緑が美しく、過ごしやすい清々しい季節になりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
今月もGoodpatch Blogでは、Goodpatchで話題になったアプリケーションやサービスをご紹介します!

アプリケーション

TikTokが耳が聞こえづらい人のための自動キャプション機能追加

https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/auto-captions

TikTokは2021年4月6日、動画の音声を自動的に字幕に変換する「自動字幕起こし機能」を追加したと発表しました。まずは英語と日本語で提供を開始し、徐々に他の言語にも対応していく計画です。投稿者が編集画面で自動キャプションをオンにするとキャプションが自動で生成され、動画とともに表示されます。投稿者は自動生成された字幕を編集できます。

TikTokはサービスのアクセシビリティ向上に長期的に取り組んでいくとしています。アクセシビリティへの配慮は長らく発信者に依存してきました。しかし、最近では技術の発展とともにユーザー投稿型のサービスでもプラットフォームとしてユーザビリティ向上を目指す取り組みがおこっています。TikTokのみならずInstagramやYouTubeなどのSNSやデバイス標準のOSなどにもこのような機能が追加する流れが進んでいます。このような取り組みはあらゆる人がより多くのコンテンツに触れる機会を増大するだけでなく、発信者として参加することにも繋がります。発信者が多様化することは今まで注目されてこなかった人々に声を与える大きな意義がありそうです。

提案型マッチングサービス「knew」が誕生~いいねやスワイプはもう不要。“ブラインドマッチ”方式の新しい出会い~

https://knew.jp/

株式会社リブセンスは、提案型マッチングサービス「knew(ニュー)」を2021年4月12日にリリースしました。従来のマッチングサービスで見られるビジュアル重視のマッチングを何度も繰り返し、疲弊してしまう「マッチングアプリ疲れ」。マッチングするまでに疲れてしまうのではなく、本当に出会いたい人同士がマッチングできるような場所をつくりたいという思いから、真剣な恋活・婚活を求める方に向けたマッチングサービスです。「knew」は“ブラインドマッチ”方式と呼ばれる新しいマッチング方式を掲げています。従来の、プロフィール文や顔写真、年齢などの情報をもとに自ら相手を探す検索型のマッチングアプリとは異なり、顔写真やプロフィールを把握する運営が厳選した相手を紹介する形でマッチングします。

現代のマッチングアプリでよく見られる「マッチングアプリ疲れ」ですが、このサービスはその要因となるメッセージを送る手間、不確実な人との出会いなどを極力排除しているとのことです。新しい出会いを求めている人の、どこか億劫になってしまう気持ちに寄り添ったサービスと言えるのでは無いでしょうか。「自分で探す」から「紹介してもらう」という新しい出会い方がこの先、オンラインでの人と人との出会いにどのようなインパクトを与え、進化を遂げていくのかを注目していきたいです。

マンガで英語の多読学習をサポートする「Langaku」のベータテストユーザー募集が開始

https://mantra.co.jp/langaku/

マンガに特化したAI翻訳技術の研究開発を行うMantra株式会社は、特設ページにて「Langaku」のオープンベータテストのユーザー募集を開始しました。「Langaku」はスタートアップアクセラレータープログラム「マンガテック2020」において、Mantraと集英社が協業検討を推進した英語学習サービスです。誰もが知ってる数々のマンガを英語で多読することで、ネイティブらしい自然な英語を学べることが特徴です。ベータテストは『鬼滅の刃』(著・吾峠呼世晴)や『NANA-ナナ- 』(著・矢沢あい)をはじめとする計12作品の許諾を取得し、実施されます。

本サービスは多読学習の継続を目的としているようです。多読学習とは、第二言語習得において効果的なインプット方法として用いられる手法です。題材となる作品自体が魅力的であることの他にも、マンガのセリフを「聞く」機能や、お気に入りのコマを使って復習できる「コマ帳」機能など学習の質を上げる工夫がなされています。魅力的な作品を活用した第二言語習得のためのアイデアはこれまでも存在していたものの、著作権の問題を伴うため、サービス化のハードルは高い印象がありました。対して「Langaku」のサービス化を実現できたのは、発案段階から著作権の持ち主である出版社を巻き込んだからだと言えるでしょう。近年のコンテンツをデジタル化する流れは、これまでオフラインで発展してきた伝統や歴史のあるコンテンツにも及んでいます。今回のように、必要な技術力を持つスタートアップと、優れたコンテンツの持ち主である企業が手を組み障壁を超えてアイデアが実現されていく事例は、今後も増えていくのではないでしょうか。

