「ファシリテーションワークショップ」で会議の質とスピードが変わった ソフトバンクの「satto workspace」開発チームに起きた変化
会議が長引いて結論が出ないまま次回に持ち越される、メンバーからなかなか良い意見が出ない、議論しているうちにテーマから逸れていく──仕事に不可欠な「会議」ですが、意外とうまく運用できていないチームは多いのではないでしょうか。
グッドパッチのファシリテーション&コーチングチーム「Marble」では、会議のゴールを明確にし、メンバー一人ひとりが主体性を持った会議運営が実施できるようになる「ファシリテーションワークショップ」を実施しています。一般的に「ファシリテーション」と聞くと司会進行役のイメージが強いですが、実際には、それ以外にも雰囲気の醸成やメンバーの主体的参加を促す役割が求められるなど、議論の場を「デザイン」する重要な役割なのです。
今回、このワークショップを体験したのは、ソフトバンク株式会社が手がける法人向け生成AIサービス、satto workspaceの開発チーム。satto workspaceは、「つくる・探す・更新する」といった資料の作成業務を効率化するプロダクトです。実施を決めたソフトバンク株式会社の石原さんと、実際のワークショップに参加いただいた4名に、ワークショップで得られた学びと社内での変化について伺いました。
※sattoはソフトバンク株式会社の登録商標です。
<話し手>
ソフトバンク株式会社 技術統括 satto事業開発本部 satto workspace事業部
部長代行 石原さん
マーケティング課 課長代行 平泉さん
カスタマーサクセス課 林さん
カスタマーサクセス課 稲垣さん
プロダクト開発課 亀田さん
Goodpatch ワークショップデザイナー 田中
目次
単なる司会や進行役ではない──ファシリテーションを通じて学ぶ「場のデザイン」
ファシリテーションワークショップは、「ファシリテーター」としての振る舞いや場のデザインを体系的に学べるよう、理論のインプットと実践的なワークを組み合わせた場として設計しています。

手と頭を動かし、仲間との対話を通じてアウトプットしていく中で、頭の中だけの理解を超えた気付きや学びが得られるよう意識しています。ワークショップについては、座学で概論を学ぶパートと5つのワークで構成されており、それぞれの要素の詳しい説明については、こちらの記事を合わせて参照ください。
<ファシリテーション概論>
- ファシリテーションの本質と役割を体系的に整理する
- 「ファシリテーション=司会進行」という誤解をほぐし、問題解決のプロセスへの伴走として捉え直す
<場のデザイン>
- 対話の「場」に必要な要素を整理し、設計する視点を身につける
- 会議シナリオを使い、ファシリテーターとして実際に運営を体験する
<対人関係デザイン>
- 傾聴・問いかけのスキルを、体験を通じて習得する
- 聴く側・話す側の両方を経験しながら、対話の質を掴む
<構造化デザイン>
- 議論をリアルタイムで可視化するスクライブ(板書)の技術を習得する
- 可視化することで、議論の深さと合意のしやすさがどう変わるかを実感する
<全体設計デザイン>
- ファシリテーション全体を俯瞰し、会議・ワークショップを一から設計する力を養う
- 対立が生まれる場面を設計に組み込み、プロセス全体を体験する
<合意形成デザイン>
- コンセンサスとは何かを整理し、多様な意見をまとめていく力を習得する
- 意見の対立を生かしながら場を動かすファシリテーションを実践する
ワークショップに参加したのは約20人。年次などがバラバラになるようチームを組み、約8時間のワークショップに臨みました。インタビューでは、ワークショップの参加者を中心に感想や学んだことを伺いました。
スピード感が求められるAIプロダクトの開発 合意形成をスムーズにする必要性を感じていた
──まずは今回、グッドパッチの「ファシリテーションワークショップ」を受けようと考えた理由について教えてください。
ソフトバンク 石原さん:
グッドパッチからは、ファシリテーションワークショップの他にも、「ユーザーヒアリング」や「UXリサーチ」をテーマにした研修も提案いただいていました。
私自身は、カスタマーサクセスなどを統括する立場ということもあり、他2つの内容も魅力的だったのですが、当時、satto workspaceの開発チームが組織改変を予定しており、チーム編成が大きく変わることから、会議も増えると見込んでいたのが理由の1つです。また、研修を受ける予定のカスタマーサクセスチームにも意見を聞いたところ、ファシリテーションワークショップの人気が高かったんです。

