerXは「法人支出データ」を中心に据え、経費精算システム「バクラク経費精算」や、請求書受領システム「バクラク請求書」など、相互に関連する複数のプロダクトを展開。これにより、経理部門と申請者(従業員)双方が抱える支出処理の手作業による非効率を大幅に改善しています。
LayerXは一貫したプロダクト設計とスピード感ある事業展開によって、コンパウンド戦略の強みを発揮している企業の一例といえます。
SmartHR|既存事業を核に顧客課題を深掘りするモデル

画像出典元:SmartHR公式サイト
最後に紹介するのは、株式会社SmartHRによる事例です。同社は労務管理クラウドを軸とした既存事業を基盤に、コンパウンド戦略を展開しています。
確立された顧客基盤とブランド力を生かしながら、人事評価やタレントマネジメントなどの周辺領域へとプロダクトを拡張。既存の課題解決にとどまらず、より広範な人事課題に対応する形で事業を成長させています。
このように、主力事業の強みを起点にスムーズなプロダクト連携を実現している点が、SmartHRのコンパウンド戦略における特徴です。
コンパウンド戦略における成果創出の3ステップ

コンパウンド戦略を採用して、自社で成果を出すための方法を上記3つのステップで解説します。
ステップ1:顧客の「ジョブ」を再定義し提供価値を拡張する
コンパウンド戦略における成果創出の1ステップ目は、顧客の「ジョブ」を再定義し、提供価値を拡張することです。
既存プロダクトが解決しているジョブの周辺に、まだ解決されていない顧客のジョブを見つけ出しましょう。
顧客が「なぜプロダクトを利用するのか」という視点から顧客の行動やジョブを分析する「ジョブ理論」という考え方があります。ジョブ理論を活用すると、以下の効果を発揮し、2つ目以降の提供すべきプロダクトを見つけるヒントになります。
| 顧客の本質的な課題を抽出できる | プロダクトが提供する成果だけでなく、本質的な「顧客が済ませたいジョブ」を把握できる |
| イノベーションを創出できる | 顧客のジョブを解決する、新たなプロダクトを発見できる |
| マーケティング戦略を改善できる | 顧客のジョブに焦点を当てた、効果的なマーケティング戦略を実施できる |
より具体的な顧客理解の方法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】顧客理解を深める3ステップをフレームワーク付きで解説!有効なリサーチの手法とは?
ステップ2:2つ目のプロダクトはMVPで素早く仮説検証する
コンパウンド戦略における成果創出の2ステップ目は、2つ目のプロダクトは「MVP(Minimum Viable Product)」で素早く仮説検証することです。
新たなプロダクトを発見しても、最初から大規模開発は行わず、まずMVPを構築します。MVPを市場に素早く投入し、フィードバックを得ながら改善すれば、失敗のリスクを最小化できます。
MVP開発の具体的な方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
【関連記事】MVPの作り方とは?最小限のコストで最大の効果を生み出すMVP開発の秘訣
ステップ3:複数プロダクトを横断する「統合されたUX」を設計する
コンパウンド戦略における成果創出の3ステップ目は、複数のプロダクトを横断する「統合されたUX(ユーザー体験)」を設計することです。
コンパウンド戦略の価値は、単にプロダクトを複数提供することではなく、それらがシームレスに連携し、顧客に一貫した体験を提供できるかどうかにあります。
そのためには、データ連携やUI/UXの統一性を確保し、ユーザーがプロダクト間を行き来しても違和感なく操作できる環境を整える必要があります。この「統合されたUX」こそが、他社が模倣しにくい持続的な競争優位性となります。
統合UXの設計においては、デザイン原則やコンポーネントを体系化した「デザインシステム」の構築が不可欠です。具体的な構築方法については、以下の記事をご参照ください。
【関連記事】デザインシステムとは?作り方を5ステップで解説!事例や導入メリットも<Figma公開中>
「コンパウンド戦略」を実践するためのTips(ヒント)
コンパウンド戦略で成果を出すためのTipsを上記の3つを紹介します。