サービス

Takramと日立製作所がサステナビリティとトランジションをテーマとしたウェブサイトを公開

https://sustainability-transitions.com/jp

デザインファームTakramは株式会社日立製作所の研究開発グループとともに、サステナブルな世界を作るためにできる変革をテーマにリサーチを実施しました。内容は「公共の知」とするべく、ウェブサイト上に公開されています。サイトではトランジションという言葉がキーワードとして使われており、「社会、政治、経済のシステムが別のものへと移行すること」として、様々な団体によるトランジションに関する考えが掲載されています。またYouTubeにはオンライントークが公開されており、社会に変革をもたらすために個人が何をしていけるのかについて議論しています。

今回着目したいのはデザインファームのTakramがこのリサーチに参加しているという点です。サステナビリティは社会全体で考えていかなければいけないトピックです。デザインという力は今まで、ビジネスの現場や様々な場所で影響を与えてきました。SDGsの取り組みに対してデザイナーが関与することで今回のウェブサイトのように多くの人に考え方や重要性が伝わっていくのはもちろん、SDGsの取り組みを加速させていくこともできるのではないでしょうか。

公共施設などで生理用ナプキンの無償提供を実現するサービス「Free pad dispenser OiTr」が実証テスト開始!

https://www.oitr.jp/

OiTr(オイテル)は、ショッピングモールや学校、公共施設などの個室トイレに生理用ナプキンを常備し無料で提供するサービスです。トイレットペーパーは無料で提供されていることが当たり前となっていますが、同様に日常的に必要とされる生理用ナプキンはそうではありません。この現状を解決すべくOiTrは生まれました。OiTrでは、専用のアプリを通じてトイレ内に設置されたディスペンサーに触れることなく生理用ナプキンを無料で取り出すことができます。

任意団体「#みんなの生理」の調べでは「学生の5人に1人が生理用品の入手に苦労している」という結果が出ています。経済的な理由だけでなく、生理へのタブー視から生理用品を購入しづらい風潮なども影響していると述べられています。世界経済フォーラム(WEF)による「男女格差(ジェンダーギャップ)指数2021」では、調査対象となった世界156カ国のうち日本は120位でした。男女格差が無意識下に深く根付いた現状では、「生理」へのタブー視を格差として認識することすら困難と考えられます。これらの現状を踏まえると、OiTrは生理用品の経済的負担や日常的に携帯する負担を軽減するだけでなく、社会の当たり前を作り替える大きなきっかけを提供していると言えるでしょう。

展示・イベント

2026年冬季ミラノコルティナオリンピックのロゴが一般投票によって選出

https://www.milanocortina2026.org/

2021年3月30日、来たる2026年に開催されるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピック・パラリンピックの公式ロゴが国民によるネット投票で決定しました。今回決定したロゴの名前は「Futura」で、ブランド代理店のLandor Associatesによって制作されました。「Futura」という名前は、オリンピックとパラリンピックの冬季大会の基本的な価値観を反映した、ダイナミックでモダンなデザインを意味しています。オリンピックのエンブレムは開催年2026年から引用された26という数字が雪を表す銀色で表現され、パラリンピックのエンブレムではドロミテ山脈でよく見ることができるオーロラを緑・赤・青のグラデーションで表現しています。また、その色には国際色豊かなイベントであることやスポーツ競技の持続可能性といった意味も込められています。

オリンピックのロゴは全世界の人が注目するロゴの1つです。今回の公式ロゴは、2つの案から国民によるネット投票で選出しました。オリンピック・パラリンピックのロゴに国民の意見を反映することで、自国のイベントに対する当事者意識が高まるといった効果もありそうです。ロゴとしての効用だけではなく、国民全員で関わるイベント、という意識を浸透させることができたという点で、開催までの国民の盛り上がりにどう影響するのか、期待が高まります。

