メンバーインタビュー

2年続く大型AIプロダクト開発。UIデザイナー4人が「チーム」でデザインする理由とは?

グッドパッチが手掛けるクライアントワークには、さまざまな規模のものがあります。デザイナーが1人や2人で進めるものもあれば、巨大なプロジェクトとなれば、同じ職種のデザイナーが複数人アサインされることも。

今回は、中でもとりわけ規模の大きなプロジェクトの様子をご紹介。大企業(エンタープライズ)向けのAIプロダクトを開発するこのプロジェクトには、UI/UXデザイナーだけでなんと4人が参加しています。

彼らはどのように仕事を進め、どんなコミュニケーションをとっているのか。彼らのリアルな日常と仕組みにインタビューで迫ります。

「同じ職種の同僚とどう役割を分担するのか」 「複数人で分担すると、自分の裁量が狭まるのでは?」 「デザイナーが増えると、プロダクトのクオリティがバラバラになる?」デザイナーなら疑問に思うポイントを、ストレートにぶつけて、赤裸々に語ってもらいました。

チームメンバー

  • 石黒 澪UIデザインリード:プロジェクトのクオリティ管理でのプレイングリード兼ディレクター。
  • Yuehsheng HanUI/UXデザイナー:台湾出身/在日15年目。ビジュアルデザインや細部のクオリティを担保する番人。
  • 杉本 晴子UI/UXデザイナー:情報設計やAI領域のUIデザインの強みを活かして参画。
  • KahoGoodpatch Anywhere UIデザイナー:ポーランド在住。圧倒的なスピードと作業量で並走。※今回はお名前のみの登場です

複雑な業務フローをAIで変える。デザイナー4人のシナジーを生み出す「仕組み」とは?

──UI/UXデザイナー4人体制で進めているという、このプロジェクトはどんな案件なのでしょうか?

石黒:
いわゆるエンタープライズ企業に向けた、AIを主軸とした業務効率化サービスの開発プロジェクトです。

一言で「AIツール」と言っても、手がける領域は非常に広大です。メインとなるWebアプリケーションを中心にマルチデバイスかつ幅広い要素のデザインを同時並行で進めています。

複雑な業務フローを、AIの力を使ってどう直感的で心地よいUXに落とし込むか。そして、広範囲にわたる機能を、いかに一貫性を持たせてデザインしていくか。 UI/UXデザイナーとしての総合格闘技のような、非常にやりがいに満ちたプロダクトです。

──なるほど。ただ、デザイナーの人数が増えれば増えるほど、チームとしての連携やコミュニケーションは難しくなりませんか?

石黒:
おっしゃる通りで、それが複数人でデザインチームを組むときに一番気を使う部分です。ただ、このプロジェクトのように、AIプロダクトという前例や正解のない領域でより良いデザインを目指す場合は、やはり1人よりは複数人の知恵がある方が良いと考えています。

―― 実際、クライアントワークで「UI/UXデザイナー4人で働く」って、どんな形で動くことになるのでしょうか?

石黒:
私たちは、週に3回クライアントとのデザイン定例ミーティングを設けています。それに向けて、自分たちが作ったデザインを「必ず一度はチーム内で共有してから持っていく」というルールを徹底していて、そのために毎日1時間、UI/UXデザイナー4人で「相談会」を開いているんです。

Han:
まだ仕様が完全に固まっていない段階から、「ユーザーにとってはこのような流れの方が自然だと思う」や、「AIの処理的な観点だとどうなる?」とか、時には、「開発要件的に実装が難しいかもしれないから、代替案も用意しておこう」などといった意見を出し、ブラッシュアップをしあいます。

――「先輩から後輩へのフィードバック」のような、いわゆるレビューの時間とは違うのですか?

杉本:
私たちがやっている相談会は、先輩から後輩への一方向のレビューとは少し違います。 Hanさんも石黒さんも先輩で、日々いろいろなことを学ばせてもらっていますが、議論をするときは全員が1デザイナーとして同じレイヤーからデザインに向き合って、フラットに話し合っています。

後輩が作ったものをビシバシ指摘していく構図や、先輩の意見が大事かな?と立場を意識してしまう場ではなく、みんながそれぞれの角度からどうすればよくなるのかを話し合い、観点を洗い出すような会になっていると思います。

石黒:
私はこの4人の中では「リーダー」という役割ですが、チームメンバーの評価やピープルマネージメントには責務はないので、ある意味フラットな環境が作りやすいかもしれないです。自分自身もこの相談会では、上下関係で物事を進めすぎないようには気をつけていて、常に「本質的にデザインを良くするためには?成果を出すデザインとは?よりユーザーのテンションを上げるには?」を考えられる場であることを目指しています。

Hanさんや杉本さん、Kahoさんからも、それぞれ強みや視点が違うので学ぶことがとても多く私自身も助かっています。

 「抱え込み」を捨ててから見えた、デザイナーとしての内面的な成長

―― 毎日それだけ密にプロダクトについて意見を交わしているんですね。複数人が動くスタイルだと、一人でデザインをするときと何が変わるのでしょうか?