組織のサイロ化を防ぎ「プロダクト連携の円滑度」を高める
コンパウンド戦略を実践するためのTipsの1つ目は、組織のサイロ化を防ぎ、「プロダクト間の連携の円滑さ」を高めることです。
「サイロ化」とは、プロダクト単位で部門が分断され、部門間の情報共有や連携が阻害される状態を指します。この状態になると、プロダクト間の連携やデータ共有が困難になり、顧客に一貫した体験を提供する障害となります。
これを防ぐには、「誰に・何を・どう届けるか」を明確にした GTM(Go-To-Market)戦略を策定し、全社レベルで事業計画を共有・可視化することが効果的です。
GTM戦略に基づいて組織横断のコミュニケーション体制が整えば、プロダクト同士の連携もスムーズに進みやすくなります。
【関連記事】GTM(Go to market)戦略とは?成功に導く3つのフェーズを徹底解説
顧客理解の解像度を高めて「価値ある連携」を生み出す
コンパウンド戦略を実践するためのTipsの2つ目は、「顧客理解の「解像度(精度)」を高め、価値あるプロダクト連携を実現することです。
表面的なニーズ理解に基づいて連携を行っても、顧客にとって魅力のないサービスになってしまうリスクがあります。価値のある連携を生み出すには、顧客の業務フローや隠れた課題まで深く理解する必要があります。
そのためには、UXリサーチを通じて「Who(誰に)」「What(何を)」「How(どのように)」を明確にすることが重要です。コンパウンド戦略を効果的に進めるには、UXリサーチを継続的に行い、顧客理解を組織全体で深め続ける体制を整えることが鍵となります。
正しい顧客理解のためのUXリサーチの手法や成功事例、内製化などグッドパッチのUXリサーチサービスについては、以下の資料で詳しく紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】【実践事例あり】UXリサーチ完全ガイド|成功のポイントと種類・手法を徹底解説
目先の売上を追いすぎず「中長期的なUX改善に投資」する
コンパウンド戦略を実践するためのTipsの3つ目は、短期的な売上ばかりを追わず、中長期的なUX改善に継続的に投資することです。
統合されたUXの構築は、すぐに売上に直結する施策ではありません。そのため、短期の業績目標を優先しすぎると、本来優先すべきUX改善が後回しになるリスクがあります。まずは経営層がUXの重要性を正しく理解し、中長期視点での継続的な投資判断を下すことが求められます。
また、「UXが競争優位性を左右する重要な要素である」という共通認識を組織全体で醸成することも不可欠です。
「コンパウンド戦略の支援」を専門会社に依頼するのもおすすめ
コンパウンド戦略の実行において、自社だけでリソースやノウハウをまかなうことが難しいと感じた場合は、外部の専門会社に支援を依頼するという選択肢も有効です。
成果を出すためには、戦略設計・UXデザイン・システム開発など、複数領域にまたがる高度な専門知識が必要とされます。事業戦略の立案からUX設計・開発までを一貫して支援してくれるパートナー企業に依頼することで、成功確率を大きく高めることができます。
以下の記事では、優れたUXデザインの実績を持つ会社を紹介しています。コンパウンド戦略の成功を支えるUXの質を高めるためのパートナー選びの参考として、ぜひご活用ください。
【関連記事】UXデザインに強いコンサル・支援会社5選!依頼するメリットや選定時のポイントも紹介
コンパウンドスタートアップで新たな事業戦略を確立しよう
本記事では、SaaS業界における新たな潮流であるコンパウンド戦略について、その定義からメリット、成果を出すための方法や注意点までを網羅的に解説してきました。
コンパウンド戦略は、単一プロダクトの成長に限界を感じている企業にとって、持続的な競争優位性を築く有力な手段となり得ます。成功させるためには、複数のプロダクトを戦略的に連携させる構想力と、統一されたUX(顧客体験)を設計する専門的なスキルが不可欠です。
自社内のリソースやノウハウだけで実行が難しいと感じる場合は、ぜひグッドパッチにご相談ください。グッドパッチでは、コンパウンド戦略の実行を目指す企業に向けて、デザインシステムの構築をはじめとした実践的な支援を行っています。