ソフトバンク株式会社 技術統括 satto事業開発本部 satto workspace事業部 部長代行 石原さん
──受講前に社内で抱えていた課題や、特に学びたいことはありましたか?
ソフトバンク 石原さん:
今後、satto workspaceの開発チームが拡大し、関係各所との連携や調整も増えていく中で、より高度なファシリテーションスキルを身に付ける必要があると考えていました。
──今回のファシリテーションワークショップの中で、印象的だったワークについて教えてください。
ソフトバンク 林さん:
私は「地域のお祭り」をテーマにした会議のワークが印象的でした。「焼きそばの屋台を出店する」という目標に向け、メンバーの役割を決めたり、必要な資材などを話し合うのですが、会議の序盤から方向性を固めすぎていたせいか、メンバーからアイデアが全然出てこなくて。普段の会議でも、自分で意見や方向性を決めすぎていた部分があるのではないか、と反省させられました。

ソフトバンク株式会社 技術統括 satto事業開発本部 satto workspace事業部 カスタマーサクセス課 林さん
──ファシリテーターの方が話しすぎてしまう、というのは、会議でよくある光景かもしれませんね。
ソフトバンク 林さん:
今までの会議では「私はこう思っていますが、皆さんはこの案についてどう思いますか」とダイレクトに回答を求めていたので、なかなかメンバーから意見が出てきませんでした。でも焼きそば屋台のワークと同じで、まずは前提条件を提示してメンバーでの認識をすり合わせると、いいディスカッションができることが分かりました。
カスタマーサクセスチームはお客さまへの価値の届け方の正解が無数にあるので、メンバー間での議論が重要になってきます。役割の異なるメンバー間で合意形成を図ることが大切だと感じました。
ソフトバンク 稲垣さん:
林さんが言うように、会議の冒頭でゴールや共通認識を確認することは私も大事だと思いました。最初にゴールを確認するだけで、メンバーも目的への意識が高くなりました。
私が一番印象的だったワークは、アイスブレイクで行った「自己紹介と他己紹介」です。自己紹介した内容を受けて相手に他己紹介してもらったところ、自分の発言した内容が思った以上に相手に正確に伝わっていないことに驚きました。社内でも自分の意見や考えが正確に受け止められていない可能性があることを認識して、目線合わせや振り返りをていねいに行うことが重要だと学びました。
Goodpatch 田中:
林さんのように、会議前に叩き台を準備すること自体はとても良いのですが、フレームを決めすぎるとそれ以外の意見が出にくいことはよくあります。メンバーの意見を引き出すテクニックは重要です。
稲垣さんの気付きは、ユーザーインタビューやUXリサーチにも生かせる視点です。会議が進行していくと、この会議は何のために開催したのか、ゴールはどこなのかを参加者は見失いがちです。回り道しながらでもいいのですが、要所要所でファシリテーターが会議の目的を参加者に思い出させ、話題を戻すことが大切ですね。
会議の場を支える「隠れファシリテーター」の存在
──なるほど。ファシリテーターは会議の現在地を示す「ナビゲーター」のような役割も求められるということですね。亀田さんは、何が一番学びになりましたか?
ソフトバンク 亀田さん:
会議のアジェンダ設計のワークを受講してから、会議の前に必ずペーパーを1枚用意するようになりました。私はプロダクト開発課のSREチームに所属しており、業務委託のエンジニアの方と会議をすることが多いのですが、専門用語が飛び交い、エンジニア同士で話が盛り上がって話題に付いていけないことや、元のテーマに話題を戻すのが難しいことがありました。
でも「これだけは確認しよう」と事前にペーパーを用意することで、話題を整理してエンジニアに聞きたいことをしっかりと確認できるようになり、会議がスムーズに回るようになりました。メンバーの意見が分かれることがあっても、「研修で見たシーンだ」と冷静に受け止められるようになりました。