Han:
これまでプロジェクトで一人でUI/UXを考えたり、作ったりするときは、どうしても自分のスケジュールや目の前のプロダクトの完成度だけに集中してしまいがちでした。

今の規模のプロダクトでは、これまで経験したプロダクト開発組織と異なり、開発の予定が急に変更になったり、イレギュラーな対応や会議も日々起こります。

自分は事がうまく運ぶよう、事前にスケジュールなどを組む性格だったので、最初の頃は「組んでいたスケジュールがズレこんだ!」などと焦ることもあったのですが(笑)、今ではそれを一旦受け入れて、「チームとしてどう柔軟に動くか」「プロダクトの将来の拡張性」まで加味して「どうデザインに落とし込むか」といった広い視点を持てるようになりました。

杉本:
私も動き方が変わった面がありますし、このチームで働くことで、気付かせてもらったり、マインド面で成長させてもらったりしたことがたくさんあります。

このプロジェクトに入る前は、最初から最後まで一人でデザインを検討し納品まで進める案件が多かったので、プロジェクトの初期はチームメンバーへの情報共有が下手で、他のメンバーを動きづらくさせてしまっていました。「他メンバーの手を煩わせないよう、自分のデザインが完ぺきになってから見せよう」と思っていたんです。

でも、毎日の相談会を重ねるうちに、「自分が思っている1.5倍〜2倍の情報を、そして未完成な段階からチームにオープンに開示することで、最終的なデザインは良くなる」と気付かされました。

一人の視点で作るより、複数人の視点で作ると良いものが生まれることをこのプロジェクトで実感しました。一人で遂行しなければというマインドを捨てて、周りを信頼して「共創」できるようになったことは、自分にとってすごく大きな成長でした。

石黒:
杉本さんの変化は、リードである私にとっても大きな学びになりました。実はプロジェクトの初期、私自身も「デザインリードとしてクオリティ管理をしなきゃ、自分が方向性を決めなきゃ」とガチガチに頑張りすぎていた部分があったんです。

でも、メンバーそれぞれにデザインのやり方や得意なアプローチがある。そこに私が自分のやり方を押し付けすぎてしまうと、自由度や主体性を潰してしまうんですよね。管理することが目標ではなく、個々のやり方をリスペクトして信じて任せる「余裕」を持てたことは、リードとしての私自身の大きな成長でしたし、結果的にチーム全体のデザインの質を底上げすることにつながっていると思います。

―― グッドパッチの「他のプロジェクト」でも、これくらい手厚くデザイナー同士で揉み合う朝会や相談会をやっているものなのですか?

Han:
ここまで 毎日全員で 細かくデザインをすり合わせるというのは、あまりないのですが、このプロダクトの規模と複雑さだからこその「このチーム独自の運行工夫」という側面が大きいと感じています。

ただ、他のプロジェクトでも、朝会という場で「今自分がどんなタスクを持っていて、いつまでに何を作るか」をシェアするフォーマットは広く根付いています。何より、自分のデザインを抱え込まずに「まずは周りに相談ベースで話てみる」というオープンな気質自体は、グッドパッチのどの案件、どのデザイナーにも共通しているカルチャーだと感じます。

石黒:
そうですね。ベースにある「オープンに共創する」という会社のカルチャーを、この巨大なプロジェクトに合わせて「毎日の相談会」という形にカスタマイズした、という方がしっくりくるかもしれません。

メンバーの「やりたい」からアサインに。複数人でも裁量が狭まらない意思決定のプロセス

―― 4人のデザイナーの間で、どのように作業や役割を分担しているのでしょうか?