Appleが自社イベント「Spring Loaded」で多くの新製品を発表

https://www.apple.com/jp/apple-events/april-2021/

Appleは2021年4月21日午前2時に開催したイベント「Spring Loaded」で多くの新製品を発表しました。M1チップを搭載し極薄化した7色のカラーバリエーションのiMac、新色パープルが登場したiPhone 12/12mini、財布・バッグ・鍵といったアイテムに取り付け紛失した際に追跡する小型円形デバイスAir Tag、A12 BionicチップとSiriが搭載したApple TV 4Kなど、製品の向上から新しいカラーバリエーションの展開まで多種多様な発表がありました。

iMacに新しく追加されたカラーバリエーションは、Appleの昔のロゴを踏襲しているようなカラーになっており、Appleのコアなファンにとっても心躍る発表だったのではないでしょうか。

これまでのIT機器は会社内で利用されるケースが多かったため、求められる特徴としてシンプルさ、フォーマルさ、オフィスに設置されたときの統一感などが重要視される傾向にありました。しかし、プライベート空間に職場が介在する傾向にある現在では、各ユーザーの嗜好性に合うことや、日常に彩りをもたらすカジュアルさが求められるようになったと考えられます。早く新しいiMacとともにテレワークを楽しんでみたいですね。

その他

rinna社が日本語に特化したGPT-2の大規模言語モデルを開発しオープンソース化

https://github.com/rinnakk/japanese-gpt2

rinna社は日本語に特化したGPT-2の大規模言語モデルを構築し、GitHub・およびNLPモデルライブラリHuggingFaceにてオープンソースとして公開しました。これまでrinna社は、ディープラーニング研究の経過での技術を活用し、LINEで気軽に会話ができる「りんな」など製品発表を行なってきました。それらの製品開発の過程で構築された日本語GPT-2モデルは、一般的な日本語テキストの特徴を持った高度な日本語文章を自動生成できます。

オープンソース化によって、研究者によりコーパスに新しい文法やシソーラスなどの言語資料が蓄積されていき、日本語GPT-2モデルが私たちの言葉を理解する精度が上がっていきます。

自然言語処理が身近に使用されている例として、Siri・ECサイトなどに備えられているAIチャットボットが挙げられます。現在はAIとのコミュニケーションに違和感を覚えることが頻繁にあります。しかし、今回のオープンソース化によって、私たちの言葉をより柔軟に理解できるようになるかもしれません。AIとの対話が今よりも活発になる未来が来るかもしれません。

Adobeの「源ノ角ゴシック(Source Han Sans)」がバリアブルフォントに

https://blog.adobe.com/jp/publish/2021/04/08/cc-design-source-han-sans-goes-variable.html#gs.z4eswx

AdobeとGoogleが共同開発した「源ノ角ゴシック/Source Han Sans」のバリアブルフォントが発表されました(GoogleからはNoto Sans CJKとしてリリース)。源ノ角ゴシックは、国際的なデザインや開発コミュニティをまとめるという共通の目標のもと、総勢100名以上のチームが3年以上をかけて開発とデザインに携わりました。今回新たにリリースされたバリアブルフォントは、フォントの太さを表す「ウエイト」を既定の7種類だけでなく最小値から最大値の間で自由に変更できるため、表現に応じて微妙なタイポグラフィの変化を作り出すことができます。また、これまでの7種類のウエイトを表示するにはそれぞれ7つのファイルが必要でしたが、バリアブルフォントでは1つのファイルで全てのウエイトを表示できるため、これまでよりも軽快で高いパフォーマンスを持つ書体となりました。

今回のリリースでパフォーマンスが向上したことはもちろんですが、ウエイトをより自由に変えられるようになったことも大きな利点でしょう。これまで文字の大きさを1つずつ調整すると、小さく調整した文字が他の文字に比べてわずかに細く見えてしまう場合がありました。バリアブルフォントを使えばウエイトをより自由に調整できるので、細部までこだわった美しい表現がより簡単に追求できるようになるでしょう。

 


以上、4月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!

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