ソフトバンク株式会社 技術統括 satto事業開発本部 satto workspace事業部 プロダクト開発課 亀田さん
──会議で一定のコントロールができるようになったというわけですね。
ソフトバンク 亀田さん:
あとは自分がファシリテーターでない会議でも「隠れファシリテーター」として積極的にコメントやリアクションを行い、話しやすい場づくりを意識するようになりましたね。
──「隠れファシリテーター」ですか? 初めて聞きました。どんな役割なのでしょうか。
Goodpatch 田中:
「隠れファシリテーター」は、ファシリテーターのように前面には出ないけれど、会議がスムーズに進み、メンバーが発言しやすくなるように場の雰囲気作りを行う参加者です。会議におけるファシリテーターは、孤独な立場になりがちです。今回のワークショップでは、ファシリテーターの立場をチーム全員で学んだので、会議に参加する側の協力も大事だと全員が理解したことも価値があったと思います。
場を盛り上げるのは、ファシリテーターだけの役目ではありません。積極的に雰囲気作りを行う「隠れファシリテーター」がいれば、会議はより良いものになります。
普段関わる機会のない人とディスカッションすることで、業務外でも話せるように
──なるほど。マネージャーに協力する「メンバー」のようなものだと。その心構えは大切ですね。皆さんはワークショップを受講してから数カ月経ちましたが、実務や社内で変化はありましたか?
ソフトバンク 石原さん:
私は都合が合わず、ワークショップに参加できなかったのですが、周りのメンバーは会議のタイムマネジメントや、目的の設定を明確に意識するようになっています。学んだ内容を自分の糧にして、立ち振る舞いが大きく変わったメンバーもいます。
ソフトバンク 稲垣さん:
これはワークショップそのものの内容ではなく、副次的な効果なのですが、ワークショップで同じグループになった人と、業務以外のことも気軽に話せるようになりました。ほぼ初対面でしたが、終日一緒に研修を受けたことでコミュニケーションが取りやすくなりました。

──チーム外の人と対面する機会が少ない中で、チームビルディングの効果もあった、と。
Goodpatch 田中:
そう言っていただけるとうれしいですね。今回のワークショップでは、あえて多様なメンバーでグループ編成することを意識しました。いつものチームメンバーや上司・部下が同じグループだと、普段の関係性が影響して忖度する雰囲気が生まれてしまいます。実際の会議では立場の異なる方が参加することも多いですし、さまざまな意見が出ます。自分とは違った意見に触れることも重要です。
──ワークショップの設計の面でもさまざまな工夫があったんですね。
ソフトバンク 稲垣さん:
私はsatto workspaceの社内導入説明会を担当していて、今回のワークショップでは、田中さんのワークショップの進行方法や参加者への対応なども参考にしたいと考えていたのですが、学びが多かったです。

