生成AIの進化により、プロダクト開発のプロセスや各職種の役割は劇的な変化を遂げようとしています。誰もが素早く形を作れるようになった今、PdM(プロダクトマネージャー)はどのように価値を発揮していくべきなのでしょうか。
グッドパッチでは、AI時代のPdMを再定義するシリーズの第1弾、「グッドパッチの実践から語る“作りながら決める”PdMとは──AI時代で変わる開発プロセスと使われるプロダクトを作る体験設計の実践」と題したウェビナーを開催しました。
本記事では、グッドパッチで新規事業開発やAIを活用したプロダクトグロース支援に携わるPdM田口による講演内容のダイジェストをお届けします!
AIによって「作る」と「決める」の境界線が溶けていく時代、私たちはどうやって意思決定の質を高め、ビジネスアウトカムを生み出していくべきなのか。具体的な実践事例と、そこから見えてきたリアルな課題についてお伝えします。
AIによってあいまいになる職種の境界

AI登場以前のプロダクト開発プロセスでは、PdMが「何を作るか」を決め、デザイナーがUI/UXを設計し、エンジニアが実装するという明確な役割分担がありました。
しかし、AIツールの進化によってその前提は崩れつつあります。AIによって職種の境界があいまいになり、全職種が一定のレベルで他の領域の作業にも対応できる世界が到来しているのです。
このような環境下において、PdMの力点(=時間やエネルギーを注ぎ込むポイント)が二極化していくのではないかと田口は語ります。
PdMの力点が二極化?

1つは、WHYを問い続けてプロダクトの方向性を定め、最終的な責任を担う「決めるPdM」。もう1つは、WHATやHOWを探り、仮説を素早く形にして検証する「つくるPdM」です。
どちらの道に進むべきかは、周囲のメンバーの専門性やプロダクトのフェーズによって変わります。しかし、本当に重要なのは、二極化のどちらか一方に留まることではありません。『作れる感覚を持ち、検証しながら決められるPdM』こそ、これからの意思決定の質を飛躍的に高める鍵となります。
アイデアを形にするコストがAIによって劇的に下がった今、PdM自身が「作れる感覚」を持つことで、解像度が高い状態でエンジニアと議論ができ、より精度の高い意思決定とビジネスアウトカムの創出につながります。
AIと共に越境しプロダクトマネジメントを行った事例
では、実際にAIを活用してどのようにプロセスを変化させるのか。本セミナーでは、新規事業立ち上げにおいてAIと共に越境しプロダクトマネジメントを行った事例を紹介しました。

あるクライアント企業では、従来、構想からプロトタイプの検証までに3〜6カ月、アプリのMVPローンチまでに約1年を要していました。しかし今回のプロジェクトでは「とにかく早く出したい」という要望のもと、なんと3カ月でリリースを目指すプロセスに挑戦しました。

ここでのポイントは、「ただ早いだけではなく、ユーザー検証を踏まえて解像度を高めた上でリリースに漕ぎ着けるプロセス」です。
このプロジェクトでは、PdM自身が役割を越境し、プロトタイプやv0(フロントエンドUI生成AIツール)などのAIツールを活用してデザインを作成。PdMがデザイン領域へと踏み込みつつ、デザイナーのプロフェッショナルな領域を完全に代替するのではなく、PdMが“モックの手前のイメージ”をAIで素早く形にする役割を担いました。これによりチーム全体の共通認識を爆速で構築し、エンジニアの実装へとつなぐアプローチをとりました。
プロジェクト開始からわずか2週間で、お客様の仕様を満たした動くアプリ(プロトタイプ)を作成しました。これにより、開始数ヶ月はドキュメント上の仮説で議論していた従来とは異なり、実際に触れるプロダクトを前にして、ユーザーの反応による意思決定をスタートできたのです。
さらに、ユーザーテストのフェーズでも大きな変化がありました。動くプロダクトを用いることで実態に近い形での検証が可能になり、インタビューで見えて
きた課題を即時で修正し、次のテスト対象者には修正済みのものを提示するという、テスト期間中の高速なブラッシュアップが実現しました。
これはまさに「Build-Measure-Learn」のサイクルを、AIの力で超高速に回す「作りながら決める」アプローチです。
「早く作れる」時代の落とし穴
圧倒的なスピード感をもたらすAI活用ですが、実践を通して見えてきた特有の課題もありました。
課題①:関心が「見た目」に引っ張られがち
AIを使って作成したプロトタイプは、どうしても「AIっぽい」見た目になることがあります。そのため、本来議論すべき「誰の課題を解決するのか」「価値を提供できているか」ではなく、「ここをもう少し直したい」といったビジュアルへの指摘に終始してしまうリスクがあります。
田口は「ビジュアルの議論は際限なく時間をかけられます。だからこそ、AIっぽすぎて見る気にならないレベルは早急に脱した上で、一定の線引きを行い『ここからは本質的なユーザー価値の議論をしよう』とファシリテーションしていくことがPdMの重要な役割です」と指摘しました。
課題②:WHAT / HOW主導による「蛇足プロダクト」の誕生
AIを使えば機能の追加は爆速でできてしまいます。そのため、「こういう機能もあった方がいいんじゃない?」「他社もやっているから入れよう」と、思いつきのアイデアが断られずにそのまま実装され、機能過多で使われない「蛇足プロダクト」が生まれてしまう危険性があります。
これを防ぐためには、「そもそも誰のどんな課題を解決するのか?」「ビジョンや戦略の方向性に合致しているのか?」という前段の整理とチーム内での合意形成が不可欠です。
“作りながら決める”PdMが果たすべき真の役割
「AIを使えば、何百行もある要件定義書のようなものも一瞬で作れます。しかし、それを誰もレビューせずに出してしまうのでは意味がありません。早く出すこと自体に価値があるのではなく、意思決定の質を高め、ビジネスKPIを動かすものを作ることが本質です。横着せずにしっかりと議論し、整理を進めるPdMの力が、これまで以上に試されています」と、田口は締めくくりました。
AIはプロダクトマネジメントにおける強力な武器になります。AIを使って素早く仮説を形にし、実際のユーザーやチームの反応を見て軌道修正を行い、それを繰り返す。この「作りながら決める」プロセスを主導し、チームの意思決定の質を高めることこそが、これからのPdMに求められる役割です。
いかがでしたか?グッドパッチでは、デザインカンパニーならではの視点で日々AI技術と向き合い、新しいプロダクト開発のアプローチを実践・探求しています。
「AIを活用して、より確実でスピーディーな新規事業立ち上げを実現したい」「開発プロセスの見直しを検討している」といったお悩みがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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また、今後もAI時代におけるプロダクト開発やデザインに関するイベント・ウェビナーを定期的に開催予定です。次回以降のイベント情報は、グッドパッチのConnpassをフォローしてお待ちください!
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