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「声の大きさ」で開発の優先順位が決まってしまうチームに足りない判断軸

「この機能、本当に今開発するんだっけ?」

そう思いながら、声の大きい人の一声で開発が進んでいく。プロダクトの優先順位の決め方に、明確な物差しがない——。

事業が10→100フェーズに入ったチームで、繰り返し聞く悩みです。

経営の鶴の一声で開発テーマが差し替わる。大口顧客の要望が最優先になる。各部署の「これもやってほしい」が積み上がっていく。気付けばバックログはパンパンで、何から手をつければいいか分からない。

優先順位が「声の大きさ」で決まるのは、PdMの力不足ではありません。チームに判断軸がないことが理由です。

この記事では、なぜこういった問題が起こってしまうのか、そして、PdMが「NO」と言える判断軸の作り方を、グッドパッチの支援現場から解説します。

なぜ、「声の大きさ」で開発の優先順位が決まってしまうのか

声の大きさで開発の優先度が決まってしまう理由はシンプルで、意見を比べる物差しがないからです。

AさんとBさんが別の機能を「優先してほしい」と言う。一目で的外れだと分かるような意見があれば話は楽ですが、そんなことはまずなく、事業貢献や業務改善など、双方が一定のロジックを持って意見を出す場合がほとんどです。どちらが事業にとって正しいのか、比較する基準がないと最後は、立場の強さや声の大きさで決まってしまいます。

一番大きな声を出した人が勝つ。これが判断軸のないチームの実態です。

これは極端な例だと思いますが、グッドパッチの支援先でよく見るのは、各部署や関係者の要望をそのままプロダクトに詰め込んでいってしまうパターンです。一つひとつの要望は決して間違ってはいません。

でも、全部載せをした結果、「誰に向けて、何を届けるプロダクトなのか」の軸がぼやけていく。機能は増えるのに、プロダクトとしては輪郭を失っていきます。

こうした問題の根っこにあるのは、プロダクトのビジョンや提供価値が言語化されていないことです。「自分たちは何を大事にするプロダクトなのか」が定まっていないと、要望を並べたときに優劣をつけられない。その結果、場当たり的な判断が積み重なっていきます。

「物差しがない」チームで起きる、バックログ整理の崩壊

開発の判断軸がないと、現場ではさまざまな苦難に見舞われます。

まず、バックログが膨れ上がります。

顧客の要望が来るたびに「とりあえず積んでおく」を繰り返した結果、リストは数百行。既存のロードマップやバックログを見ても、これが本当に妥当なのか、抜け漏れがないのか、誰も確信を持てない。

次に、「なぜ今、この機能を開発するのか」を問われると詰まります。

例えば、経営陣から「その機能、優先する根拠は?」と聞かれて、言葉に詰まった経験はないでしょうか。やると決めたのに、理由を自分の言葉で説明できない。判断の拠り所がないからです。

支援先でよく聞くのが、こんな会話です。「この改修、優先度高いって聞いたので上げました」「誰がそう言ったんだっけ?」——出どころも根拠もあいまいなまま、タスクだけが動いていく。顧客要望に応じて改修はするけれど、その都度の対応で、戦略的な積み上げになっていかないのです。

四半期ごとに開発方針がブレるというのも、根っこは同じです。

前の四半期に最優先だったテーマが、新しい役員の一声で後回しになる。現場は作りかけのものを止めて、また別のものに着手する。「先月までの優先順位は何だったんだろう」と、チームの納得感がすり減っていきます。

そして何より、PdMが「NO」と言えなくなってしまうのが一番の問題です。断るための根拠がないから、来た要望を全部受けてしまう。受けるからバックログがさらに膨らむ。この悪循環に、多くのチームがハマっています。

PdMが「NO」と言える判断軸の作り方

プロダクトの判断軸があるというのは、すなわち「PdMがNO」と言える基準を作ると言うことでもあります。そのためには、感覚ではなく構造で意思決定できる土台を作ります。グッドパッチが支援先で一緒に進めるのは、大きく3つです。

1. プロダクトのビジョンと提供価値を言語化する

まず「このプロダクトは誰のどんな価値のためにあるのか」を決めます。ここが優先順位の出発点になります。

提供価値が決まると、要望を「その価値に効くかどうか」で見られるようになる。声の大きさではなく、価値への貢献度で並べ替える土俵ができます。

2. NSM・KPIツリーで「事業に効く道筋」を構造化する

次に、ノーススターメトリック(NSM)とKPIツリーを描きます。「どの指標が動けば事業が伸びるのか」を1本の構造でつなぐ作業です。

これがあると、個々の施策が「最終的に何につながるのか」を説明できます。「この機能はこのKPIを動かし、それがNSMに効く」と、根拠を持って語れるようになる。意思決定の根拠が、頭の中ではなく目に見える形で残ります。

3. 顧客価値とデータ・定性で優先順位を裏づける

最後に、優先順位を顧客価値ベースで設計し、データと定性インサイトで裏づけます。「声が大きいから」ではなく「このユーザーのこの課題に、これだけ効くから」で並べる。

この3つがそろうと、PdMは初めて「NO」と言えます。「その要望は理解しました。ただ、いま優先すべきはこちらです。理由はこうです」と言い切れる。支援先では、判断軸が整った瞬間に、ステークホルダーとの会話が「お願いと調整」から「価値の議論」に変わっていきます。

グッドパッチが実践する、意思決定基盤の伴走

グッドパッチでは、PdMが「NO」と言える判断軸を一緒に設計することを重視しています。顧客価値に基づいた優先順位設計を導入し、データと定性インサイトを組み合わせた意思決定基盤を構築することで、感覚や声の大きさに左右されないチームの推進力を取り戻せます。

特に10→100フェーズでは、この土台が効きます。事業が広がるほど利害関係者は増え、それぞれが正しい要望を持ち込む。判断軸の不在が、このフェーズでこそ致命的になるからです。

大事にしているのは、判断軸を「仕組み」としてチームに残すこと。その場の交通整理で終わらせず、PdMが自分たちで優先順位を語れる状態を目指します。支援が終わった後も、同じプロセスを自分たちで回せるように。

声の大きさで優先順位が決まるのは、PdMの力不足ではなく、チームに判断軸がないサインです。振り返ってほしいのは、次の3点です。

  • プロダクトのビジョン・提供価値が、チームの共通言語として言語化されているか
  • 優先順位を比べる物差し(NSM・KPIツリー・顧客価値)があるか
  • PdMが「NO」と言うとき、根拠を自分の言葉で語れるか

この3点がそろうだけで、「声の大きい人」に振り回される頻度はぐっと下がります。それでも優先順位が定まらないなら、そもそも、比較の土台となる戦略や提供価値の定義が足りていない可能性があります。

自社の意思決定プロセスのどこに穴があるか、一度棚卸しするきっかけになればうれしいです。

プロダクトの意思決定に迷いを感じている方には、グッドパッチの「プロダクトグロース診断(無料)」が役立ちます。経験豊富なPdMやデザイナーが、課題解決に伴走し、現状のメトリクス設計や意思決定プロセスを評価し、改善の優先順位を明確に把握できますので、ぜひご活用ください。