ソフトバンク株式会社 技術統括 satto事業開発本部 satto workspace事業部 カスタマーサクセス課 稲垣さん
──どんな点が印象に残っていますか?
ソフトバンク 稲垣さん:
「まずは主催者が楽しくやる」ことがとても大事だと痛感しました。特にオンライン説明会は一方的なコミュニケーションになりがちなので、ファーストインプレッションで印象が9割方決まると思っています。
最初に「面白そう」と参加者に思ってもらえなければ離脱されてしまうので、説明会では参加者の反応を見ながら興味がありそうな内容を伝えていくことを意識しました。satto workspaceの社内向け操作説明会は3回実施し、合計で1万人が参加してくれたのですが、田中さんのように話すことを意識した結果、9割の方が最後まで参加してくれました。
Goodpatch 田中:
参考にしていただけてうれしいです。僕も聞いてみたいのですが、グッドパッチの研修は、他社の研修や講師と比べて何か違いはありましたか?
ソフトバンク 稲垣さん:
入社してから対面受講した研修の中でも、田中さんの講師力や楽しませ方は群を抜いていたように思います。先程も触れましたが、自己紹介と他己紹介は本当に自分に刺さりました。
終わった後もたびたびオフィスで話題に 「遊び」の要素を取り入れたユニークな研修は、実務にも好影響
──他の皆さんも学びになったことや、実務で生きていることはありますか?
ソフトバンク 林さん:
私はワークショップで大きく2つの学びがありました。一つは、会議で結論を出す際の進め方です。ワークを通じて、メンバーの意見をどうやって拾い上げればいいのか勉強になりました。先ほどお話ししたように、私は会議前に叩き台を持参していくのですが、必ずしも自分が叩き台を用意しなくてもいいと思えるようになりました。役割を柔軟に交代していいと思えたことで、会議での意見も出やすくなったと感じています。
Goodpatch 田中:
いい変化ですね。ファシリテーターを思い切って相手に任せてみることで自分も進め方を学べますし、任せた相手にとっての成長機会にもなりますね。

Goodpatch ワークショップデザイナー 田中
ソフトバンク 平泉さん:
私は「会議の目的設計」ですね。「会議の目的を全部設計し直そう」と田中さんに言われたことが印象的で、翌週の会議からすぐに実践しました。今までは会議の目的を考えずにゆるく始めていましたが、受講後は会議の目的を明確にするために、事前にスライドを1枚準備するようになりました。
最近では、脳内にスライドを準備できるようになり、会議冒頭で「今日の目的は〇〇です」と言う癖が付きました。目的設定がある場合とない場合では進め方が大きく変わりますし、思考の瞬発力が上がったと思います。一方で、会議の目的を決めると参加するハードルが上がるケースもあるので、いい雰囲気が保てるような健全な会議体を目指したいです。
ソフトバンク 亀田さん:
ワークショップに参加した当初はエンジニアたちとコミュニケーションを円滑にしたいと考えていましたが、会議に臨むスタンスや事前準備も大事だと学びました。会話に介入して、自分が本筋に話題を戻すというファシリテーターの役割を学びました。
ソフトバンク 平泉さん:
実際のファシリテーションスキルが社内に確実に定着するにはまだ時間がかかると思いますが、個人的には、グッドパッチの研修でのエピソードが、受講後の何気ない会話に出てきたのがすごいなと思っています。「あのときのディベートは、〇〇さん大変だったよね」というランチでの何気ない雑談でしたが、後から内容を思い出す研修って少ないですよね。

ソフトバンク株式会社 技術統括 satto事業開発本部 satto workspace事業部 マーケティング課 課長代行 平泉さん
──確かに学んで終わりの研修が多い中、後から話題になる研修は珍しいかもしれませんね。
Goodpatch 田中:
僕はゲーム会社の出身なので、アトラクションのように楽しめるワークショップ設計を意識しています。実際の会議のように「エンジニアとデザイナーで意見が分かれました。あなたはどうしますか」と日常を想定した設計にすることもできますが、あまりに生々しすぎると空気が重くなってしまう。それよりも仮定のシチュエーションで「これって現場でも言えるな」と体感してもらう方が、楽しく学べると思っています。
──面白い!遊びの要素があることで、印象に残りやすいんですね。皆さん、ありがとうございます!最後になりましたが、今後、受講してみたいワークショップやグッドパッチに期待することがあれば教えてください。
ソフトバンク 石原さん:
当初候補にあった、ユーザーヒアリングとUXリサーチ研修もいつか受講したいと考えています。satto workspaceも、まさにこれからユーザーを増やしていく段階です。「ユーザー理解」はデザイン会社であるグッドパッチの得意分野だと思うので、楽しみにしています。