石黒:
機能ごと、あるいはそれぞれの得意分野ごとに担当を分けてアサインを組んでいます。ただ、私たちが大切にしているのは、トップダウンで機械的にタスクを割り振るのではなく、メンバーそれぞれの「やりたいこと」を吸い上げてアサインにつなげることです。

杉本:
期の初めに、みんなで何にチャレンジしたいかを可視化するワークをやったんです。「私はアニメーションを使った表現に挑戦したい」「Hanさんはプロダクトのオンボーディング体験を作りたい」というように、自分が作ってみたい体験をみんなでシェアしました。

Han:
メンバーの「やりたいこと」がデザインリードの石黒さんの頭に入っているので、「このタスクは杉本さんがやりたいって言っていたよね」という風に機会が訪れたらアサインが組まれます。

石黒:
もちろん、プロダクトにとって一番良いものを作るためのバランスは考慮しますが、複数人チームだからといって誰かの裁量が小さくなることは避けたいと思っています。

やる気と自走力があるメンバーで構成されているから、この構成が成り立つのだと思いますが、やりたいタスクには「やりたいと言ったからにはやりきる」という責任感が伴うと思っています。

責任感があるから良いデザインができる・個人としても成長できると思うので、結果的にプロダクトにプラスになると信じています。この体制だと、1人では挑戦できなかった大型の機能に、チームのバックアップを受けながら主導権を持って取り組めるのはある意味、魅力かもしれません。

「個人のこだわり」を「チームの新しいルール」へ。4人でデザインを育てる共創の仕組み

―― 4人がそれぞれ別々の機能や画面を作る中で、どうやって全体のクオリティを担保しているのですか?

杉本:
複数人で動くときの最大の難しさは、細部まで含めたクオリティの担保です。「私はここを太文字にしたいけれど、他のメンバーは普通の太さ(レギュラー)で想定していた」といった、細かいデザインルールのズレは、どうしても発生してしまいます。

Han:
みんな真剣にプロダクトを良くしたいという「こだわり」を持っているので、デザイン表現の部分で意見がぶつかり合うことは日常茶飯事です(笑)。

―― その「こだわり」のぶつかり合いを、どうやってクオリティの向上に着地させているのでしょう?

杉本:
例えば、既存のトーン&マナーから少し逸脱するデザインを「どうしてもここにはこの色を使いたい!」と誰かが提案したとします。その時、ただ否定するのではなく「なぜそこを変えたいのか」というこだわりを全員で吟味します。

Han:
「そのこだわりは確かに納得できる。じゃあ、ただ色を増やすんじゃなくて、みんなが今後も使いこなせるような共通ルールに昇格させて、デザインシステムに組み込もう」というふうに、「個人のこだわり」を「チームの新しいルール」へ変えていくんです。

石黒:
毎日1時間、泥臭くデザインをすり合わせる時間(相談会)があることで、議論からルール化まで持っていけるというところはあると思います。そして、決めたルールをデザインシステムに落とし込み続ける。このプロセスがあるからこそ、4人で描くデザインのクオリティはバラバラにならず、むしろ1人では到達できなかったレベルまで磨き上げられていると私は感じてます。

── お互いの意見を健全にぶつけ合える関係性はいいですね。ただ「ぶつかり合う」ときにギスギスしたりしませんか……?

Han:
そこは全く心配ないです。私たちは仕事ではめちゃくちゃ熱くぶつかり合いますけど、プライベートでは仲が良いんですよ(笑)。

石黒:
そうそう。Hanさんが台湾に一時帰国する時には、私と杉本さんも一緒について行って、みんなで台湾旅行をしたくらい仲良しです(笑)。仕事で本音をぶつけ合えるのも、根底にそれだけの信頼関係があるからだな、と実感しています。

── ありがとうございました。最後に、チームでデザインをする皆さんから見て、今後はどんなデザイナーの方と一緒に働いてみたいですか?

Han:
チームとしてのコミュニケーションやリスペクトがベースにあった上で、自分自身の『尖ったこだわり』もしっかりと持てる方。そして、同時に柔軟に相談/対応できる力も持ち合わせている。そんなプロフェッショナルな方と一緒に働きたいです!

杉本:
「これでいいでしょ」と現状に満足するのではなく、「こうしたらもっと面白くなる。このプロダクトだからこそ、ここを変えてみよう!」、そんなアイデアを自発的に出せる方。ただのA案・B案に留まらず、誰も思いつかなかったような飛び抜けたC案を出す意欲のあるデザイナーさんと働きたいです。

石黒:
立場や役職に関係なく、本質的な課題や、ユーザーの気持ちを上げるためのデザインにチーム全員で向き合う。そういったプロセスが好きな方ですね。1人としての強いこだわりを持ちつつも、仲間と『共創』することによって、デザインはさらなる高みを目指せると信じている方と働けたらうれしいです!

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